SEED-IF_4-5氏_12

Last-modified: 2008-05-29 (木) 17:51:07

『我等のこの想い、今度こそナチュラル共にぃ!』
「くっ!」
たった一機残ったテロリストのジン。それが、道連れにと思ったのかアスランのザクの足を掴む。
「アスランさん!」
一瞬の意識の喪失から回復したルナマリアが、掴まれているザクの足を切り、二機を斬り離し、テロリストの機体を蹴飛ばす。
『うわぁ!』
テロリストの機体はユニウスセブンに落下していった。
ルナマリアはアスランのザクを抱え込むと、ミネルバを目指す!

 
 

「モビルスーツ全機、帰艦しました」
「そうか。よーし」
「大丈夫ですかね? あの笑いは……宇宙病かなんかでは……」
「心配ないよ」
ネオはリーに言った。
「パイロットに特有の、癖みたいなものさ」

 
 

「さあ、みんないらっしゃい。わたくしに付いてきて下さいね」
オーブ、アカツキ島にある孤児院で、ラクスは子供達に言った。
「なぁに?」
「どこ行くの?」
「あーわかった! おつかい? また遊びたいよぉ」
「キラ?」
いつもキラがいるテラスを見たが、いない。辺りを見回してみると、砂浜にキラは佇んでいた。
「キラ。中へ行きましょう。」
「……」
「キラ?」
「流れ星が、きれいだ。大きいのが、ぱぁーって」
「そうね。でも、今は中へ行きましょう」
ラクスはキラの手を取る。キラはおとなしく付いて行った。

 
 

「間もなくフェイズ3」
「砲を撃つにも限界です! 艦長!」
アーサーが叫ぶ!
「しかし、セイバーとザクの位置が! 特定出来ねば巻き込み兼ねません!」
「待って、待ってください。今、ザクとセイバー、上部右デッキに着艦!」
「アスラン……!」
カガリは嬉しそうに叫んだ。
「タンホイザー起動!」
その報告を聞いて、タリアは命令する。
「照準、右舷前方構造体!」
「タンホイザー照準。右舷前方構造体」
「てぇッ!! 再チャージ急げ!」

 

ミネルバのタンホイザー――陽電子砲により、細かい破片が、散る。
だが、アスランの危惧した通り、表面での爆発ではさほど破壊できたようには見えない
表面が抉れた、その箇所に向かってミネルバはもう一度タンホイザーを発射する。
「てぇ!」
深く抉られた箇所が耐えられなくなったのか、巨大というしかない岩塊はいくつかの岩塊に割れる。
歓声が上がる。
「フェイズ3、突入しました!」
「ううぅぅ……」
モニターが消える。
ミネルバ乗員は大気圏突入のじりじりした時間を、耐える。

 
 

『繰り返しお伝えします。ユニウス7の破砕は成功しましたが、その破片の落下による被害の脅威は未だ残っています……』
『破片の落下地点は残念ながら未だ特定できません。今すぐ政府指定のシェルターに避難して下さい』
テレビは相変わらず緊急放送を続けていた。
『現在赤道を中止とした地域が最も危険と予測されています。沿岸部にお住まいの方は海から出来る限り離れ高台へ避難して下さい』

 
 

アカツキ島のマルキオの孤児院の皆も、孤児院に併設されている「星の知慧派」の教会地下のシェルターに避難していた。
「何が来るの? ねえ何が来るの?」
「ずっとここにいなきゃいけないのかよぉ?」
「大丈夫ですわ。いいえ、少しの間です。直ぐに行ってしまいますからね」
ラクスは皆を安心させるように言う。
キラは、どこか茫洋とした目で座っていた。――が、ふいに立ち上がる。
「フレイは!? フレイがいない!」
「大丈夫ですわ。フレイさんは別のシェルターに避難してますわ」
ラクスが優しくキラを抱きとめる。
「さあ、座ってくださいな」
キラはおとなしく、座った。
――!
衝撃が来た。
「「うっ……」」
「なにぃ?」
「うぅ……」
「大丈夫ですわ」
怖がる子供達をラクスが宥める。
「うぅ……」
「大丈夫ですから」
「ううぅぅ……
「こんーなにーつめーたいー、とばーりのー……♪」
ラクスが小さな声で歌を歌い始めた。
子供達は、泣き止み、歌うラクスを見つめる。

 
 

「ああ、これはまるで……」
「すごい、ね」
ミューディーはガーティー・ルーの窓から見える地上の風景に心を捕らわれているようだった。
赤熱する破片が長い尾を引いて、またそれが分裂して、地上に降り注ぐ。
それは花火にも似て。だが、その下では何万もの人々が……何億だろうか? 死んでいるのだった。

 
 

ジブリールは、地下のシェルター、モニターの並んだ部屋で、猫のフェリックスを撫でている。
全てのモニターが、緊急放送を、ユニウス7の落下の状況を、伝えている。
突然、ひとつのモニターが、砂嵐になる。その数は、増えていく。
「お兄様、あれは……」
セトナはジブリールに尋ねる。
「ん……。カメラか、放送施設が被害を受けたのだろう」
「悲しいですわ。悲しい……」
セトナは猫のブータニアスをぎゅっと抱きしめた。

 
 

「艦長! 空力制御が可能になりました」
「主翼展開! 操艦慌てるな」
「主翼展開します。大気圏内推力へ」
「ふぅ、これで一安心ね。セイバーとザクを収容して頂戴」
「はっ」

 

「ルナマリア、助かった。ありがとう」
「いえ、どういたしまして!」
格納庫に収容された、ルナマリアとアスランは、どちらからともなく、微笑んだ。
「アスラ~ン!」
その時、カガリが走ってきた。
「あ!」
押しのけられたルナマリアは、ちょっと顔をしかめる。
――!
ドーン! と言う衝撃音が響いた。
「ん?」
「なに? まだ何か!?」
「地球を一周してきた最初の落下の衝撃波だ。おそらくな」
レイは、冷静に解説した。

 
 

「迎え角良好。フラットダウン。推定海面風速入力。着水チェックリスト1番から24番までグリーン。グランドエフェクトがシミュレーション値を超えています」
「カバーして。警報。総員着水の衝撃に備えよ」
大気圏突入に成功したミネルバは、太平洋に着水する。
着水の衝撃がミネルバを揺さぶる。
「「うぅッ!」」
「着水完了。警報を解除。現在全区画浸水は認められないが今後も警戒を要する。ダメージコントロール要員は下部区画へ」
「ふぅ」
シンは、安堵の溜息をついた。

 

「けど地球か」
ヨウランは、感慨深げに言う。
手すきの者は、物珍しげにデッキに出て海を眺めている。
「太平洋って海に降りたんだろ? 俺達。うっはは、でけー」
ヨウランと同じくメカニックのヴィーノ・デュプレがはしゃいだ声を出す。
「そんな呑気なこと言ってられる場合かよ。どうしてそうなんだ、お前は」
ヨウランが突っ込む。
「でも、すごいな。これが全部海なんて……」
シンはつぶやく。
「だよなー!」

 

カガリとアスランもデッキに出ていた。ユウナは船酔いとかで部屋に篭っている。
久しぶりに二人だ。
「大丈夫か? アスラン」
「ああ、大丈夫だ」
「けどほんと驚いた。心配したぞ。モビルスーツで出るなんて聞いてなかったから」
「すまなかった、勝手に」
「いや、そんなことはいいんだ。お前の腕は知ってるし。私はむしろ、お前が出てくれて良かったと思ってる」
アスランは首を傾げる。
「ほんとにとんでもないことになったが、ミネルバやイザーク達のおかげで被害の規模は格段に小さくなった」
ルナマリアが二人の会話に気づいて、見つめる。
「そのことは地球の人達も……」
「――やめなさいよ! この馬鹿!」
我慢できなくなったように、ルナマリアが叫ぶ。
「あんただってブリッジに居たんでしょ!? だったらこれがどういうことだったかわかってるはずでしょ!?」
「ぇぇ……」
「ルナマリア」
アスランがルナマリアをたしなめるが、ルナマリアはカガリを糾弾するのをやめない。
「ユニウス7の落下は自然現象じゃなかった。犯人が居るのよ! 落としたのはコーディネーターよ!」
「ぁぁ……」
「あそこで家族を殺されてそのことをまだ恨んでる連中が、ナチュラルなんか滅びろって落としたのよ!?」
「ぁぁ……。わ、わかってるそれは……でも!」
「でもなによ!」
「お前達はそれを必死に止めようとしてくれたじゃないか!」
「当たり前よ!」
「ええ?」
「だが……それでも破片は落ちた」
苦しげな声でアスランは言う。
「俺達は……止めきれなかった……」
「アスラン……」
「一部の者達のやったことだと言っても、俺達、コーディネーターのしたことに変わりない。許してくれるのかな……それでも……」
「ぅ……」
アスランは、デッキから艦内へと入って行ってしまった。
「……自爆した奴等のリーダーが最期に言ったのよ」
ふいにルナマリアは言った。
「え?」
「私達コーディネーターにとって、パトリック・ザラの採った道こそが唯一正しいものだって!」
「……」
カガリは言葉を失う。
「ぁ! アスラン……」
カガリはアスランの後を追おうとする。
「あんたってほんと、何もわかってないわよね」
それを遮るように、ルナマリアは言う。
「……」
カガリは俯く。
「あの人が可哀相よ」
カガリにそう言うルナマリアを、マユは複雑そうに見つめていた。

 

「くそっ」
パトリック・ザラの採った道、か……。
やりきれない気持ちを抱えてアスランは与えられた部屋に入った。
「うううぅ……」
ベッドには、船酔いに苦しんでいるユウナがいた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ……」
「ふぅ。オーブじゃ軍事教練で、海にも出たんでしょう? その時はどうしてたんです?」
「そりゃあ……酔い止めいっぱい持って行ったさ。今回はこんな事になるとは思わなかったから……。ああ、アレックス、よかったらタオルを水に濡らして持って来てくれないか」
「はいはい」
まったく、一人で苦悩に浸る事も出来やしない。
アスランは苦笑した。

 
 
 

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