Seed-Ace_579氏_第05話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 22:43:21

『白い鳥』

ハイエルラーク基地のあるノースオーシア州・・・
ここは15年前の戦争でオーシアの信託統治領ノースオーシア州となったかつてのベルカの地で地元の人はまだ、この地の事を南ベルカと呼ぶそうだ。
そして、ハイエルラーク基地は練習飛行隊の基地であり、ブレイズたちがお世話にもなった所だ。
無論、おやじさんに操縦を教わった俺には馴染みが無い。
到着した俺達ウォードック隊は給油と整備を受ける間、基地内の暖炉がある談話室で休憩を取ることとなったがウォードック隊の経験談を聞きたい訓練生達に取り囲まれてしまった。
彼らの相手はチョッパーがする事となった。万年大尉に『漫談の才能がある』と言われるほどチョッパーはお喋りが上手い。
チョッパーはまだ、実戦を経験したことの無いパイロット達に今までの空戦の事を身振り手振りの大袈裟なジェスチャーも加えて面白おかしく語り、新米パイロット達を夢中にさせていた。
一方でブレイズにハイネ、ナガセさんにグリムはと言うとチョッパーにひよっ子たちの相手を任せてソファーでサンド島までの飛行に備えて休息している。
俺はと言うと・・・ハイネよりもこの世界に居る期間が短く、その短い期間も隔離されたサンド島で過ごしていた為にまだオーシアの文化などに馴染め切れてなく、ボロを出す可能性があるので談話室を出て雪の降る屋外でぼけぇーっと景色を眺めていた。

「ここにいたのか」
後から声がかけられる。振り返れば声の主はブレイズだ。
「ずっとサンド島に居て雪は久しぶりだからこの際、雪景色を良く見ておきたかったんで・・・」
そう言いながらはるか彼方を見る。
「この北ですよね? 核が落ちたのは・・・」
このハイエルラークの更に北には15年前のベルカ戦争で核爆発によって作られたクレーターが存在する。
連合軍の進撃を止める為、彼らは七つの自国の都市を核爆弾によって吹き飛ばし、自らを北の谷に閉じ込めてしまった。
コズミックイラでも核は使われた。だが、それは連合が敵対するプラントに対してだ。恐ろしい事に彼らは自国の都市で核を起爆させたのだ。まだ、市民が残っている都市で・・・
「ああ、確かにこの北だったな。15年前・・・まだ、俺が子供の頃の事だ。随分前の事だからおぼろげだけどあの日は確か、ラジオやテレビのニュースが慌しく核の事を伝えてたな。あ、お前の故郷は・・・」
「シュティーア市・・・核の起爆で消滅はしてませんけど放射能で人が住む事が出来ないんですよ。幸い、核が起爆した時は家族でノースオーシアの山中に疎開していたので大丈夫でしたけど」
ハイネが偽造したした俺の経歴では俺はベルカのシュティーアと言う街の出身になっていた。
この町は15年前のベルカ戦争で町の南方で核が起爆し、消滅はしなかったものの大量の放射能によって人が住む事が出来ない死の土地と化していた。
核の起爆によって電磁パルスに住民のデータも破壊され、書類の類も放射能に汚染されているお陰で役所に取りにいくとも出来ない為、俺の経歴での故郷にするにはうってつけだった。
因みに家族構成はコズミック・イラと同じで数年前に両親と妹は事故死し、俺は施設で育った事になっている
「そうか。そう言えばイーグリンからここに来るまでの間、気になっていたんだが・・・シン、お前はシンファクシのミサイルの爆発を見て『この世界にこんな兵器があるなんて』って言ってたけど・・・」
ブレイズの台詞に思わず動揺しそうになる。
シンファクシのミサイルの威力を見たとき、コズミック・イラでも見た事のないその兵器に思わず口にしていたのだ。
「あ・・・だって、燃料気化爆弾を超える威力と範囲で破壊力で核じゃないなんて普通じゃないじゃないですか? だから、こんな兵器があるなんてって・・・作戦中だったから不味かった?」
「いや、俺だってあんなのは初めてだからな・・・正直、直ぐにでも逃げ出したいくらいに怖かったよ」
とっさに思いついた言い訳にどうやらブレイズは納得したようだ。危なかった。

俺が危うくボロを出しそうになった翌朝、俺達ウォードック隊はサンド島への帰路へと付いていた。
いや、ウォードック隊だけではなく今回はひよっこ達を補充兵として引率していた。
ただ、チョッパーやハイネ曰く『戦場に出すには早すぎる』な彼らは空中給油を行える技量を持たず、途中の基地で一々着陸して給油し無ければならず、予定よりも遅くなってしまった。
その為か、俺達は自然と無駄話が多くなる。

おい、おやじさんに感謝でもしようぜ>>

なんですか?>>

おっさんがみっちり、航法を教えといてくれたおかげさ。おかげで俺らは連中に向かってエバれる>>

いいなぁ、俺は操縦と空戦技術ぐらいしか教えてもらってない>>

俺は補給とかで本土に用事があるから輸送機に乗せてもらってたまに航法の手伝いしてるから慣れてるけどな>>

サンダーヘッドじゃないがもう直ぐマクネリアだ。各機、着陸用意>>

聞いたでしょう、ひよっ子たち。着陸の用意をして>>
前方に基地が見えてくる。あれがマクネリア基地だろう。
ひよっこを引率する俺達は給油の為、着陸準備に入る。

着陸した俺達は給油の間、宛がわれた部屋で短い時間だが休憩を取ることとなったのだが、突然ブレイズが基地司令官に呼び出された。
しばらくして、彼は険しい表情の基地司令官と共に部屋に戻ってきた。
「みんな、非常事態だ。詳しい事は基地司令官殿が話す。注目」
「基地司令のワッケインだ。レーダーが当基地東のバセット宇宙基地を目指す複数の国籍不明機を捉えた。
現在、バセット基地ではSSTOの打ち上げ準備中で打ち上げを妨害する為に出撃したユークトバニア軍機と思われる」
司令官の状況説明にひよっ子たちが動揺する。彼らにとってはこれが初陣になるからな。
「SSTOにはアークバードに搭載するレーザーユニットが積載されており、何としても打ち上げは成功させなければならない。
よって、当基地で給油中の戦闘機隊も当基地指揮下に入り、ユークトバニア機を迎撃してもらう。ただし、教科未修の練習生は発進を許可しない」
どうやら、この基地の司令官は分別があるらしい。これならひよっ子たちがここで死ぬ事もないだろう。
「ありがとうございます、司令。聞いての通りだ。ナガセとチョッパー、グリムとハイネとシンの5名は出撃準備。練習生はここで待機だ。行くぞ」
俺達は基地司令に敬礼すると格納庫へと向かう。

白い鳥・・・それはそう呼ぶに相応しい姿をしていた。
はるか上空、宇宙空間でも低い高度に降りてきているその白い機体は肉眼でも見える。

アークバード

ナガセさんが教えてくれたそれの話を思い出す。
このバセット宇宙基地はオーシア・ユーク両国共同国際宇宙ステーション建設の為に作られたマスドライバーがある。
そして、宇宙ステーション建設の第一歩であり、機能を損失したユージアのストーンヘンジの代わりに未だに軌道上に残るユリシーズの破片を破壊する為に作られたのがアークバードだ。
だが、平和の為に作られたアークバードはシンファクシに対抗する兵器へと姿を変えようとしていた。
その為のレーザー兵器を積んだシャトルが今、マスドライバーの上で発射の秒読みを始めている。

なあ、よう>

なんすか?>

あいつぁ人工衛星みたいなもんだろ? 何だってあんなところを>

機動できる軌道船なんですよ>

んなことはわかってらい。大気摩擦を利用して軌道を変えるシステム自体が衛星兵器としては脆弱じゃありませんかって、言ってるんだ>

それぐらい、分かってるから安全な空域で軌道変更するから大丈夫だろう>

でもさ、もっと高度上げた方がよかねえか?>

チョッパー、今日はやけにお喋りじゃないか? サンダーヘッドが居ないからなのか?>

お、シン。良く分かるじゃないか。あの声が無くて思う存分喋れるもんだぜ。まあ、ちょっと寂しいしけどな>
今回はサンダーヘッドは居ない。代わりに地上の防空指揮所が俺たちを管制する。

秒読みを中止しろ! こちら、基地防空指揮所。
 敵編隊は輸送機多数、それに護衛戦闘機が随伴している。敵の狙いは当基地の占拠だ>

まさか! 敵はオーシア本土の侵攻まで考えてるの?>
単に打ち上げを阻止するなら爆撃機や戦闘攻撃機を投入するはずだ。
それが輸送機多数と言う事は・・・空挺部隊を降下させて基地を占領するつもりなのか。

ブレイズよりウォードック各機。基地の防衛設備は当てに出来ない。俺達だけで何とかするぞ>

了解>

レーダーに敵機が映ってくる。
その内の幾らかから更に反応が生まれ、ゆっくりと降下し始めた。
<<輸送機から空挺戦車が降下!>>
<<おい、グリムにシン。戦車を切り離す前に狙えば簡単に墜とせるぞ。分かるか?>>
<<了解。パラシュートを狙ってみます>>
<<減速出来ずに落下するか・・・分かった、やってみる>>
<<チョッパーとアーチャー、レッドアイ。俺とエッジとイグナイテッドは一護衛戦闘機を押さえるから戦車は任せる>>
ブレイズとナガセさんのF-5とハイネのMig-21が翼を翻し、敵戦闘機へと向かっていく。
一方でチョッパーとグリム、そして俺は輸送機と輸送機から降下した空挺戦車を狙う。
<<護衛戦闘機、何をしてる! 空挺戦車が狙われてるんだぞ、何とかしろ!>>
<<無理言うな。こいつら動きが・・・ざ・・・ざ・・・>>
<<ああ! ジリノフスキーが落とされた!>>
ハイネ機が敵機を撃墜したのを皮切りにブレイズ達が敵戦闘機を押さえ込む。
その隙に降下していく空挺戦車と白いパラシュートを視界に捕らえ、HUDに映し出されたガンレティクルがパラシュートに重ねるように機体を動かしてトリガーを引き絞る。
バルカン砲が唸り声を上げ、砲口から機関砲弾が吐き出されてパラシュートに突き刺さり、ズタズタにした。
パラシュートを切り裂かれた空挺戦車は石の様に落下していく。
<<パラシュートが!? うわ・・・うわぁぁ・・・>>
<<12号車が落下していく!>>
<<こっちに落ちて来るぞ! 退避!>>
空挺戦車はそのまま、地面に叩きつけられて爆発する。
見ればチョッパーとグリムもパラシュートに穴を開けるか空中でミサイルを当て、戦車を破壊していた。
その間にも輸送機は次々と空挺戦車を降下させ続ける。
<<落下傘数えたか? 俺は途中であきらめたぞ>>
<<数が多い。ダメだ、着地された>>

着地した空挺戦車がこちらに進軍してくる。戦車をマスドライバーへ近づかせるな>>
次々と空中で破壊するかパラシュートに穴を開けながらも取りこぼした空挺戦車が着地しマスドライバーを目指して進撃し始める。
<<こちら西地区守備隊、第1トーチカを敵に突破された>>
<<シン、ロケット弾をぶちかましてやれ!>>
俺のF-1にはマクネリア基地でロケット弾ポッドが搭載されていた。
対地攻撃にはもってこいの代物だ。機首を地上を進撃する戦車へと向ける。
高度計の数値がぐんぐん下がる中、ロケット弾発射のタイミングを見計らう。
<<もうちょい…今だ! ロケット弾斉射開始!>>
タイミングを合わせてハードポイントに装備されたポッドから発射されたロケット弾が戦車に降り注ぎ周囲で炸裂、爆炎と土煙が戦車を覆いつくす。
爆炎と土煙が晴れて戦車の姿が露になるが俺に狙われた空挺戦車は無惨なスクラップへと姿を変えていた。
<<輸送機ごと落とせばちょろいもんだぜ>>
<<第2エンジン被弾! コントロールが保てない。う、うわぁぁーー!!>>
チョッパーに右翼のエンジンを吹き飛ばされた輸送機が錐揉み状態で墜落していく。
地上に着地した他の戦車もグリムに装甲の薄い上面を銃撃されて撃破されている。
輸送機と空挺戦車は確実にその数を減らしていった。

<<こちら基地防空指揮所。地上に降下した空挺戦車は全て撃破され輸送機が撤退していくのをレーダーで確認した。これ以上輸送機が進入する様子はないが戦闘機が撤退する様子がない、警戒せよ>>
防空指揮所の報告の通り、戦車は全て地上で黒煙の元となり輸送機の姿は無くなったがまだ戦闘機は居座り、俺たちウォードッグ隊と空中戦を続けていた。
今もF-5の発展型であるF-20の後に付き、ミサイルを発射する。
<<レッドアイ、フォックス2!>>
ミサイルはF-20の胴体に突き刺さり、炸裂。F-20はバラバラになりながら落下して行く。
<<ん…なんだ、これは!?>>
落下して行く残骸の直ぐ側を何かが飛びぬけていく。
小型の航空機のような…巡航ミサイル!?
<<地上兵力による宇宙基地占拠をあきらめた敵は破壊作戦へ移行した模様。レーダー圏外から飛来する巡航ミサイルを多数捕捉。戦闘機は巡航ミサイルを撃墜せよ>>
<<こちら、ブレイズ。巡航ミサイルを捕捉。各機、マスドライバーに当てさせるな>>
<<こちら飛行実施責任者のアダム・ギッテルマン。SSTOの発射を決行する。打上シークエンス再開。各員へ、打ち上げのタイミングは今しかない。空軍が頑張っているんだ、我々も最後まで立派にやり遂げよう。以上だ>>
<<こんな状況で打ち上げをするつもりなのか!?>>
<<敵さんも本気なら地上の連中も本気になってきたってか>>
<<なら、こちらも全力で落とそう>>
打ち上げ半の努力を無駄にはさせない。
翼を翻し、HUDに巡航ミサイルを捉える。ロックオン、ミサイル発射。
巡航ミサイルの爆発に巻き込まれないように素早く反転。
みんなもそれぞれ、巡航ミサイルを落とすがそれを掻い潜ってミサイルがマスドライバーに着弾する。
<<カタパルト付近の映像が途絶えた。被弾したのか?>><<カメラが故障しただけです!>>
<<なめてかかるな! 集中しろ!>>
巡航ミサイルを落とす俺達に敵戦闘機が襲い掛かる。
それを避け、逆に落としながらもミサイルを撃ち落し続ける。
<<イグナイテッドより各機。ミサイルの発射母機を発見! ステルス爆撃機だ。攻撃する>>
<<戦闘機隊、敵に発見された! 助けて…>>
<<ナヴァルーニエ1が落とされた! 爆撃機を狙わせるな!>>
ハイネが発射母機であるステルス爆撃機を撃墜。
飛来する巡航ミサイルの数が心なしか減った。
<<ステルス爆撃機は発見次第に撃墜しろ。ただし、ミサイルを優先するのは忘れるな>>
ブレイズの指示を聞きながらミサイルをまた一機落とし、高度を上げる。
一瞬、レーダーに反応が現れ消えた。反応が現れた方向を見れば黒い飛行物体が見えた。あれがステルス爆撃機?
接近すれば爆撃機の姿がはっきり見えてくる。航空機年鑑で見たB-2ステルス爆撃機だ。
<<こちらレッドアイ。俺も爆撃機を発見した。撃墜する>>
<<ナヴァルーニエ2より護衛機へ。敵機に発見された。援護を求む>>
<<管制センターより空軍。打ち上げ1分前だ。敵をもう少し押さえ込んでくれ>>
一旦、B-2よりも高度を上げて機首を下げ、HUDの中で大きくなっていくB-2に上からバルカン砲を放つ。
そのまま直ぐ側を通過して水平飛行に移る。上方を見ればエンジンに被弾したのか、爆撃機は黒煙を上げながら高度を落としていた。
<<被弾した。くぅ…離脱は無理か。ただでは落ちん! 残りのミサイルを全て発射しろ!>>
<<爆撃機を撃墜! これからマスドライバー上空に戻…?>>
爆撃機の開いたウェポンベイから何かが四つ、落下する。
それは爆撃機からある程度落下すると翼を広げ、加速していく。巡航ミサイル!?
<<後は任せたぞ…イジェークト!>>
<<しまった。最後っ屁に4発発射された!>>
<<秒読み…20、19、18、17、16…>>
秒読みが始まる中、爆撃機から乗員が脱出するのを尻目にスロットル全開、更にアフターバーナーも点火させてミサイルを追う。
直ぐに追いつき、最後尾の巡航ミサイルをロックオンしてミサイル発射。続いてもう一発の巡航ミサイルにもミサイルを発射する。
俺の発射したミサイルは二発とも命中。破壊するが俺の機のミサイルはもう無い。
残りの2機はガンでやるしかないが距離が開きすぎている。間に合わない。

ダメもとで巡航ミサイルを追いかけようとする俺の前に誰かのF-5が割り込む。
<<ブレイズ、フォックスツー>>
ブレイズだ。そのまま3基目の巡航ミサイルにAAMを発射し、撃墜する。
<<3、2、1、ゼロ! リフトオフ!>><<第1ポイント通過! 続いて第2ポイントを通過!>>
SSTOがマスドライバーの上を加速し始めるが巡航ミサイルが迫る。今度はブレイズも間に合わない。
<<第3ポイント通過!>> <<マスドライバー、巡航ミサイル被弾!>>
最後の巡航ミサイルがマスドライバーに命中、大爆発を起こしその爆炎と土煙の中にSSTOが突っ込む。
SSTOは…そのまま爆炎を突き抜けて何事もなかったようにマスドライバーの上を加速。そして、マスドライバーの終点から空中へ出たSSTOは空へ…アークバードの待つ宇宙へと上昇していく。
<<SSTOの状況を確認しろ!>> <<全て大丈夫です。全システム良好>>
SSTOは打ち上げ時の高速飛行や大気圏突入の高温に耐えられるように設計されている為、あの程度では問題ないようだ。
<<ああ、今見えた。いい眺めだ。最高だよ! 空軍さん、責任者のギッテルマンだ。打ち上げは成功した。ありがとう>>
<<防空指揮所よりウォードックへ、敵機の撤退を確認。もう大丈夫だ。マクネリアに帰還せよ>>
<<了解。ウォードック隊はこれより、マクネリア基地に帰還します>>
SSTOの打ち上げ阻止に失敗したユーク軍機はもう居ない。ウォードック隊はひよっこ達の待つマクネリア基地へ帰還していく。

「ウォードック隊の諸君、ご苦労だった。諸君らの活躍によってユークトバニア軍による打ち上げ施設の占拠は阻止され、SSTO射出計画は成功した。
射出されたSSTOは大気圏上層へと降下したアークバードへとドッキングし、レーザー兵装モジュールを受け渡しも完了している」
ブリーフィングルームでデブリーフィング…帰還後の報告をした俺達にマクネリア基地のワッケイン司令がSSTOによるアークバードへの荷物の受け渡しが成功した事を教えてくれた。
「いえ、自分達は任務をこなしただけです。それに司令には感謝しなければなりません。ひよっこたちを出撃させなかったお陰で彼らは死ななかったんですから」
「なに、彼らは戦力外と考えて居ただけのことだ。では、サンド島からの分遣隊第108戦術戦闘飛行隊所属機は整備及び給油作業が終了次第、サンド島へ帰投せよ。君たちの武運を祈っているぞ」
「ありがとうございます」
敬礼するワッケイン司令に俺たちも敬礼する。
元の世界にもこれぐらい良心的な指揮官が居ればな…っと、俺は思う。

それとは対照的に我らがホームベース、サンド島基地の司令官であるふとっちょペロー大佐は余り良心的ではない。
俺たちがひよっこを引き連れて帰還するなり、発した言葉がこれだ。
「やはり諸君らは疫病神のようだ」

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