Lnamaria-IF_LED GODDES_12

Last-modified: 2009-07-24 (金) 21:24:16

「ジン、全機喪失!」
「ラポート隊、残存二機。母艦を失ったため、イニシャル・ビスケットK機、アミバ機、乗艦の許可を求めております」
「任せる。アスランのイージスは?」
クルーゼは部下に確認する。さすがに、国防委員長の息子を死なせてしまっては、まずい。
「は、大破しておりますが帰還に成功しました」
「ふぅ。……アークエンジェル、か。奴らがオーブ艦と主張するなら。ラクス・クラインの返還を求めろ」
「はっ」
だが……アークエンジェルから返ってきた返事は、オーブのエイプリルフール・クライシスの被害、ヘリオポリス崩壊の被害その他の賠償要求、更に責任者の引渡しをザフトが飲むまでラクス・クラインの身柄は預かるという物だった。
「くそ、こうなったら評議会に図るしかないではないか!」
ザフト艦は攻撃されて被害を受けないうちに撤退していった。

 
 

「これはこれは……ありがたい! 助かった!」
ジョージ・アルスターは喜色満面で来援した戦艦イズモに通信を送る
『誤解しないでもらいたい』
オーブ、サハク家の長男、ロンドギナ・サハクは言った。
『我々はただ、オーブ艦アークエンジェルの捜索をしていただけだったのだよ。ふふふ』
「いや、それにしてもありがたい」
『では、我らアークエンジェル護衛のために同道させて頂こう』

 

私はイズモに着艦した。
「ギナ!!」
「ルナマリア!」
私を出迎えたのは190cm近い長身と怜悧な美貌、漆黒の長髪を持った男性だった。
私は背の高いギナにすくい上げられた。
「はっはっは、心配したぞ! このおてんば娘!」
「お前もな!」
私は床に降ろされた。
「アークエンジェルを接収してオーブ艦にしたのはよい案だった。ザフトは遠慮しなかったようだが」
「ふ。私はこれからも、地球軍がヘリオポリスで秘密裏に戦艦やモビルスーツを建造していたなどと認める気はないぞ」
「……それはいいが、地球連合の方はどうする? アストレイの事がばれたら関係が悪くなるぞ」
「はは……はは……お父様に任せよう。OSと交換なら地球連合もいい顔をすると思うぞ。なにしろ奴らのは使い物にならなかったからな」
「……まったく。まぁいい。私もアストレイを無駄にするのは嫌だったんだ」
「そう言えば! ゴールドフレームの腕、持ってきてやったぞ」
「ありがたい! で、お前これからどうする。イズモに来るか?」
「……アークエンジェルを地球軍艦とは認める気は無いと言ったろう。ここで、地球軍籍に戻してみろ。ザフトが、それ見た事かと指差すさ」
「はは。ザフトを徹底的に悪者にする気か。だが、地球連合としては、データが欲しいだろう」
「アラスカに着いたら、オーブ義勇艦隊とでも名前を変えるさ。何、艦長がオーブ人であれば、部下は地球軍人でもかまわないんだ」
「よし、データはこちらでも送っておこう、幸運を祈る」
「ああ、ギナもな」

 
 

私はアークエンジェルに帰還した。
大西洋連邦事務次官ジョージ・アルスター氏がアークエンジェルに乗り込んでいた。
「……と言うわけで、本艦があくまでもオーブ艦だと主張する事の利点、ご理解頂けましたか? 実際にはデータは渡しますし、代金も……戦力として加入も……」
カトーがアルスター氏を説得していた。
「わかった、わかった! それはいいとしよう、要するにあくまでザフトを不法なテロリストと位置づけるわけだな」
「そうです! 奴らを対等な交渉相手と見なすなど、ありえない!」
「わかった、しかし、こっちにも条件がある」
「なんでしょうか?」
「ラクス・クライン嬢の事だよ」
「ああ、彼女が何か?」
「身柄は、大西洋連合に引き渡してもらいたい。君らの言うように、プラント住民すべてをテロリスト扱いなど、現実的にはできるものではないのでな」
「まぁ……いいですが。で、よいですか、ルナマリア様」
そこで、カトーは私に声をかけた。
「ん……まぁ、いいでしょう。では、アークエンジェルからどの艦へ?」
「いや、君達は月基地へ行くのだろう? 一緒に乗せていってくれたまえ。せっかく防御力の高い艦に乗らない手はないからね」
そう言ってアルスター氏はウィンクした。

 

「え、お前、カズイ、イズモに移らないのか?」
「ああ」
「なんでさ?」
「……そりゃ俺だって先遣隊と合流した時、安心したよ。でも、何かとてもおかしい気がしたんだ」
「おかしい?」
「これでもう安心か? これでもう平和か? サイ? ……そんなこと全然ないだろう! オーブは中立を守っていてもニュートロン・ジャマーを打ち込まれ、ヘリオポリスは攻撃されるし……全然じゃないか! 僕はルナの気持ちがわかる。ルナは、ほんとはこんな所で戦ってるような人じゃないんだ! でも戦うなと言っても戦い続けるだろう。ならせめて、手伝いたいんだ。僕の力なんてちっぽけな物だけどさ」
「そうか……」

 

「ん、? キラ、お前、なにしてんだ?」
「ん? ミリィが忙しそうだからね、ほら、ザフトの娘の所に食事持って行こうかと」
「だめだ!」
「なんでさ?」
「とにかくだめだ!」
「なんでさ? ちょっと、ルナ、おかしいよ」
「いい、食事は私が持って行く」
「……いいから。しっかり説明してよ。もう納得しないよ」
「……実は……」

 

「なんだって? 僕の、知り合い? アスラン……まさか!?」
「まさかならいいよ」
「なんで、なんで黙ってたんだよ!?」
「お前にしゃべって、どうなる?」
「え……」
「相手はコーディネイターだ。キラの知り合いだからってこっちが手加減できる訳ではないぞ。それともなにか、キラが一言しゃべれば相手は攻撃を止めてくれるってのか?」
「そうじゃない、そうじゃないけど!」
「……お前が知らなければそれが一番良い。そう思ったんだ……」
「……」
「すまんな。ああ、この事は、他の人には言わない方がいい。お前の立場が悪くなるだけだ」
「……」
「じゃぁ、な……」
ルナマリアはキラの前から去っていった。
「……僕は……どうすれば……」

 

「食事です」
「あら、今回はミリィとは違いますのね」
「……ええ」
「わたくし、おしゃべりして食べたいのですの。付き合ってくださいます?」
「すみません。無口な質で」
「……悲しいですわ。名前ぐらい教えてくださいな」
「……ルナマリア・ホーク」
「では、ルナと呼んでも」
「断ります」
「えっ」
「私はザフトに妹を殺されました。あなたと仲よくする気になると思います?」
「ぇ……」
「……迫害されていた、と主張するわりには贅沢をしています事ね」
私はラクス・クラインとなれ合うつもりは一切無かった。彼女の言葉を撥ねつけるように、言う。
「え?」
「オーブはザフトとも中立なのでザフトとも交流がありますの」
「まぁ! それはすばらしいですわ!」
「……中立国にニュートロンジャマーを落としまくったのはどなたかしら」
「あ……」
「言ってあげましょうか、あなたの父、シーゲル・クラインです。オーブは、メイリン姫を始め多数の死傷者が出ています。オーブからの謝罪と賠償の要求には『遺憾である』と言うだけ。その上ヘリオポリスですわ」
「……」
「ああ、先月にオーブの雑誌を見たのですけど、見事なものでしたわ」
「ぇぇ?」
「海鮮ジョンゴル鍋が大人気だそうですわね。わたしくも写真で見させて頂きましたが。エノキ、春菊、しめじに海老、牡蠣、タラ、ハマグリ、ホタテとそろい踏み! 地球に住むものでもあんな料理を食べられる者は少ないでしょう。配給制も敷かれている訳ではなさそうですし……どこが抑圧されてるのでしょうね? ああ、63年のエネルギー危機。テロと言うことにされてますけど、裏でモビルスーツやら軍艦やら密造してたからエネルギーが足りなくなったんじゃありません事?」
「……」
「ほら、わたくしとおしゃべりしてもつまらないでしょう?」
「……ぅ……ぅ……」
ラクス・クラインの瞳から涙があふれ出した。
だけど私はただ、黙って彼女が食べ終えるまで黙っていた。

 
 

「フレイ……」
「ああ、サイ! どうしたの……?」
「……僕が、この艦に残るって言ったらどうする?」
「そんな! サイ、危険よ!」
「……だけど、ルナは、戦ってる。カズイの奴も……」
「ルナは……メイリンさんが殺されたから……」
ぽつりとフレイは言った。
「え……?」
サイは、頭の中で何かが繋がった気がした。
「ルナって、ルナマリア・ホーク・アスハ姫か!?」
「そ、そうよ。何よ今更。知らなかったの?」
「そうか……」

 

「ええ!?」
「ルナが、お姫様……」
トールとミリアリアは驚いた。
「なんだ? お前ら?」
そこにカズイが通りがかった。
「おい、カズイ、ルナって、ルナマリア姫って……!」
「……知ってたよ」
「じゃあ、なんで教えなかったのよ!?」
「おおっぴらになるとまずいんだよ。王族がザフトと戦ってるってさ、国はまだ中立を保ってるからな。お前らも秘密だぞ」
「あ、ああ……」

 
 

「わぁ!」
第8艦隊本隊と合流した時は、星の海かと思った。
サイ達はイズモへと移動する。
「じゃあな。色々助かった」
「ルナも。無事を祈るよ」
「ありがとう」
「ルナマリアさん。お世話になりました」
フレイが言う。
「こちらこそ。避難民がざわついた時静めて下さったそうね。ありがとう」
「そんな……私は私に出来る事をやろうって……」
「あなたのそう言う所、伸ばすといいわ」
「ありがとう」
「自分に出来る事、か……」
サイは思った。イズモから技術者もアークエンジェルに補充された。ここで自分に出来る事はないだろう。それより、政府高官の息子と言う立場を生かして、何か出来ないものか――そう思った。
「じゃあ、キラ。世話になったな」
「……ん……」
「戦争だ。アスランがどうなっても恨むなよ」
「いいんだ。小さい頃の事で。向うも戦争なんかする奴じゃないと思ってたのに人は変わっていく……。ルナは元気で」
「ああ」
「ルナ」
「ミリィ」
「ラクスさんと一杯話したわ。ナチュラルとコーディネイターって仲良く出来ないものかしらね」
「それは違うぞ、ミリィ」
「え?」
「地球にも、オーブにもコーディネイターは一杯いるんだ。私は彼らを恨んだ事は無い。恨むべきはザフトだ」
「え、ええ。でも、ラクスさんも、普通の女の子で……」
「言うな。それ以上。彼女は地球軍に引き渡す事に決まった。まぁ、手荒な扱いは受けないだろうさ」
「そうね……じゃあ、元気でね、ルナ」
「トール。色々助かった。ありがとう」
「そんなぁ。俺なんてアストレイいじってたぐらいさ」
トールは笑った。
「無事でな、ルナ」
「うん、ありがとう」
「おーい、お前ら」
あ、パルさんだ。
「旗艦のメネラオスからハルバートン准将がやってくるんだってさ。お前らも行って並べ!」

 
 
 

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