R-18_Abe-Seed_安部高和_13

Last-modified: 2007-12-27 (木) 10:27:49

『そりゃぁぁぁぁぁ!必殺!!』
『落ちやがれってんだよ!!』
フォビドゥンを失った二機は、再び砲撃をインモラルに浴びせた。
レイダーのツォーンと、カラミティの一斉砲撃。
しかしフォビドゥンが欠けた今、その攻撃は精彩を欠いていた。ゲシュマイディッヒ・パンツァー
によるビーム偏向が無いので、両機の砲撃は単なる精度の高い砲撃に成り下がっていた。
もちろん並の兵士ならば瞬・殺!ものなのだが、相手が阿部となると――
「なんだいなんだい。そんな単調な攻撃じゃあ俺はイかせられないぜ?」
小学生の銀玉鉄砲にも劣る、至極劣悪な射撃も同然だった。
『くそっ!あいつはバケモノか!?』
オルガがそう毒づく。亜光速のビームを見てから避けるインモラルの動きは化け物じみていて、
実際阿部はもはや人のスペックを遥かに超えているから困る。
これも良い男の為せる業、である。
「んじゃあ、そろそろオシオキさせてもらうよっ!」
阿部はインモラルを、まずレイダーに疾らせた。
『こっち来んなよ!滅殺!!』
機関砲を乱射するレイダー。インモラルはもはやそれを避けようともせず、機関砲の雨の中を
一直線にレイダーへと向かう。
『クロト!!てめぇ、調子に乗ってんじゃねぇ!!』
インモラルの背中を追いかけるカラミティ。しかし皆知ってのとおりカラミティのブーストはそれはもう
悲惨なものであり、コストが2000くらいありそうなインモラルには到底追いつけない。
あっという間に、インモラルはレイダーに組み付いた。
「捕まえた♪ンフフフフフフフフ」
『は、離しやがれ!!』
間もなくクロトの貞操が散・華!しようとした時、カラミティは両機に向かって集束砲撃をかけた。
『オルガてめぇ!俺ごとやる気か!?』
『クロト・・・・・・女房(ギャルゲー)思いの良い奴だった・・・』
迫り来る砲撃。しかし阿部はレイダーの体を引きつつ冷静にそれを回避し、
「っそぉぉぉぉぉい!!」
レイダーを、カラミティに向かって投げ放った。
『おひょおぉぉぉぉぉぉ!?』
『げ!?こっち来んな!!』
カラミティの機動力ではそれはかわせず、レイダーは背中からカラミティにぶち当たった。
そしてレイダーを投げたインモラルは、投げたレイダーよりも速いスピードでカラミティの背後――
既に折り重なったレイダーとカラミティの背後に回っていた。
「名付けて・・・・・・兄弟丼!!」
重なったレイダーとカラミティの股関節部分にゲイ・ボルグ射出口を押し付け、
「フンッッ!!」
阿部は、両機を同時に貫いた。
『『ア ッ ー !』』
悪の三兵器こと三馬鹿ガンダムは、ここに貞操の華を散らした。

 

「ええい、まだ落とせないのか!?」
ドミニオンのブリッジでは、冷静さを欠いたムルタが激昂していた。
「ピースメーカー隊はどうした!?とっとと核を撃ちこめよ!!」
「理事!もう核は弾切れです!!」
「な、なんだとぉ!!!?」
無策に無鉄砲にバカスカ撃ち続けたため、もう連合軍の核ミサイルは全て失われていた。
「だったらMS隊突撃!!フォビドゥン、レイダー、カラミティはどうした!!?」
「応答がありません。おそらく落とされたかと・・・」
「なんだと!?・・・なら全速前進!!艦をぶつけるぞ!!!」
「理事!それはいくらなんでも無謀過ぎます!!クルーを殺すおつもりですか!?」
「うるさいんだよアンタはいちいち!!あのバケモノどもをのさばらせておいちゃいけないんだよ!!」
そう叫んで、銃をナタルに突きつけるムルタ。ブリッジのクルーは皆息を飲んだ。
「バジルールさん!!」
そう口にしたのは、ドミニオンに乗っていた通信士、フレイ・アルスター。実は最初から乗っていたのだが、
ムルタ以下四名のアクが強かったため今まで背景と化していた。この御時世、DQNと悪臭だけではキャラは
立たないのだ。せめてツンデレ属性でもあればなぁ・・・
「て、敵MS接近!」
クルーがそう告げると同時に、ブリッジの目の前に肉色のMS――インモラルが迫っていた。
「ほ、ほら何してんだ艦長!ぼさっとしてないでさっさとあの忌々しいMSを撃ち落すんだよ!!」
「・・・・・・無理です」
ナタルは知っていた。あのMSには、いくら砲撃を浴びせても無駄だという事を。
「無理じゃない、やるんだよ!無理だからやりませんだなんて、そんな話が通るわけないだろ!!」
「理事!勝敗は決しました!我々の負けです!!」
「ふざけるんじゃないよ!!僕は・・・僕は勝つんだ・・・!!」
そう呟くとムルタは勝手にコンソールを操作し、砲身をインモラルに向けた。
そして発射――
インモラルの無防備な体に、ドミニオンの砲撃が浴びせられた。
「は・・・はは、ははははは!!見ろ!やれたじゃないか!!」
「・・・・・・」
勝利に浮かれ酔いしれるムルタ。しかし、その酔いもすぐに冷める事となった。
『満足したかい?』
無情に響く、インモラルからの声。
「――!?な、なんで死んでないんだよ!!?」
『・・・・・・良い男、だからさ』
股間を艦に押し付け、ゲイ・ボルグ展開。
ドミニオンは、インモラルに貫かれた――

 

「・・・・・・!?こ、これは・・・」
うっすらと目を開けるナタル。ブリッジには、恍惚の表情を浮かべて気絶するクルーの姿があった。
「私は・・・・・・助かったのか?」
しかしナタルを始めとする女性クルーは、別段なんともなってなかった。
八艦隊戦での反省を活かし、阿部は男性のみを貫く業を会得していたのだ。
「く、くく・・・・・・」
気絶する男性クルーの中、ムルタは一人起き上がった。彼の執念がそうさせたのだろう。
「こ、この・・・・・・バケモノ、が・・・!」
インモラルに毒づくムルタ。
『化け物じゃない、良い男だ』
「この感じ・・・・・・思い出したぞ。おまえ、あの時のゲイだな・・・!?」
『それはどの時だい?あらゆる時で男を掘っていたからイマイチ思い出せないな』
「くっ、忌々しい・・・!バケモノ、コーディネーターが・・・!」
『コーディネーター?おいおい、俺は生粋のナチュラルだぜ?』
「・・・!?な、なんだと・・・!?」
トラウマとなったあの出来事。その最たる要因となったあの男が、ナチュラルだった・・・
『なるほど・・・。あんたをそうさせた男を、あんたはコーディネーターと勘違いしてたって寸法かい?』
「・・・・・・」
『強者を化け物呼ばわりして滅ぼそうとした・・・・・・ま、理屈は分からないでもないけどね』
インモラルは背を向け、ドミニオンから飛び立つ前にこう言い残した。

 

『――自分の弱さを人のせいにしてちゃ、良い男にはなれないぜ?』