DEMONBANE-SEED_ですべのひと_04_2

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:26:01

 大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代、

 そんな此処、アーカムシティに立つ鋼の戦士がふたり。

 人を排した廃墟に、両者が向き合う。

 ひとりは盾を構え。

 ひとり銃を構え、



 咆吼(ファイア)。

 咆吼咆吼咆吼咆吼咆吼。

 光の弾が飛ぶ疾る舞う駆ける。



 一瞬の後。



「ところでシンちゃん、これを見てどう思う?」

「すごく……硬いです……」

 一応注釈を入れると、男同士じゃあない。



「でも凄いですね、ヒヒイロカネ。

 シールドも材質を変えるだけで此処まで違うのか……」

 この場に立ってるのはインパルスとウィンダム。

 今回はインパルスのシールドを、デモンベインの材質である

 ヒヒイロカネで試作してみたようで、その強度テストをしようというわけだ。

「よっしゃ。これで後は魔術防御を加えればインパルスにも魔術に耐性ができる」

 コクピットの中でガッツポーズをするこの人、チアキさん。

 最低限の動作はOSのプログラムが何とかしてくれるようで、今コンソールを使ってたどたどしく操作している。

 彼女は覇道財閥のメカニック兼メイドなんだとか。

 ……なんだこの肩書き。



「確か、ブラックロッジ幹部の機体は全部鬼械神、でしたっけ。

 魔術的な防御力がないと幹部の攻撃に成す術もなくなる、とか」

 そう、インパルスはこの時代の常人から見ればデモンベインとほぼ同列の―――いわゆるスーパーロボット的な強さがある。

 だが、実際は魔術的防御能力がなく、攻撃力もデモンベインに「すら」到底及ばない。

 しかしブラックロッジの幹部は皆鬼械神を所持している。

 デモンベインは科学的要素も多分にあるが、ブラックロッジの鬼械神は完全に魔術一本。

 そしてパイロットの魔術師としての腕は超一流。



 全員がデモンベイン以上。

 正直このパワーバランスには愕然とした。

 CEでは完全に失われた技術が、これほどのものとは。

(……それでも)

 やれないことはない。

 実際、九郎はボロボロな状態の中、デモンベインで幹部の鬼械神に一矢報いている。

 やれないことはない。

 だが、魔術的な面では自分は話にならない。

(アルにでも頼むかな)

 一瞬、自分より幼い少女(外見は、の話)に土下座して教えを乞いている自分が夢想された。

 軽く自己嫌悪。まだそこらへんプライド捨てたわけじゃないし。



「……ちゃん、シンちゃん!」

「あ、やばっ」

 最近軽く忙しい。考え事をする暇くらいは欲しい。

「次はコレを受けてもらうで」

 でかっ。

 ウィンダムには不釣りあいな「拳銃」が、其処にあった。

「これはプラズマガン。

 デモンベインがクトゥグアっちゅー神様の力を借りるための武器や」

 神様の力を借りる……デモンベインというより、アルの能力。

 アルの力は、デモンベインの力になる。

 ……ただクトゥグアの断章は、制御が難しくて未だ使用していないとの話だ。

「今回はどの程度まで銃が耐えられるかのテストや。

 しょっぱなからアルちゃんが力使うわけにもいかんしな。

 ついでにシールドの耐熱機能のテストにもなる。

 頑張って受けてな」

「……死にませんか?」

「VPS装甲なら耐えられるやろ」

 確かに、物理的衝撃や熱処理にかけてはVPS装甲はヒヒイロカネを超える。

 ただ、プラズマは流石に怖いんですが。

 受け損なったら溶けるよそりゃ。

 フリーダムの羽キャノンもプラズマだし。

「ほな、いくでー?」

「ちょ、待っ―――」

 次の瞬間、シールドをプラズマがヴッ叩いた。

 死ぬかと思った。でかいせいで余波が機体にも来る。

「んー、もう少し出力上げてもよさそうやね」

 まだやる気ですか。



 しかし、この時代から見て相当未来の機械を平然と動かしているのは作業しているだけとはいっても、少し羨ましくなるというか揃いも揃ってアーカムシティの人間は適応力高いなおい。


 それか連合のナチュラル用OSはそこまで使いやすいのか。

 多分チアキさんはインパルスだと無理だな。

 コーディネイターというか俺の存在意義は守りたい。

「ほな、行くでー」



 次の衝撃がシールドに響いた。

 VPS装甲が緑だったら危なかったかも。



 20回程やった時点で、PSダウン。

 多分受けてる時電力消費多めに設定してた。



「いやぁ、ホンマ助かったわ。

 今まではテスト相手がおらへんかったから、ウィンダムが余ってたのは幸いやったな」

「は、はあ……」

「何や、ノリ悪いなぁ」

 初めての職場であれならこうもなろう。

「お疲れ様ですぅ」

 そういって飲み物を差し出してくれるのは―――またメイドかい。

「あの、君は……」

「ソーニャです」

 ソーニャ。褐色の少女。

 よかった、この子は流石にマトモそうだ。メイドだけど。

「……どうかなさりました?」

「あ、いや何でも」

「やっぱりあなたみたいなどこの馬の骨ともしれない凡骨さんが私達覇道財閥に就職できた事が未だに信じられないです?

 それとも、ロリコンさん?」

 待て後半。前半も突っ込みたいが待て後半。何故にロリコン。

「ソーニャ、ロリコンは既にぎょうさんおるねん」

 それも異常だなおい。

「せやから、アタシはポジション的にシスコンが増えたと見た」

 いや そのりくつは おかしい

「なるほど、シスコンさんですね」

 そうでもあるがぁぁぁ!!

 一瞬でもマトモだと思った自分がバカだった。



「……」

 今度はやけに長身な―――メイドさん。もういいよどうせ変人だろ。

「……うわ男だ」

 阿○さんの逆ですか。

「……こ、この人はマコトさんって言うんですよぉ」

 あー、うん。フォローありがとう。



「おーす」

「シンはおるか?」

 そうこうしているうちに、九郎とアルが来た。

「俺は名指し?」

「汝しかおらんだろう」

 今度は何ですか。

「汝がロイガーとツァールを使いこなすための訓練に我等がつきあう事となった」

「ああ……あいつらね」

「なに、何ら心配はいらん。九郎に魔術を教えたのも妾だ。

 むしろ最強の魔導書たる妾に教えを請うことができるのだぞ、光栄に思え。崇めよ。

 GM、妾はダーザイン『シンからの崇拝』を取得する」

 ―――どいつもこいつも。

 覇道の面子のアクの強さに、本当にやっていけるのか不安になった。

 そんな時。

「アルた~ん!!」

 後ろから思いっきり突撃を食らった。

「だぁぁ、また汝は!!」

「ハァハァ」



 おおシンよ、ふっとばされるとはなさけない。

 俺の体は宙を舞っていた。

「うわーだめだー」





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