EDGE_第4.5話

Last-modified: 2008-01-22 (火) 23:57:37

【108部隊 隊舎-隊長室】

 
 

「もう父さんったらこんなに飲んで…」

 

ぶつぶつと文句をいいながら散らばった空き缶の後片付けをしているのは、ギンガ。
彼女の父ゲンヤは仕事の後に一杯やるのが好きらしく、今夜も飲んでいたようだ。
毎度毎度、注意はしているのだが一向に止める気配はなく、
ギンガはもう呆れ果てている。

 

(まったく…それにアスランも、付き合わなくていいのに)

 

この間聞いた話、アスランの世界のプラントという国では成人年齢は20歳ではなく、
15歳でもう大人だという。
だから彼は18歳なので既に成人だということがわかった。
かなり驚いたギンガとは正反対にゲンヤは…

 

「そーかそーか。アスランはもう大人か。ならこっちの方も平気だな?」

 

と嬉しそうに手でおちょこを持つ動作する。

 

「ええ、まあ軍にいた時も、時々店で飲んでましたので…」
「そうか。なら俺に付き合え♪」
「……は?」

 

と無理やりアスランを酌相手にして飲み明かしていた。
彼自身は根っから酒に強く、控えめなのでそんなに酔うことはないらしい。

 

「…男の人って皆、ああなのかしら」

 

片付ける身にもなってくれと言いたげに作業を続けるが、
彼女はある物を発見する。

 

「あれ?これってまだ開いてない」

 

ギンガが見つけたのは未開封の酒缶。どうやら二人とも手をつけなかったようだ。
冷蔵庫にそれを戻そうとするがピタッとその手が止まり、さっき言われた事を思い出した。

 

回想

 

『もう、父さんもアスランもその辺にして寝てくださいよ!』
『ばっかやろ~まだ夜はこれからだ~~ひっく//』
『アスランも丁寧にお酒つがなくていいから!』
『いや…俺はまだ平気だからいい。君こそ疲れてるんじゃないか?』
『そうだぞ~~子供はもう寝ろ~~///』
『なっ!!!……もう知りません!!』

 

回想終了

 

ピクピクと眉を引きつらせるギンガ。
明らかに自分を子供扱いし、小馬鹿にしていたあの二人。
思い出したらイライラしてきた。
そんなに私は子供ぽっいか?そーなのか?
ゆらりと立ち、缶を握る手に力を込める。

 

「なら、証明して見せればいいのね」

 

カシュとプルトップを開け、ためらいなく缶を口元にもっていく。
それが後に、ある人物にとっては最悪の地獄になるとも知らず…。

 
 

数分後…

 

泥酔したゲンヤを部屋へと送り届け、隊長室に戻ろうとしているアスラン。
ゲンヤと一緒に飲み散らかした缶やゴミなどを片付けようと思ったからだ。

 

(それにしても…ゲンヤさんって相当な酒好きだな)

 

自分もいくらか飲んでいるのにあの人の量は結構なものだった。
年なんだから気をつけてほしい思いもある。
だが、それを言うと怒られそうなので言わないでおく。
『俺はまだまだ若い!』って返されそうだ。

 
 

部屋についたアスランだが一応は礼儀としてノックして入る。
そして片付けようと周りを見回すが…

 

「あれ?綺麗になってる…」

 

さっきまで散乱していたゴミが無く綺麗になっている。
誰かが片付けてくれたのだろうか。
なら自分は必要ないなと思い、部屋を出ようとした時。

 

「ア~スラ~ン、どっこいっくの~♪」

 

その変な声に振り返ると、ゲンヤが座っていた隊長用椅子が回りこちらに向く。
そこに座っていたのは…

 

「ギンガ?」

 

彼女が座っていた。
缶を片手に、そりゃあもう偉そうに足なんか組んで。
アスランを鋭いようだがあまったらしい目で見ていた。

 

「どうしたんだ?何をやってる、そんな所で」

 

疑問に思い尋ねるが…

 

「どうっしたも、こうっしたのもな~い!」

 

明らかに異常な声量で返ってきて、アスランは驚いて後ずさる。

 

「わたしがさぁ~せっかく二人の心配してあげたのにさぁ~
 なのにあなた達ときたら~わたしを子供扱いして除け者にするんだもん…」

 

子供がすねているような感じで机にのの字を書くギンガ。
アスランはさっきのことかと察する。

 

「ああ、すまなかった…つい」
「つい!?」

 

その言葉にがたっと椅子から立ち上がり、近寄ってくる。
迫ってくる彼女の威圧に戸惑うアスラン。

 

「ついってどぉいうこと~!」
「いや…その…」
「普段からわたしをそーいう目でみていたんだ!?」
「そんなことは…」

 

怒声を放ちながら一歩一歩近づいてくるギンガにアスランも下がる。
いつもの彼女らしくない行動にびびっている。
やがて背が壁に付き追い込まれた。

 

「じゃあなんなの!?」
「だから…それは……ん?」

 

襟首をつかまれ、狭まる体の距離にふと気づく何かの匂い。
目の前の彼女から匂ってきていて、その顔をよく見れば頬も赤く染まり呼吸も荒かった。
アスランは冷静にまた瞬時に解析した。
さっきの缶、綺麗になっている部屋、ギンガの性格。
そしてそれらが結びつく。

 

「ギンガ…酔ってるのか?」
「酔っちゃわるい!?」
(やっぱり……)

 

こういう場合には下手に逆らわないほうがいいことを知っているので、
とりあえずうまく対処する。

 

「ごめんギンガ、俺が悪かった」
「んあ?」
「君は子供じゃないよ、優秀な魔導士だ」
「へっ?あ…そ、そう//?」
「ああ」

 

意外と簡単にうまくいき、結構単純だと思うアスラン。
次はなんとか部屋に行かせ寝かせるようにする。

 

「さあ、明日も早いんだしそろそろ寝たほうが…」
「いや♪」
「…え?」
「まだ寝たくなーい♪」

 

さっきよりは機嫌は良くなったが今度は駄々をこね始めた。
前言撤回。やはり子供だ。

 

「頼むから寝てくれ…俺も明日やらないといけないことが…」
「んじゃ~あ、わたしの言うこと一つ聞いてくれたらいいよ~♪」
「いうこと?」
「うん!この間テレビでやってたからどうしてもやりたかったの♪」
「…それをやれば寝てくれるんだな?」
「OK!」

 

妙な提案を出したギンガだが、早くこの場を静めたいアスランは深く考えず了承してしまう。
それがどんなに恐ろしいことかも知らずに…。

 

「じゃー、立ってやるの面倒くさいからそこのソファーに座って~」
「わかった」

 

言われたとおりにソファーに座るアスラン。

 

「これでいいのか?」
「うん♪そのままじっとして目を瞑ってて」
「……瞑ったけど」

 

視界をふさいだのでなんとなく不安になってくる。一体何をするのだろうか。
そして数秒後…なにかゴソゴソと音がしたと思ったら急に後ろに重量を感じた。
さらに、腕と胴が何かに挟まれ苦しくなる。
何が起きたのだろうとすぐに目を開けるが、それはとんでもない光景だった。

 

「ちょ、ちょっと、ギンガ!?」
「どうだ~~♪」

 

なんとギンガはYシャツと下着一枚の姿になり、
後ろからアスランの腕に自分の腕を絡め、胴を足で挟んでいた。
いわゆる関節技だ。

 

「な、な、なんて格好でやってるんだ!」
「え~~だって動きにくいし。それよりどう?これ?実践でどうしても試したかったの」

 

テレビでやってたのは恐らく格闘技のたぐいだろう。
見よう見まねでやってみたらしいが、ばっちしかかっていた。

 

「うりゃ♪」
 ミシ
「ぐ…ちょ、ちょっと…」

 

絡まる手や足に段々と力が入るが、アスランはまだ耐えれる。

 

「あれ~?まだ平気なの?なら……せいっ!」
 ミシミシ
「がっ!!お…い…もう」
「ええ~い!まだか!それなら~~」

 

片方の手がアスランの首にかかり、締め上げる。
その際に体の密度が狭まり、背中に柔らかい感触があたった。

 

(あぐ……胸があたっ…て)
「おりゃ♪」
 グキミシゴキ
「ふぐぇ!!…いぎ…が……」

 

解けないほどの異常な力が体にかかり、
首もしまっているのでアスランは限界寸前だった。
柔らかい感触はもはやどうでもいい。
彼が今感じているのは正にデッド・オア・アライブ。
マジでやばいのだ。

 

「これで~どうだーー!!」
 コキャ…
「うっ!…………」

 

嫌な効果音の後、アスランは身動きせずに沈黙した。
とうとう堕ちたみたいだ。

 

「…あれ?アスラン、どったの?」
「………」
「おーい」
「………」
「う~ん…ま、いっか♪わたしもねよ~~」

 

反応がないアスランに飽きたのか、ギンガもそのまま眠りに堕ちる。

 
 

次の日…

 

「…う、ん……ふあ~~」

 

大きな欠伸をしてギンガは目を覚まし、周りを見渡す。

 

「へ?……そうか私あのまま寝ちゃったのか。
 いつのまに寝たんだろ?」

 

酔いは覚めたようだが昨日夜の記憶は綺麗さっぱりなくなっているようだ。
そして、部屋に帰ろうかと思い立ち上がろうとするが、下半身が異様に重いことに気づく。
なんだろうと思い下を見る。そこには…

 

「うぅ……」

 

何かにうなされながら自分の股間を枕にして寝ているいる男、
アスラン・ザラの姿があった。

 

「……」

 

それを見て固まるギンガ。そしてタイミングよく?目覚めるアスラン。

 

「ん……うん、あれ?…ギンガ」
「………い」

 

彼の一言が引き金となり、咄嗟に彼女は

 

「いやああああああああああああああ!!!」
 バキィィ!
「げはぁっ!!」

 

思いっきりぐうで殴り飛ばした。

 

その後、顔を腫れ上がらしたアスランは昨日の事をうまく説明して、
なんとか誤魔化せたようだ。
だが、周りからしばらくは白い目で見られることになったとさ。