Seed-NANOHA_140氏_第05話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 02:39:08

いい匂いが部屋中にたちこみ、空腹の身体を更に刺激する。

「「「「いただきます」」」」

はやての家では夕食が始まり、テーブルの上には様々な料理が並んでいる。

それを見てシンは内心ほっとする。

(よかった・・・・へんなものだされたらどうしようかと思った。)

別にはやてが料理が出来なさそうとかではなく、この世界の食べ物が自分の世界とほとんど、いや、全く一緒とだということでだ。

(まあ同じ人間なんだから当たり前といえば当たり前か。)

いろいろ考えているせいで、シンの箸が全く進んでいないことにはやては気付く。

「もしかして口にあわなんだ?」

はやてが悲しそうな目で見ている。

「あ・・いや・・この世界の食べ物が俺がいた世界の食べ物と全く一緒だから、それでちょっと驚いただけだよ。」

あわてて理由を説明するシン。

それを聞いてはやては安心した。

「そうやったんか。ほか遠慮せんと食べて。」

そういわれ、近くにあったいびつな形のコロッケに手を伸ばす。

おそらく手伝うといって聞かなかったヴィータが作ったのだろう。

まあ味自体に影響はないと思い口に入れる。

「美味い。」

ここ最近、食事はミネルバの食堂でした食べていない。

ミネルバの食事もおいしいが、一人になってからコンビニやアカデミーの食堂でしか食事をしていなかったシンにとって、こういう家庭の味が懐かしかった。

「そう?よかったぁ。」

シンからおいしいといわれて喜ぶはやて。

その後はすぐに皆と打ち解けた。

ふとそこでシンは下を見た。

そこには犬がいて、シンたちと同じものを食べている。

「なあ、はやて・・」

ん?とシンのほうを見るはやて。

「犬にあんなのを食べさせていいのか?」

「犬?」

「ほら、あそこ。」

そういいシンは箸でザフィーラのほうを指差す。

「それ犬じゃねえぞ。」

はやての変わりにヴィータが言う。

犬じゃないって、そんな馬鹿な。

シンはザフィーラを見る。

(どう考えても犬だよな・・・・・)

どこをどう見ても犬にしか見えない。

「ザフィーラ、一時的に変身を解除してみたら?」

シャマルがにっこりと笑いながら言う。

変身?何を言ってるんだ?

そう思ったとたんその犬が急に光りだした。

だが光はすぐに止み、そこには一人の男性が立っていた。

ただ、少し違うのは、頭に犬の耳があったことぐらい。

「な・・・・・」

シンは呆然としてその男を見ていてた。

「言うのが遅れたな、ザフィーラだ。」

そういいすぐにまたさっきまでいたのに戻る。

まだ頭が混乱している。

「え?犬?・・・人?・・・・どっち?・・・・」

混乱しているシンを見てヴィータが笑う。

それにつられて皆も笑い出した。

「な、別に笑わなくてもいいだろ!」

シンは立ち上がって皆に向かって叫ぶ。

「ごめん、あんまりにもおかしい顔するからつい・・・」

代表してはやてが謝る。

ため息をつき、シンは席に座る。

(そういえば、こんなくだらないことで怒るのって久しぶりだな・・・・・)

思わずシンは苦笑する。

大切な人を奪われた怒り。

信じていた人の裏切り。

ブルーコスモスの横暴。

最近は本当に激怒しかなかった。

「何笑ってんだよ?」

「え?そういえばこんなくだらないことでも怒れるんだなって思っただけさ。」

「はあ?」

シンの言っている意味が分からず、困惑するヴィータ。

ここの生活は楽しい、シンは心から思う。





「ふぅん、ロボットねぇ。」

ここは高町なのはの家。

今日はなのはの兄、恭也の恋人、月村忍もいる。

なのはは今日起こったことを家族に話した。

大きなロボットにでくわして、その中に人が乗っていたこと。

そのパイロットは別の世界の軍人で、いまははやての家に滞在していること。

「それって本当なのか?」

恭也にはどうにも信じられなかった。

ただでさえなのはが魔法使いだといわれたときも実際目にするまで疑っていた。

まあ、魔法使いとか巨大ロボットとか、信じろというのが難しい話だが。

「まあまあ、なのはが言ってるんだから間違いないでしょ?なのはは嘘つきじゃないもんね。」

こういうとき一番になのはの味方をするのは姉の美由希である。

続いて母の桃子もなのはのフォローに入る。

「そうそう、それに、魔法もあるんだから別にロボットがあってもおかしくはないでしょ?」

確かに、逆にこの世界ではまだロボットのほうがまだ実現はしやすそうではある。

「まあ確かにそうだけど・・・・いきなり言われて信じろって言われてもなあ・・・」

まだ信じてもらえないのか、と少しため息を吐くなのは。

真面目なのはいいが相変わらず頭が固すぎる。

そこでひとつの提案をしたのが父士郎であった。

「じゃあその人を今度連れてきたらどうかな?」

まあ確かにつれてきて直接話を聞いたほうが信じてもらえる。

その意見にはおおむね賛成だった。

「それいいわね。呼ぶときは私も呼んでね。」

以外にも忍も彼に会いたいと言い出した。

恭也はその理由がすぐに分かった。

「どうせそのロボットも見せてもらおうとおもったんだろ?」

彼女は大のメカ好きである。

しかも今まで見たことのない本物のロボットが見れるのだ。

「まあね。異世界のメカかあ。どんなのだろう。」

「それに向こうの世界っていうのも気になるしね。」

「じゃあ、あとではやてちゃんに聞いて合えるかどうか聞いてみるね。」

女性たちは向こうの世界に興味津々で話し始めた。





ここは海鳴市とは少し離れた町。

そこには一人の警察官がいた。

彼は今夜間の見回りで町を回っている。

「この区間も異常なし、と。平和っていいねえ。」

今日も何事もなく仕事が終わり、署に戻ろうとしていたときだった。

「すみません。」

急に誰かに呼び止められ、後ろを振り向いた。

そこにいたのは珍しいサングラスをかけた長い金色の髪を伸ばした外国の男性だった。

「ちょっと道に迷ってしまいましてね。ここがどこだか教えて欲しいのですが。」

深夜に人が迷う。よくあることだと思って警官が答える。

「ああ、それだったら向こうに地図があるか・・・・」

男性が後ろを振り向いた直後、男は隠し持っていたナイフで男性のわき腹を思いっきり2度、3度刺した。

いきなりのことと急激な痛みで男性の頭が混乱する。

その隙に男は男性の顔面を思いっきり蹴り飛ばした。

男性はしばらくうずくまるが、それ以降動くことはなかった。

「さてと・・・」

男は人を殺しても何も動じることなく警官の拳銃を手に取った。

どうやら最初からそれが目的だったようで、銃弾の確認もして、予備のマガジンもついてとばかりに拝借した。

「使い方は一緒だろう。それよりも、これほど簡単にうまくいくとは。」

よほど平和ボケな国なのだなと思った。

「必要なものは手に入った・・・ん?」

その男、クルーゼは公園の中心に光があることに気付く。

「私以外にも客がいるとはな。」

クルーゼはその光のほうに向かった。

その光の中にいたのは少女だった。

だが・・・・

「死人がここに来るとは・・・」

衣服も、髪も、ほとんど血でまみれていて、更には右腕が千切れていた。

もう死んでいるだろと思ったときだった。

ピク・・・ピク・・・・

左腕が僅かに動く。

クルーゼがこれを見てすぐに分かった。

「もしや、コーディネーターか。」

身体が未発達な子供がこれほどの傷を負いながら生きていられるのはクルーゼは知るかぎりではコーディネーターしか知らない。

不意に、クルーゼの顔がほころぶ。

「思わぬキーが手に入ったな。」

これは利用できる。そう思いクルーゼは少女を抱き、ワープのようなもので闇の中に消えていった・・・・

その中で少女がクルーゼが気付かないほどの声で小さくつぶやく

(お父さん・・・お母さん・・・)

ほとんど意識のない状態で彼女が思い浮かぶのは、自分の家族。

その中で強烈に思い浮かぶのは、自分が落とした携帯電話を取りに行った兄の姿であった。

(お兄ちゃん・・・・)





「ん?」

シンは突然妙な感覚に襲われた。

(何だろう、この感じ・・・)

なにか、どこかで感じた感覚。

(懐かしい感じがするけど・・・何だろう・・)

ぼうっとしているそのときだった。

ガシャン!

皿が落ちた音でシンの現実に戻った。

「ヤベ!」

なにしてんだよ、と後ろからヴィータの揶揄が飛んでいたが、それを無視して落とした皿を手に取った。

運よく皿は割れておらず、ほっと一息つくシン。

もう夕食も終わり、後片付けが始まってシンもそれを手伝っていた。

「きいつけなよ。」

はやてにいわれて「ああ」と返事をするシン。

そのとき、ピピピ、と携帯の呼び出し音が鳴った。

「主、なのはからメールです。」

シグナムから携帯を受け取り、メールの確認をする。

「シンさん。明日って用事あらへん?」

「明日?明日は昼からなら大丈夫だけど。」

いったいどうしたんだ?とシンは思った。

「なのはちゃんからこの休みうちにこれんか?ってメールが。」

これんか?何のことかさっぱり分からないシンは少し考え込む。

「これないかって意味だよ。」とヴィータに言われてああとシンはうなずく。

時たまはやての言っている意味が分からないときがある。

はやてのしゃべっている言葉は一部でしか使われない言葉である。

だからたまにいっている意味が分からないときがあり、誰かに意味を聞くときがある。

「別にいいけど。」

シンがそういいはやてはメールを返信した。

そしてすぐにメールが帰ってきた。

その内容を簡単に告げた。

「ロボットのことはなしたら信じてくれないから本人から話してって。それと別の人にロボット見せていい?っていよるけど?」

別に信じなくてもいいのに何でそんなことを・・・・と思ったが、別にいいといってしまったので「MSは無理だけど話だけなら、っていっといてくれ」とだけいい再度皿洗いを再開した。

流石MSをに一般人に見せるわけにはいかない。

(しばらく大変だなこりゃ。)

そう思い苦笑すると、先ほどの感覚を思い出す。

(にしてもさっきの感覚。なんだったんだあれは?)

さっきからあの感覚が気になって仕方がなかった。

(なんかあったかかったな・・・)

何かいいことあるかもしれない、そう思った。

さっきその考えていて皿を落としたシンだが、今回も・・・・

「おっと。」

今回は落とす前にちゃんと空中でキャッチした。

シンがこの世界を訪れてから長い1日がやっと終わりを告げようとしていた。