Seed-NANOHA_140氏_第14話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:43:57

ここはアースラの食堂。

食堂には現在アースラの主要メンバーとシン、それに先日この世界に来たばかりのレイとムゥがいる。

今は二人にこの世界のことを話している途中だった。

昨日の話である程度のことは分かったが…

「魔法ねえ…」

正直まだ実感できない。

確かに魔法があることは分かった。だが心の奥底で認めていない自分がいる。

(年かね俺も…)

ふと、今ザフトにいるであろう褐色の肌の少年の「おいおっさん!」という言葉を思い出す。

今年で彼は30になる。確かに立派なおっさんだ。

と、関係ないことを考えていることに気付いて視線を戻すムゥ。

ふと横を見ると、自分以外の人物も自分と同じような顔をしている。

俺を見たリンディは、

「それじゃ、もう一度良く似たものを見てもらいましょうか」

そういってリンディはなのはを呼んだ。

リンディに話を聞いて、頷いたなのははレイジングハートを取り出す。

「いくよ、レイジングハート!」

その声とともになのはは光に包まれて、今まで来ていた服から違う白い服に変わっていた。

それだけでも十分驚くのだが、さらになのはの足から羽のようなものが生えて、空中に浮いた。

昨日の小人といいなんなんだこの世界は…レイとムゥはなのはを信じられないような目で見つめた。

もう十分だと持ったのか、なのはは着地し、いつもの姿に戻る。

「これで信じてもらえましたか?」

なのはの問いに「ああ」と答える二人。

「まあ、魔法のことはこれぐらいにして、あなたたちの処遇を決めなくてなくてはなりません。」

二人のこれからの話になり、さっきまで呆然としていた二人は真剣な顔になる。

「ちゃんとあなたたちを元の世界に返すまではこちらも全力で協力します」

そう言ったときにレイがいう。

「そういえば、シンは以前からここいると聞いたが…」

そういえば、シンはまだレイに自分はどうしているかまだ言ってなかった。

「俺はまあ…戻るまで協力してくれるって言ってくれて、その代わりにある事件の調査を手伝うことにしてる」

事件?とレイはシンに聞く。

「ああ。傀儡兵だったっけ…なんかそいつが異様なほど出てくるから俺にその事件が解決するまで手伝ってくれってさ」

大体の話を聞いたレイは大体察しがつく。

「それで、俺たちにも協力を?」

それを聞いてまあ出来れば、というリンディ。



「別に強制じゃないから。やりたくないならやりたくないでもいいし」

それを聞いてしばし考え込む二人。

そのうち、レイが先に答えた。

「わかりました、協力しましょう」

続いてムゥも

「ほかの二人もするんだったら、俺も協力するっきゃねえか」

と、あっさり協力を承諾した。

快い返事に正直ほっとしたリンディは続いて一番彼らにとって問題である話題に入る。

「次に、貴方たちの住のことなんだけど…」

またはやてに頼もうと思ったが、流石にもう二人も一緒にいさせるのは流石に悪いと思う。

そこにレイは言う。

「俺は昨日使わせてもらった部屋を引き続き使わせてもらえばそれでかまいません」

別に艦内生活は慣れているし、ここまで協力してもらって贅沢は言っていられない。

それでいいの?と聞くリンディに頷いたレイ。

その次はムゥだが……

「俺も空いている部屋でいいっていうか、それしかなさそうだな」

ムゥもそれで大体満足していた。

だいたいの話が終ったところで

「お、そういえば…」

ムゥが何か思い出したようにシンとレイに視線を向ける。

「お前さんたちの名前聞くのを忘れてたな」

それを聞くと何か嫌そうな顔をする二人。

「…レイ・ザ・バレル…」

「シン・アスカ…」

それでも一応名前を言う二人。

少し険悪な空気が辺りを包む。

そこで、リンディが何かも出だしたようにポケットから何かを取り出す。

「シン君、これの解析が終ったわよ」

そう言い渡されたのは、数日前に拾った変な貝状の硝子細工らしきものだった。

「解析した結果、これはれっきとしたデバイスよ」

そう言われてシンはもう一度そのデバイスを見る。

これがはやてたちみたいなものになるのか。

さらに、とクロノが付け加える。

「それに、これはアームドデバイスっぽい」

クロノのいっていることがいまいちわからないシン。

「あ…アームド?」

そんなシンを見て、エイミィが急遽説明する。

「デバイスって言ってもいろいろあるの。なのはちゃんやフェイトちゃんが持ってるのがインテリジェントデバイス。クロノが持ってるのがストレージデバイス。そんで、シン君が持ってるのは、ヴィータちゃんやシグナムが持ってるのと同じアームドデバイス」

エイミィが説明してくれるが、まだいまいちわからないシン。



「えっと…つまり…俺たちの世界で言うザフト製MSとかオーブ製MSとかみたいなのでいいのか?」

向こうの世界でたとえられると「さあ…」としか答えられない。

それでシグナムも答える。

「アスカ、一回起動させてみろ」

と、いきなり言われるシン。

「いきなりいわれても解るわけないだろ」

だが、その問題も杞憂に終る。

「言い忘れたけど、デバイスでもこれ中身は空っぽみたいなの」

リンディのことばに「へ?」答えるシン。

「デバイスなんだけど、中には何も入ってないのよこれ」

そういい、不思議そうにデバイスを見るリンディ。

当のシンは、最初は不思議に思ったが、どうでもいいかと思いデバイスをポケットにしまう。

どうせ自分には関係のない。自分にはすでにデスティニーがある。

そのとき、なのはがふと思いついた。

「あ、どうだ。ムゥさん、レイ君。これから私の店に来ない?」

いきなりのなのはの誘いに「は?」と返す二人。

それをすぐにシンがフォローする。

「こいつの家、喫茶店やってるんだ」

それで大体の内容を理解した二人。

「お父さんとお母さんに二人を紹介しないといけないから」

このとき、シンは「新しいお友達が出来たから紹介する」という感じに見えた。

自分にも「友達」と言い切ったのだ。おそらくこの二人もすでに友達なのだろう。

この後は特にすることのない二人は、この招待に快くOKをした。

そして一同は翠屋へとむかう。



「話って何ですか?」

マユはプレシアに話があると彼女の研究室に呼ばれていた。

そこにはいまだアリシアが機材の中に入っていた。

「だいぶ調子は良くなったようね」

そういってプレシアは彼女の右腕を見る。

今はだいぶ気持ち的にも整理がつき、精神的にも安定していた。

「はい、もう大丈夫です」

それを確認して、プレシアは話の本題に入った。

「あなたの右腕のことだけど、治療するのにちょっと特殊な細工をしているの」

そう言われてマユは右腕を見る。

どこにも異常はない普通の右腕である。

「右腕じゃなくて、それはあなたの体内にあるのよ」

そういわれて「え?」と疑問をもつマユ。

「今のあなたなら聞こえるかもしれないわ。ちょっと精神を集中させてみて」

そう言われてゆっくりと目を閉じて意識を集中……といわれてもどうすればいいのかさっぱりわからない。そう思ったときだった。



『おはようございます。マスター』

「うわ!!」

いきなり脳から声が聞こえた気がしてびっくりするマユ。

(なんなのこれ…)

いきなりのことで頭がついていかないマユにプレシアは説明する。

「あなたの体内にデバイスをはめ込んだのよ」

でばいす?と首をかしげながら考えるマユ。

「魔法を使うための媒体と考えてもらっていいわ。あなたの心臓にそのデバイスがあるの」

それを聞いて心臓に胸を当てるマユ。

話のとおりなら、自分は漫画みたいな魔法使いになれたということである。

信じられないが本当らしく、なぜか少し嬉しくなる自分がいる。

「ちょうどいいわ。少しならあなたの訓練に付き合ってあげる」

マユに魔法を少しでも覚えさせるために場を離れる二人。

(まだ時間はあるわ…)

以前とは違い時間はまだある。そうあせることはない。

そう思うと、以前とは違い心の余裕が見える。

知らないうちに、彼女は以前の、アリシアの母であったときの優しい母親に戻りつつあった。

だが、二人は誰も気付かない。二人が移動しているところを、クルーゼが怪しい笑みをこぼしながら見ているのを……



「そお、この人たちが…」

今は大体昼の2時くらい。

この時間になると翠屋も客足は途絶え、各自休憩でくつろいでいた。

こんなとき、なのはたちが帰ってきて、昨日のロボットに乗っている人たちを連れてきた。

「そういえば忍、シンに聞きたいことがあったんじゃないか?」

恭也は昨日忍がいっていることを思い出した。

その言葉に何故か美由希が「え?」と反応する。

うん、と頷き、目を輝かせながら忍はシンに近づく。

「聞きたいことというよりはお願いなんだけど」

少し緊張したような様子で忍は言う。

なんだ?とシンは忍を見る。

「あの機械に乗せて!」

手を合わせて、まるで親におもちゃをねだる子供のように忍はいった。

機械とは、おそらくデスティニーのことだろう。

しばし訪れる沈黙……

「昨日見てどうしても乗ってみたいの!だからお願い!!」

それを聞いてシンが呆れたようにいう。

「無理に決まってるでしょ。何言ってるんだよ、全く…」

違う世界の人間とはいえ、民間人にMSを乗せるわけにはいかない。

「どうせなら、あのおっさんに頼めば?俺とは違う組織だし、乗せてくれるかもしれませんよ。金色の機体に」

そういってムゥのほうを指差す。



「お…俺?」と自分を指差すムゥ。

普通はどの組織でも民間人にMSを乗せるせるわけには行かない。

「こっちも無理に決まってるだろ」

どうも全滅みたいで、ため息を吐く忍。

「すまない、こいつ大の機械好きで、始めてあんなロボットをみたものだから興奮して…」

すねてる忍に代わって恭也がフォローを入れる。

「まあ別にいいが……かわった譲ちゃんだな」

全くです、と恭也も肯定の言葉を入れるしかない。



「シン」

ムゥたちのやり取りをつまらなそうに見ているシンに、レイが話しかけてきた。

「話があるから外に来て欲しい」

レイの顔からして重大な話らしい。

二人は今は人が全くいないテラスに腰掛ける。

「話せるうちに話しておこうと思ってな…世界のことを」

それは、シンが一番聞きたかったことだった。

「最初に言おう。お前は今向こうの世界ではMIAだ」

それはそうだろう。自分もMIAか戦死のどちらかと思っていたところだ

「流石に雷に打たれてMIAになったと説明するのが大変だった」

ふつう、快晴の日にMSが雷に打たれて行方不明など聞いたことがなかった。

勿論タリア艦長も最初は信じてもらえなかったが、戦闘記録や通信記録を見てようやく信じてもらえた。

「悪いな、いろいろ手間取らせて」

別に自分が悪いわけではないが、自分のためにいろいろしてくれたレイに礼を言う。

………もちろんギャグなどではなく本心で………

「気にするな、俺は気にしてない」

いつもの調子で淡々と言うレイ。

「それで、これからが本題だが……」

その内容は、シンの予想を大きくかけ離れる結果となる。



(くっそー、よく聞こえねー)

ヴィータはシンとレイが外に出て何か話しているのを見つけて、さっきからドアに張り付いて盗み聞きしているが、声が聞き取れない。

ドアから少し離れているところで話していることもあるが、なにせレイの声が小さいので良く聞こえない。

(にしてもあいつら、何はなしてるんだ?)

何とか聞こえている言葉だけで想像しても何が何やらわからない。

(なんだよサイアとかティニープランって…)

全部が聞こえないのでつなぎつなぎで考えてみて全然わからない。

それに話を聞いているシンの顔を見ているかなり動揺している。

「こら、ヴィータ」「!!」

後ろから急に声が聞こえてきて、思わず声を出しそうになるが、ヴィータは何とか声を飲み込こむ。

おそるおそる後ろを向くと、そこにははやてが立っていた。

「人が二人でお話ししよるときに盗み聞きしたらあかんよ」





突然ヴィータがいないと思ってすこし探してみると、ヴィータがテラスの入り口で座っていたので、なんだろうと思ったはやては、ヴィータがシンと例の話を盗み聞きしていることに気付いた

「これ以降、こんなんしたらあかんよ」

「ごめんなさい……」

ヴィータも深く反省しているようで、皆のところに戻ろうとしたときだった。

「レイ!?どうしたんだよレイ!?」

いきなりシンの叫び声が聞こえて、何かと思い窓を見ると、レイが苦しんでいるのがわかる。

それを見たはやては士郎たちを呼ぶためにその場を後にする。

何故レイがああなったのか、わけがわからなかった。



「……マジかよ……」

シンはレイの話を聞いて呆然となる。

結局ジブリールを捕らえられず逃がしてしまい、その結果、ブルーコスモスが持つ「レクイエム」によって、数基のプラントが破壊され、数万以上の人が死んでしまった。

それを聞いたシンは怒りを隠しきれなかった。

大量破壊兵器を平然と使う地球軍。おそらく彼らにとって人を打つなんてことは考えていないのだろう。

奴らにとってコーディネーターは化け物当然なのだから。

だが、結局彼はその後起こった戦いに敗北し死んだ、レイが止めをさしたらしい。

そして、その後の話も、シンにとっては信じがたいものだった。

デスティニープラン……人の遺伝子を解析して、コーディネーター、ナチュラル関係なく人それぞれが似合った職に就かせる。

ある意味、コーディネーターの一つの完成系のようなプラン。

話を聞いたが正直信じられない。そんなことで本当に争いがなくなるのか。

それ以前に、それは人の自由を奪うようなものでもある。

だが、レイは力強く言う。

「争いがなくなるだけじゃない。これ以上、連合のエクステンデッドのようなものもいなくなる。本当に平等は世界が来る」

それを聞いてシンはステラを思い出す。

本人の意思とは別に、戦うことだけを目的に作られた。

確かに、これ以上ステラのような人を増やすわけにもいかない。

そして、自分のような戦争で家族を失う悲しさを増やしたくはない。

「だから…議長を支えるんだ……俺とお前で………」

先ほどとは違い、なにやら苦しそうな表情を浮かべるレイ。

「おい、大丈夫かよ」

仲間を案じるシンだが、みるみるレイの顔が悪くなる。

「シン…すまない……はぁ…はぁ…水をもらってきて……」

最後の言葉を言い切る前に、レイは奇声を出しながら苦しみだした。

「おい!?どうしたんだよレイ!?」

いきなり苦しみだしたレイを見て、あわてるシン。

いったいどうしたのだろうか。



「おい!どうしたんだ!!」

異変に気付いたのだろうか、士郎たちが二人のところにやってきた。

「桃子、救急車呼んで……」

救急車を予防と思ったが、それは苦しんでいるレイによって遮られた。

「水を…いただけませんか……」

こんなときに何を言っているのだろうか、そう思っているとレイが苦しみながらポケットからなにやら薬のようなものを取り出す。

彼は何か病でも持っているのだろうか……

レイの中に入れて、桃子が水を持ってくる。

「おい、大丈夫か坊主……」

少しの間だが仲間である彼を見に来たムゥだが、苦しみながらムゥを見るレイの姿は、ムゥの記憶にあるとある人物を想像させた。

「ラウ・ル・クルーゼ……」

そのあと、レイはいったんリンディの家で休ませることにした。

そして知ることになる。レイ・ザ・バレルという男とムゥ・ラ・フラガの関係を……