EVAcrossOO_寝腐◆PRhLx3NK8g氏_EX_3話

Last-modified: 2014-03-30 (日) 00:35:04
 

   閑話窮題「暦のワタヌキで嘘を叫んだフール」

 

―四月一日リボンズ邸にて

 

「司令に副司令揃ってどういったご要件で?」
「わざわざ、御足労頂かずとも通信なりの手段があったと思いますけど」
「事は急を要しつつ、そちら側と話を詰めなければいけない事案が生じてしまってね」

 

 いかにもリゾート地と言わんばかりの晴れ晴れとした外の景色に
 だだっ広い部屋におかれた10人くらいがゆったり座れそうなソファー。
 そこに中性的な緑色の単発の少年とややうねッた紫色の髪のどちらともつかないメガネの人物が一人。
 ソレに対峙するは年老いた白髪の老人とサングラスをかけた中年の男。
 いかにも擦れ汚れた大人達と対比すると少年達は実に色素の薄く汚れき印象を与えていた。
 紫の髪をした人物はいかにも暇なんですねと言わんばかりに目を細めて
 其の大人たち二人を見つめていた。そんな視線を何処吹く風といった感じで
 司令碇ゲンドウと副司令冬月コウゾウは真剣な面持ちで勧められた席へと座る。
 そして、懐から一つの書類を取り出す。

 

「これを」
「要望書ですか? 拝見してよろしいですか?」
「ええ。見て頂ければ話が早い」

 

 一枚に及ぶ簡素な書類。ボールペンで殴り書きされた文字からそれが
 エヴァ四号機パイロットヒリング・ケアである事が解る。
 その内容で目を通した途端、紫髪でメガネの人物リジェネ・レジェッタは若干イラついた口調で
 ばしっと其の要望書を机に叩きつける。どれどれとソレを見る。
 以下にはこういった内容が書かれていた。

 

『マルドゥークがやってくれないからこっちで頼むんだけど
 そろそろ、胸位大きくしたいんだけど、なんとかなんない?
 いい加減他の子の発育の良さに対比されるのウザイからさー。なんとかしてよ』

 

 何度か頭をカリカリとかき、口の中で「あのバカは」と愚痴った言葉を飲み込んでいるリジェネ。
 いかにも不愉快と言うか呆れた表情のまま申し訳なさそうに陳謝を込めて発言する。

 

「この件ですか。コチラでも何度か言われていたのですが聞き入れないものでね。
 戦闘型において胸などあっても意味が――」
「今、この一件で本部が真っ二つに割れてしまってね」
「…………は?」

 

 その発言を遮る様に声をあげるのは白髪の老人NERV本部副司令の冬月コウゾウ。
 眉間にシワを寄せてこちらも頭痛の種であることをアピールするかの様に首を横に振る。
 リボンズだけは其の様子をすでに見知っていたかの様に冷め切った表情で見つめていた。
 そういうとリジェネの困惑した表情で視線を泳がせている中、サングラスの中年の男
 NERV本部司令碇ゲンドウは真剣な面持ちでなおかつ、口元を隠したまま語り始める。

 
 

「大事なのはスタイルだ。ヒロインたるにはボンキュッボン。
 たわわに実った果実。それでいて決してデブではない。
 もう、それを目撃した瞬間から顔なんて記憶に残らなくていい。
 野郎どものスケベな視線は右に揺れても左に揺れても縦でも斜めでも
 常にそこに釘付けになれ。それがヒロイン、ヒロインの持つべきボイン。
 ……もといスタイルというものだ。ロリ巨乳? だがそれが良い!
 と言う訳で四号機パイロットヒリング・ケアに対する処置案として
 大容量豊胸派が私含む男性職員の6割女性職員1割をを占める」
「……はぁ」

 

 ゲンドウの熱弁にそれを聞かされたリジェネは驚きの後、蔑視を丹念に織り込めた視線を注いでいる。
 何を言っているんだろうかこのまるでダメなおっさんは。むしろ、そんなくだらない事を言いに来たのか。
 多忙な職務を縫ってスケベ理論を? そんな疑念が頭をかけめぐっていた中
 いかにもまだまだ若いなと言わんばかりに冬月が言葉を発する。
 先程の無骨で無機質な感情の吐露とは違った落ち着きのある口調で言葉は紡がれていった。

 

「わしはそうは思わんのだよ。何でもかんでもでかければ良いという訳ではない。
 トータルバランスと言うものがある。彼女の細身の体に無理矢理大きいモノをつけると言うのは
 いかにもアンバランスで芸がない。業者の発想だ。美しさとは人格とスタイルが合致してこそなる。
 あの白肌の小さい背に無闇に胸という一点のみで評価するのは野蛮だな。
 小さいなりには小さいなりの価値というモノがあるのだよ。むしろ、あの天真爛漫な性格から
 其のささやかによるコンプレックスや恥らい、慎ましやかさが出るのはまた魅力でもある。
 と言う訳でわし含む残り男性3割及び女性職員4割の意見により微増量派で割れていてね。
 NERV初の派閥が出来てしまい、職務に大分影響が出ている」
「…………そうなのですか」

 

 理路整然として無駄の無い無駄な意見を連ねる冬月にリジェネは完全にあきれ返ってしまう。
 返す言葉もなく、視線を細め口元をひくつかせながらもこめかみを抑え、この現実から逃避を企てる。
 しかし、相手も立場が立場の人間だ。無碍に返すのは些か躊躇われる。
 視線をさまよわせる中、ふと先程から沈黙を貫いていたこの邸宅の主リボンズ・アルマークが視線に入る。

 

「ちなみに残りの職員は?」
「不潔です!と一蹴されたりだな。全く、わかっておらん」
「…………いや、むしろまともなのは女性職員半分と男性職員1割なのか?」
「いや、それは間違っているよ、二人とも」
「ほぅ」
「では意見を聞かせて貰おうかリボンズ・アルマーク」

 

 ようやく、言葉を発するリボンズに一抹の期待を寄せるリジェネ。
 後ろから、無言で「変な事いって、これ以上時間伸ばすな」という脳量子波をフルに発している中
 リボンズの口元は笑っていた。終わる。これで話が終わる。
 多分、きっと、いやそうでなければならないこの話題のほかにもっと重要な要件があるはずだ。
 大の大人二人がスケベ理論を語りに来ただけなどというのがあってはならない。
 しかも国を、人類を守るための組織の役職につく2名だ。そうであって欲しいと言う
 僅かな願望が胸中で膨らみつつあった。

 

「この時期にわざわざ胸の補強を言い出すと言うことはそれなりの心境の変化というのがあったと言う事さ。
 だが、ボクとしては敢えて苦境を与える意味でも男体化を勧めるべきだと提唱している。
 肉体のコンプレックスなど誰もが通る道だ。安易にいじり回して解決というのではつまらないと思わないかい?
 ココは敢えて男にしてしまうことで悩み苦闘しながらも其の壁を超えるロマンがあるとボクは思うよ。
 この案は以前から提唱しているのだがマルドゥークで理解を得られなくてね」
「リボンズ・アルマーク。まさか君が女性職員残り5割、男性職員1割を締めた男色派とは。
 考慮外と思って敢えて伏せていたというのに」
「……NERVにまともな奴は居ないのか。大丈夫か、この組織」
「わしとしても女装状態の維持はアリかと思ったのだが流石にそれでは一般受けが厳しいと思うのだよ」
「冬月、私の息子まで飽き足らず、まだそんな欲求を。……私は断固反対だ。
 男女は健全に付き合うべきであり、ボインとは母性の象徴。
 それは大きければ大きい程よい。その真理は揺ぐとは思えん」
「それだからオールドタイプなどと言われるのですよ、碇司令、冬月副司令。
 人類の半分は女性で回っている。禁断の花園、戦いに疲れたパイロットに微笑むまいえんじぇる。
 そんな可愛い娘が女の子の筈がない! 少女に母性を求めるなんて歪んだ大人は修正されるべきだ。
 同性故の甘酸っぱい関係に背徳感を感じつつも手を伸ばしてしまう性。世界はそうあるべきだね」

 

 ―糸色望したーーーーーーーーーーーーっ!

 

 リジェネの思考回路はオーバーヒート寸前に陥る。圧倒的絶望の前に膝をつきたい気分だった。
 そういえば、前に冗談交じりで言っていたのを思い出す。がこの男、あの頃から本気であったのだろう。
 これ以上複雑にしてどうする。この三つ巴は誰が得をするんだ? 何の利益を産む?
 いや、ナニを産みたいのかリボンズは。……って、くだらん!
 別に戦闘型イノベイターの一人に胸があろうとナニがついてようと、どう戦績に影響するんだ。
 理詰めでどう屁理屈をこねくり回してもその理論が導き出せない。
 やや、力強めにリボンズの肩を握り締めつつも問いかけるリジェネ。

 

「リボンズ。そっちの方が歪んでると思うんだが気の所為か?
 むしろ、君を修正したいんだが?  許されるならオヤジにもとか言えない位ボッコボコに」
「例の銀髪で鼻歌な彼が間に合わないからボクが主張するしかないんだよ!」
「これは徹底的に話しあう必要があるな」
「ふむ、致し方あるまい」
「受けて立つよ」
「……もう勝手にしてくれ」

 

 春の暖かさに浮かされた男たちの熱い議論は一昼夜にぶっ続けて行われていたという。

 

 次回予告
 突然の招待状。四号機パイロットヒリング・ケアの謎の招集から物語は始まる。
 ありえない高さのマンションに数々の警備システムが襲われる旅路。
 ステルス迷彩のメイド部隊との激戦につぐ激戦。
 刹那達はヒリングの部屋へと辿り付き芋煮会が行えるのだろうか?
 そして、チェス盤の様な床に鎮座する巨大な重機の影は一体。

 

閑話休題「四月馬鹿当日に書いただけあって文章が情け容赦無しね。左様でございますね、お嬢様」

 

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