ここは魔法が存在する世界ミッドチルダ。
その東部にあるとある町を数人の人間が歩いていた。
人数は4人。
男性が3人、女性が一人である。
「それにしてアルフ、大丈夫なの?その形態に戻って。フェイトに負担がかかるって言っていつもはもっと小さい姿なのに」
その中の少年、時空を管理する字句言う管理局の無限書庫の司書所、ユーノ・スクライアはその横にいる狼の尻尾と耳を生やしている、いつも書庫での仕事を手伝ってくれている女性、アルフに言う。
「ちゃんとフェイトにも許可とってあるし、なにより子供形態はあたしが勝手に始めたみたいなもんだし問題ないよ。それよりもなんかあったとき、小さい身体よりこっちのほうが動きやすいんでね」
彼女はそのフェイトという人と契約している狼の使い魔。
普段は今よりも小さい子供モードなのだが、今回ユーノが大事な仕事でこの町に用があると聞いて、護衛目的で数年前まで使っていた人間年齢的には16歳くらいの姿になっている。
ただ、その分主であるフェイトに負担がかかるので、そのことをユーノは気にしていた。
「それに、あたし以外に護衛がついてるって言っても、新米二人じゃちょっと頼りないかなって」
それを聞いて後ろにいる黒い髪で、特徴的な紅い目をしている少年は少し不機嫌になる。
確かに入局してまだ2ヶ月で、新米もいいところだ。
何回か巡回任務をこなしたが、実戦経験は一度も無い。
一方その横にいる金色の髪を長く伸ばしてる少年はいわれても微動だにしない。
そんな二人に新たに言い渡された仕事、それは「司書長、ユーノスクライアを片道の間だけ護衛」というものだった。
それが終れば、その日の仕事は終わりで、後は彼の顔見知りである現地に駐留している魔術師が護衛を行うという。
二人の反応を見て苦笑いを浮かべるユーノ。
「それでも、二人は今年入ってきた新米魔術師でも期待のルーキーらしいじゃないか」
黒髪の少年、シン・アスカと金髪の少年、レイ・ザ・バレル。
今年入局してきた魔術師の中で、シンは空戦、レイは陸戦でトップの成績を示している。
「へ?そうだったのかい?」
アルフはもう一度二人を見る。
そうこういっているうちに目的地であるこの町の図書館に到着する。
「じゃあ僕達は中に入るから、君達は一応今日のところは仕事は終わりということになっている。
この前巡回任務が終ったばっかりって聞いたから、身体を休めといて」
ユーノの言葉に「わかりました」とこたえるレイ。
シンもぶっきらぼうだが答える。
二人は、仲間を喫茶店で待ち合わせをしているのでその場を後にした。
「そういえばさユーノ。現地に駐留してる魔術師って誰なんだい?」
アルフの問に聞いてなかったの?いった感じでユーノは言う。
「帰りはなのはたちに護衛してもらうことになっている。フェイトも一緒だよ」
それを聞いて本当かい?と聞いてくるアルフ。
どうやら聞いていないようだった。
「そういえば久しぶりだな、なのはたちに会うのも」
お互い仕事が忙しく、ここしばらくなかなか会えていない。
「それもそうだね。フェイトも元気でやってるといいけど」
アルフもユーノの仕事の手伝いでここ最近自分の主には会っていない。
「おっと、そろそろ行かなきゃ。あ、アルフ。無限書庫では少し多めに見てるけど、あんまり図書館では騒がないでね」
ユーノの問にあいよ、と返事をするアルフ。
本当に守ってくれるか心配だったが、待ち人を待たせるわけにもいかなかったので中に入って行った。
「そろそろですかね?」
ここはユーノたちがいる町のとある喫茶店。
そこには二組の男性がいた。
一人はどこかお金持ちという感じがして紳士的な言葉で対応する30代くらいの男性。
「ええ、そうですね」
もう一人の男性も金色の髪をしているが、こちらはそれを長く伸ばしていて、顔に特徴的な傷がある。
それ以前に、どこか軽そうな感じが漂っている男であった。
「やれやれ、やっと見つけることが出来ましたね。何年振りでしたっけ?」
男性はひい、ふう、みい、と一つづつ指を曲げて数える。
「4年です」
傷の男は簡潔に答えた。
ああ、と相槌をうつ男性。
「そうでしたね。月日がたつというのもはやいものですね」
男性はそういって少し大げさにポーズを取る。
「それよりいいのですか?」
男の言葉にはい?と疑問符を浮かべる男性。
「あなたのような人物が最前線で行動するなど……」
男の言葉にやれやれ、と方を落とす。
「確かにそうですが……渡しお手魔術師の端くれ。自分のみ喰らい自分で守れますよ」
それに、ともう一言付け加える。
「私は前線での彼らのアドバイザーでもあるのですよ。自分でやったことは自分でしないと」
それで話の話題が変わった。
「あれは使えるのですか?ちょっと内心不安な気がするのですが……」
「まあ、今回のようにただ暴れるだけなら現在は問題ありません。それに、それを言えばあなただって同じでしょう?」
「まあ確かにそうですけど」
男性はそういって時計を見る。
「そろそろ時間のようですね。あれにもどのようにしたらいいか言っておく必要もありますし」
男性の言葉にそうですね、と答えて二人は立ち上がり、お金を清算する。
「あ、代金は自分が」
男はサイフを手にしようとしたとき、男性はその手を止めた。
「私から誘ったんです。ですから私が払うのが道理です」
そういって代金を支払う男性。
二人は外に出てある場所へと向かう。
「それでは、失敗が起きないことを祈りましょう。ネオ・ロアノーク」
「そちらも。ムルタ・アズラエル」
二人の男はそれぞれの場所へ向かっていった。
「はやてちゃん、おまたせ」
とある街角で、二人の女性が待ち合わせをしていた。
走って待ち合わせの場所へ向かっている女性は、茶色の長い髪をサイドポニーでまとめている。
「なのはちゃん、ちょっと遅刻」
かわってもう一人の少女、八神はやては笑いながら答える。
「ごめん。ちょっと忘れ物を……」
なのはは少し苦笑いを作る。
『なのはちゃん、何を忘れたんですか?』
ふと、はやての肩に乗っているデバイス、リィンフォースⅡが話に興味を持った。
ちなみに、Ⅱはツーではなくツヴァイと読む。
リィンの声に少し脂汗をかきながら答えるようとはしないなのは。
それをなのはの変わりにとある物が答える。
『私です』
そういってなのはが首にぶら下げているペンダント、もといデバイス、レイジングハートエクセリオンが答える。
それを聞いて大いにこけそうになるはやて。あやうくリィンを落としそうだった。
なのはの話ではこうだった。
数日にも及ぶ訓練生の指導で疲れ果て、今日の仕事、司書長の仕事でロストロギアを持ち帰るユーノ・スクライアの護衛も昼からということもあり、先日の夜は爆睡した。
そして、今日目が覚めるとはやてとの集合時間に遅れそうになり、あわてて準備をしていて、急いで出かけようとしたら自分の相棒、レイジングハートから『忘れないでください』という声が聞こえ、いそいで取りに帰ったということだ。
その話を聞いたはやてが半ば呆れる。
「普通戦技教導官が自分のデバイス忘れる?しかも結局遅れた理由って単なる寝坊やし」
「そこまでいわなくても……」
容赦ないはやてのことばに軽く落ち込むなのは。
『そういえばこの前、ヴィータちゃんが言ってました。指導が終ったとき、思いっきりイスに躓いて、みんなの笑いものになってたって』
「ヴィータちゃん……」
黙っておいてっていったのに……おそらく彼女のことだろう。リィンフォースと話していて、つい喋ってしまったのだろう。
「なんか、そういうとこは昔っからあんまし変わってへんな」
魔術師としてS+の実力を持つなのは。しかし、運動神経は以前と変わらないままである。
今回のように子供でもあまりしない妙なミスをたまに起こし、そのたびに自分の副隊長でもあるヴィータによくからかわれている。
「まあこのまま立ち話も何やしとりあえずユーノ君のところに行こう。フェイトちゃんは執務官の仕事で遅れるっていよるし」
そだね、ととりあえず気持ちを切り替えたなのははユーノがいるという図書館に向かう。
「そういえば、ユーノ君と会うのも本当にひさしぶりだね。ずっと忙しかったし」
最後に会ったのは確か3年前で、偶然皆が同じ日に休暇が取れて、自分の親が営んでいる店、翠屋で簡単なパーティーを行ったのが最後だった気がする。
「なのはちゃんはそうやね。うちはロストロギアのこととかでたまに会ったりするけど」
ふと、はやては今後について話す。
「なのはちゃん、今度の休みに、久しぶりにアリサちゃん達にでも会わん?」
はやてが部隊長を務めている機動6課は、優秀ゆえに出撃回数が多い。
ここ最近、ロストロギア関連の事件が多いというのも一つの理由だ。
それで、上のほうかに、ユーノ・スクライアの護衛が終れば五日ほどの休暇を与えるといわれた。
「そうだね、アリサちゃんたちも大学が休みだったらいいけど……」
だが、それは向こうの時間帯では今は確か夏季休暇のはずだから問題ないだろう。
時空によって時間帯が違うのでややこしくなる。
話すのに夢中で、曲がり角で人が出てくるのにわからず、その人とぶつかってしまう。
「おっととと…」
いきなりのことでバランスを崩すはやて。
それはリィンフォースも同様で、思いっきり地面にぶつかってしまう。
はやてももう少しで倒れそうだったが。
「うぎゅ!?」
「大丈夫ですか?」
ぶつかったもう一人…男性のようだが、男性ははやてを支える。
……リィンフォースを踏んづけていることに気付かず。
だが……
「は……はやてちゃん…」
「……//////…」
はやては顔面を真っ赤に染める。
男性がはやてを支えるため、わざとではなさそうだが、彼は思いっきり彼女の胸を掴んでいるのだから。
「これが、例の?」
図書館で、ユーノは館長から一冊の本を渡される。
「はい、4日ほど前に新しい書物を搬入して、これが入ってました」
ぱっと見は、ただの古い書物だ。
だがわかる、その本から魔力が感じられることを。
「ずいぶんとまあどす黒い魔力だねえ」
アルフもその魔力に感じていて、脂汗をかく。
直感でわかる。このロストロギアは危険だ。
「わかりました。ではお預かりします」
そういってユーノは書物をどこにでも売ってそうな袋に入れる。
そのこうどうに、アルフは不思議がった。
「そんなのに入れて大丈夫かい?」
だが、その答えはすぐにわかる。
少しづつではあるが、あのどす黒い魔力の感覚が薄くなってゆく。
「これは少し特殊でね。中に結界を仕掛けてるんだよ」
最も、時間つぶしでしかないけどね、と苦笑いう浮かべる。
それほどこの書物が危険で強力ということなのだ。
その後、なのはとの待ち合わせ場所に向かう途中、大きな爆発音と魔力を感知する……
少年、シン・アスカは迷っていた。
歩いていて、訓練生時代からの親友である技術部のヴィーノとヨウランで話をしていた。
レイは何か思い出したことがあるといっていったん魔術師の待機場所に戻っていた。
そういうことで3人と話をしていた。
そこまではいい、そのあと、曲がり角で女性とぶつかってしまった。
そこでこけかけていたので支えようとするのだが……
その女性の胸を思いっきり触ってしまった。
それだけではない。今時分が私服に着替えているが、どうやら彼女は管理局の人間で、服を見る限りは部隊長クラス。つまり、彼の上司となる。
それで混乱してどうしたらいいのかわからず、ずっと固まっている。
このとき、女性の隣にいる女性も何故か唖然としていたのが幸なのか不幸なのかはわからない。
さっきから足元で何かが暴れているのにも気付いていない。
さらに、後ろで友人が笑っているのにも……
そのときだった。
急に数箇所で爆発が起こった。
なんだ?そうおもったとき、後ろからレイの声が聞こえた。
「シン!テロリストだ!!」
レイの声にピクっと身体を震わせるシン。
何故早くもレイはテロリストが来たなんて言ったのかわからない。
だが、一つだけ分かっていることがある。
レイは何故か感が鋭い。
コンビ戦でもそのおかげで何度助けられたことか。
そんなレイがいうのだ、間違いない。
シンはテロリストに家族を、友達を、町を破壊された。
自然とシンの力に力が入る。
「ん……」
勿論手にも力が入ってしまう。
女性のちょっとした喘ぎ声にはっと気付いたシン。
「とりあえず俺達は東地区へと向かうぞ。ヨウラン、ヴィーノは町の人の救助を」
その声に反応して、ようやくはやてを離したたシン。
そして180°回転する。
「むぎゅ!!?」
そのときに何か声がしたような気もするが、気にせずさっさとむかう。
「あの、ちょっと!せめて謝るぐらいは!!」
何故か呆然としていたなのはは、すぐに去ってゆく少年に告げる。
すると、別の少年が「すみませえん!」と変わりに謝る。
それが彼の代わりなのか、彼が何も言わずに去っていったのを謝っているのかはわからないが。
「………」
さっきからハヤテは赤い顔のまま地面に屈している。
わかりやすく言うとOTL←こんな感じである。
その横では………
「うぐ……ひっく……えっぐ……」
背中に足跡が残ったままリィンが泣きじゃくっていた。
おそらくかなり痛かったのと服が汚れたからだろう。
「はやてちゃん、難しいと思うけど今は気持ちを切り替えて。町の人たちを」
町の人たちという言葉に流石に反応したはやて。
「それもそうやな、リィン……」
はやてもリィンを見て言葉が止まる。
大体何が起こったのかさっしがついた。
「ごめん、なのはちゃん、ちょっと遅れるかもしれんけん先いっといて」
そう言われてなのははう、うん……と西側に行く。
そういえば、さっき東側に行くと金色の髪をしていた少年は言っていた。
(もしかして管理局の人?それに……)
なのはは、はやての胸を触った張本人を知っているような気がする。
もしかしたら以前自分が教えたことのある人かもしれなかった。
「この数……」
フェイト・T・ハラオウンは周囲に現れた傀儡兵ため息をつく。
さっきやっと執務官の仕事が終ってユーノと合流しようとした直後にこれだ。
現場に到着すると早くも傀儡兵が暴れていた。
仕事はまだまだ続きそうである。
早く帰って子供たちと休暇でどこかに出かけようと思ったのに。
はぁ、とため息をつきながらさりげなく親バカぶりを発揮するフェイト。
だが、そうも言っていられない、
「いくよ、バルディッシュ」
「イエス、サー」
フェイトは相棒であるバルディッシュを構える。
長引きそうなら、さっさと終らせるまで。
そのときだった。
「あぁ……」
ふと、か細い声が聞こえて、声の方を向くと、逃げ遅れた少年が傀儡兵に囲まれて立ちすくんでいた。
傀儡兵の数は5。
そして傀儡兵は少女に杖や砲門を向けた。
まずい。そう思ったフェイトは瞬時に考える。
まとめて一気に叩き斬るか、結界をはるか。
少し考えた結果、少女に結界を貼る。
まとまってくれれば楽なのだが、フェイト自体スピード重視とはいっても、間に合いそうに無かった。
だが、時間が無いためそんなに強力な結界ではないし、それ以前にフェイト自体執務官になったとはいえ、まだそこまで防御魔法が得意というわけではないため不安が残る。
そして、傀儡兵が結界を張っている少女に向けて放たれるそのときだった。
『デリュージー』
どこからともなく流れる声。
それが聞こえたと思ったら、傀儡兵の一つに二つほどの高速弾が放たれた。
反応に遅れた傀儡兵は直撃し、崩れ去る。
別の傀儡兵が空を見るとそこには……
『デファイファント』
「うおーーーーーーーー!!」
目の前にいる緑のバリアジャケットを着用した少年が、バリアジャケットと同じ色の魔力で固められたジャベリンを持ち突撃。その勢いで傀儡兵のどてっぱらに風穴を開けた。
その少年の背中には、二つの砲門をかたどった、おそらく彼のデバイスがある。
フェイトは少年を見る。
(あれ、この子、確か……)
自分の記憶が正しければ、彼は4年前に、一時的に自分が保護した人物だ。
名前は確か………
(シン…君?……)
「なんでこんなことを……」
少年、シン・アスカは周囲を見る。
まだそこまで被害は出ていないが、ところどころ火の手があがっている。
シンは怒りながらジャベリンを構え、吼える。
「何でそんなに殺したいんだ!あんた達は!!」
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