D.StrikeS_第05話

Last-modified: 2009-06-08 (月) 17:47:06

その人はぶっきらぼうだけど、どこか優しい人だった。
 シン・アスカさん、僕達より1日遅れて六課に配属になった人。
 
 きっと兄が居たらこんな感じなんだろうな、そう思う。

 僕はまだ、この人のことをほとんど知らない。
 彼もまた僕のことをほとんど知らない。

 ただ、今はまだ言えないけど僕の秘密をこの人なら……いや、六課の皆なら……
 笑って受け入れてくれる、そんな気がする。

 その日が来ることを願って、僕は今日も頑張っていく。

 魔法少女リリカルなのはD.StrikerS、始まります。

 

 魔法少女リリカルなのは D.StrikerS
 第5話「初めての出動、実戦なの」

 

「う、うおおおおおおおおおおおおお!!?」

 起動六課が誇る海上訓練施設、そこにシンの叫びが響き渡る。
 
 現在シンを取り囲んでいるガジェットの総数は8機。
 それら全てが放つ攻撃をシンは必死で避けていた。

「シン、速度が落ちてんぞ!
 そんなんじゃ実戦に出ても的にしかなんねー!」

 そんなシンを地上から叱咤するのは赤い髪をした少女、八神はやての守護騎士の一人、ヴィータであった。

「そんなこと言ったって、こっちから攻撃せずにこれだけの攻撃を避け続けろなんて……!
 ちぃっ、インパルス!」
『Vajra Saber』
 フォース形態のインパルスに命じ、死角からの攻撃を片手に魔力の刃を生み出し、振るうことで弾く。
「しゃべってる暇あったら体動かさないと当たるぞー?」
 因みに被弾したら始めからやり直し、とは開始前のヴィータの言葉である。

(この赤毛チビ、いつか泣かす!!)

 シンは心の中で悪態を付くがその瞬間、
「馬鹿にされた気がしたからガジェット2機追加な。」
 ヴィータの血も涙もない宣告とともに、新たなガジェットが二機現れシンを囲む。
「ふ、ふざけんなあああああ!!」

 数が増えたことで更に熾烈になっていくガジェットからの攻撃を避け、手に持った盾で防ぎ、魔力の刃を振るいなんとかかわしていく。

「どうしろって言うんだよ!?」

 シンは一瞬地上に居るヴィータを見る。
 が、ヴィータはこちらを見てすらいなかった。
 
 シンの視界に入ったのは、丁度訓練を終えた所なのか、ぼろぼろのスバル達を連れたなのはと会話をしているヴィータだった。

「や……やってやるよ、畜生!!」

 訓練場に本日何度目かのシンの叫びが響き渡った。

 さて、そのころなのはやヴィータ達はというと、

「ヴィータちゃん、ごめんね?
 本当はもう少し後から訓練見てもらうつもりだったんだけど……」

「いや、気にしてねーよ。
 それにあいつ面白いしな。」
 ヴィータは口の端に笑みを浮かべながら応える。
「あ、あんまり苛めないであげてね?」
 乾いた笑みを浮かべながら、なのはは言う。
「ところでなのは、お前らはもう訓練は終わりなのか?
 私のほうはもう少し続けるつもりだけど。」
 
 ヴィータは、一瞬こっちを見たかと思うと叫び声を上げながら飛び回るシンのほうを見ながら言った。

「うん、一応今日の午前に想定していた訓練は終わったし、これからこの子達に渡すものがあるから。」
 
 なのはは自分の後ろに居るスバル達を目で示しながら言う。
 ようやくスバル達に実戦用デバイスを渡すのだろうと考え、ヴィータはああ、と納得したように頷く。

「りょ~かいだ。
 それじゃあ、こっちもそろそろ終わらせてやるかな?」

「どうするんですか?」
 と、そこまで黙って二人の話を聞いていたフォワード陣の一人、ティアナが疑問を口にする。
「ああ、全部倒させる。」
 
 それだけだ、とそれに対してヴィータは簡潔に答える。
 あまりにも平然と、無理難題を言うヴィータにスバル達は目を見開く。
「ま、全部倒すのは無理だろーけどな。」」
 
「じゃあ、ちょっと時間掛かるかな?」

 なのはが確かめる様に言うとヴィータは頷く。

「ああ、そっちは先に行っててもいいぞ。
 アレの説明にも時間それなりにかかるだろ?」

「そうだね、じゃあ私達は先に行くことにしようか。」
 行くよ皆、と言いなのはが歩き出し、スバル達がヴィータに敬礼をした後、それについていく。

 ヴィータはそれを見送ると、今もガジェット達からなんとか逃げ続けているシンに目を向ける。
 
「シン、聞こえてるかー!?」

 そして声を張り上げる。
 シンからの返事は無かったが、聞こえてるものとしてヴィータは続けた。
「そいつらを倒しきったら、とりあえず訓練終了だ!
 ただしデバイスの形態は変えんなよ、そのままで戦え!」

 ヴィータの声が聞こえたのか、それに答えるようにして器用なことにシンは持っていたサーベルを振った。

 それにヴィータは満足したように頷き、シンを観察する。

(フェイトも言ってたが魔法に関しちゃ人並み以上、下手したらなのはくらいの才能。
 と言ってもまだまだ使い方がなっちゃいねえが……)
 そんなことよりも、とヴィータは思う。
(反射速度、運動神経、多分動体視力もか、それらが並じゃねえ……
 それに、多対一の戦闘に慣れてやがる?)

 先ほどから見ていると、シンは常に囲まれないように動いている。
 それがヴィータには何度も繰り返したことのある動き、つまり習熟しているように見えたのだ。
 
(はやてが元軍人だって言ってたけど、それにしたって……なあ?
 下手しなくても純粋に単体での戦闘って点なら、今のあのひよっこ達より上なんじゃねーか?)

 絶対的に経験が違う、とヴィータはかぶりをふる。
 それは推測でしかなかったが、シンは一人で沢山の連合のMSを相手取ることが多かったのは事実であり、それは経験としてシンの中に息づいていた。
「まあ、そろそろ限界って感じか?」
 シンはどう見ても戦いにくそうにしていた。
 ヴィータが見る限りシンが今使用しているデバイスの形態は、魔力を使用した攻撃方法が主である。
 AMFがある限りそれらの攻撃は、それなりに工夫しないとガジェットには通用しない。
 なんとか両手に構えたナイフで頑張ってはいるが、どう見ても限界だった。

「さて、終わらせる準備すっか。」
 ヴィータはそう呟くと虚空に呼び出したコンソールに触れた。

 
「やっぱフォースじゃきつい……っな!」 
 シンは空中に居るのをやめ、地面を走りながら憎々しげに呟いた。
 
 後ろから追いかけてくるガジェットの集団の中から、突出してきた一体に対して手にもったフォールディング・イレイザーを投げつける。

『これで三体目を撃破、もう攻撃手段は残されていませんがどうするつもりですか?』

「どうするって……っ!言ったってな!」

 ガジェットからの攻撃を避けながら、胸元のインパルスの言葉にシンは頭を捻らす。
 フォースシルエットで使える武装の内、ガジェットに有効な打撃を与えられるのは今しがた投げたフォールディング・イレイザーのみ。
 それもさっきので最後だったので、シンにはもう攻撃手段が残されていなかった。

「せめてブラストかソードが使えたら、な!
 ちぃっ、ヴィータ副隊長も無茶を言う!」
 
 しかしこうして逃げ回っていても始まらないことはわかっている。
(やるしか……ないか!)
 自分でも愚かな行為だというのは理解していたが、心の中で覚悟を決める。
 その場で一旦止まり、そのままUターン。
 こっちに向かってくるガジェットに対して突っ込んでいく。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 
 そして雄たけびを上げながら、魔力を纏った拳を振り上げる。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「シンの撃墜を確認……っと。
 あ、ガジェットの機能停止しねーとな。」

 合掌。

 
 

「こうして会うのは久しぶりやねぇ、カリム。
 ご無沙汰にしててごめんな?」
「気にしないで、そっちも色々大変なんでしょう?」

 その頃はやては六課の後ろ盾ともいえるカリムに会うために、教会本部まで来ていた。 
「それはお互い様やと思うけどな。
 シンの件ではカリムにもお世話になったし……」
 
 発足したばかりの部隊に、なんとか書類の不備で登録が遅れた、という形でシンを入隊させることが出来たのはカリムの尽力あってのものであった。

「ふふ、ならお願いもしやすいかな?」
「なんや、今日の会って話そうってのはお願い関連なんか?」

 カリムの言葉にはやては笑いながら答える。
 姉のように慕っているカリムに頼られるのははやてとしても悪い気はしなかった。

 はやての言葉にカリムは少し顔を曇らせると、部屋のカーテンを閉め、いくつもの画像を空中に展開していく。

「はやて、これを見てくれる?」
「これは、ガジェット……の新型?」

 そこに映し出されていたのは今までに現れてきたガジェットと、同系統の技術によって作られているであろう機体であった。

「そう、発見されたのは先日で戦闘能力に関してはまだなんとも言えないんだけど…… 今までの1型以外に新しく二種類。」
 
 想定の範囲内の事態とはいえ、敵側の戦力の増強にはやては顔をしかめる。

「それと、これ。
 今日の本題なんだけど……」
 カリムが操作して一つの画像がアップにされる。
 それを見てはやては目を見開く。
「これは……レリックやね?」

「そう、その可能性が高いわ。
 新しいガジェットが確認されたのも、これに関連していると想定できるし。」
「今日私を呼んだんはこれについてやね?」
「そう、このレリックを巡る事件、これに関しては判断を間違うわけにはいかないもの……!」

 厳しい顔つきになってカリムは言う。
 そんなカリムにはやてはふう、と息をついてから閉じられたカーテンを開いてから話しかける。

「はやて?」

「大丈夫、カリムが頑張ってくれたおかげで六課はもういつでも動き出せるし、即戦力の隊長、副隊長陣もいる。
 新人達も実戦可能なレベルになってる。
 それにシンも十分戦えるようやしな。」

 だから大丈夫、とはやては力強く頷いた。

(…………っ?
 俺は……確か訓練でガジェットにやられて……それから?)
 シンはいまいちハッキリしない頭をなんとか動かし状況を確認していく。
 
 バババババババババババババババババババ
 
(そうか、気を失って……それからどうした?)
 
 バババババババババババババババババババ

(っていうか五月蝿いな、それに酷く揺れてるし。
 まるでヘリの中にいるような……ヘリ?)

 そこでシンはようやく目を開いた。
「……こ、ここは?」
「あ、シン君、目が覚めた?」
 
 目を覚ましたシンの頭上から声が掛かる。

「この声は……なのはか。」 
「私達もいるわよ。」

 更にティアナの声がかかり、シンは体を起こす。
 幸い、痛むところは無いようだった。
 そしてあたりを見回す。
 なのはにリィン、スバル達に更に奥の操縦席には最近知り合ったヴァイスが操縦桿を握っている。

「悪い、状況がつかめないんだけど……」

 頭の上に?マークを浮かべ、首を捻るシン。

「リィンが説明するですよー。
 ついでに今回のミッションについても一気に説明しちゃうんで、皆さん傾注~!」

 シンの目の前に飛んで来たリィンが胸を張り声を上げる。

「まず、私達はエイリム山岳丘陵地区のリニアレールを追っています。
 それに取り付いたガジェットを排除、そして鉄道に積まれたレリックを守るのが今回のミッションです!
 具体的に説明するとですねー、スバル達スターズ分隊のフォワードは後方車両から、エリオ達ライトニング分隊のフォワードは前方車両から、中央に車両に保管されているレリックまでガジェットを駆逐しながら進んでもらうですよ~。」

「「「「了解(です)!」」」」
 
 スバル、ティアナ、エリオ、キャロの声が唱和し、それに満足そうに頷くリィンとなのは。

「俺はどうしたらいいんだよ?」

 何も言われなかったシンが、すこし不貞腐れたように言う。
「シン君は空を飛べるしね。
 多分出てくると思う敵の航空戦力を、私とこの後合流するフェイト隊長、それにシン君の三人で抑えるよ。」
「ん、了解だ。」

 なのはの言葉に頷くシン。
 
「っと、今司令部から連絡が入りました。
 そう言った途端に敵さんのお出ましですよ、なのはさん!」
 操縦席のヴァイスから声が届く。
「わかったよ、ヴァイス君。
 メインハッチ開けて、私とシン君が出るよ。
 いけるよね?」

 なのはの問いにシンは考える。 
 こっちに来てから訓練ばかりで実戦は久しぶり、というか魔法を使用してのという意味なら初めての実戦になる。
(緊張はしてる……けど)
 それよりも今の自分がどれだけ通用するのか知りたかった。
「ああ、問題ない!」
 だからシンは力強くなのはに答えた。
 
「こりゃあ……航空型なのか?
 今までに無いタイプです、お気をつけて!」 
 ヴァイスがそう言い、ハッチを開ける。

「じゃあ皆、私は行ってくるけど頑張って!
 大丈夫、訓練通りやれば問題無いからズバッとやっつけちゃおう!」

 なのはが笑顔を浮かべ、スバル達の緊張をほぐそうとする。
「「「はい!」」」
「は、はい!」
 スバル、ティアナ、エリオの声が唱和し、遅れて少し緊張したような声でキャロが答えた。
 なのははキャロの前にしゃがみ込み、その頭をなでた。
「キャロ、大丈夫だよ、そんなに緊張しなくても。
 離れててもピンチのときはちゃんとフォローするし、キャロの魔法は皆を守ってあげられる優しい力だから……ね?」

「で、でも……」
 それでもまだ何処か不安なのか、困ったような顔をするキャロ。

「エリオもいるし、スバルやティアナ、俺やなのはだっている。
 少なくともキャロは一人じゃない、大丈夫だ。」
 そんなキャロにシンも声を掛ける。
「なのはさん、シンさん……」

「じゃあ、行こうかシン君。」

 なのはがシンをハッチの方に行くよう促す。
「ちょっと待て。
 まさか……ここから飛び降りろ、と?」

 ハッチの入り口に立ったシンが、外を指差し呟く。
「そうだけど……シン君、もしかして怖い?」
 そのなのはの物言いにシンはカチンと来る。
 これでもザフトではエリートの証である赤を着ていたし、フェイスの称号も持っていた。
 そのプライドが売り言葉に買い言葉として現れてしまう。 

「そんなわけあるかよ! 
 これくらい、平気「なら大丈夫だよね、いってらっしゃ~い。」ってこらまてなのは、お、おすなああああああああ!」
 
 トン、と軽い音と共になのはがシンの肩先を押した。
「あ……」
 誰の呟きだったかはシンにとって定かではなかったが、その呟きがシンの耳に入った瞬間、
「うあああああああぁぁぁぁぁぁぁ…………」

 シンの姿は、ドップラー効果の効いた叫び声だけ残してその場から消えた。
「さて、私も行ってくるから、皆も頑張ってね!」
 そのシンを追いかけるように、なのはもハッチから飛び降りた。

「くそっ、なのはの奴、無茶苦茶しやがって!」
 すさまじい勢いで落下していく中シンは毒づく。

『どうしますか? このままでは、地面と感動のご対面ですが?』
「わかってるんだろ!? 行くぞインパルス!
 フォースシルエット、セット……アップ!!」
 いつもどおり何処か皮肉めいた口調で語りかけてくる相棒にシンは起動を命じる。
『Ok,my master. Get ready load force Silhouette』
 足元に魔法陣が生まれ、シンの体を光が包みインパルスをその身に纏っていく。
 魔力を操り落下している自分の体を制御し、既にバリアジャケットを着て先を行くなのはに追いつく。
 
「あ、シン君大丈夫だった?」
「そんなこと聞くくらいなら始めからするなよ!?」
「にゃははは、ごめんごめん。」
「はあ、まったく……アンタって人は。」
 
 あまり悪びれた様子も無く謝るなのはにシンはため息をつく。

「あの子達の緊張を少しでも和らげるためにも……ね?」
「ああ、そういうことか。
 って俺は道化かよ……」
 
 確かに先ほどの自分は傍から見てて滑稽だったんだろうな、とシンはなのはの言葉に納得すると同時に少し落ち込む。

「っと、来たよシン君! 気持ちを切り替えて!」
 なのはの口調が切り替わる。
 前方から戦闘機のような形をしたガジェットが3機編隊で5組、こちらに接近してくるのをシンも確認した。

「こちらスターズ01、高町なのは!
 フェイト隊長は後どれくらいでこっちにこれる?」
 なのはが未だに合流できずにいるフェイトについて聞くため、ロングアーチ部隊に通信を入れる。

『こちらロングアーチ、八神はやて!
 なのはちゃん、シン! フェイトちゃんはあと約5分でそっちにつける!
 それまで二人でいけるか!?』
 
 教会本部から六課に帰ってきたばかりのはやてがなのはに応える。

「いけるか……ってやらなきゃ駄目なんでしょう!?
 ならやってやるさ!」

「というわけだし、私達は大丈夫。
 フェイトちゃんと合流するまでは抑えるから、そっちはフォワードの子達のフォローをお願い。」
『了解や。
 ほななのはちゃん、シン! 頼んだで!』

 はやての激励の言葉に、二人は頷き通信を切る。

(シン君も始めての実戦になるんだし、あんまり無茶はさせられないよね。
 私が前に出て、援護を頼もうかな……)
 なのははどうやって戦ったものか、と思案する。
 もう接敵まで時間は無いので簡単なものではあるが、それをシンに伝えようとした瞬間……

「なのは、俺が前に出るから援護頼む!」

 シンはそう言うと速度を上げ、ガジェットの集団に突っ込んでいく。
「って、言おうとした傍から無茶しようとしてるー!!」
 想定外の事態になのはは悲鳴を上げた。 
 シンの動きを察知したガジェットの一部が取り囲もうと散開していく。
「あんまり前に出すぎたら孤立するよ!?」
「それくらいわかってるさ!」

「……本当にわかってるのかなあ。
 もう、レイジングハート、お願い!」
『Accel Shooter』
 なのはが手に持ったレイジングハートから空薬莢が一発分排出され、その先端から幾つもの光弾がシンを囲もうとするガジェットに向かっていく。
 
「インパルス!」
『Vajra Saber』
 シンは手元に魔力で出来たサーベル状の刃を発生させると、自分に向かって放たれる光を避けながら、目の前のガジェット三体に肉薄する。
 そして正面のガジェット一体をすれ違いざまに切りつける。

「まだまだ!」
 
 更に半身を捻り腰から取り出したライフルを構え、通り過ぎた2体のガジェットに向かって魔力弾を連続して放つ。
 ほぼ同じタイミングでなのはの放った光弾が、シンに対して左右から迫るガジェット達に直撃していく。
 
 直撃を食らい爆散するガジェットには目もくれず、シンは動いた。
(こいつら……魔法が効く? AMFを持ってないのか?)

 自分を追いかけてくるガジェット三体に向けて、確認と牽制の意味を込めて魔力弾を放つ。
 際どいところで避けられるが、AMFによる干渉で消えることは無かった。

(……まあ、効くんならいいか。 
 技術的な事は俺にはわからないし……)
 シンの射撃によって編隊を崩したガジェット達を、なのはの砲撃がまとめて薙ぎ払う。
「シン君、大丈夫だった?」

 今ので第一陣が全滅したので、なのはがシンのそばに寄ってきて聞いてくる。
「平気だって言ったろ?
 これくらいでどうにかなってたら、俺はとうの昔に死んでる。」

「そっか、じゃあもう少し頑張ろうか?」
 
 なのはが言いながら空を指差す。
 その先からこちらに向かってくる先ほど倒したのよりも大量のガジェットを見て、シンはげっそりと声を上げる。
「くそっ、切りがないな……」

「フェイトちゃんが来たら少しは楽になると思うから、それまで頑張ろう!」
「だな、それに俺達がここで頑張れば頑張るほどエリオやスバル達が楽になる。」

 シンの言葉にそういうこと、となのはは頷く。

 そしてすぐさま、先ほどのようにシンがガジェット達に突っ込んでいき、なのはがそれを援護する。

(フォワードの皆は大丈夫かな、キャロ……緊張しすぎてないといいんだけど。)

 なのはは一瞬フォワード陣達に気をやるが、自分の後ろにガジェットがつけたことで気持ちを切り替える。

 起動六課の初陣は、まだ始まったばかりだった。