Seed-NANOHA_まじかるしん_第39話

Last-modified: 2007-12-24 (月) 12:49:35

なのはたちが朝の訓練を始め、もう少しで終わろうとしている頃。
「ふんふふーん」
ヴィヴィオはるんるん気分でリボンをくくり、鏡を見るために上っていたイスをひょいっと降りる。
「ヴィヴィオ、準備は出来た?」
ヴィヴィオは後ろから声が聞こえ、そのほうを見ると、そこには女性がいた。
「うん、できたよ。アイナさん」
このアイナと言う女性は、なのはがいないときにエリオの面倒を任せるために呼んだ人だ。
「あ、右のリボン、ちゃんと出来てないわよ。ちゃんとしなきゃね」
そういって、まだ完全に出来ていない部分のリボンを結ぶアイナ。
「じゃあザフィーラ、後はお願いね」
アイナはそういって、ヴィヴィオのそばにいるザフィーらを見る。
ザフィーらは頷き、二人(一人の1匹?)は部屋を出て行った。
その様子を見て、ヴィヴィオが大型犬を散歩に連れて行くようにも見え、愛名は微笑みながら見ていた。

 

「どうですかマリーさん?」
練習も佳境に近づき、シャーリーはマリーに連取の事を尋ねる。
「どの子もいい感じね。いい感じに仕上がってる」
「それってデバイスがですか?」
ん?とシャーリーの言葉に少し考えるそぶりを見せ、にっこりと笑いながら堪える。
「勿論両方」
そうですか、と少し笑いあっていると、今日はここまで、と言う声が聞こえてくる。
どうやら今日の朝の訓練はここまでなのだろう。
「それで、その二人のデバイスの事なんだけど」
そういって、シャーリーはその二人、シンとレイのデバイスのある部分を表示する。
それは、以前組み込んだ新しい形態のものである。
「確かに、これを使うとかなりのパワーアップするけど……」
しかし、そのかわり使用者、さらにはデバイスにとてつもない負担がのしかかるのだ。
まるで、データ収集のためだけにに作られたかのように思える。
そのときだった。
マリーは自分の目の前をとてとてと歩いている子供を見かけたのだ。
「おはようございます」
その少女はマリーを見て、律儀に挨拶をする。
あ…お、おはようございます、とマリーの釣られる。
「あ、ヴィヴィオ。ちゃんとこれたんだね」
どうやらシャーリーはこの子を知っているようで、そのヴィヴィオと言う少女はうんと頷いた。
そして、ふと気付くと見慣れた犬がいた。
「あ、ザフィーラ」
マリーはその犬、ザフィーらの頭をなでる。
「ヴィヴィオ、なのはさんなら向こうだよ」
そういって、シャーリーはなのはのいる方向を指で示す。
そこには、シンとレイと話をしているなのはの姿があった。
ありがとう、といって、またとてとてと走り出すヴィヴィオ。
「シャーリー、あの子は……」
「ああ、もう少しで解りますよ」

 

「はい、今日の訓練はここで終了!」
なのはの言葉と共に、はーい、と少々元気のない声が響き渡る。
朝の訓練、なのはがよしというまで耐久模擬戦。
これは想像以上に過酷で、少し息を抜こうものなら厳しい攻撃が待つ。
そのため、フォワード陣は既に息が上がっており、ぐったりとしている。
「はあ……すごいわね……朝からこれだけ動くの?」
「はい、これやる日は大体これぐらいはいつも疲れますね」
そう、とギンガかどこか喜んだ顔になる。
「シン、レイ。ちょっといいかな?」
なのはは二人で休んでいる二人のところへ向かう。
「この後模擬戦するっていっていたけど、大丈夫?」
先日、後で模擬戦質を貸してほしいといっていたが、今日からギンガが来るということでこの練習メニューにしたのだ。
いくら模擬戦をするといっても、この状態で出来るとは思えない。
この訓練、フォワード陣もそうだが自分達もかなりきついのだ。
「お昼のあとからだったらここ使えると思うけど、その時でもいい?」
なのはの言葉に、二人は少し考えて……
「では、そうさせてもらいます」
ちょうどそのときだった。
「なのはママー!」
遠くから女の子の声が聞こえて、なのははそっちのほうを見る。
そこには、ヴィヴィオがなのはのほうへと走ってきているのだ。
「ヴィヴィオ、あんまり走ると危ないよ」
なのはがそういったときだった。
ヴィヴィオは石につまずき……
「ふあ!」
綺麗にこけたのだった。
「ヴィヴィオ!」
それをみたフェイトが駆けつけようとした。
しかし、それをなのはがさえぎる。
「大丈夫、綺麗に転んだから怪我はしてないよ」
「いや、そうですけど……」
おそらくヴィヴィオがたつまで待つつもりだろう。
確かに男の子ならそうするだろうが、たった4歳の女の子にそれはどうだろうか、とシンは思う。
それでも心配そうにヴィヴィオを見るフェイト。
「ヴィヴィオ、立てる?」
なのはの声に、ヴィヴィオは顔をなのはのほうへ向ける。
その顔はちょっと擦った後があるが、たいした怪我ではない。
「なのはママ…」
やはり痛いのか、ヴィヴィオは少し涙目になりながらなのはを見る。
「うん、私はここだよ」
ほら、とヴィヴィオハ手を広げる。
ヴィヴィオが自分で立ち上がり、自分のところへ来るのを待っているのだろう。
「うう……」
だが、ヴィヴィオハ中々折りあがらない。
「だめだよなのは、ヴィヴィオはまだ小さいんだから」
とうとう我慢できずにフェイトがヴィヴィオのところへ駆け出していく。
「フェイトママ」
ヴィヴィオは自分を抱きかかえるフェイトを見る。
「怪我はしてなみたいだけど、大丈夫?」
フェイトはヴィヴィオに本当に怪我がないことを確認してほっとする。
「ヴィヴィオが怪我すると、私やなのはママも悲しむから、気をつけてね」
「ごめんなさい」
ほっとしていると、なのはもヴィヴィオの方へやってきた。
「もう……フェイトママ、ちょっと甘やかしすぎだよ」
その光景を呆れたような目でなのはは見る。
そのなのはの言葉にむっとしたのか、そっぽを向きながらフェイトも言い返す。
「なのはママは厳しすぎです」
この風景を間近で見ているシンとレイ。
正直思った、両極端だなと。
まあ、悪い子には育つ事はないだろうが……
「ヴィヴィオ、次はちゃんと一人でおきようね」
「うん……」
そんなやり取りを遠くから見るシャーリーとマリー。
「こういうことなんです」
シャーリーの言葉に、ああ、とマリーも頷く。
「つまり、二人の子供って……えー!?」
いやいやマリーさん、流石にそれは……

 

「なるほど、彼女は保護児童なのね」
朝の訓練も終わり、途中ではやて達とも合流し、今日は久しぶりにみんなで食事をとることにした。
その中でマリーはシャーリーから事情を聞く。
「ヴィヴィオ、おいしい?」
「うん」
ヴィヴィオはおいしそうにオムライスとサラダを口へ運ぶ。
なるほど、確かに親子に見えなくもない。
「そういえば、スバルもこんな時期があったわよね」
ギンガは懐かしそうに昔のスバルの事を話す。
そ、そうかなあ……と、どこか照れた様子のスバル。
普通は誰もがそういう時期はあるようなものだ。
「リィンちゃんもね」
「えーー!?」
しかし、その家庭を否定するものが一人。
「リィンはうまれたときからわりかし大人でしたー!」
む~っと頬を膨らませながらリィンは必死に否定する。
「嘘付け」
「今も微妙だけどよ、産まれたときとかまんま赤ん坊だったじゃねえかよ」
シグナム、ヴィータにさえ子ども扱いされ、さらにむくれる。
「そんなことないですよねえ、はやてちゃん」
とうとうはやてにまで話が移り、さあ、どうやろなあ、とどこか含みの笑みを浮かべるはやて。
そのやり取りを笑ってみていると、なのははヴィヴィオが何かを嫌そうな目で見つめていた。
そして、その何かはすぐにわかった。
「ヴィヴィオ、ピーマン残したらだめだよ」
そう、さっきからオムライスに入っていたピーマンだけを器用に避けて、その残ったピーマンを見ていたのだ。
「苦いのきらーい」
ヴィヴィオは苦いものが嫌いで、このピーマンをどうしても食べられないのだ。
「そんな事ないよヴィヴィオ。おいしいから」
フェイトはそういってピーマンを一つとり、ぱくりと食べる。
それをおいしそうに食べ、ほらね、と笑う。
それを見たヴィヴィオも食べようとするが、それでもためらってしまう。
それをみて、今度ははやてがヴィヴィオを見る。
「好き嫌いはあかんよ。そんなことしたらママ達みたいに美人になれへんよ」
しかし、ヴィヴィオに言っているはずなのにはやては別のほうも見る。
そこには、こっそりとニンジンをエリオの皿に入れようしているキャロの姿があった。
もちろん、それはエリオも知っている。
「キャロもだめだよ、ちゃんと食べなきゃ」
しょうがないなあ、とフェイトはため息を付いてキャロを注意する。
「どうする?」
はやてにフェイト、そしてエリオにも見られ、キャロは顔を赤くしながらニンジンを口へ運ぶ。
「ほら、キャロも我慢して食べてるから、ヴィヴィオも食べようね」
目の前で嫌いなものを食べているキャロを見て、ヴィヴィオもそのまねをしようと意を決してピーマンを口へ運ぼうとする。
そのときだった。
ふと見たレイのトレイには、ヴィヴィオと同じように何か食材が残っていた。
レイもその視線に気付き、視線をそらす。
「食べないの?」
ヴィヴィオの質問に、ああと頷くレイ。
その言葉にはキャロのような恥ずかしさなど微塵も感じられない。
「もう腹は満たされたのでな」
そういったとき、ゴスっとレイの後頭部に一撃が直撃する。
それを入れたのはシグナムだった。
「そんな理由ならその食材だけをのこさないだろ。へんな理由を言って、この年になって恥ずかしくないのか」
シグナムに促され、レイは仕方なくちくわを口へ運ぶ。

 

しかし、その顔は恐怖に満たされた表情をしていて、脂汗もかいていて、持っているお箸もカタカタと震えている。
明らかに他の二人とは違う反応を見せるレイ。
「あいつ、そこまでちくわが嫌いなのか?」
へんなの、と思いながらオムライスを口へ運ぶヴィータ。
「そういえば前に言ってたわよね、小さいときに親戚が練り物を喉につまらせて死んだって」
え?となのははティアナのほうを見る。
「じゃあレイがちくわを食べないのってただちくわが嫌いなんじゃなくて……」
「はい、トラウマだって言ってました。練り物全般で」
おそらく、今レイはあのときのことを思い出しているのだろう。
確かに、目の前で事故を目撃して肉が食べれなくなったという人はいる。
だが、これはどうなのだろうか……
それ以前に、練り物をつまらせて死ぬ人も死ぬ人だ。
餅をつまらせるならともかく練り物……
「まあ、そういうことなら無理しなくていいよ」
ちゃんとした理由(理由か?)を聞いて、もういいとなのははいって、レイはふう、と箸をおく。
箸をおいた後、レイは汗をかいたからシャワーを浴びにいくといってシャワー室に行った。
そして、なのははもう一度ヴィヴィオのほうへ視線を戻すと、まだヴィヴィオハピー案と格闘中だった。
さて、どうしようかとなのはは思ったとき、意外な人物がフォローを入れる。
「ヴィヴィオ、食べ終わったらこれをやるよ」
そういって、シンは何故か持っていたプリンをヴィヴィオの前におく。
「いいにおい……」
ヴぃヴぃおはそういってプリンのほうを見る。
「ほしかったら、ちゃんとピーマンも食べような」
シンの言葉にヴィヴィオは頷いてもう一度ピーマンと対峙する。
そして、少しずつではあるがピーマンを食べていった。
「なるほど、物で釣るか。その場対策としては中々やな」
はやてはふむふむと頷いて一生懸命ピーマンを食べているヴィヴィオを見る。
「けど、今日のメニューにプリンなんてありませんでしたよ」
リィンの言葉に、ああとヴィータも頷く。
あればのこの二人は絶対に食べるからだ。
じゃあ、あれはなんなのだろうか……
「アスカさんってたまにパンとかお菓子とか作ってますよ」
その疑問に答えたのはエリオだった。
シンは海のときでもわかりとおりある程度の料理は出来る。
得意なジャンルはパン。そして菓子類も作る事ができる。
シンは時々男部屋にある簡易キッチンで簡単な菓子を作るときがある。
その理由は「疲れたとき、たまに甘いものがいいって教えてもらったから」らしい。
それ以降、こうやってたまに作っているのだという。
作ったときはエリオももらう事があるという。
「休日中も作ってましたよ」
へぇ、とエリオの言葉に感心するはやてたち。
そういえば、食事の最中、シンは途中からやってきた。
多分そろそろ賞味期限が危なくなってきたから食べようとしたのだろう。
しかし、お菓子まで作るとは、意外だ…とはやて達は思った。

 

ヴィヴィオがピーマンに苦戦していた頃、ここでも食べ物に苦戦しているものがいた。
「ノーヴェ……未だに食ってなかったんすか、それ?」
ウェンディのちゃかしに、ノーヴェはうるせえといって目の前の焼き魚と対峙している。
いくら戦闘機人といっても、普通に食事はする。
その中、ノーヴェは魚がてんでだめなのだ。
実は、ナンバーズにはいくらか決め事がある。
その中の一つに「食事の最、食べ残しは許さない」とある。
だから、食事のときに魚が出るとノーヴェはいつもこうやって最後に残る。
以前は仕方ないといってチンクが変わりにこそっと食べたり、いらないならこれと変えてと、
他に好き嫌いのあり、中のいい姉妹たちと交換したりもしていた。
しかし、チンクにあげているところをトーレに見られてしまい、以後は自分で食えといわれた。
しかし、別に好き嫌いについて言わないため、物々交換なら別にいいといっていた。
そういうのも、実はウーノを除き、全ナンバーズには各自嫌いな食べ物がある。
しかし、今日は魚がメインだったため、交換はよくてどうして上げるのはだめなのか奇妙に思いながらも、
こうしてノーヴェは苦戦しているのだ。
「魚を食べないからすぐに頭に血が上るんだ」
ウェンディに続き、ディエチにも言われ、何!?と睨みつける。
「ほら、これが何よりの証拠だ」
「この性格はもともとだ!」
そういって、半ばやけになりながら様名を喰らうノーヴェ。
おー食ってる食ってる、とその眺めを見ながら、けらけらと笑うウェンディ。
その後、ノーヴェは気分を害し少し寝込んだという。
それとちょうど同時期……
「やはり効果は望めなかったか……」
チンクはため息をつきながら自分が持つ1リットルの牛乳を見る。
自分の背の事を気にしているチンクはこのように背が伸びるようにかげながら努力をしている。
この牛乳というのも手段の一つだった。
「やはり、戦闘機人には普通の人のやり方は無理か……」
そういって、深いため息を付いて牛乳を冷蔵庫に入れるチンク。
(チンクちゃんってば、かわいい)
その様子を子外見ているクアットロは、そんなチンクを見てくすっと笑うのだった。

 
 

シャ「昼食も終わり、とうとう明かされるシンとレイの新しい力」
マ「しかし、それは多大な力を得る代わりに、特にシンのものには大きなデメリットがある」
ザ「次回「力の代償」……珍しい面子だな」
シャ「そうだねえ」
マ「本来はヴィヴィオも出るはずだたんだけど、なのはさんに付きっ切りだったけど」