~1月2日、野原家~
アスラン「みさえさん。今日は明日の戦争が始まる前の、最後のご挨拶に来ました」
みさえ 「そう…決めたのね?自分の意志で戦うって…」
アスラン「はい…シン、ルナ、レイも覚悟を決めました。もう俺達に迷いはありません。」
みさえ 「残念ね。前の戦争で負傷したあなた達が、また戦場に立つなんて…」
シン 「みさえさん!俺達だって戦争になんか行きたくない…!
なんで敵味方に分かれて戦わなきゃいけないんですか!」
みさえ 「仕方ないのよ。お互い、譲れないものがどうしてもあるでしょ?」
シン 「でも!俺も相手も憎みあってすらいないんですよ?!……どうして…こんな…!」
みさえ 「私にも守らなくてはいけない家族がいる。家族の為に戦わなきゃいけないんだったら、私は戦うわよ」
アスラン「みさえさん…俺達はザフトレッドです。受けた任務は必ず遂行する…たとえ、あなたでも…」
みさえ 「ええ、手加減しなくていいわ。
野原みさえの名と誇り、そして家族への愛の為に…私は決して倒れることは無いでしょう。」
アスラン「みさえさんの宣戦布告、たしかに承りました。明日……戦場で会いましょう」
―明日…1月3日。スーパーミネルバ、初売りの日。
ヤキンドゥーエの決戦すら凌駕する世紀の大激闘が、今まさに始まらんとしていた―
《コンディションレッド! 正月初売り編》
そして…1月3日、午前9時45分。スーパーミネルバの前には大勢のお客さんが訪れていた…
アーサー「え~商品は充分にご用意しておりますので、
お客様におかれましては、店内で走ったりしないようお願いを申し上げます…」
アスラン「今、副店長が入り口でお客を整理しているが、
一度店内に入り込まれたら……どうなるか、分かっているな?」
ルナ 「お客(特におばさん)は暴徒同然になる…!」
レイ 「だがそれらを押さえつけるだけなら、他の店員でも何とかなる。
やはり最大の障害は…”かすかべの子連れ鷹”か」
シン 「ひまちゃんをおぶったみさえさんか…俺達はあの人を止められるんだろうか?」
アスラン「止めなくてはならない。この愚かな戦争を1日も早く終結させる為に…みんな、この配置図を見てくれ」
* * *
アスラン「敵はまず入り口近くの福袋をとるハズだ。そしてバーゲン会場へ向かう。距離が近いからな…
つまり、今回も短期決戦になる」
レイ 「開店後10分で勝負がつく、という事ですね?
配置はまずシンが立ち向かい、次が俺、ルナ、そして最後はアスランですか」
アスラン「野原家でお世話になっているシンならば子連れ鷹も少しは怯むかもしれん。
ルナ、レイは全力で任務を遂行してくれ」
シン 「アスランはどうするんだよ?」
アスラン「もし…子連れ鷹が最終ラインを守る俺の所に辿り着いたら……最後の手段を使う」
ルナ 「最後の……手段?」
メイリン「コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!
全店員は速やかに所定の位置にて待機せよ!繰り返す……」
アスラン「いよいよか…よし、行くぞみんな! メリークリスマス!(地獄で会おうぜ)」
3人 「メリークリスマス!!(地獄で会おうぜ)」
* * *
アーサー「あけましておめでとうございます。スーパーミネルバ今年初の開店でござ……うわおう!」
店内に雪崩れ込む客(特におばさん)。その前にシンが立ちはだかる!
【第1防衛ライン シン・アスカ】
シン 「これだけの数!どこに居る子連れ鷹…目で見るな、体の中の全神経を研ぎ澄まて………そこだぁ!」
??? 「うわ…」
シン 「つ、捕まえた!みさえさん、店内を走るのは……あれ?」
しん 「も~父ちゃん、走るのが遅いぞ~?」
ひろし 「そう言われても…よ、よう。シン君」
シン 「しんちゃんを背負ったひろしさん?……しまった、囮か!レイ!ルナ!」
【第2防衛ライン レイ・ザ・バレル】
レイ 「威力を調整した改造エアガン…こんな物を使いたくはないが、止まらぬとあれば…
来た!シンのヤツ、しくじったな!」
みさえ 「レイ君…そこを退いてくれないかしら?」
レイ 「く、速い!だが追えないほどの動きではない!みさえさん!止まりなさい!止まらないと撃…」
レイは最後までセリフを言えなかった。なぜなら、みさえが投げた車のキーの先端部分が、レイの眉間を直撃していたのだ…
みさえ 「甘いわよレイ君。銃を構えたら、警告をするより即座に威嚇射撃しなきゃ。
そうすれば、私も立ち止まったでしょうに…」
野原みさえ。バーゲンに向かう時の彼女は、まるで幾多の戦場を駆け抜けた、歴戦の兵士そのものであった。
【第3防衛ライン ルナマリア・ホーク】
ルナ 「うわああああ!(エアガン乱射中)落ちろ!この!この……うっ…(ばたっ)」
みさえ 「ふふ…射撃が下手ね、ルナちゃん。まあ、そこがいい所でもあるんだけど」
ひまわり「たい!たい!」
みさえ 「大丈夫よひま。首の後ろに手刀を軽く入れただけだから。
あなたも大きくなったらいつか、この戦場に立つ日がきっと来るのよ?
その日の為にお母さんの戦いぶりを見ていてちょうだいね」
* * *
アスラン「3人とも突破されたか…そう簡単にいくとは思ってなかったが、ここまでとはな。
だがここで止める!みさえさん…勝負だ!」
みさえ 「おそらく最後の相手はアスラン君ね…ふふ、ヘルメットを被っているかぎり、私には勝てないわよ?」
【最終防衛ライン アスラン・ザラ】
アスラン「みさえさん…福袋はお一人様1つまでのはずですが?どうして2つも持っているんです…?」
みさえ 「もう1つはひまの分よ。あら?今日はアスラン君、ヘルメットを被ってないようね?」
アスラン「同じ徹を踏むわけにはいきませんからね…みさえさん!あなたをここで止める!!」
みさえ 「君の後ろの特売品…その中でも一番の掘り出し物は私が貰うわ!」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
アスラン「…!なんてスピードだ…!これが主婦の底力だと言うのか?!
だが、今回は俺にも奥の手がある!くらえ…
太 陽 拳 ! !」
カ ッ ! ! !
みさえ 「……!」
アスラン「どうです!この強烈な光の中では、いくらあなたといえども…(とすっ)…え?」
みさえ 「甘いわよアスラン君。君が光を武器にするんなら、私たちはその光を防ぐ工夫をすればいいだけの事よ?」
アスラン「サ、サングラス…!ひまちゃんまでいつの間に…そ、そんな…がくっ」
みさえ 「太陽拳…中々の技だけど弱点もあるわ。
その技の弱点はね、使った本人もその光で周りが見えなくなる事よ。
アスラン君、私が見えなかったでしょ?だから、私の手刀をまともに食らった…
まだまだ修行が足りないわね」
ひまわり「たー、たー!」
みさえ 「あ、はいはいひま。じゃあゆっくりお買い物をしましょうね~」
―こうして、スーパーミネルバの誇る4人の精鋭は、またしてもたった1人の主婦の前に敗れ去った。
ちなみに4人ともそのすぐ後に押し寄せたオバサン軍団に飲み込まれ、
それぞれ全治数日のケガを負ったことはいうまでもない。
今回は負けたが、彼らとカスカベの子連れ鷹との戦いはこれからも続くだろう。
そこにバーゲンセールのチラシがある限り―
~その後~
ひろし 「なあ、この色のセンスが悪いセーターは俺が着なきゃいけないのか?」
みさえ 「何よ、人が苦労して買ってきた特売品にケチつけるの?」
しん 「シン兄ちゃんも同じ特売品のセーターを着てるゾ?」
シン (なんか複雑な気分だ…いてて…)
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