Seed-NANOHA_140氏_第06話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 02:39:47

カタカタと、キーボードを打つ音が聞こえる。

ここはデスティニーがある格納庫。

シンはここでデスティニーの調整を行っていた。

「VPSの出力は・・・・稼働時間を考えて低くしておくか・・」

どうせこの世界のほとんどが魔法攻撃だから実弾を防御するVPSはあまり意味がないだろうと思い低めにしておいた。

ちなみに低いときVPSの色は黒になる。

「これじゃ本当に悪魔っぽくなるな・・・」

シンはコックピットのなかで思わず微笑する。

ただでさえ悪魔的な面影を持つデスティニー。

それがさらに色が黒くなるから本当に悪魔になるかもしれない。

設定しているうちにふと、前から声が聞こえた。

「何してるんですか?」

いきなりの声にびっくりしてシンは前を見る。

そこには長い金色の髪をしている少女が浮いたままそこにいた。

「あんたは確か・・・艦長の子供の・・・フェイトだったよな。」

名前を言われてコクっとうなずくフェイト。

今の彼女の姿は出撃時の戦闘服になっている。

話しかけたのは向こうからなのになぜか恥ずかしそうにしている。

(人見知りが激しいのか?)

まあそういう人もいるだろう。シンはあまり気にしないことにした。

しかし、

(それにしても・・・・)

シンはまだ魔法というのになれていない。

(昨日といいいったいどうやって飛んでるんだ?)

シンはずっとフェイトの足元を見ていた。

「・・・・・どこ見てるんですか?」

え?とシンはフェイトの顔を見る。

恥ずかしそうにしてるのは相変わらずだが少し怒っているようだ。

どうやら誤解されたらしい。

「あ、ごめん。まだ人が飛んでるのに慣れてないから不思議でつい・・・・」

あ、と気まずそうにするフェイト。

「誤解してごめんなさい。」

「別にいいよ、こっちこそ誤解するようなことして悪かった。それで何?」

「艦長から、今から私とシンさん。それとシグナムの3人で偵察に言ってほしいって。」

「わかった。で、あいつは今どこ?」

「シグナムなら先に行ってるから。」

「それは真面目なことで・・・・これでよしっと。」

そういいながらシンは最後の設定を終了する。

「それじゃ、あいつが怒る前にさっさと行くか。」

そういいながらシンはアースラに連絡を入れる。

了解、と聞こえてからまもなく円陣が現れ、フェイトとデスティニーがその場からいなくなる。



「遅い・・・」

別に彼女は時間にルーズではないとおもっていた。

ただ、待つことがあまり好きではない。

先に合流地点に向かったのはいいが、肝心の合流相手がなかなか来ない。

そのとき、シグナムの前に円陣が出現した。

やっときたか、

「おまたせ」

「お前にしては遅かったな。」

「それは・・・」

そういいながらフェイトはデスティニーを指差す。

「シンがあれの調整で時間がかかって。」

『俺のせいかよ。』

シンが思わず突っ込む。

まあ、確かに調整はしてたが。

フェイトが魔力を使って話しかけているのでシンにも聞こえていた。

シグナムはデスティニーを見て、違和感を感じた。

「?あの時と色が違うようだが?」

確か最初に会ったときはもっとカラフルだったはずだが・・・・

その答えはすぐに分かった。

『こういうことさ』

そういったとたんだんだんとデスティニーの色が変わっていく。

ふたりはそれをものめずらしそうに見やる。

だが、結局は以前見たような色ではなく、今回は全体的に黒くなっていた。

「これの設定に時間がかかったんだよ。」

不思議そうにデスティニーを見つける二人。

「早く偵察に行かなくていいのか?」

シンの声に気付いた二人

「そうだったな。いくぞ、レヴァンテイン」

『了解』

「いくよ、バルディッシュ」

『イエッサー』





「どういうことクルーゼ?」

プレシアはクルーゼを睨む。

複数ある機材、そのうちアリシアの横にある機材にもうひとつの少女が加わっていた。

「どういうこと、とは?」

クルーゼはいわれることがわかっているような微笑を浮かべで答える。

「ふざけないで!なんなのよあれは!!あんなものを持って帰ってきて!!」

ヒステリックになりながら少女のほうを指差す。

それでも一応は治療しているプレシア。

(まだ完全に狂ってはいないということか・・・)

そうおもい微笑するクルーゼ。

「私もそうは思いましたが・・・・お子さんもお友達は必要でしょう。」

「・・・・・・」

アリシアのことになると急におとなしくなるプレシア。

ここでクルーゼがひとつ提案を出す。

「なあに、もって帰ってきた手前、面倒は私が見るさ。」

まあそれならいいだろうとおもってプレシアは、次の問題に移る。

「で、あの右腕はどうするの?」

少女の右腕は千切れている。

「それはそちらに任せよう。生きてさえいればどうしてもらってもいい。」

そういい含みのある笑みを見せながら部屋を出て行くクルーゼ。

(ならば私の好きにやらせてもらうわ・・・・ちょうどあれの実験にも使いたいし。)

あれ・・・それはプレシアがここに飛ばされて、アリシアの復活と同時に進めていたもの。

ただ、それは普通の人間の子供にするには負担が大きい。

そんなものアリシアには絶対にさせるわけにはいかない。

(データ上では死なないはずだからあいつとの約束も守れる・・・・言い訳は許さないわよ、クルーゼ)

彼女は不敵な笑みを漏らす。

(これが成功すればあの忌々しい管理局に復讐することが出来る・・・・)

笑わずに入られなかった。

(それにあいつと一緒にあったあれももうすぐ完成する。そしてアリシアも・・・)

すべての条件が整いつつあり、そう思うだけで胸が高鳴る。





「結局何もなかったな。」

「何もあってほしくないだろ普通は。」

「そうだよシグナム。」

ここは海鳴市、偵察任務をすませた3人は、それぞれの自宅へと向かっている。

そこでシグナムはさっき偶然見たことを聞いた。

「そういえばアスカ、さっき艦長に何を預けた?」

シンは、偵察が終った後リンディに何かを預けた。

「あれ?個人的なことだから別に何でもいいだろ。」

「そうか、ならいい。」

意外とあっさり検索するのをやめたシグナム。

もしこれがヴィータやシャマルだったらしつこく聞いてくるだろう。。

「じゃあ私からも聞いていい?」

こんどはなんだ?とシンはフェイトを見た。

「あのロボットの羽の後ろにあるのは何?」

おそらく折りたたまれている二つの武器のことだろう。

折りたたまれているから分からなかったのだろう。

「あれは剣と銃だよ。でかいから折り畳んでるんだ。」

え?と驚くフェイト。あれが剣だったらどれだけの大きさがあっただろう。

「名前とかあるのか?」

武器の話になるとシグナムも話に混ざる。

「銃のほうは普通に高出力ビーム砲で剣のほうは・・・アロンダイトだったか。」

シグナムはその名前に聞き覚えがあった。

「アロンダイト・・・神話で円卓の騎士長、ランスロットが持っていた武器か。」

そうだったの?とシンはシグナムのほうに向く。

それを見て呆れるシグナム。

「自分が使う武器の由来くらい覚えておけ。」

「ここの世界と俺たちの世界じゃ違うかもしれないだろ。だったら・・・」

度はシンから質問が投げかけた。

「エクスカリバーの由来ってなんだ?」

「エクスカリバーは、確か同じ神話でアーサー王が・・」「ぷ!」

シンはいきなり笑い出した。

シンはアーサー王と聞いてミネルバの副官、アーサートラインを思い出した。

そしてそのアーサーが王冠をかぶってエクスカリバーを持ち、えらそうにしている姿を想像した。

「どうした?」

いきなりシンが笑い出して困惑するシグナム。

「ごめん、なんでもない。」

それでもまだ涙目で笑うシン。



「早く帰ったほうがいいんじゃない?シンさん、今日なのはの家に行くんでしょ?」

どうやら彼女も招待されたらしい。

「そうだな、もう昼過ぎだし、はやても待ってるだろう。」

そういいながら目の前の交差点を曲がろうとしたとき、急に人が飛び出してきてぶつかった。

「っとと!」

ぶつかった相手は何とか片足でバランスを保とうとするが、勢いあまってこけそうになる。

シンはすかさずその人を支える。

その人物は女性で、年はシンと同じくらい。こげ茶色の髪の毛をしていて、黄色いリボンと丸い眼鏡が特徴的な人物だった。

「大丈夫ですか?」

シンが安否を確認したが、女性は動こうとはしない。

そのとき、シンは違和感を感じる。

(身体の一部でこんな感触あったか?)

妙にやわらかい感触にシンは違和感を覚え、すぐに理由が分かり、顔を赤らめる。

女性を支えようとしたシンはその女性の胸を鷲摑みしていた。

女性は、ふるふると体を震わせている

「えと・・あの・・その・・・すみま」「イヤアアァァァァ!!!!」

「!!!!!!!!!!」

火事場の馬鹿力なのか、あせって言葉が出ないシンに、その女性から叫び声とともにシンの男の大事なものをおもいっきり蹴り上げた。

(きゅうしょあたった!こうかはばつぐんだ!!)</p>
・・どこかのゲームのナレーションが聞こえる・・・・・
「あ・・・が・・・ぐ・・・・」

大事なものを押さえその場に倒れ込むシン。

苦しすぎて声もままならない。

どう声をかけていいかわからずその場で考え込むシグナム。



「はあ・・はあ・・はあ・・」

その女性は顔を真っ赤にして息を荒げている。相当怒っているようだ。

フェイトは、その人物が自分がよく知ってる人物であることに気付いた。

「美由希さん・・・・」

その女性、美由希はっと気付いて後ろを振り返る。

「あ、フェイトちゃん。」

先ほどとうってかわって笑っていた。

「何してるんですか?」

「なにって、自主トレ代わりのランニングだけど。見て分からない?」

美由希は自分の服をさす。

今彼女はジャージ姿である。

「それでちょっとたりないから手首足首に錘を。」

相変わらずだな、とフェイトはあっけにとたれていた。

「おい!しっかりしろアスカ!!」

シグナムの声に気付きフェイトはシンを見る。

それをみてびっくりするしかなかった。

顔は青く、泡も吹いていて、さらには白目も向いている。

「と、とりあえず病院に。それときゅうきゅ」

「分かった。すまないがテスタロッサは主に連絡してくれ。」

そういいながらシンを担いで自分が知っている病院に全速力で急ぐシグナム。

「救急車呼んだほうが・・・」

だがフェイトは言い終わる前にシグナムはもう走っていた。

あわてていても人の話はちゃんと最後まで聞こう。

先生に教えられたが全く持ってそのとおりだとフェイトは実感した。

「で・・あの人・・・だれ?」

少しやりすぎたと思い心配そうに聞く美由希。

「あれがなのはがいってた異世界の人だよ。」

「・・・・え?・・・・」



「う・・ぐ・・・」

シンの意識はブラックアウト寸前だ。

確かに触ったことは悪かったと自分でも思っている。しかし・・

(ここまでするかよ普通・・・・)

それに、だれかがおぶっているかんじもするが、そんなことはどうでもよかった。

今シンは、本気で死にそうな感覚に見舞われている。

これほどの危機感は、オーブを出たときに現れたMAとも戦いのときも感じたが、今回は下手したらそれ以上かもしれない。

軍人であるシンは、確かにいつ戦いで死んでもおかしくはない。

だが・・・

(こんなことで・・・・)

女性に急所をけられて死ぬなぞ、笑いものもいいところだ。

(こんなことで・・お・・れ・・・・)

一度いったことがありそうな台詞を言い切る前に、シンの意識は完全に途絶えた。