SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第29話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:57:12

29話「黒死の蝶」

 
 

シロガネの格納庫中を歩いていくユウは歩きながらも眼球を左右に動かして格納庫の様子をつぶさに観察していた。スレードゲルミルのような特殊兵器を持つシャドウミラー隊の素性は
ノイエDCの中でもあまり知られておらず、構成員に旧DCからいたメンバーはいない。しかも先日、連邦軍のスペースノア級一番艦シロガネの奪取に成功したらしく、
シャドウミラーが持つ機動兵器の性能と得体の知れなさが併さってユウの抱く警戒感は日増しに高まっていっていた。
ところでアーチボルド隊所属のユウ、そしてその後ろからついてくるカーラがシロガネにいるのには訳がある。
バンからの命令でシロガネまでラーズアングリフとランドグリーズの改修を受けるようにとの命令が発せられたからである。
以前にユウが提出したラーズアングリフの改造プランが採用されたのであろうと、内心結構喜びながらシロガネまで赴いたユウであったが
目に映るシロガネ格納庫内の機体と、そこにいるパイロット達の顔を見て徐々にその顔を渋くさせていく。

 

「ねえユウ。なんで羽付きのランドグリーズがたくさんいるわけ?」
「おそらく俺が以前に提出したラーズアングリフの強化改造プランが採用されたのだろう。高機動力の付加は以前から要求していたのでな」
「ああ、あのジャスティスとかって機体に負けてからだったよね」
「嫌なことを思い出させるな」

 

格納庫内ではランドグリーズへの増加パーツ設置が各所で行われていた。まず目を引くのが背部のテスラドライブを搭載した大型のブースターである。
外観から明らかなように移動力にやや難のあるランドグリーズを飛行させることで、地形の影響をなくしつつ、同時に機動性を高めることが狙いであろう。
次に、新たに左肩に加わったリニアカノンがユウの視線を釘付けにする。これにより中~遠距離戦で高い戦闘力を持つランドグリーズの砲撃戦能力が単純に2倍になり、
飛行ユニット自体に搭載されているミサイルなどと併せて火力は飛躍的に高まることとなる。
そしてランドグリーズと同系色をベースに分厚い鋼鉄を載せた巨大なシールドが左腕に備わっている。ランドグリーズのコックピットは頭部に、
半ば剥き出しのような形であるためパイロット達からの評判があまりよくない。このシールドがあればそれをやや緩和することができるであろうし、
万が一敵機に距離を詰められた場合でもシールドでガードすることが可能になるため、パイロットの生存性と接近戦闘能力の向上が期待できる。
ユウの提出したプランにはなかったものもあるが、ランドグリーズの長所をさらに伸ばすとともに、短所を補う形での改修が行われたのだろうということがわかる。
そして、やや奥まった所に1機の特機がそびえ立っているのが見えた。
頭部のアンテナとはまた別個に、口元から髭のようにも見えるパーツが左右に鋭く伸びており、また、左右の肘にも鋭く伸びたブレードがセットされている。
一見して固定兵装を持たない上に、武装をセットする機構らしき部分も見当たらないことから近接戦闘にかなり特化した機体であることがわかるが、
ユウキがいる位置からでは細かい所までは見当たらない。

 

「でもせっかく要求が通ったっていうのになんでそんな渋い顔してんの?」
「お前はさっきからランドグリーズの足元にいるパイロット達に見覚えはないのか?…そうか、お前はそんなに他の部隊のパイロットを知らなかったな」
「どうせあたしはユウみたいなベテじゃありませんよ」
「ベテって…そう拗ねるな。さっきから目にするパイロット達…皆、他の戦線のエース級のパイロットばかりだ…」
「それってどういうこと?」
「近頃インスペクターへの大規模な反攻作戦が噂されているが、いよいよそれが真実味を帯びてくる、ということだ。それにこの前のアインストとかいう連中、それに…」
「それに?」
「あのエターナルとかいうピンク色の連中…奴らの戦艦にジャスティスという機体。どうも系統がわからん。そもそも当初は連邦でもDCでもなかった奴らがどうしてあんな戦力を持っていたのかも不明だしな」
「もう!いつまで負けたことを根に持ってんの?」
「そういう訳ではない。腑に落ちんから信用できない、というだけだ」
「なにその屁理屈」
「あら、痴話喧嘩だったら余所でやってくれないかしら?」

 

声のした方向へユウは目を向けると、そこに立っていたのは見覚えのある1人の女性。
先端にゆるやかなウエーブをきかせ、ボリュームのある桃色の髪をゆるやかになびかせながら、懐かしいものをみるかのような瞳でユウキとカーラを眺めている。
レモン・ブロウニング。シャドウミラーの技術担当兼アースクレイドルのザ・マッドその3であり、
シン・アスランにラーズアングリフを激しく損壊されたアクセル・ユウキにトラウマものの長時間の説教を喰らわせた女傑であり、女としての本能で嫌悪し合う覇王の宿敵である。

 

「失礼しました!お久しぶりです、レモン・ブロウニング博士!」
「元気そうね、少尉さん。あれからラーズを大切に使ってくれてるかしら?」
「も、もちろんであります!」

 

以前のトラウマからか、ユウキの声が普段よりも上ずる。いつも冷静な思考の維持を強く心がけている相方の、いつもとは違う珍しい様子にカーラが相方をよく観察してみると、
額や首筋にはじんわりと汗がにじみ出ている。それだけでなく、たまに目元が引きつり、目も全く笑っていないし、余裕も感じられない。

 

「あなたの提案したプラン、見ての通り採用させてもらったわ」

 

そう言ってレモンは目元に笑みを浮かべながら改修が進んだランドグリーズを見渡す。

 

「お役に立てたのなら光栄であります!」
「ふふ、どういたしまして。こっちとしてもいい仕事をさせてもらったし、今回は色々と助かったわ」
「色々?でありますか?」

 

無意識のうちに必死に目の前の相手の機嫌を損ねないように振る舞ってしまっているユウキが聞き返した。
彼の基本的にアーチボルドの無茶な考えやカーラのボケにツッコミを入れる立場である。そのため、ユウキに自覚こそないが突っ込まれるとあまり強くない。
それ故、カーラの嘘泣きに騙されたり、異星人の存在が公表されたときは平静を装ってはいたものの内心小さからぬ衝撃を受けていたのだ。

 

「そう。色々とあるのよ、女にはね」

 

例えば本能的に気に喰わない女の思い通りに物事を運ばせないためとか。

 

「それよりも注文の品は完成してるわよ。名前は私の独断でレイブン・パーツ。で、武装はどっちの方がいいかしら?」
「武装は換装式なのですか?」
「他の人にも案をもらって複数の強化武装を作ってみたのよ、まだ2つしかできてないけど。
 1つはあなたから提案のあったラーズアングリフの射撃戦闘能力をさらに高めつつ、弾薬で機体重量が肥大化しないエネルギー系の武装。
 名前は収束荷電粒子砲。燃費は難があるけど、ラーズアングリフは他にエネルギーを消費する武装を持ってないし、威力・射程ともに相当のものよ。
 もう1つがアースクレイドルのクエルボ博士から提案があったもので、ラーズアングリフの弱点である近距離戦闘能力の低さを補うための、接近戦用の武装ゴッドランス。
 普段は日本刀でいう『ワキサシ』くらいの長さだけど、『射殺せゴッドランス!』の音声入力で刃と棒の部分が伸びてランスまたはロッドとして使うことができるわ。
 さらに刃の部分は特殊な液体金属で作ってあって、敵に突き刺せば刃の部分が変形して亀の甲羅の紋様みたいな形で相手を絡め取って動きを封じるわ!そしてその隙に飛び蹴りを…」
「せっかくですが前者の方でお願いします」
「…やけに判断が早いわね」

 

徐々に語り口が熱く、激しくなりつつあったレモンの口調は少々残念そうなものとなっていた。

 

「いえ、やはり自分が提案したものです。自分なりに考えているところが色々とありましたので」
「あら…せっかくゴッドランスを選んだなら機体色も熱く苦しい赤から青に塗り替えようと思ってたのに…じゃあ別の色、考えといてくれる?改修が終わったら塗装するから。
 機体色が赤のままじゃ、あの根暗で辛気臭いまな板電波女のところの機体と色が被るのよ」
「赤い機体…イーグレット博士の所のアスラン・ザラですか?」
「たしかそんな髪の薄そうな名前だったわね。あの女…絶対に友達少ないわよ。女に嫌われるタイプだわ」
「まぁ好感が持てない所には同意しますが…」
「そういえば、あなたが一番最初にあの根暗電波の部隊と接触したんだったわね」
「ええ。フォールデリングソリッドカノンの照準をブリッジに突きつけて、降伏勧告の回答を待つ間にあのジャスティスとかいう機体が仕掛けてきました」
「降伏なんて生ぬるいことしてないで、ソリッドカノンをぶちかましとけばよかったのよ、私が許すわ……ちょっと熱くなりすぎたわね、とにかく、色を考えといてね、色」
「サナギから蝶へと変態を遂げ、大空を羽ばたく翼を得たラーズアングリフ・レイブンの色、か…」
「じゃあ改造に取り掛かる前にバン大佐からの命令書を渡しておくわ」

 

そう言ってレモンが懐から1枚の紙を取り出した。それをユウキは受け取り、その書面に目を通す。
確かにそこにはノイエDCのトップであるバン・バ・チュンの直筆サインがされており、その宛名にアーチボルド隊のユウキ・ジェグナン、そしてリルカーラ・ボーグナインの他、
先ほど格納庫内で見かけたノイエDCの各戦線のエースパイロット達の名前が記されている。
レモンがラーズアングリフを置いた場所へと足軽に向かっていったのを確認したユウキは、自称相方で命令書に名前の記載があったカーラの方を見やる。
すると急に自分の方に振り向いたユウキを不思議に思ったカーラの方が先に口を開いた。

 

「どうしたのユウ?」
「俺達に転属命令が出た」
「転属命令?」
「ああ。俺達は対インスペクター部隊へ配置されることになった。もっとも、その隊の責任者はアーチボルド少佐だし、おそらく現場指揮だけは俺が取ることになる」
「へえ~、じゃあ今までと大して変わらないんじゃん?」
「そんなことはない。インスペクター戦を前提とした部隊ということは、今まで以上に戦いは厳しくなるはずだ」

 

命令書に記されていたのは、対インスペクター戦のために結成された特殊奇襲部隊―機動力と火力を両立し、奇襲・強襲に特化してインスペクターの幹部機体とも戦えるようになった
機体で編成された部隊の結成がバン・バ・チュンの考えたそもそもの趣旨であった。

 

「部隊名はオーバーレイブンズというらしい」
「オーバーレイブンズ?」
「ああ、対インスペクター戦用特殊部隊の正式名称だ。公にはレモン・ブロウニング博士の手で全機がカスタマイズされたことにより
 『レイブン』の名が付いたラーズアングリフとランドグリーズで構成された独立部隊ということになっている」
「じゃあさっきいたエースパイロットの人が補充のパイロットってこと?」
「ああ、それも各部隊の精鋭達だ。合計15機のラーズアングリフ・レイブン、ランドグリーズ・レイブンによる大部隊になる。かなり大掛かりな作戦があるのかもしれんな。気を引き締めろよ」

 

このような部隊をバンが結成したのには訳がある。
元々旧DCの残党が主たる構成員であるノイエDCには、旧教導隊のエルザムやゼンガー、テンペスト・ホーカーのような極めて大きく名前の売れたパイロットが率いる部隊を持たない。
他方の連邦には、主にSRX計画の機体で構成され、単艦でDC本拠地を落としビアン・ゾルダークを破ったハガネ、
主にATX計画の機体で構成され、これまた単艦で宇宙統合軍旗艦艦隊を撃破したヒリュウ改というかなり有名な部隊を抱えている。
友軍の士気高揚も兼ねて、バンがかつてビアン・ゾルダークから酒の席で見せてもらったことのあるジャパニメーションに登場する部隊
―武力による紛争の終結を目指し、天上人を名乗る私設武装組織が作った4つの機体に対抗すべく結成された特殊部隊を―参考にしたのであった。

 

そして、ちょうどそこにある情報がバンの耳に入った。
レモン・ブロウニングが、ラーズアングリフ、ランドグリーズ用強化改造パーツを本来は2つのところを『とある事情』から時間稼ぎのために15基も作ってしまったというのである。
そこでバンはヴィンデル・マウザーに要請して協力を取り付けた上で、レイブン部隊の結成を思い至ったのであった。

 

「ふうん…なんかユウが変に洒落た台詞を言い出したり、やられてから変な仮面付けなければいいんだけど…」
「だがそれがいい…」
「有り得ないし。そしたら私、別れるから」
「………!ちょっと待て」
「やだ~別れるってのは冗談に決まってるじゃ~ん!」
「そうじゃない。そもそも付き合っているという既成事実を勝手に作るな」
「あちゃ~バレたか。でもユウが隊長ってことは上級中尉とかに昇進したりするの?」
「………………いや、それはない」
「そうだよね~ガーリオンもランドグリーズも壊しちゃってるのに」
「……………………………」

 

反論の余地はなく、ユウキはトボトボとラーズアングリフの方向へと歩き出し始めた。
ユウキはハワイでのビルトファルケン強奪作戦の折、アラドのフォローで教導隊のカイ・キタムラのゲシュペンストと戦ってガーリオン・カスタムを壊し、
ゼオラのフォローでシン・アスカのビルトシュバインと戦ったときにランドグリーズを壊してしまっている。
このことを実はかなり気にしていたユウキは、このときカーラの一言でわりとへこんでしまったのだが、それは誰も知らない。

 
 

所は変わってヒリュウ改のブリーフィングルームでは、先日のペルゼイン・リヒカイト戦の映像を踏まえての対策会議が開かれていた。
部屋の前方には2分割されたスクリーンの中には片方にペルゼイン・リヒカイト、もう一方にはレイの乗るペルゼインが現在映し出されている。
そして動きや機体構造の推定・分析を行っていたリョウトがスクリーンの手前に立って分析結果の報告を始めた。

 

「今画面に映っているのが先日、中国で僕達が戦ったアインストの指揮官機、コードネーム『レッドオーガ』です。そしてその隣に映っているのが、ジャスティスという機体とノイエDCが
 日本に攻めてきたときに初めて姿を現して、先日レッドオーガが現れたのとほぼ同じタイミングで現れた『アカオニ』です。
 この2機は姿こそ別ですが、鬼の面のようなものを飛ばして攻撃する共通点があり、またアカオニが初めて現れたとき、一瞬だけレッドオーガの姿で現れたのが既に確認されています」
「じゃあやっぱりこいつらには何らかの関連性があるってことか?」
「おそらくな。アカオニが初めて現れたとき、レードオーガが現れるときに聞こえる声のようなものが俺には聞こえた。無関係とは言えんだろう」

 

タスクの問いにキョウスケが口を挟んだ。
現時点でアインストと関係がありそうだと考えられているのは「声」らしきものを聞いたと言うキョウスケ・エクセレンと、超機人絡みで交戦したタスク達に限られている。
そのため、自然と口を開く者は限られてくる。それの現れであろうか、次に口を開いたのはブリットであった。

 

「レッドオーガのパイロットは、遠く離れた日本でヒリュウ改がノイエDCの部隊に足止めされてることを知ってました。日本でアインストの出現がなかったなら、やはり関係があるんだろう」
「でもアカオニの中の奴はお前らが言うみたいに妙チクリンなことは言ってなかったぜ。ってかむしろ軍人じゃない普通の人間っぽかったような…なあ?シロ、クロ」
「まぁ言われてみれば確かににゃ」
「なんせマサキと口ゲンカ始めちゃうくらいだったからニャ…」
「よけいなことまで言うんじゃねえ!」
「ま、まあ正体は一先ず後にして、次は動きについてですが…」

 

マサキの言葉をやや強引に押し流してリョウトが今度はペルゼイン・リヒカイト2機の予測機体スペック、動作、攻撃モーションなどについての説明を開始する。
これまでの流れをシンは黙って見ていたが、アルフィミィが乗っている方のペルゼイン・リヒカイトとは直に激しい戦闘を行ったことから、レイのペルゼインの方に自然と注意が向いていた。
ペルゼインが大剣ペルゼインスォードを携えてノイエDCの部隊に斬りかかって行く様子、敵の攻撃を回避する様子がシンの目に映っていくのだが、
行動の節々の細かい所にどこか見覚えのあるモーションがあったような気がしてくる。とはいえ、この段階ではそれはまだまだ「なんとなく」の域を出ない。
しかし、ペルゼインが肩から射出した小さな鬼面を飛ばして周囲の敵を攻撃する映像を見たとき、シンの「なんとなく」の感覚は、ある「推定」に達した。
鬼面の動きは、今は記憶なき戦友レイ・ザ・バレルのドラグーンの動きによく似ているような気がするし、
大剣での直接攻撃こそ面影はゼロだが、他の動作の所々にはアカデミー時代からの付き合いの戦友がするのとそっくりの動作が少なくない。

 

(この動き…レイ?いやまさか…)

 

とはいえ、記憶をなくしたレイがこんな機体を持っているとは考えられないし、シン自身にはアインストとの繋がりは全くないためレイにもアインストとの繋がりがあるとは考えられない。
だが他方で細かいモーションの類似点が、ダイレクトにシンの頭に、ペルゼインのパイロットはレイなのだと告げている。そして、シンの理性と合理的な判断がそれを必死になって否定する。
双方のせめぎあいは始まって間もなくシンの思考を支配し、結局シンの気付かぬ間にブリーフィングは終了した。

 

ブリーフィングが終了して続々とクルー達が部屋から出て行く中、ほとんど腕を組んだままほとんど動かないシンに気付いたのは、
戦いでよくタッグを組むブリットでも、アインストの正体の推測にかなりのめり込み始めたキョウスケでも、レイにパーツ泥棒の悪の組織のボスの汚名を着せられたマサキでもなく、
向かってくる以上敵であると割り切って考えるラミアであった。
普段は割と明るいシンが黙り込んで動かない様子を不思議に思ったラミアの足は自然とシンの座席の方向へ向けて動き出し、シンの横で止まる。

 

「アスカ様、何かわかっちゃったりしましたか?」
「!?」

 

言語回路に生じた支障が、日が経つに連れて大きくなりつつあるラミアの異様な言葉にシンの思考が中断する。
そして目の前に飛び込んでくる2房の巨大な超高級マスクメロン。
本能の赴くままに事故を装い、眠りの小五郎やお前はもう死んでいるな拳法家や新宿の種馬ではないゴッドバレー、つまり神々の谷間に飛び込みたい衝動を
未熟な理性が死に物狂いで押さえつけ、ラミアの問いへの答えを探し始める。

 

「あ…いや、そんな大してわかったことなんてないですよ」
「やっぱりアスカ様も気付きやがったんですね」
「え?」

 

今の今までオーバーヒート気味に動いていたシンの思考が一気にフリーズした。
なぜ目の前のラミアにレイのことがわかったんだ?という冷静になればすぐにわかるようなことも、マスクメロンに理性的思考の98%を持っていかれているシンにはわからない。
もしレイの動きにそっくりな動きをしていると他の者に知られれば、今のレイの身が危うくなってしまうのではないか。
せっかく体に何の問題もなく、しかも戦場から離れることができたレイを自分のせいで戦場に引きずり込んでしまったらどうしようか。
取り越し苦労になるとは知らず、そのようなおそれすら生じ始めていた。

 

「あのアカオニの動き…出鱈目なようで細かい所はしっかりと基本に忠実な動きがされてますことでしょう?やっぱりあれは然るべき訓練を受けた人間の動きでは…」
「………そ、そうですよね!やっぱりラミアさんもそう思いました?ハハハハ、さっすがラミアさん、イザというときの眼光がロボットよりも鋭いですね、ハハハハ…」
「!?そ、そんな大したものじゃありやがりませんでございますのよ?ホホホホ…」

 

今度は逆に正体がバレたのかとギクリとしたラミアが一瞬、フリーズ状態に陥った。
噛みあっている様で実は噛みあっていない会話から生じた乾いた笑い声がブリーフィングルームの中に響き渡った。
ちなみにこのとき、「またシン君ってばラミアちゃんとイチャついちゃって」とこれまた噛みあっていない誤解を、
聞こえてきた笑い声に釣られてブリーフィングルームを覗いていたエクセレンもしていた。

 

所はとある無人島付近に停泊しているシロガネの格納庫に戻る。
ヒリュウ改への攻撃を仕掛けるためにエキドナが率いる部隊が発進準備を進めているシロガネの格納庫では、連日の作業の末にラーズアングリフの改修がもう間もなく終わろうとしていた。

 

「蝶サイコーだ…」

 

改修の完了したラーズアングリフ・レイブンを見上げて、思わずユウキが心のうちにある感動を言葉に現す。
弾速に難のあるリニアミサイルランチャーを補うべく連射性を高めたへビィ・リニアライフル、レイブンパーツのウイングに連なる艦隊戦をも考慮して搭載されている対艦ミサイル、
ラーズアングリフの最強砲撃兵装であったフォールデリングソリッドカノンがもう1門肩に搭載されたツイン・ソリッドカノン、
そして空を羽ばたく飛行ユニットのウイングとレモン・ブロウニング謹製の長距離狙撃用兵装収束荷電粒子砲を目にするユウキの心は感動に打ち震えていた。

 

「ふふ…気に入っていただけたなら嬉しいわ。塗る色は決まったかしら?」
「はい。サナギから変態を遂げ、大空を翔るその翼からインスペクターに奇襲と死を告げる火薬というリン粉を振り撒く黒死の蝶…それが生まれ変わったラーズに相応しいかと」
「ということは黒ね。じゃあこれから塗装に入るわ」

 

レモンがそういった矢先、警報音とともに格納庫の扉が開き、着艦した2つの機体が格納庫へと入ってきた。
1機は銀色を纏った鶏冠と関節を持つ、覇王の無限なる正義を世界の隅々にまでいきわたらせるべくザフトから窃取され、この世界でマシンセルによる飛躍的パワーアップを遂げたジャスティス。
もう1機はアシュセイヴァーを母体として、強奪されたビルトファルケンやATX計画のデータを参考にしてカスタマイズされた「継ぎ接ぎ」の名を冠した機体、ラピエサージュであった。

 

ユウキとレモンの目に付くところで停止した両機体のコックピットが開き、パイロットスーツと纏った2人の男が機体から降りてきた。
そして2人は着地するとまっすぐに、ユウキと、凄まじく不愉快だという顔を露骨にしているレモンの下へと歩いてくる。
片方の顔にはユウキも見覚えがあり、上官であるアーチボルド以上に嫌悪する青い髪の男を見て、先ほどまでラーズアングリフ・レイブンの完成で恍惚としていた顔が見る見るうちに険しくなっていった。
そんな敵意を感じたのであろうか。ユウキに不愉快さを乗せた視線を向けながら青い髪の男、アスラン・ザラが口を開いた。

 

「久しぶりだな。元気そうで何よりだ。リクセント公国を落とされてさっさと逃げてきただけはある」
「フッ…貴様こそサイバスターを討つことが出来なかったにとどまらず、『アカオニ』とかいうアンノウンに再生機能付きのその機体を大破させられたそうじゃないか。
 貴様の毛根と同じで機体も息が絶え絶えにでもなったか?なんなら俺の髪を分けてやってもいいぞ?」
「貴様…!これ以上口を開けば容赦はしないぞ」
「面白い。吹っかけてきたのは貴様だろうにそれすら忘れたか」
「アスラン、そろそろ」
「…そうだったな、すまないキラ。俺達はこんな連中の相手をしに来たわけではなかったな」

 

以前、アメリカ大陸で刃を交え、アースクレイドルで衝突したユウキ・ジェグナンとアスラン・ザラは互いに最大級の嫌悪感をぶつけ合っていた。
レモンと覇王が理屈を通り越した女の本能のレベルで嫌悪し合うのと同様に、この2人も理屈を超えて、もはや生理的に互いを受け付けられなくなっているのである。
キラに諌められてアスランは視線を、ユウキとアスランに「もっとやれ」という顔を向けていたレモンの方へと移し変えた。

 

「あら坊や達もうお終いなの?まあいいわ。ところであなた達はこんな所までどういったご用件かしら?」
「レモン・ブロウニング博士、用件はわかっているはずです。ヴァイサーガ改修の件、忘れたわけではないでしょう」
「忘れてたわ」
「何ですって!?ふざけてるんですか!」
「人間には嫌なことを記憶から切り捨てて、明日への活力を維持する忘却って能力があるのよ」
「なら命令書を見て思い出していただきます」
「はいはい、冗談よ冗談。でも見ての通り、今さっき突貫作業が終わったばっかりなんだから休ませなさいよ。といっても、塗装がまだだからすぐというわけにはいかないわよ」
「ではその後に取り組んでいただけると?」
「さあ、どうかしらねぇん?急患が入ってきたりしなければいいんだけど」
「レモン・ブロウニング博士、僕達も遊びで来ている訳じゃないんです。ふざけるのも大概にしてください」

 

ジャスティスも捨てがたいが、ヴァイサーガとラピエサージュを通じてキラ・ヤマトと肩を並べ、背中を預けあってドラマチックに戦っていきたい願望があるアスランにとっては
なんとしてもヴァイサーガを手に入れて、皇帝のような金色と赤に塗り上げたいと考えていた。
しかし「素体」の影響か、レモンはユウキとは違ってアスランの口撃をのらりくらりとかわすため、今度はキラ・ヤマトが口を開いた。

 

「はいはい、わかってるわよそんなこと。あの根暗電波は嫌いだけど、命令書持って来られちゃってるんだからやらないとは言わないわ。安心なさい」
「!ラクスを悪く言うのはやめてください!彼女がどんな想いでいるかも知らないくせに!」
「あら、ご主人様から随分とよく躾けられてるみたいね」
「そんな!彼女は僕を導いてくれたんです!きっとこれからも!」
「それで、思い通りに動かされていくって訳ね」
「あなたは!でも…だからって…僕は…」
「ペット君の言うことなんて私にはどうでもいいわ。ヴァイサーガは改修してあげるから、いい加減それまでどっかで待ってなさい」
「いい加減にするのはあなただ、レモン・ブロウニング!これ以上キラを侮辱するのはやめてもらう!さもなくば…!」

 

覇王に付き従うキラ・ヤマトに対して、覇王へのものとはまた別の嫌悪感を向け始めたレモン・ブロウニングに対してアスラン・ザラの感情が爆発した。
レモンの作ったWシリーズの方が少なくともまともなことを喋るし、はっきりと物事を喋るので、キラのような喋り方に対してレモンは創造をする人間としての嫌悪を覚えていたのだが、
そのようなことはアスラン・ザラの知るところではない。ただキラ・ヤマトのことを想うと感情がフィーバー、つまり熱病のように熱くこみ上げてくるアスランにとっては
キラ・ヤマトが酷い侮辱を受けていることが我慢ならなかったのである。

 

「アスラン!いいんだ、僕のことは…」
「あそこまで言われて黙っていられるか!もう俺はお前のためならテンションフォルテッシモにだってなれる!俺達はなまかじゃないか!」
「お前ら随分にぎやかに騒いでるな!」
「誰だ!?」

 

横から入った声がアスラン・ザラを遮った。
そこにいた全員が声のした方向、マスタッシュマンと連邦では呼ばれる接近戦用特機の方へと視線を向ける。
正式にはソウルゲインと呼ばれる機体の影から出てきたのはグレーのツナギのような服を纏い、やや挑発的な視線を向ける一人の男。
その名はアクセル・アルマー。
そしてここに、シン・アスカと何かしらの因縁を持つ4人―アクセル・アルマー、ユウキ・ジェグナン、アスラン・ザラ、キラ・ヤマト―が集結した…シンの居ないこの場所で。

 

「アクセル!あなたいつから!?」
「最初からだ。別世界の人形どもがやかましくてオチオチ昼寝もしてられん」

 

と、言いつつ実のところは、隙を見てベーオウルフことキョウスケとアルトアイゼンに戦いを挑もうとソウルゲインに乗り込んでいたのだが、
格納庫に人が多くて出撃するに出来なかったという状態だったのである。
そんなことは口に出せないし、割となりゆきの関係に近いとはいえ、人形風情が自分の女に喰ってかかるところを見るのはアクセルとしてもおさまりがよろしくなかった。

 

「人形風情が人の女に随分な口を聞いてくれるじゃないか。さすがに聞いていて面白くなかったぞ」
「ちょ、ちょっとアクセル!?」

 

これも「素体」の影響であろうか。まれに正面から言われると思わずドキッとしてしまうレモンであったが、ここはすぐに正気を取り戻した。
そして、後にアルフィミィからツンデレと評されるアクセルに対してアスランが喰いかかっていく。

 

「アクセル…確かシンにやられてた奴だな?その程度の腕でよくそんな台詞が言えたものだ」
「ほう、口だけは達者のようだな人形」
「ぼ、僕達は人形なんかじゃない!」
「なるほど、口答えして歯向かう分だけマシということか」
「あなたはどうして…!」
「フン。自分の意思も持たない人形が人間を気取ってるのが気に喰わないだけだ」
「俺達は自分で考えたからここにいる。よく知りもしないで喋っていると恥をかくのはそっちだぞ」

 

ここでキラ・ヤマトについては置いておくとしても、アスラン・ザラについては話が変わってくる。
なぜアスラン・ザラがキラ・ヤマトを絶対の基準にするのかについて言及をしなければ、アスラン・ザラはラクシズへ復帰する時には常に自分で考えた上でラクシズの下へと走っている。
オーブ解放作戦において、模擬戦の覇者ではない方のパトリックから受けた命令を放棄してオーブ軍に手を貸したときはキラ・ヤマトを助けるために、
エンジェルダウン作戦後、メイリン・ホークを手篭めにしてザフトから脱走したときも、キラ・ヤマトのフリーダムの映像を消したデュランダルを疑い、
キラ・ヤマトの討伐を命じたザフトを見限った上でシンとインパルスにやられたキラ・ヤマトはきっと生きていると信じ、その手助けをするためにグフを強奪してラクシズの下へと走ったのである。

 

「『自分で考えた』か。お笑いだな」
「いい加減黙ったらどうだ。これ以上言うのならここで白黒はっきりさせてもいいんだぞ」
「面白い、一体どうやって付けるのか教えてもらおうか。アカオニに退治された正義の味方とやらにな」
「!」
「俺には貴様のような無様な真似はしようとしてもできんな」
「お前の機体に貴族のお漫才以外の機能があったとは初耳だな。なんなら小道具のワイングラス型の武器でも作ってもらったらどうだ」
「両名ともそこまでだ。これ以上の口論は私が許さん」
「!…チッ、ヴィンデルか」

 

アスランとキラにとっては聞き覚えのない声がアクセルとアスランを黙らせた。
シャドウミラーのトップであり、シロガネの奥深くに眠るツヴァイザーゲインを操る凄腕のパイロットでもあるこの高潔な軍人の言葉には相応の重みがあったのである。

 

「アクセル、お前はレモンを部屋まで連れて行け。レモンは連日の作業で疲れている。我々の機体の整備を確実にするためにも体調を崩されでもしたら作戦行動に支障が出る」
「そう怒鳴るなよ。…レモン、行くぞ」
「そ、そうね…」

 

そう言われて、仏頂面を浮かべたアクセルがヴィンデルの怒鳴り声に少々驚いているレモンの手を掴んで格納庫を後にした。

 

「ラクス・クラインの使いの者達もこれ以上の騒ぎは遠慮してもらう。部屋は用意させたからそこで待っていてもらう。異論があるならシロガネから去ってもらうがどうか?」

 

結局その後、キラ・ヤマト、アスラン・ザラはヴィンデルに従い、用意された部屋へと案内されることとなった。
さすがの彼らもシャドウミラーのトップに容易に異を唱えることはできず、覇王の指示もない所では物事を思い通りに運ぶことができなかったのである。

 

「ここで失敗をするわけにはいかんのだ…今度こそは…」

 

他方で部下二人の起こした騒動に頭を悩ましているのがヴィンデルであった。
アースクレイドル責任者のイーグレット・フェフ、アギラ・セトメやノイエDCのトップバン・バ・チュンとの話し合いの末、形式的にはラクシズをシャドウミラーの下に置くことにはなったものの、
シャドウミラーの幹部であるアクセル、レモンの2人がラクシズとトラブルを起こしていることはあまり楽観視できることではなかった。

 

インスペクターへの反攻作戦の準備が進められる今こそが、ヴィンデル達の世界で果たせなかった目的を成し遂げるために重要な時期なのである。
そうだとすれば、アクセル、レモンの両名にはシャドウミラーの本懐達成のための活動に心身ともに専念して欲しいところである。
にもかかわらず、レモンはラクシズの首魁との折り合いが著しく悪く、アクセルはベーオウルフキョウスケ・ナンブへのこだわりが強い上に、Wナンバーズやラクシズとの相性もよくない。
現状では世界どころか、自分の身内の混沌すら制御しきれていないのが正直なところであろう。
結局、どうしたものであろうかと考えても、頭痛の「種」らをどうにかする術はなかなか思いつけるものではなかった。

 

そして、なんとかレモンを寝かしつけたアクセルの足は、軽い疲労感を伴いながらも、エキドナの部隊が出撃しようとして慌しくなった格納庫へ、愛機であるソウルゲインの下へと向かっていた。
アクセル達が自分達の世界を捨ててこの世界に来る前からともに戦ってきた蒼銀の巨人は、魂を擁する者という名の如くアクセルの力を自らの力に変えて立ち塞がる敵を砕き、貫いてきた。
だがその力を持ってしても、人智を超えた力を得た連邦軍特殊鎮圧部隊ベーオウルブズとその隊長ベーオウルフことキョウスケ・ナンブとの決着を付けることはできなかった。
宿敵の片腕を斬り落とすことはできたものの、至近距離から散弾を喰らい勝負は五分五分というところでタイムオーバーとなり「こちら」側の世界へとやってくることになる。

 

コックピットのシートに深く座り込み、背もたれに体を預けて目を閉じる。そんなアクセルの瞼の裏に浮かんでくるのはこれまでの戦いの日々であった。
連邦軍に入り、特殊部隊シャドウミラーへと配属された。宿敵ベーオウルフと出会ったのも、始まった戦いの日々の中の1コマでの出来事である。
そして侵略を開始した異星人インスペクターとの戦いが始まり、その末に地球圏を守ることはできた。しかし今度は訪れた平和が徐々に世界を腐らせていった。
その様は政治などにさほど関心を持たないアクセルにとっても決して面白いものではなかった。
自分も含めて命を懸けて戦ってきた者達の信念が冒涜されたような気がしたからか、戦いを求める獣としての本能からなのかはわからなかったが、
最終的にシャドウミラー隊長ヴィンデル・マウザーの誘いに乗り、混沌による世界の発展という企てに手を貸すことを決意した。

 

そして彼の前に再びあの男、キョウスケ・ナンブが現れる。今度は以前よりも遥かに強大かつ得体の知れない力までをも携えて。
人間とは思えないほどにまで変貌し始めた宿敵との命の奪い合いを重ねつつ、他に立ち塞がる者達も容赦せず貫き、その者達の信念や恨み、憎悪をも引き受けながら戦ってきた。
その過程でとある兄妹の片割れを目の前で奪いもしてきた。

 

特殊部隊ゆえに隊で撮影した集合写真を機体に張るようなことはなかったが、肩を並べて共に戦ってきた仲間達の顔は忘れていない。
しかし最後に蘇った光景はアクセルの手足となったソウルゲインが、変貌を遂げたゲシュペンストMK-Ⅲと戦っているというものであった。
ソウルゲインの回し蹴りがゲシュペンストMK-Ⅲを捉えて僅かに浮き上がらせたところで、肘部分のブレードから最大出力のエネルギーの刃が伸びていく。
そしてその刃がゲシュペンストMK-Ⅲアルトアイゼンの象徴とも言うべきステークもろとも右腕を斬り落としたのだが、
残ったコックピットに狙いを定めたところで、アルトアイゼンに残った左肩から一斉に放たれた鋼鉄のベアリング弾に襲われソウルゲインは吹き飛ばされた。
次いでソウルゲインのコックピット内に、宿敵の何を考えているのか皆目検討もつかない不気味な笑みが映し出される。そのキョウスケは何も喋らず、ただにやついてアクセルを見ていた。
そしてアクセルは意識を取り戻し、目を開いた。肉体の疲労が幾分か和らいでおり、デジタル表示の時計の時間もやや進んでいる。どうやら少しだけ眠っていたらしかった。

 

「ベーオウルフ…!やはり貴様は…」

 
 

ソウルゲインがシロガネから飛び出していったのはそれから間もなくのことであった。
この世界にいるベーオウルフことキョウスケ・ナンブが、自分達が戦ってきたベーオウルフとは異なる人物であるということはヴィンデルやレモンから何度も言われたし、
直に幾度も死闘を重ねたアクセル自身がヴィンデル達以上にわかっていた。だがそれだけを理由にベーオウルフを捨て置こうとも思えなかった。
もちろん別人物とはいえ、この世界における因縁ある宿敵を倒したいという気持ちがあることは否定できない。
世界を守るためなどという殊勝な心がけを持った覚えはないが、このまま捨て置いてベーオウルフが世界を脅かすような手に負えない力を手に入れる前にしとめておきたいという気持ちもある。
グリムズ・アーチボルドがエルザムとライの心に楔を打ち込んだのと同様に、ベーオウルフことキョウスケ・ナンブがアクセルの心に楔を打ち込んだことも否定できない事実であった。

 

「やはり貴様は…俺が仕留める…!!」

 

今の宙ぶらりんな心境から脱するために、今のうちに災いの芽を摘んでおくために、異世界の宿敵を倒して己の知るベーオウルフへ引導を渡すための足がかりにするために
アクセルは再び青い巨人と一体となり、ベーオウルフことキョウスケ・ナンブのいる日本へと向かっていった。

 

                                                つづく

 
 

  

 

 

次回予告風なもの

 

レモン「!?アクセルがいないじゃないの!え、日本に向かった!?」
ヴィンデル「ベーオウルフへのこだわりは捨てきれないようだな。ところでレモン、アクセルがお前を寝かしつけるってまさか…」
レモン「それ以上言ったらセクハラで訴えるわよ」
ユウキ「というか途中から俺は忘れられてたな」
レモン「まあそこはレイブンで我慢してちょうだいな。それより、あなたも腕枕はちゃんとしてあげなさいよ?」
シン「アンタ達って人はあぁぁ!これ以上言ったらもうホントにこの板に居られなくなるだろうが!」
レモン「あら、あなた私の可愛い娘にあんなこと、こんなことして辱めたっていうのによく言うわね」
シン「ちょwあ、あれは事故じゃないですか!事故!!」
レイ「という訳で次回、エキドナ達と戦うヒリュウ改の下に現れた髭男爵。立ち向かうキョウスケやシン達。そして3度目となる俺、参上!

 

次回、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズD第30話『貫け、奴よりも速く』を期待しなくてもいいから見逃すんじゃねえぞ!」

 

シン「見て欲しいのかそうじゃないのかどっちだよ!!ってかまたお前出てくるのかよぉぉぉぉ!!!!また俺の影が薄くなるだろうが!」
レモン「そういえばアクセルも出てたんだったわよね、あの特撮」
ヴィンデル「そういうことか。だがそうすると、狙い打って降臨する白鳥男はどうする?まだ奴はアビアノルートのはずだろう」
レモン「そこはまあ今回は無理そうだからまたの機会に降臨してもらうってことで」
ユウキ「それよりもアカオニが出てきたら今回のアクセルのシリアスな余韻がぶち壊しにならないか?」
レモン「じゃあ次回は赤鬼さんが出て来たところで『続く』って感じになるんじゃない?」
ヴィンデル「次回の終わり方までぶっちゃけちゃっていいのか?」
レモン「それでもいいんじゃない?基本的に『どんだけ~!?』ってツッコミ入れながら読むこと推奨なんだし」
シン「そんなの初耳なんですけど…」
アスラン「じゃあみんな次回までテンションフォルテッシモ~!!!」
シン「ちょwwwwアンタは、アンタのせいで朝っぱらから作者がテレビの前でぶちまけたオレンジジュースを返せえええええ!!!」