SEED-IF_30years_20

Last-modified: 2009-10-08 (木) 23:18:49

アスランはプラント最年少で外務委員になったイザーク・ジュールとともに地球連合との最後の交渉に今向かわんとしていた
外相のイザークがわざわざ出てきて連合の奴らと交渉するなんて余程プラントの情勢が逼迫してるか、戦争の準備が整わないので最後の悪足掻きと云った処だろうか……
会議に行ったは良いものの、彼の役回りはただその場にいて質問に時折答えるのみだった……
ザフトに戻った真意を繰り返し聞いて来たのが印象的だった元帥の軍服を着た老人と筋骨逞しい壮年の金髪の男。
連合の使者だという……その時はさっぱり判らなかったが後で壮年の男は大西洋連邦の国務長官で、名前はマイケル・ウイルソン
年寄りは聞きなれぬ名前で、後で判ったのだが若い頃、サザーランド中将の副官だったという
小一時間ほど経ったところ、アスランとその壮年の男は《重要な話》という理由で部屋の外に追い出された
やることが無いので雑談に応じることにした
「この戦いを一番望んでいないのは貴方方でしょうが、オーブのキラ・ヤマトもそれ以上に望んでいません」
「それは、君の口を通してキラがそう言いたいと受け取っていいのか?」
「それは貴方の自由です。しかしキラはそういう回りくどいやり方を嫌う人間です。これは外相としてではなく個人的な友人としての意見です」
思わず相手の顔をまじまじと見つめてしまった。表情は真剣そのものだ
「友人?アイツとどうゆう関係なんだ」
「士官学校の同期です。貴方ほどではないにしても多少は彼の性格は知ってるつもりですが……」
「あんたか、キラに変な事を吹き込んだのは」
「変なことと云っても、何の話ですかな」
「まあいい。話を変えよう」
「キラが士官学校に入ったのは自分の意志です」
寒い中、紫禁城の近くを歩きながら《マイク》は興味深い話をしてくれた

 

キラが士官学校に入ったのは昔愛した女が連合の高官の娘で、目の前で親子共々見殺しにしてしまったからだと

 

僕はね、今でも……」
今でも?」
今でもあの時の無力さが悔しいんだ。それで一時期は我武者羅に力を追い求めてもした。逆に為るべく殺さない様にという変な真似をした
でも方法じゃないような気がしたんだ。技術でもないような気がして
だから士官学校に入ったのかい
なんていうか、その、うまく言えないんだけれども。僕の戦い方には真剣さというか、心というか、
……軍人としての態度みたいなのが無かったような気がするんだ

 

キラはそんなことを言っていたが私には助け船を出す勇気がなかった
彼は今でも奥さん以上にその娘さんの事を愛してるのかもしれない

 
 

彼に聞いたと断りながらマイクは続けた
「だから彼は自分の様な悲劇を若者達に遭わせたくないが為に、連合の軍隊で訓練を受けてプラントとの戦争を必死で避けようとしてるのが現実です」
「ならば中立を堅持し続ければいいではないか」
「あの中立も変な中立で戦争が始まって随分経ってから勝手に言い出しただけの話です。そのせいでオーブが散々な目に遭ったのを彼は後悔してるのでしょうな」
「連合がマスドライバーを強盗しなければな」
マイクは一瞬怪訝な顔をしたが、暫くすると大爆笑し始めた
「何が可笑しい!」
「我が国での一般市民の認識としては依然として戦争を始めたのはザフトです。
しかも開戦の2年前にその下地になる状況を作っておきながら放置し続けたのもザフトという考え方が圧倒的です。
8割以上の国民が今現在の状況として、たしかに連合国(国際連合)の首脳陣を殺して核キャンセラー(NJ)をばら撒いて戦争をおっ始めたのはシーゲル・クラインではあるが、
クラインを粛清してもなおも戦争を止めずにジェネシスで地球を消そうとしていたのはパトリック・ザラではあり、
現実派というのがこの程度の見識しかもって居なかったとはトンだお笑い草、だという考えの下にあるということです」
「!」
アスランの中にこの男に対する憎悪の念が湧いてきた
今、戦争を避けたいと言いながらそのすぐ後にザフトを意図も簡単に貶める。しかも誇張された情報で
この場で腰の拳銃で頭を打つのは簡単だが状況が悪い……あとでいたぶってやるか、いや暗殺させようか
「まあ世間一般のナチュラルはそういう考え方をするということを少々粗雑な方法で説明したつもりですが。失礼でしたな」
「今の事は忘れましょう。両方にとって無理解は無益です」
「そうしましょう」
喰えない男だ
「それと、今度はキラの共通の友人としてぜひ役職抜きでお会いしたいものですな」
「私もそう思いますよ」
「あと、貴方方の事はわが軍では問題があるので、出入りのジャンク屋に送らせることにしました」
「ザラ軍団長、ジャンク屋ではまずいでしょう。わが方の一部隊である日本軍と韓国軍はコルシカ条約はおろか、ユニウス条約に未加盟です
私の方から東アジア人民解放軍(共和国軍)に護衛を打診しておきましょう。そうすれば貴方方に失礼にはなりますまい」
「……判りました」


 

帰り道、屋台の茶屋で話を始めた
「なあアスラン、あのマイク・ウイリソンとかいう奴、どうだった」
熱い紅茶を両手に持ちながらイザークがこっちに向かってくる
「どうした。お前らしくないぞ。ずいぶん弱気だな」
紅茶を取ると一気にすする
「あのサザーランドの副官だ、手強い。正々堂々と正面からやったらこれは戦争に勝てんし、馬鹿見るだけで……」
アスランは思わず紅茶を噴き出してしまった
「どうした!」
「おい、なんだ。このお茶にはオレンジの切り身が入ってるのか!しかもママレード、ジャムだぞ。酷くて飲めん」
イザークはまるで豆鉄砲を食らった鳩の様な顔をしている
「何だと!母上様から教わった入れ方だ。文句あるか!ロシアンティーだ」
「……、馬鹿話はそれくらいにしておいて、なにかあるのか」
「安心しろ、《保険》は用意してある。大西洋連邦さえ居なくなれば、あとは老いぼれガルシアやシュバリエのクソ爺など怖くはない
あとは好きにやってくれていい」
覚悟したかの様にお茶を飲み干すと
「で、決着はついたのか、キラ・ヤマトのことは」
ニコル、父上、ハイネ、ミーアー、メイリン……》
愛し、愛された者の名前が走馬灯のように駆け抜ける……
「……アイツは俺の……総てを……、いやなんでもない」
シン、早く俺のところへ来い。アイツを倒すにはお前が必要だ
「ハッキリしろ」
「最善の策を取る。安心しろ」

 

キラ・ヤマトを説得してザフト陣営に迎え入れる……
アスラン・ザラの一貫した《最善策》であった

 

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