EDGE_第03話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 00:34:27

管理局に入隊することになって、その日からさらに、3日後のこと。
アスランの容態は完全に回復していた。
入隊手続きの間に彼は、少しでも慣れようとギンガからもらった資料などで
情報を仕入れ、この世界のことを勉強した。
文字などの違いも完璧に把握するまでに、いたっている。

 

魔法などの専門分野は、ギンガが教えることになった。
知らない人より、知っている人などと、ゲンヤが言っていたので
彼が根回しをしてくれたのだろう。
アスランも日頃からギンガと話しているので気が楽になる。
仲もだいぶ良くなり、話あっている姿などは正に友達同士といった感じだ。

 

そして今、二人は入隊手続きが終わったとの連絡を受け、
ゲンヤの隊長室に向かって歩いていた。

 

「意外と早く終わったから、よかったわね」
「俺も、もう少しかかると思ってたよ」
「父さん、色々と上に顔が効くから多分、
 たくさん偽工作したんじゃないかしら」
「それって、まずいんじゃ……」
「ばれなきゃいいのよ♪」
「……」

 

なんてのん気だと思いながら苦笑いをする。
まあ、ここは軍というより警察だから、あまりそうゆう規制は
徹底してないのかもしれない。
二人は隊長室に着き、ギンガがブザーを鳴らす。
中から、入っていいぞとの返事があったので、失礼しますと言い入室する。

 

「アスラン・ザラ研修生をお連れしました」

 

ギンガが敬礼をして告げ、アスランもそれに倣って敬礼する。

 

「んっ、よし。座れ」

 

二人は椅子に座り、デスクに座っているゲンヤと向かい合う形となる。

 

「さて、アスラン。手続きは完了した。これで管理局に仲間入りだ」
「はい!」
「もう一度だけ訊くが、後悔はないな?」
「自分自身が決めたことですから」

 

この間と変わらない決意の瞳と、とまどいの無い言葉。
それを見てゲンヤは、こくっと頷き了承したと受け取る。
もう何を言っても聞かないとわかったからだ。

 

「よしっ!んじゃ、これから簡単にこれからの説明をする!」
「はい!」

 

緊迫した空気が変わり説明にはいる。

 

「休んでいる間に大まかな事は知ったな?」
「ええ、機関内容と文字と言語をだいたい…」
「3日でそんだけ覚えれば上々だ。つーか、すごいな。
 普通だったら皆苦戦するのに」
「アスラン、えらいんですよ」

 

ギンガが、この3日間でアスランがしていた事を話す。

 

「教えたことはちゃんと、わかりやすくノートにまとめてますし、
 復習も何回もしてるんですから」
「ほ~~、努力家だな」
「あっ…いえっ///早く慣れようと思っただけで…」
「ふっ、いいことじゃねえか」

 

恥ずかしそうなアスランを素直にほめ、本題に入る。

 

「お前さんには、しばらくギンガが教導員として魔法、デバイス関係を
 指導してもらうことになる」
「しばらくというのは?」
「基礎を身につけたら、今度は訓練校に入学して特別短期プログラムを
 受けてもらう」

 

それを聞いたアスランはザフトのアカデミーを思い浮かべる。
なるほど、確かにその方が効率がいいと納得する。

 

「短期っていうのはどのくらいなんですか?」
「3ヶ月♪」
「!!…父さん!いくらなんでも少なすぎだと…」

 

あまりの短さに驚くギンガ。一卒の魔導士になるのだって
数年は掛かるのに、それを魔法をまったく知らないアスランが
3ヶ月でなんて無理だと思ったからだ。
しかし、ゲンヤは微笑しながら

 

「大丈夫だ。アスランは元軍人だけあって、体は俺達以上にできてるし
 精神的コントロールも徹底されてると見える。だろ、アスラン?」
「え…ええ、まあ…」

 

振られて頷くアスラン。彼も動揺しているようだ。

 

「俺はできると信じてる」
「なんの確証もなしに…」

 

賛成派と反対派に分かれ、戸惑うアスランだが
ゲンヤがニヤッと顔をひき、案をだした。

 

「じゃあこうしよう。これから訓練室へいってアスランのデバイスを
 発動させる。そんで一発で成功したら、短期で。駄目だったら長期。
 これでどうだ?」
「……無理だと思いますけど」
「成功したらの話だ。それで優秀か、平凡か一目瞭然だ」
「…わかりました」
「あのぅ…」

 

仕方なく案に乗るギンガ。当の人物の意見をまったく無視して、
話を進めるのであった。

 

【108部隊-隊舎 訓練室】
部屋の中でアスランは、ゲンヤとギンガに向かい合ってデバイスについての
簡単な話を聞き、終わるとゲンヤからデバイスが渡された。
赤紫色の宝石がアスランの手の中で光沢をだす。

 

「お前のデバイスだがな、解析してみたところ結構、謎が多い」
「謎?」
「フレームはそこらのやつより、いい材質を使ってるのはわかった。
 だが、コアの方が全く解析できんのだよ」

 

話によるとコアの部分を調べようとすると、プロテクトがしてあり
どんなハッキングも受けず解析不可能であったみたいだ。

 

「まあ、元はアレだし、わからんくもないがな」
「そうですか…」
「だがやってみないことには、何もわからん。試してみろ」
「…はい」

 

返事をすると、アスランは一歩二歩と後ろに下がるとデバイスを握り締めた。
視線で準備ができたことをギンガに伝え、指示を待つ。

 

「まずは落ち着いてね、アスラン。強張らなくていいから」

 

フーっと深呼吸し、全体の力を抜く

 

「難しいことは考えずに、デバイスに意識を集中して」

 

目を閉じ、頭の中のうやむやを一切なくす。
手の中にあるデバイスのことだけに集中する。

 

「感じたことのない感覚がでてくるはず。それがあなた魔力よ」

 

そう言われてみれば、自分の胸の内が何か暖かい感じがする。
これがそうなのだろうか。

 

「その魔力をデバイスに届けるようにするの」

 

胸から、手へと道をつくるように意識して、魔力を送る。

 

「それから………」

 

不意にギンガの声が途切れた。他の雑音もまったく聞こえなくない。
アスランは目を閉じているのに段々と周りが白くなっていくのを感じた。
今、ここには自分独りしかいないようだ。

 

突如、その白い思想の中で映りだすビジョン。
爆発。爆発。また爆発。どこかで見たような光景、だがどこで?

 

(……そうだ!これは、俺の…)

 

アスランのC.Eでの戦いの記憶がそこに映し出されていた。
ザフトに入隊した時の自分。戦場を駆けていた時の自分。
そして、戦友の死ぬときの映像。
アスランにとっては本当に辛い記憶だったが、その映像からは
伝わるものがあった。

 

(…そうか、やっぱりお前だったのか…ジャスティス)
 
(これは俺がお前達と歩んできた道だったな…。
 戦って、戦って、答えを見出せないまま、やってきたんだったな)

 

(大丈夫だ…。俺は忘れてないよ。忘れる訳がない。
 心配してくれるのか?またこんな事になるかもしれないって?)

 

(…わからないな。なるかもしれない…。でも、もしかしたら、
 答えが見つかるかもしれないんだ!…やっと…)

 

(戦争からかけ離れたこの世界なら!)

 

(それに…俺はこの力を戦いのためじゃなくて、この人達のために
 使いたいんだ!俺を明るく迎え入れてくれた人達のために!)

 

(だから……力を貸してくれ!ジャスティス!)

 

アスランがそう願った瞬間、部屋はまばゆい赤色の光にあふれかえった。

 
 

さっきまでアスランはピクリとも、動かずにいた。
ギンガは失敗かと思い呼びかけようとしたら突然、デバイスが光り輝き、
視界を遮ったのだ。そして、目を開けるとそこには、
バリアジャケットに身を包んだアスランがいた。

 

「…うそ」
「だから言ったろ?あいつならできるって」

 

信じられないといった様子のギンガとは逆に、ゲンヤはとてもにやけている。
そして、一旦真面目な表情になり、アスランの姿をよく観察する。

 

全体の色を表すなら、彼が最初に着ていたスーツの色と同じ赤紫。
黒いボディースーツの上からその色のジャケットを着ている。
ジャケットの肩から胸にかけて、黄緑色のラインが入り、
腕には銀色の手甲、足にもグレーの脚甲を着けていた。
肝心のデバイスは、左腕に装着されている盾のようだ。

 
 

アスランは自分の姿を見て、驚くことはなかった。
ただ静かな目で、盾にはめ込まれている宝石を見つめていた。
そして、言わなければいけない言葉をだす。

 

「…ありがとう、ジャスティス」
『Not at all,my master』

 

入隊手続きも、デバイスの起動も成功したアスラン。
彼はこれから本格的に魔法を習うことになる。
この新たな力を一体、彼はどのように使っていくのだろうか。