Seed-NANOHA_140氏_第11話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:40:53

ここは海鳴市にある小高い丘。

まだ完全に朝日が昇っていない早朝。

なのはは、ここで毎朝のようにここでいつものトレーニングを行っている。

(いくよ、レイジングハート)

なのはは念話で自分で持っているアクセサリーに話しかけた。

(了解)

そのアクセサリー・・・もとい、デバイス「レイジングハート」は答え、それと同時になのはは空き缶を二つ放り投げた。

そのとき、なのはの周りに小さな弾のようなものが二つ現れ、それぞれが空き缶を追っていった。

ほぼ同じタイミングで何回も空き缶に当たる弾

(10・・・・20・・・30)

レイジングハートがその数を数えていく。

それをまじまじと見ているシン。

(これって何の訓練なんだ?)

朝ふと目が覚めて部屋を出ると、なのはがすでに起きていて、魔法のトレーニングをするといっているのでついていくことにした(他にまだ誰も起きてないのでちゃんと書き置きも書いていった)

それでついてきてみてみれば、ただ空き缶に小さな魔力をぶつけるだけ。

(まあ、どうせわかんないし、俺自身魔法なんて使えないしどうでもいいか・・・・あ、100回いった)

暇つぶしにさりげなく回数を数えていたりしていた。

(130・・・140・・・150!)

レイジングハートの声とともに空き缶は弾け飛び、見事空き缶はゴミ箱に二つとも入った。

「ふぅっ。」

少しずつ回数を増やし、また同時に扱う数も増やしていき、流石に二つの弾を150回ずつ当てるのは疲れる。

「すごいな。これを毎朝やってるのか。」

そばで見てたシンはさりげなくなのはに声をかける。

「そうだよ。少しずつ回数増やしたり、空き缶の数を増やしたり。」

「それで150回も?」

「数えてたんだ・・・」

そういいながらシンはゴミ箱を見る。

そこには、思いっきりつぶされてる空き缶が二つ。

「あ、そろそろ帰らないと。」

そういい二人はこの丘を後にした。





なのはの家につくと、家の横にある建物から声が聞こえてくる。

それを見て、なのはがすぐに答える。

「あ、あそこでお兄ちゃんとおねえちゃんが剣のお稽古してるんだよ。」

そういわれて機能士郎がそんなことを言っていたのを思い出す。

「どんなことしてるんだ?」

だが、それはなのはには分からないらしく、首を横に振る。

「私には全然わかんない。ただ刀を振ってるようにしか見えないし。」

まあ普段からあんまし見てないんだろう。そう思い再び道場を見た。

先日の美由希の動きに、シンは興味を持って、少し見てみたいと思っていた。

だが、先日士郎の言っていた「家のはちょっと違う。」という言葉を思い出し、あんまし部外者が出入りするもんじゃないだろうと思い、なのはに続いて家の中に入った。

しばらくした後朝食を食べて、いつもの如く絶対領域を張っている夫婦を見ながら朝食を取る。

ただいつもと違うのは、今朝からやけに美由希がこっちを見ている。

それに気付いて美由希のほうに向くと、急にそっぽを向く。

(俺、何かしたか?)

そう思い朝食のハムトーストをかじるシン。

皆が学校に出かけた後、シンは片づけを手伝おうと思った。しかし・・・

「お客さんにしてもらうのは悪いから、ゆっくりしてて。」

そういわれたが、傷を治してもらって、一晩とめてもらい、そこまでしてくれて、何もしないのは流石に気が引ける。

そういうと桃子は少し考えて、ひとつの提案をした。

流石にそれは・・・と考えたシンだが、今日、なのはの学校が昼までで、そのあいだだけといわれて、それならと了承した。





「クルーゼ、説明してくれる?」

研究室で、二人は話をしている。

マユは今寝ていて、プレシアはクルーゼにマユのことを聞きだそうとしていた。

「ふむ・・・」

そろそろ言ってもいいだろう。そう思い説明するクルーゼ。



「彼女は、コーディネーターだ。」

「コーディネーター?」

聞きなれない言葉に疑問を浮かべるプレシア。

「私の世界にいる人種でね。遺伝子を改良させて本来の人間よりも身体能力や様々な能力が高い人間のことだ。」

「なるほど・・・それで・・・」

クルーゼの話を聞いて、彼女が本来の子供よりも強靭な身体を持っているからあの実験をしてもそこまで大使は後遺症がなかったのかと納得した。

「あと、言うの忘れてましたが、少し脳に異常がきたしてまして。まあ、異常といっても、少し記憶を失ってるだけですが。」

マユの報告を済ませたクルーゼは部屋から出て行く。

「ちょっとまって。」

しかしプレシアにとめられた。

「あの子にあのことはいってるの?」

それを聞いたクルーゼは笑みを浮かべながら答える。

「まあ、今は自分のことで頭がいっぱいらしい。落ち着いたら話すつもりさ。」

そういいながら部屋を出て行った・・・・





「ありがとうございました。」

喫茶翠屋はまだ朝なのにそこそこ客がいた。

朝は主に近所の奥さん達、昼はOL、夕方は学校帰りの生徒や恋人たちで一杯になる。

「注文は・・・はい、アイスコーヒーとトーストですね。分かりました。」

その中でシンはウェイターをしている。

朝の話で、今日はちょうどウェイトレスが休んでいて、昼になるとなのはが帰ってくるから帰ってくるまでの間、この店を手伝うことになった。

ちょうどはやても一緒らしいから、はやても連れて帰る予定だ。

仕事のほうはというと、初めての割にはちゃんとできている。

ふと、シンは周りを見てみる。

まあケーキやデザートを主に扱ってる店だから仕方ないといえるが・・・

(男は俺とあの人だけかよ・・・)

周りを見てみると、働いてるのは女性ばかりで、男はシンと士郎のみ。

暇なときは恭也もくるというが、恭也も今日は学校だった。

客層もやはり女性が多いので、何か自分だけ浮いている気がする。

だが、客からの反応は意外とよかった。

桃子さんと仲のいいお客の会話をちょっと盗み聞きすると、シンが働いている経緯を少し話していたらしく、その客が

「顔もいいし意外と礼儀もいいし・・・このまま雇っちゃえば?」

という声が聞こえて、桃子だったら本当にやりかねないので少し不安になるシンであった。





ここは私立風芽丘学園。今は昼休みで、その屋上で数名の学生が昼食を取っている。

「それにしても・・・美由希、今日はどうしたの?」

そこで、美由の友人の一人が声をかける。

「え?」

「そうそう、なんか授業中も上の空だったし、なんかいろいろつぶやいてたし。」

「ええと・・・」

それは自分が聞きたかった。

今日は朝からずっと、シンのことがなぜか頭から離れない。おかげで朝の稽古もあまり身に入らなかった。

「・・・・美由希もしかして・・・」

最初に話しかけてきたまさかとおもい話しかける。

「男が出来たとか?」

それを聞いて、飲んでいたお茶を吹きかけ、むせる美由希。

「え!うそ?ほんと!?」

この手の話になると急に騒ぎ出す一同。

美由希はあわてて違うという。

「ち・・違うって・・・・別にそんな関係じゃ・・・・」

「やっぱ男関係じゃん。ほら、どんな奴か言ってみ。」

観念して、昨日起こったことと、出会った経緯を話した(勿論、魔法関連は話してない)それを聞いた友達は・・・

「うっわなにそれ。漫画みたいじゃん。」

たしかに、出会いが交差点でぶつかったのは漫画ではよくある。

「それに、危ない男達に囲まれて絶体絶命のピンチに、颯爽と駆けつけるなんて、あんためったにそんな体験できないわよ。」

美由希の話でいろいろ盛り上がってる友達。

(はぁ・・・)

心の中でため息をつき、空を見る。

そして、友達に呼ばれるまで、またシンのことを考えているのであった。





「ただいまーー。」

元気な声が翠屋から聞こえてくる。

学校が終わり、なのはたちが帰ってきた。

「いらっしゃーい。」

働いているクセで、つい客と同じ対応を取ってしまうシン。

なのはたちも、シンがここで働いていることに驚いた。

「え?シン君?なんで?」

まだなのはに説明をしてなかったシンは事情を話す。

それを聞いて納得したなのは。

「あら、いらっしゃい。」

なのはの声に気付いて、ようやく出てきた士郎と桃子。

「「「「お邪魔します」」」」

子供たちが挨拶をして、あいている席に移り、話を始めた。

「シン君。わるいけど、あの子達にこれもっていってくれない?」

そういわれてたくさんのジュースやらケーキやらいろいろのってあるトレーを出された。

「分かりました。」

そういってトレーをもち、なのはたちのところに持っていくシン。

そこで、はやてがシンの傷に気付く。

「うわ、すごい傷やな。」

シグナムから聞いた話で、どこまでの傷か知らなかったはやてが、シンの傷を見て予想以上の傷でびっくりする。

「こんだけ深かったらシャマルでも完全に治すんは無理かもしれんな。」

シンの傷を見て、はやては言う。

「別に無理にしなくていいさ。無理だったら、元の世界に戻ったら治せるかもしれないからな。」

笑いながらシンはいう。

プラントに戻れば、これくらいおそらく治せるだろう。

だから気にすることはない、とはやてに言う。

「ほれやったらええけど。」

治せるという言葉を聞いて安心するはやて。

「シンくーん。ちょっときてー。」

遠くからシンを呼ぶ桃子の声が聞こえ、「わかりました。」といいながら戻るシン。

もうすぐ開放されるので張り切っていくことにした。



ようやく接客の仕事から解放され、今ははやてと一緒に家に帰っている最中だった。

だがその前に・・・

「ちょっとよるところあるけん一緒に来て。」

と言われて今は病院にいた。

この病院はシンも知っているところだった。

そこは、シンが数日前によった病院だったからだ。

「だいぶ足も調子がよくなってるみたいね。」

診断書を見ながらはやての担当医、石田医師がいう。

「おそらく半年・・・遅くても今年中には完全に完治すると思うわ。」

医師の言葉を聞いて笑顔で喜ぶはやて。

「だから、この調子でね。」

医師の言葉にはいと答えて診断室を出るはやて。

それから、この帰り道ずっとはやては笑っていた。

「よかったな、足が完治するって。」

「うん!」

ずっとこのとで話をしていて、近くの空き地を通り抜けようとしたときだった。

(ん?)

声はしないけど、誰かが自分を呼んでいる・・・そんな感じがして気配がした空き地の方をみる。

しかし、そこには誰もいない。

「どしたん?」

はやてには聞こえなかったのか、シンがいきなり動きを止めたので不思議に思ったはやて。

「いや、なんか声が聞こえたけど・・・空耳か?」

そう思って再度歩き出そうとしたとき・・・

(くそ・・・まただ・・・)

またもや気配を感じた。

「ちょっと待っててくれ。」

そういいシンはさっきから声がする空き地へと行く。

「ここいらだったよな・・・」

そのとき、草の中に何か光るものを見つけたシン。

それを拾って見ると、貝殻のようなものが落ちていた。

ただ、本物の貝殻ではなく、硝子だろうか・・・透明なもので貝殻の形を模したものがあった。

何かも落し物だろうか、そう思い拾うと

「え・・・」

少しだけだが、それは光りだした。

「なんだ・・・」

そのとき、はやてがシンに近づいた。

「どないしたん?」

そういってシンがひっているものを見る。

「シン、これって・・・・デバイス?」

はやての言葉で、もう一度見る。

「これいっぺんアースラいって調べてもらったほうがええんちゃうん?」

だが、シンにははやての言葉は聞こえていない。

(なんだろうこの感じ・・・なんか暖かい・・・)

シンは、この感覚を以前に感じた気がする。そんな気がした。