5.5、GSC様ごめんなさい。
シンがジェス・リブルの事を覚えていたのは単なる偶然に過ぎない。
まぁ、MSの取材にMSで来て事故にあったあげく派手な脱出劇を演じてみせれば、忘れようと思っても忘れれない。
その後ザフトを辞め各地を彷徨っていた時に再会して何度か騒ぎに巻き込まれたのだが、それはまた別の話しだ。
翌日、シンの姿はある喫茶店の片隅にあった。元々ジェスとの縁で取材を受ける気ではあったが、昨夜の電話で聞き捨てならない台詞があったからだ。
「議長の遺産か……」
少なくとも、シンはそんな物があったという話は聞いたことは無い。
「まさか、MSとか……」
冗談で口走りながら、もしMSだったらとシンは考えてみる。
「きゃああ!」
黒と白、それに赤で塗り分けられた巨大MSの中で、風変わりな専用パイロットスーツに身をくるんだ金色の髪の発育の遅い胸の薄い少女は悲鳴を上げた。いかに防御の固い巨大MSでも数機の量産型フリーダムの前にバリアも限界を迎えようとしていた。
元々彼女はMSパイロットとして訓練を受けていたわけではない。持ち前の度胸と機体性能でなんとかここまでやってきたが、こうなってしまうと手も足も出ない。
訓練された兵士ではない、そのメッキが此処ではげてきたのだ。
金色の髪の貧乳少女は、半分涙目で機体の腕を振るう。並みのMSならば一撃で粉砕できる豪腕も、当たらなければ扇風機にしかならない。量産型フリーダムはひらりとかわすと、腕に向かってビームライフルを叩き込む。
ビームは腕に備え付けられていたブースターを直撃し、爆散させる。これでまた一つ、巨大MSは武装を失った。
どれくらい、こんな戦いが続いただろう。彼らに嬲るような意思は無いのだが、巨大MSの強すぎる防御力が嬲るようにじわじわと削る攻め方しか許さないのだ。
武装が、装甲が、出力が削られるたびに金髪の洗濯板少女の精神もまた削られる。
奥底で眠っていた恐怖心が、徐々に姿を現していく。
そして、一機の量産型フリーダムが巨大MSの目前でフルバースト形態をとったとき、彼女の精神は限界を向かえた。
「シンッッッッ!!!」
恥も外聞も無く、涙を流しながら心の奥底に秘めていたヒトの名前を叫ぶ。
だが、現実は惨酷だ。量産型フリーダムは彼女の悲鳴に構う事無くフルバーストを行う。
その圧倒的な熱量と衝撃が巨大MSを襲う──前に、左右に分かれ消滅する。
「えっ?」
その突然の出来事に、金髪の胸より肩甲骨の方が出っ張っていそうな少女は呆然と呟く。
そこに、そのMSは突然出現していた。
否、信じられないほどの高速でこの戦場に現れ、彼女の盾となって見せたのだ。
オニギリ型の頭部が陽光を跳ね返しキラリと輝く。たった今ビームの奔流を切り裂いた股間のアロンダイトが雄々しく唸りを上げる。最高速で来たのであろう、尻からは光の粒子が今だに噴出していた。
誰もがその勇姿に言葉を失う中、そのMSから巨大MSへと通信がはいる。
「大丈夫かっ!?」
「シン!」
金髪のぺちゃぱい少女は頬を赤く染めながら、そのMSのパイロットの名前を呼んでいた。
「まさか……」
ふと、シンは自分の脳裏に突然浮びあがった想像……ってか、妄想を首を横に振って追い出す。
あまりにも馬鹿馬鹿しい。
そう思うと、シンは目の前のコーヒーに口をつける。何故だかそのコーヒーは、えらく泥のように不味かった。
>:19 ◆rz6mtVgNCI 投稿日: 2008/06/17(火) 16:02:02 すいません、すいません、すいません、>>150のレスにインスピレーションを刺激されて、思わず書いてしまいました。 もう二度としませんので、GSC様、許してください( ≧∀≦)ノ