終末の光
「いったい何が起こったの!?」
にわかに騒がしくなるブリッジ。
オルバーニ地球連合理事総長とも、プラントのアイリーン・カナーバとも連絡が取れない!第3艦隊とも連絡が取れない!
かなり時間がたって、ぼつぼつ入り始めた情報では、ヤキン・ドゥーエ方面から何かの攻撃を受けて、第3艦隊の半数以上が撃沈破されたと言う物だった。
プラントからは更に悪い情報が入ってきた。ザラ派が決起し、ヤキン・ドゥーエを占拠したと言うのだ。そしてそこにはジェネシスと言う巨大なガンマ線レーザー砲があると――
ザフト側と緊急に会談が持たれ、協力してヤキン・ドゥーエのザラ派を鎮圧する事が決定される。
第6~第8艦隊はボアズに留守部隊も残さずヤキン・ドゥーエに進撃する!
そこに、パトリック・ザラの演説が全宙域に向けて発信された。
『起ち上がれ、雄雄しき国土
起って、死闘を戦い抜かん
気高き怒りよ
怒涛の如く沸騰せよ
我らは人民の戦争に赴くもの
聖なるその戦に……』
プラントの国歌が流れる。
『プラント市民よ!軟弱なクライン派に騙されてはならぬ!新たなる未来、創世の光は我等と共にある。この光と共に今日という日を、我等新たなる人類のコーディネーターが、輝かしき歴史の始まりの日とするのだ! 思い知るがいいナチュラル共。この一撃が我等コーディネーターの創世の光と成らんことを!ジェネシス発射!』
ヤキン・ドゥーエからまた新たな光が発せられ――月面のプトレマイオス基地との通信が途絶えた。
ザラ派とザフト軍の艦隊が混じってわけわからない!
あたしたちとザフト軍は、ザラ派の艦隊は地球軍に任せてジェネシス破壊に向かう!
「これ以上あれを撃たせてはなりません!」
「ああ、艦長。矛先が地球に向いたら終わりだぞ!」
「ローエングリン、一番二番撃てー!」
……
「……なに?陽電子砲が効かないだと!?」
「こうなったらMSで内部を制圧するしかない!」
「じゃあ、ちょっと行ってくらぁ、艦長」
「……気をつけて。フラガ少佐」
「みんな。これを最後にしましょう」
「ああ」
「じゃあ、また後で!」
あたしたちはジェネシス破壊――最後の戦いに向かった。
……
六枚の羽を持ったMSを先頭としたMS隊が近づいてきた。
「おい!足つきのMS隊!こちらザフトのイザーク・ジュール。ジュール隊だ。お前らと組むのは複雑だが、頼む
ぞ!」
「足つき?……アークエンジェルの事か?了解!案内よろしく頼む!」
あたしたちがヤキン・ドゥーエに近づいていくと、鬼人のような勢いでMSを撃破している、赤いMSを中心とする一群のMS隊があった。
「ユニウスセブンでで無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか!貴様等は!何故気付かぬかッ!我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの執る道こそが唯一正しきものと!」
「待て、サトー。フリーダム、と言うことはイザークか」
「お前、アスラン・ザラか!?貴様こんなところでなにをしている!?」
イザークさんが呼びかける。
「イザーク。我らが大義が必ずしも正義でないと知った時、兵士はどうすべきか…それでも大義に従うか、新たな道を探すか。どちらも、良心を裏切らねばできないだろう。君たちは新たな道を選んだか。だが俺の選択を間違いと断じる権利もないだろう」
「アスランか!?」
キラも呼びかける。
「アスラン、君がやろうとしている事をわかっているのか!?ザラ議長は、レノアさんを亡くされて、壊れてしまったんだよ!彼女を奪った世界を道連れにしようとしている。それがわからない君じゃないだろう!」
「――俺がたった一人の肉親なんだ……!誰も傍にいない終わりは、寂しすぎる。できるものなら、お前たちが止めてみせろ!」
そう言うと赤いMSはこちらに向かって攻撃してきた!
「……このパワー!もしかして核動力か!?」
キャリーさんが言う。核動力?あたしたちと同じ?
「イザークさんたち!先へ行ってヤキンのコントロールを止めて!ここはあたしたちに任せて!」
「……わかった!やられるなよ?」
イザークさんたちは去って行った。
「その機体は知っている。お前らか。地球軍に味方するというコーディネイターは」
アスランさんが恨みを含んだ声で言う。
「行くぞ!」