ある愛の物語(アンディ&アイシャ編)・第2話
いつものように店は開かれ、お客がちらほらいる状態だったが、アンディーは少し浮かない顔をしていた。
ひろし 「マスター、何かあったんですか?」
アンディ「!? い、いや別に何でも…」
ひろし 「そうですか?」
アンディ「すまない、心配かけてしまって…お待たせ」
ひろし 「ありがと、では…!!マスター苦いよこれ」
アンディ「あ、申し訳ない!、すぐに違うのを・・・」
ひろし 「やっぱりマスターなんか変だよ、ほんとどうしたんですか?」
アンディ「いや、本当にに何でも…」
アンディは、しんのすけに言われたことが頭から離れなかった。
好きなら何で会わないの?…確かに好きだ、彼女の事は…
しかし…もう月日が経ち過ぎている…彼女に他に好きな人が出来て、今二人で幸せに暮らしてるかもしれない…
そこに自分がしゃしゃり出てしまえば、それを壊してしまのではないだろうか?
そんな心の葛藤をずっとしていた…
………
……
…
~夕方~
アンディ「……」
ダコスタ「店長、どうしたんですか? 何か、今日おかしいですよ?」
アンディ「あ、まぁ…気にしないでくれ、ダコスタ君」
そう言っているアンディの心情を察してかダコスタは彼に一言言った。
ダコスタ「行って来てもいいですよ…」
アンディ「えっ?」
ダコスタ「気になるんでしょ?、昔の彼女の事」
アンディ「ダコスタ君!?何でそれを!」
ダコスタ「そんなことはいいですから、早くケジメつけて来てくださいよ」
アンディ「いや、その、しかしだな…ここがあるし…」
ダコスタ「ちゃんと僕が留守番しますから、気にしないで行って来てくださいよ」
アンディ「ダコスタ君…」
アンディーの中にあった鎖が、すっと音を立てて解けていく感じだった。
そして、しんのすけに言われたことが頭によぎる…決心はついた。
アンディ「ダコスタ君…少し出かけてくるよ…」
ダコスタ「はい、いい結果待ってますよ」
ダコスタに暖かく見送られると、アンディーは喫茶「砂漠の虎」を後にした。
………
……
…
アンディーは懐かしい…十年前のあの地にたどり着いていた。
砂ぼこりはあの日と変わらずたくさん舞っており、
高い建物が所々に点在し、風景は多少は変わっていたが、大方は昔のままだった。
アンディ「…なつかしいな」
アンディは周りを見渡しながら、地図を片手に彼女の家の方面へのバス停へと向かった。
バスが到着し走り始めると、窓から見えて走り去っていく景色は、都市から離れるにつれ、最近の建物は徐々に見ることが少なくなり、代わりに昔の懐かしい建物が見えることが多くなっていった。
ここまで来ると、十年前とさほど変わらない景色だった…
彼女の家の近くの最寄のバス停に到着する頃には、もう日が暮れ始めていた。
アンディ「…着いたか。さて、どっちだったか…」
アンディは地図を片手にわずかな記憶をたどりながら、彼女の家へと向かった…
………
……
…
アンディは彼女の家へ着き、玄関戸を叩こうとしたが少しためらった…
またよぎるあの自分の葛藤…
そんな自分を振り切るかのように彼は意を決して戸をコンコンと叩く。
音に気づいたのか誰かがハ~イと言ってこちらに来るのがわかった…
??? 「は~い、どなた?…あれ、貴方…」
アンディ「お久しぶりです…」
玄関から出てきたのはアイシャの母親だった。
流石に親子だけあってか、やはりどこかにアイシャの面影があった。
アンディ 「突然の訪問、申しわけありません…」
アイシャ母「…来てくれなかったのよ…」
アンディ 「えッ?」
アイシャの母が小さく声で何かを言っていたが、アンディーには聞こえていなかった…
拳を強く握り締め、体を小刻みに震わしていた…
アイシャ母「どうして…どうしてもっと早く来てくれなかったのよ!!
あの子を…あの子を返してよ!!あの子を…」
アイシャの母はそうアンディに吐き捨てると、その場に泣き崩れてしまった。
アンディも何が起きたのか理解できなかったが、嫌な予感だけは察していた。
………
……
…
アンディ 「亡くなった?…亡くなったって、どう言う事ですか!」
アイシャ母「もう2年も前の話よ…あの子、流行り病にかかってね…
私達は大きい病院に行こう、っていったんだけど…
あの子、あなたがいつ来るかわからないし、
どうせ治らないならここで待ってるって聞かなくて…」
気持ちが落ち着いたアイシャの母と椅子に向かい合い、彼女の口から言われた事実にアンディは動揺を隠せなかった…
アンディ 「そんな…」
アイシャ母「さっきはあなたを責めてしまってごめんなさい…
けど、せめてあなたにあの子の最期を看取って欲しかったの…
そうしたらあの子も…あ、そうだわ」
アイシャの母は何かを思い出し…おもむろに棚の引き出しを開け、取り出したものをアンディーに手渡した。
それは、封に包まれた手紙のようだった。
アンディ 「これは?」
アイシャ母「あの子が…もしもあなたが来たらこれを渡すように、って言われてたの」
アンディ 「アイシャが…僕に?…」
アンディはその手紙を受け取ると、封を開け、中の手紙を取り出した。
文は手紙の半分程度で、文字は力が入っていなかったのか文字の濃さは薄かった。
~アンディー…あなたがこの手紙を読んでいる時、私はもうこの世にはいないでしょう…
生きている間にあなたにもう一度会えなかったのが唯一の心残りですけど、
あなたがこの手紙を読んでいるということは、あなたが私に会いに来てくれた…
約束を果たしに来てくれた…それだけで私は幸せです…
どうか、あなたが末永くお幸せであることを願います…
もっと書きたいことがあるけど…敢えて書きません。
きっとその時は、私も隣でこの手紙を元気に二人で茶化しあって読んでると思うから…
その時までのお楽しみ♪
P.S. あなたの珈琲…好きでしたよ アイシャ~
アンディ「あ…アイシャ…」
彼の目からは止め処なく涙があふれ、持つ手紙の上にぽつぽつと落ち、手紙の文字をぼかしていた…
アンディ「アイシャ…ごめんよアイシャ…僕が…僕が…」
手紙を胸に抱え、アンディーはその場に倒れこみ、泣き崩れた…
アイシャの母も、泣いている彼を見るのがつらそうで、目線をそらしていた…
………
……
…
アンディ 「本当に、夜分遅くすいません…」
アイシャ母「別にいいのよ…それよりこれからもちょくちょく、あの子を…見に来てあげてね…」
アンディ 「…はい…」
アンディは肩を落として小さく頷いた
アイシャ母「あ、そうそう…はい、これ…」
アイシャの母は、アンディーの手に小さなサボテンの鉢をポンと置いた…
サボテンの上にはもうそろそろ花が咲きそうな蕾があった…
アンディ 「これは…アイシャが大事にしていた…」
アイシャ母「あなたが持ってて…その方がアイシャも喜ぶと思うから」
アンディ 「……」
アンディーは黙って頷き、そのサボテンを受けとると彼女の家を出て行った。
目には涙が溢れそうな位溜まっていた…
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