Lnamaria-IF_赤髪のディアナ_第08話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 01:55:42

プラントの歌姫

デブリ帯に着くと、あたしたちはポッドでの船外活動を頼まれた。
時々出会う死体に驚いたりしながら、あたしたちは順調に物資を集めていった。
でも、どうしても水が足りない。

「あそこの水を!?」
「ユニウスセブンには、一億トン近い水が凍り付いているんだ。」
「…でも!…ナタルさんだって見たでしょ?あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で…それを…」
「キラってば!」
「水は、あれしか見つかっていないの。」
「誰も、大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった!ってよ…」
「あたしは喜んでるわよ」
「メイリンってば!まぁ、みんなはあそこに踏み込みたくはないだろけどさ。しょうがないじゃん。あたしたち
は生きてるんだし。死んだ人に遠慮して渇き死になんて莫迦らしいよ」
「そうだな。しょうがないよな」
「だな」

みんな、ユニウスセブンからの補給に納得した。そしてミリィの提案で慰霊のために折り紙で鶴を折ることにな
った。
あたしは折る気にならなくて、MSの整備を言い訳にコクピットに篭っていた。あたしが失くしてしまった物を持
っているミリィが羨ましかった。

「お姉ちゃん」
「あ、メイリン。どうしたの?」
「ん、差し入れ。紅茶とお菓子持ってきた。一緒に食べよ」
「ありがと」

特に作業もしてないあたしを見ても何も言わず、メイリンはあたしの横に座ると紅茶とお菓子を差し出してきた。
あたしたちはなにも会話しないまま、ゆっくりと紅茶を飲み、お菓子を食べた。
なにも会話しないけど、メイリンはあたしの思ってる事がわかってくれてる気がする。
メイリンがたまらなく愛おしかった。
メイリン、あなただけは何があっても、お姉ちゃんが守るからね……

……

再び、水の補給のために作業ポッドに乗り込むみんな。今回は、あたしがみんなの護衛だ。アスカさんはいざと
言う時のためにアークエンジェルに残ってる。今回も何も無いと良いけど。

順調に大きな氷塊をポッドに括り付け、アークエンジェルに帰艦しようとした時だった。

あれは、民間船?
まだ真新しいような、残骸になって間もないようなデブリが流れてきた。
!あれは!強行偵察型のジン!なんでこんなところに!
みんなが見つかりませんように……

その願いもむなしく、ジンは作業ポッドを見つけると発砲してきた!
守らなきゃ!守らなきゃ!落ち着いて!落ち着いて……
心を沈め、狙いを定め、ジンを狙撃――ジンは爆発した。MS越しとはいえ、人を殺す感覚はやっぱり嫌な物だっ
た。

オーブに亡命して、追っ手と撃ったり撃たれたりする生活とはさよならだと思ったのに、なぁ……

『ブー・ブー・ブー・ブー……』

ちょっと鬱に入ったあたしの耳に耳障りな音が入ってきた。

なに?これは、救難信号?
機体を動かしてあちこち見てみると、救難ポッドがあった。

「つくづくこの艦は、落し物拾いに縁があるようだな」

救命ポッドをアークエンジェルに持ち帰ると、ナタルさんがため息混じりで言う。
えへへ。でも、ヘリオポリスの時とは違ってあたしが持ち帰らなきゃ誰も見つけなかったかもしれない。しょう
がないよね。

「開けますぜ?」

マードックさんが用心深くハッチを開く。

「ハロ、ハロー!ハロ、ラクス、ハロー!」
「ありがとう。御苦労様です」
「はあぁ!?」

あたしたちは、飛び出してきた妙な物体と、この場に似つかわしくないごてごて装飾の付いた服装の女の子に絶
句した。

マリューさんたちがその子を尋問した。みんなで立ち聞きしていたら、見つかって追い払われてしまった。
でも、あの子がラクス・クライン――エイプリール・クライシスを引き起こしたシーゲル・クラインの娘であること。ユニウスセブンの慰霊に来ていたらしいことはわかった。

「……クラインか」

ぽむ。肩に手を置かれた。振り向くと、トールが心配そうにこっちを見ていた。

「あはは、大丈夫よ。もうあんなことしないって!」
「そうならいいけど。まぁ何か言いたくなったら聞き役ぐらいはできるから」
「ありがと」

あたしたちは、氷塊をアークエンジェルに運び込む作業に移った。
どんどん氷が運び込まれる!これで給水制限生活しなくてすむ!うふ♪

作業が終わって、食事時間になった時、ちょっとした問題?が起こった。誰がラクス・クラインに食事を持っていくかと言うことだった。
うーん、キラにはもう捕虜への食事持ってってもらってるし、あたしかメイリンになる。
ラクス・クラインはアイドルだそうだし、危険はそうないだろう。でも、あたしはメイリンが時々見せるエイプリール・クライシスへの鋭い恨みみたいな物を感じている。あたしも人の事いえないけどさ。

「……あたしが行くわ」

あたしがそう言った時だった。

「あらあら、みなさんここにいらしたんですのね」

当のラクス・クライン本人が、なぜかここに現れた。

「わぁー…驚かせてしまったのならすみません。私、喉が渇いて……それに笑わないで下さいね、大分お腹も空
いてしまいましたの。こちらは食堂ですか?なにか頂けると嬉しいのですけど…」
「っで、ってちょっと待って! 鍵とかってしてなかったわけ…?」
「やだ!なんでザフトの子が勝手に歩き回ってんの?」
「メイリン!落ち着いて!食事は、これから持って行こうとしてたところです。部屋の鍵はかかってなかったんですか?ラクス・クラインさん」
「あら?勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。出かけても良いですかー?って。そ
れも3度も。この子はお散歩が好きで…というか、鍵がかかってると、必ず開けて出てしまいますの」
「それを勝手と言うんです!いいですか!鍵は勝手に出歩かれたくないから掛けてあるんです!……どうせ食事持ってくところだったし、案内しますから、部屋に戻ってください。キラ、この機械保管しておいて」
「あらあら、その子はピンクちゃんって言いますのよ」
「アラ?テヤンデイ!アソボ、アソボー。ミトメタクナイ!ミトメタクナイ!」

……ラクス・クラインは、わきゃわきゃ言ってたけどようやく部屋に戻ってもらった。

「またここに居なくてはいけませんの?」
「ええ、そうですよ。はい、食事です。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます。おいしそうですわ。……でも詰まりませんわ。ずーっと一人で。私も向こうで皆さん
とお話しながら頂きたいのに……」
「もう、勝手に出歩かないでください。これは地球軍の船ですから。ここにはあなたの父親が引き起こしたエイ
プリールフール・クライシスで家族を失くしてプラントに恨みを持ってる者もいるんですから。刺激する様な事
は控えてください」
「……そうですか。悲しいことですわね」
「……」
「でも!貴方は優しいんですのね!ありがとう」
「?あたしが?はは」

このお嬢さんにはあたしも苦笑するしかなかった。

食事を終わらせて、廊下に出るとサイがいた。

「ルナ、お疲れ様」
「ありがと、サイ。ああいうの天然って言うのかな?ちょっと疲れちゃった。あはは」

部屋の中から歌声が小さく流れてきた。手持ち無沙汰で歌ってるのだろう。

「この歌あの子が歌ってるのか?綺麗な声だなー」
「……そうね。歌手やってるだけあるわ」
「でもやっぱ、それも遺伝子弄って、そうなったもんなのかな?」
「さぁ?それよりも、あたしには何考えてピンクの髪にしたのかが理解できないわ」
「たしかに。さ、行こうぜ!俺達も飯食わなきゃな」

食堂に戻ったあたしたちに朗報が待っていた。
第8艦隊先遣隊と連絡が取れたというのだ!ああー安心した。宇宙の中たった一艦で漂っているのは予想以上に
あたしの心を心細がらせてたみたいだ。
避難民の人たちも、ほっとしてるようだ。

みんな、ハイキングの前日みたいにうきうきしてた。
……でも、そんな気持ちを吹き飛ばす通信が入ってきた!

『総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!』

あたしは走りながらアスカさんに聞いた。

「先遣隊が襲われてるって!?」
「ああ!ナスカ級が一隻らしい」
「ナスカ級一隻?それ、ヘリオポリス襲った奴かな!?」
「わからん、でも、そうかも知れん!」
「ここまで来たんだもの、守らなきゃね!キラ!」
「うん!」

あたしたちがMSに乗り込んだ時、もっと詳しい状況が知らされた。

『相手はジン4機よ!いつも通り無理をせず、各艦の対空砲火と協力しなさい!』
「はい!」
「ルナマリア・ホーク、レッドフレーム行きます!」

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