Seed-NANOHA_140氏_第07話_後編

Last-modified: 2007-12-23 (日) 02:42:09

「え・・・形見・・・?」

なのははあっけに取られてシンを見ている。

シンは自嘲気味に笑いながら話し続ける。

「俺のいた国・・オーブって言うんだけどさ・・・戦争に巻き込まれたんだ。」

地球、プラントで起こった戦いは、パナマが落とされて旗色が悪くなった地球連合。

そこで目についたのが、世界で3つしかないマスドライバーの一つ持っているオーブであった。」

「こっちはずっと中立を守ってきた国。もう一方は地球の大半を占める軍・・・勝負は分かりきってた。」

それでも戦闘は避けられなかった。

「降伏するなり民間人のことを思えばほかに道があったはずなのに・・・オーブの理念も守るとか言ってさ・・・変にプライドを保とうとして・・・」

シンは苦い顔をする

「戦闘している中を逃げていて・・・その最中に、妹・・・マユが携帯を落としてさ。」

そこで、微笑を含んだ顔でシンは話す。

「今思うと馬鹿な妹だよな・・・普通携帯よりも自分の命を優先するはずなのにさ・・・・」

シン以外のものは黙って聞くしかなかった。

「それで、手が空いていた俺がとりに言ったんだ・・・そして・・・携帯を手にした瞬間・・・・爆発が起こって・・・・」

シンの表情が暗くなる。

「俺は無事だったけど・・・家族の安否を確かめようとして・・・妹の右手が見えて・・」

「それで?・・・」

つい聞いてしまうなのは。心の表情から大体のことは察したが、一応聞いてみた。

「右手だけだったよ・・・前をみたら、妹の右手がなくて、家族全員が血まみれで死んでて・・・」

「う・・・」

どのような想像をしたのかわらないが、アリサが口をおさえている。

「戦闘が終った後、家に戻ってみたけど、やっぱり家も吹き飛ばされてて・・・本当に一人になって・・・唯一残っている家族の遺品がこれだけなんです・・・・」

「そうだったの・・・」

リンディはさっき自分が話しているときに、最後に言ったことを思い出す。

(ご家族が心配しているでしょう?)

そのときに暗い顔をしたのはこういうことだったのだ。

「シンさん。わたしと同じやったんや・・・・」

はやてもシンの過去を聞いて驚いている。

「それで、俺は今いるプラントに住むようになって、進んで軍に入りました。」

「そうか・・・・」

士郎は黙ってシンを見る。

「しかし、なんでまた子供の君が軍に?」

子供という言葉に敏感に反応するシン。



「な!?・・・俺は十分大人です!」

「え?だってまだ君は16だろ?」

「プラントでは、15で成人です。」

ここの国ではしらないが、プラントにとって、16はすでに成人である。

「そうだったのか・・・・じゃあ何で軍なんかに?」

士郎の問いに、シンは不機嫌ながらも答える。

「力が欲しかったんです。家族を失った時、何も出来なくて無力だった自分が嫌で、もう何も失いたくなくて・・・守りたいものを守り抜くための力が欲しかった。」

そして彼は現在、たった2年でザフトの最新鋭機を任されるほどのパイロットに成長した。

士郎はふと、時計を見る。

「もうこんな時間か、そろそろお開きにしようか。」

時計を見ると、時刻は夜の8時を回っている。

シンたちにとってはどうでもない時間だが、小学生たちにとっては早く帰らなくてはいけない時間帯である。

「アリサちゃんとすずかちゃんと忍は、俺が車で送っていくよ。」

恭也が車を取りに先に翠屋を出る。

そのあと、皆がそれぞれの家に帰っていった。





「・・・・・・・」

シンの表情は暗い。

さっきあんな話をした後だからなおさら暗かった。

「おい・・・」

ヴィータがシンを呼ぶ。

その顔はどこかばつが悪そうな、というよりどこかシンを怖がっているところもある。

「さっきは悪かった・・・・・おちょくってごめん・・・・」

そういうちと、シンの手がヴィータのほうへ伸びていきて、反射的にヴィータは目をつむった。

さっきのことで、まだ怒っていてなのかされる。そう感じていたのだ。

しかし、ヴィータの予想とは裏腹に、頭に優しい感触があった。

ゆっくりと目を開けると、シンは微笑みながらヴィータの頭をなでていた。

「こっちこそ悪かった。言い過ぎたよ。さっきは頭に血が上っててさ・・・大人気なかったよ。」

どうも自分は感情的になりやすく、さっき自分は成人だといったことを恥ずかしく思っている。

「じゃあ、許してくれるのか?」

「だから別にそういう意味で怒ってるわけじゃないから気にすんなって。」

そういったとたん、ヴィータの顔が笑顔になった。

「・・・・」

その中で、はやてがさっきからずと何か考え込んでいる。

「主?」

シグナムの言葉も聞こえないのかわざと無視してるのか、ずっと考え込むはやて。

そして、シンのほうを向いた。

「シンさん?」

「ん?」

「さっきからずっと考えたんやけど、今日からもとの世界に帰るまで、うちの家族の一員にならへん?」



はやての突拍子のない言葉にはやてを見たまま言葉につまるシン。

一体どこから突っ込んだらいいのやら・・・・

「心配せんでもええで、ヴィータたちも家族やし・・」

「いや、そういう問題じゃないだろ・・・・」

混乱しているシンに、ヴィータが割り込む。

「それいいじゃん。あたしは歓迎だぜ。」

その言葉に、ほかの騎士たちも答える。

「私もそれで賛成です。」

「主がそれでいいなら。」

勝手に話を進めて話すタイミングを逃したシン。

笑いながらヴィータがシンに言う。

「多数決で、今日からお前は家族ってことで決まりだな!」

そういうことを多数決で決めていいのか・・・と、シンは本気で考えた。

「まあ、家族いうても今までどおりにおったらええけん。」

はやてが笑いながら言う。

降参、といった感じでシンはため息をつく。

「わかったよ。」

どうせ何を言っても聞かないだろうと思ったのだ。

「ほなシンさんは・・・・・おにいちゃん?」

「は?」

「シンさんの家族の役割。」

それを聞いてなぜか少し恥ずかしくなった。

流石に血のつながっていない人間に「お兄ちゃん」と呼ばれるのは流石に気が引ける。

「呼ぶときは普通にシンでいいから・・・・」

「うーん・・わかった。」

少し渋ったように妥協するはやて。

そこでふと気になる。

「ヴィータとかは、家族でいうとなんになるんだ?・・・大体分かる気もするけど。」

「ヴィータは妹で、シャマルはどっちかって言うとお母さんで・・・・シグナムは・・・・・」

少し考えた後、シグナムを見て申し訳なさそうに答える。」

「・・・・・お父さん?」

「な!?・・・主・・」

流石のシグナムも予想外のことを言われて驚く。

それを聞いてくすくす笑うヴィータ。

「ちょうどいいじゃん!」

「ヴィータ、お前まで・・」

「でも、リーダーって毎朝ご飯食いながら新聞見てるでしょ?それって普通父親がすることだと思うんだけど?」

少し痛いところを疲れて黙るシグナム。

そのやり取りを聞いていたシンもついでに答える。

「それは父親じゃなくて、親父がすることだ。」

「お・・・親父・・・」

今度は親父といわれ流石にショックを隠せないシグナム。

少し言い過ぎたかと持ったシンはすぐにフォローを入れる。

「別に、本気でいってるわけじゃないさ、はやてもヴィータも。だから・・・そこまで気を落とさなくてもいいぞ。」

「あ・・ああ・・すまない・・・」

どうやら彼女は冗談とかを真に受けるタイプみたいである。

なにはともわれ、こうして本格的にシンの新しい家族(?)との生活がスタートしたのだ。





(ここは?・・・)

少女は・・・・・薄れたままの意識の中で、自分がどうなったかを懸命に思い出そうとする。

確か、オーブが戦場になって、避難している最中に、自分の携帯を落とした。

拾おうとしたときにそばにいる女性に危ないからと止められた。

それでもあの携帯を手放したくなかった。

そのとき、一人の少年が自分の携帯を取りにいってくれた。

ちょうどそのときだった・・・・

いままで感じたことのない衝撃と、味わったことのない痛み。

だが、不思議なことに痛いのに何打破感じなかった。

そのあと痛みが残るまま不思議な感覚に包まれた感じがして、今は何かの液体に浸かっているる感じがする。

(ああそうか・・・・)

その少女はなんとなく分かった。

(マユ、死んじゃったのかな?)

少女、マユ・アスカは思った

あの衝撃と強烈な痛み。まだ小さなマユでも分かる。

なぜか液体に浸かっている理由は分からないけど、もうどうでもよかった。

ただ、ひとつだけはっきりしていることがある・・・

「ごめんなさい・・・」

自分の我侭で結局家族全員が死んでしまった。

「ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・」

だんだんと消えそうな意識の中で、いくら謝っても意味を成さないが、とりあえず謝り続ける。

「ご・・・めん・・・なさ・・い・・」

なきながら謝っていくうちに、何か眠気のようなものがおそい・・・それ以降マユは何も言わなくなった・・・・・・