SEED-IF_4-5氏_27

Last-modified: 2008-09-18 (木) 21:30:36

「敵モビルスーツ展開!」
「シウス、トリスタン、イゾルデ起動。ランチャー1、2、全門パルシファル装填!」

 

「ええい! 数ばかりゴチャゴチャと!」
「落ち着け、ルナマリア。俺とルナマリアで敵を撹乱する。残りは防御! できるな!?」
「「はい!」」

 

ルナマリアは戦闘機型になって飛び回る。
15機ほどが向かってくる。残りの半分がミネルバに向かう。
「くそっ!」
「ルナマリア!」
「なんです!?」
「10機は俺が引き受ける。残り5機、やれるな?」
「もちろん! やりますとも!」
ルナマリアはM106 アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲を連射する。
「5機くらい!」

 

「どうします? 我々も浮上してバビを出しますか?」
「今浮上しても攻撃に遭うだけだ」
ニーラゴンゴの艦長は副官の進言を否定した。
「ソナーに感! 数3!」
「なに!?」
「早い!これはモビルスーツ……ディープフォビドゥンです!」
「迎撃! グーンの発進、急がせい!」

 

8機のグーンが3機のディープフォビドゥンを迎え撃つ。
「く、たかが3機ごとき!」

 

「隊長、数が!」
赤道連合のディープフォビドゥンの乗員が悲鳴を上げる。
「志願してきたんだろうが! ぶち当たれ! 家族の仇だと忘れたか!」
「はいぃい!」

 

水柱が上がる。
「ミネルバ! 今のは!?」
アスランが問い合わせる。
「地球軍水中モビルスーツ! ニーラゴンゴのグーンと交戦中」
シンが答える
「ぇ!」
「でも相手は3機よ」
タリアが安心させるように言う。
「ニーラゴンゴの水中隊が対応します。それより敵の拠点は? そちらで何か見える?」
「いえ、こちらでも何も。しかし……」

 

「こいつを! こいつさえ落とせば!」
「うわぁぁ! エリザベース!」
「ザフトめ! 妻と子の仇! うわぁぁ!」
「く……」

 

「対空砲急げ! ええい! ここまで追いやられるとは! 残りのモビルスーツも出せ! 作業に当たっている民間人の避難急がせろ!」
基地指令が叱咤する。
「こんな事なら……友好を深めるなどと言ってわざわざ非効率なのに彼らに基地設営を手伝わせるべきではなかったかもしれませんね。民間人に被害が出るかも」
副官が、泣き言を言う。
「未来を予知出来る者などいやせんさ。それより、急がせろ! 民間人に被害が出たら、我らの恥だぞ!」

 
 

「何!? ん?……基地? こんなところに……建設中か? あ! まさかここの民間人……」
地元の住人だろうか、土嚢を自らの身体で運び、つるはしを振るっている。
ルナマルアは基地に降り立った。
「何だって言うのよ! まさか強制労働!? 許さない!」

 

セイバーの機体に銃弾が当たる。
対空砲? そんなの!
ルナマリアは片っ端から砲やハンガーを射撃する。
フェンスを大きく押し曲げる。
「さあ、今のうちに逃げ出して!」

 

「やらせはせん、やらせはせんぞお!」
「ザフトの奴等だ! やっちまえ!」
「夫の仇!」
「父ちゃんの仇だ!」

 

「なに……? なに? これ?」
民間人が、機関銃を持って、セイバーに撃ってきていた。
作業に当たっていた者が……ルナマリアが救おうとした者達が、銃を持ってルナマリアに向かってくる。
女子供が、銃を持ってセイバーに撃ってくる。
「ルナマリア!」
「何なのよ! なんで民間人が撃ってくるのよ! なんで!?」
偶然だろうか、バシッとカメラに銃弾が当たる。
「いやぁーーー!」
ルナマリアはCIWSを彼らに向かって乱射した。正面にいた女子供が弾け飛ぶ。
「あああーーーー!」
「落ち着け、ルナマリア! そこから離れろ!」

 

「くそう、仲間の仇だ! 届けぇぇぇぇ!」
たった一機残ったディープフォビドゥンがニーラゴンゴに突っ込む!

 

「艦長、船殻にダメージ!」
ニーラゴンゴのオペレーターが悲鳴を上げる。
「やむを得ん! 緊急浮上! 浮上と同時にバビ隊発進させろ!」

 

「くぅぅぅ……やられちまったか……何? 潜水艦、ちょうどいい! 道連れになってもらうぜ!」
一機のウィンダムが煙を吐きながら浮上してきたニーラゴンゴに突っ込む!

 

「ウィンダム、突っ込んできます!」
「回避ー!」
「ミサイルが!」

 

「艦長!」
アーサーが言った。
「ニーラゴンゴ、撃沈されました。その寸前に一機のバビ発射確認」
「……そう。こちらの指揮下に入るように伝えて」
「はっ」

 

戦況は、アスラン、気を取り直し、還したルナマリアが敵15機を引き付け、防御に成功しつつあった。
「は! 地球軍の連中なんてちょろいぜ!」
「馬鹿! 出過ぎるな! タケダ!」
「なんの……うわぁぁぁ!」
タケダのバビは被弾して海上に墜落して行った。
「タケダの……馬鹿野郎!」

 

海戦は終わった。タケダのバビがミネルバが失った唯一の人材だった。

 

『ミネルバ、着艦許可願います』
バビのパイロットから通信が入る。
「ニーラゴンゴの生き残りですよ、艦長」
「すぐに降ろしなさい。そのくらいも判断できないの? アーサー? それからニーラゴンゴのグーンの乗員の収容急いで!」
「はいぃ!」

 

「やあ。君達。すまんが世話になるよ」
バビから降りてきたパイロットは言った。
「あ、ニーラゴンゴは……あれ? タケダ……さん? まさか幽霊? 足が……あるし?」
タケダにそっくりな男にマユが恐る恐る言った。
「戦争でしょ? 気にしないの。あ、俺はセイジ。セイジって呼んでくれ」
「はぁ……」

 

アスラン、ルナマリア達もミネルバに帰還した。

 

ぱしっと言う音が響く。
「戦争はヒーローごっこじゃない! 自分だけで勝手な判断をするな!力を持つ者なら、その力を自覚しろ! 基地を見つけたからといって勝手に攻撃していいもんじゃないんだ! こちらが泳がせておいた基地かも……」
「アスラン……」
アスランから頬を叩かれたルナマリアは泣いていた。
「な、なんだ?」
「なんで! なんでです!? 自分は民間人を助けようと……それが、その民間人が、女性も、子供も銃を撃ってきて、私仕方なく……うわぁぁぁぁん!」
「……泣くな」
抱きついてきたルナマルアをアスランは抱きかかえる。
子供にするように、優しく背中を撫でてやる。
「恨まれてたのかもな……赤道連合はユニウス7の落下で被害が大きかったと聞く」
「……」
「ほら。もう泣くな。な?」
「は、はいぃ」
アスランはルナマリアの涙を拭ってやる。
その様子をマユはじぃっと見つめていた。
「……ほら、ルナ、泣かないの。アスランさんも迷惑してるでしょう?」
マユの言葉に巧妙に隠された棘が混じる。
「あ、マユ」
「い、いやぁ、そんな事は」
「じゃ、アスランさん、しっかり休んでください。大活躍だったんですから!」
「あ、ああ」
そのマユの強い口調に気おされるように、アスランは下がっていった。

 
 

『このデモによる死傷者の数は既に1000人にのぼり、赤道連合政府は……』
『18日の大西洋連邦大統領の発言を受けて、昨日、南アフリカ共同体のガドア議長は……』
『この声明に対しプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは昨夜未明、プラントはあくまでも……』
オーブを脱出したアークエンジェルは海底に潜んでいた。
「毎日毎日、気の滅入るようなニュースばかりだねえ」
バルトフェルドがぼやく。
『ユーラシア西側地域では依然激しい戦闘が続いており、ユーラシア軍現地総司令官は周辺都市への被害を抑止するため、新たに地上軍3個師団を投入する声明を発表しました』
「なんかこう、気分の明るくなるようなニュースはないもんかねえ?」
「水族館で白イルカが赤ちゃんを生んだとか、そういう話?」
マリューはいたずらっぽく言う。
「いやあ、そこまでは言わんよ。しかし、何か変な感じだな。プラントとの戦闘の方はどうなっているんだ。入ってくるのは連合の混乱のニュースばかりじゃないか」
「プラントはプラントでずっとこんな調子ですしね」
「ん?」
モニターにはラクスそっくりの人物が明るいテンポの曲を歌っていた。
『勇敢なるザフト軍兵士の皆さ~ん! 平和の為、わたくし達もがんばりま~す! 皆さんもお気を付けて~!』
「皆さん、元気で楽しそうですわ」
「ラクス、これで、いいの? このままにしておいて」
キラが不機嫌そうに言う。
「……」
ラクスはキラから表情が見えない位置で、氷のような冷たい視線を画面の偽ラクスに浴びせていた。
「そりゃ、何とか出来るもんならしたいけどねえ。だが、下手に動けばこちらの居所が知れるだけだ。そいつは現状あまりうまくないだろ?匿ってくれているスカンジナビア王国に対しても」
「ええ、それは」
「……いいかげんに、私をオーブに戻せ。オーブが心配だ。いつまでもこうして潜ってばかりもいられないだろ。お前達の事はうまくごまかしてやるから」
今まで黙っていたカガリが、口を開いた。」
「だめだよ。今はまだ動けない。まだ何も判らないんだ」
キラは拒絶した。
「そうねえ。ユニウス7の落下は確かに地球に強烈な被害を与えたけど、その後のプラントの姿勢は紳士だったわ。難癖の様に開戦した連合国が馬鹿よ」
「お前達はまだ悪者探しを続けているのか。こいつを倒せば全て良くなると言う様な、ゲームじゃないんだぞ? 現実は?」
「連合国じゃなくてブルーコスモスだろ?」
カガリの発言は無視された。
「まあね。でも、デュランダル議長はあの信じられない第一派攻撃の後も馬鹿な応酬はせず、市民から議会からみんななだめて最小限の防衛戦を行っただけ。どう見ても悪い人じゃないわ。そこだけ聞けば」
「……」
「お前ら馬鹿だよ。みんな。私はデュランダル議長に会った事がある。利口な人だ。ラクス暗殺? もし彼がやるならまったく足がつかないようにやるだろうさ。正規軍にしか配備されてない新型機なんて馬鹿すぎる」
「じゃあ、誰がラクスを殺そうとした?」
「ん?」
「そしてこれじゃあ、僕には信じられない。そのデュランダルって人は」
「キラ……」
「みんなを騙してる」
「それが政治と言えば政治なのかもしれんがね」
「……」
「知らないはずはないでしょうしね。これ」
「それも政治だろう。私も政治家だ。プラントの混乱をラクスの名を利用して収めようとする気持ちぐらい判るさ」
カガリは挫けずに発言する。
「なんだかユーラシア西側のような状況を見てると、どうしてもザフトに味方して地球軍を討ちたくなっちゃうけど」
マリューはカガリを無視した。まるで彼女の言葉が聞こえないかのように。
「お前はまだ反対なんだろう? それには」
バルトフェルドはキラに聞く。このメンバーの意思は、キラにあるかのように。
「ええ」
「ユウナ……」
思わずカガリはつぶやいた。
どうしてる? もう意識は戻ったろうか? きっと驚いているだろうな。ウナトが死んで、私まで行方不明で……。私はこんなところに軟禁されたままだ。こんな事なら秘密ドックなど提供しなければ良かった。
「カガリ? なに、それ?」
キラが、険のある表情をカガリに向けた。
「カガリは大西洋と同盟を結んだ。アスランの事も、忘れてそいつと一緒になるって言うんじゃないだろうね?」
「馬鹿! 政治と恋愛を一緒にするな!」
アスランも……どこいってんだよ。アスランでもいれば……。何とかなるかもしれないのに。
アークエンジェルで、カガリは一人孤独だった。

 
 
 

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