もう日が沈んで暗い夜。
その中で活気あふれる空気が翠屋にあふれていた。
ここで、なのはたちの進級記念パーティーが行われていた。
店の中は、はっきり言ってしまえば先のどのメンバーとさして変わらない。
フェイトたちの家族と、なのはの兄とさっきいた友達の家族がいるぐらいだ。
(普通たかが進級したぐらいでそんなことするか?)
シンは心の中でおもったが、人それぞれだし、誘ってもらってこうやっていろいろ食べてるんだから文句を言っても仕方ないと思いながらロールキャベツを口に運ぶ。
そこで、士郎の言葉を思い出す。
「メンバーの中に男は少ない。」
士郎の言っていることは正しく、男性メンバーは自分を含めて士郎、なのはの兄の恭也、クロノ、見たことないなのはくらいの年齢の少年。それにザフィーラ(この際人というのはどうかはのけておく。実際人型にもなるし)の6名。
そして、今時分が置かれている状況。
「それで、あんたの世界って宇宙にも人が住んでるの?」
シンの周りにはシンの世界に興味を持っている人がシンから話を聞こうと集まっていた。
「ああ、月にも町とかあって人がたくさん住んでるし、宇宙空間にも人が住んでる。」
この状況をたとえるなら。物語を話すおじいさんと、それを聞いている子供たち。
(って、誰が爺さんだ!)
一人ボケ突っ込みをかましながら次々と聞かれている質問に答える。
料理も食べているので意外と忙しい。
「宇宙空間にも住んでるって・・・・空気とかはどうするんですか?」
こちらの世界では当たり前のことを知らない世界の人に説明するのはとても難しいことが分かった。
考えながら答える。
「えーと・・・あ、ほら。魚を飼うのと一緒。」
「さかな?」
「魚は地上で生きていけない。魚を飼うには水槽を用意してその中に水を入れてから飼う。それと一緒さ。宇宙空間に人が住めるよう俺の世界ではコロニーとかプラントっていうけど、それをおいて、空気を入れて町を作って、人が住める状態にしてから住むんだよ。」
宇宙に住んでる人を魚扱いしたことを謝りつつこの世界にもあるようなものでできる限り分かりやすい例えを言うシン。
「へえ。ゲームとかアニメだけかと思ってたけど、実際にあるんだ。」
アリサが感心したようにシンの話を聞く。
どうやらちゃんと理解はしてくれたようだ。
「人気者ねシン君。」
後ろから桃子が話しかけてきた。
桃子の周りには参加しているすべての大人がいる。
大人といっても桃子と士郎とリンディの3人だけである。
「あ、そうだ。シン君。」
リンディがシンを呼んで複数のディスクを渡した。
「渡せるうちにね。ハイこれ。」
そういい数枚のディスクを出す。
「丸いのがこの世界用で、四角いのがアースラで見られるから。」
「もう出来たんですか?」
そういいながらディスクを受け取るシン。
「それと・・・悪いけどちょっとついてきてくれる?」
「え?」
「ちょっと話したいことがあるから。」
なんだろうと思いつつ、室内ではなくテラスへ向かう二人。
二人は適当な席に座る。
「ごめんなさいね。呼び出しちゃって。」
「いえ、かまいませんよ。話ってなんですか?」
「ちょっとした身の上話をね・・」
笑ってはいるが、その表情はどこか暗い。
「私には夫がいたの。名前はクライド・ハラオウン。私と同じように時空管理局にはいていたわ。」
「いた?」
「ええ。彼はもうこの世にいないの。」
「あ・・・」
まずいことを聞いた、とシンは思った。
その場の空気が重くなるような、そんな感じがした。
「別に気にしなくていいのよ。もう11年前の話になるし、話を始めたのはこっちなんだから。」
リンディがちゃらけたようにいう。
「あの人は私と同じで艦の艦長をやってて、ある事件に巻き込まれて、船員を脱出させて自分だけが艦長だからって運命は艦とともにするってね・・」
たんたんとリンディは言う。
「それを聞いて、シンくんはどう思う?クライドのこと。」
「え?」
急に質問されて戸惑うシン。
「俺は・・・その人は立派だと思います。軍務を全うして、それで死ねた事に。」
それが正直な感想だった。
なかなか艦と運命を共にするなんて、普通なかなか言えない。
だが、自分がいたミネルバの艦長、タリア・グラディスも同じようなことをする、そうシンは思った。
「そうね、私もそう思うわ。管理局員としてなら・・ね。」
「え?」
「けど・・家族の一員としてみるなら・・・最低な人・・・かな・・・」
あ、とシンはリンディをみた。
「11年前だからクロノもまだ3歳。結局あの子は父親というのを知らないまま私が一人で育ててきたわ。」
懐かしむような感じでリンディが話す。
「それでね、聞いた話なんだけど、あの人が最後に言った言葉が、妻と息子に言っておいてくれ。すまなかったって・・・」
だんだんと、愚痴るような口調になってきた。
「あの時は怒ることしかできなかったわ。ふざけないでよ、そんなこというんだったら戻ってきてよって。」
「どうして、そんな話を俺に・・・」
シンは、どうしてそんな話を自分にするのか分からなかった。
「あなたの戦闘記録を見せてもらったの・・・・それでね・・・・」
リンディはシンが持って来た戦闘記録を思い出す。
シンが乗っている機体とよく似た、もしくはちょっと違うようなものが飛び交い、爆散していく。
「あなたまだ16でしょ?それでこんな戦いに参加して・・・それで命を落としたら、家族が悲しむでしょ。」
家族、その言葉にシンは黙り込んでしまう。
「いや・・おれ・・」
「だから、絶対に死んじゃだめよ。どんなことをしても生き残って、家族のためにも、ね。」
シンが小さな声で何か言っているが聞こえなかったのか、リンディが微笑みながらシンを見る。
「さて、そろそろ戻りましょ。あなたの話を待ってる人もいることですし。」
そういい先に部屋に戻るリンディ。
シンもゆっくり後をおうように戻っていく。
「早く戻ってこーい。話の続きしようぜ。」
ヴィータに呼ばれて、わかったよといいながら席に戻るシン。
ほとんどパーティーも終わりかけて、あとはみんなで話をするぐらいであった。
「で?今度は何が聞きたいんだ?」
あらから話し終えて、何かないかと考え込む子供たち。
「ええと・・・・あ、そうだ。シンさんって携帯持ってる?」
そのなのはの問いに答えたのは、シンではなくヴィータだった。
「持ってたよな。にあわねーピンク色の携帯。」
いつのまに見たんだよ、と思いながらポケットから携帯を取り出す。
「よかったら、アドレス交換しない?」
アドレス交換は出来ればしたかったが・・・・
「すまない。これは俺の世界の携帯だから電波が通んないんだよ。」
さすがにこの世界と自分の世界の規格が会わないらしく、電波が入っていない。
「じゃあさ、ちょっとかしてくれよ。」
ヴィータがねだるようにシンの携帯をとる。
「何する気が?っていうか使い方知ってるのか?」
「大体は同じようなもんだろ。ちょっと画像をチェックっと・・・・・・」
やめろという前にヴィータが先に画像をチェックして、ヴィータが固まった。
あれも、これも、どれも同じ女の子が移っていた。
たまにシンや夫婦の画像もあるが、ほとんどがその女の子の画像である。
年齢はなのはたちと同じくらいで栗色の髪を伸ばしている。
どしたの?となのはたちもシンの形態を見る。
その後は、皆がシンを疑いの目で見始める。
あせるシン。
そしていつの間にかほとんどのものがその画像を見ることになった。
そしてヴィータが一言。
「ロリコン。」
「ちがう!」
シンが全力で否定したが、信じてもらえるはずなかった。
「でもこれ見たらねえ・・・」
「ああ・・・」
この反応で、シンが観念したように答える。
「これ、俺の携帯じゃないんだ。」
訪れる沈黙。
今度はアリサが一言。
「泥棒?」
「だからなんでそういう風にしか言えないんだ!あんたたちは!!」
まあ普通はそう思うのが普通だが、そう叫ばなければやっていけなかった。
「じゃあだれの?」
はやてがまだ疑っているような目で聞いてくる。
「妹の携帯だよ。」
再び訪れる沈黙。
今度は桃子。
「これっていわゆる・・・・シスコン?それとも妹の携帯を泥棒?」
「あんたらはいったい何なんだ!!」
「あ、でもこの子意外とかわいいわね。」
「何で艦長まで、チェックしてるんだーーー!!」
シンは叫ばずにいられなかった。
そのみんなの気持ちを代弁するようにヴィータが答える。
「じゃあ何でお前がその妹の携帯を持ってるんだよ。」
「えっと・・・それは・・・・」
言葉につまるシン。どのように言えばいいのかわからない。
「なんだよ、言い返せないのかよ。シスコン。泥棒。」
ヴィータの言葉がいいすぎだと思い注意しようとはやては思ったが、その前にシンの怒声が飛ぶ。
「うるさい!!!」
ヴィータの言葉に本気で怒って叫ぶシン。
そしてヴィータを睨みつける。
それに少しびびるヴィータ。
目も少し涙目である。
「な・・・なんだよいきなり・・・・」
確かに言い過ぎたかもしれないが、そこまで怒ることはないだろうと思った。
落ち着きを取り戻したシンははっと気付き罰を悪そうにする。
「あ・・すまない・・・つい血が上って。」
回りもどこかびっくりしている。
ここまでシンが叫んだことが驚いているようだ。
「えーと・・・どういうことか説明してくれるかな?」
士郎がゆっくりと聞いてきて。はいと答えるシン。
「この携帯は、妹の・・・いや・・・家族の形見のようなものだ。」
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