Seed-NANOHA_140氏_第13話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:42:32

「つ…」

金髪の男はゆっくりと目を開ける。

(ここは?)

確か自分は今アカツキに乗っていたはず。

周囲を見渡すとどこかの医務室のようだが、アークエンジェルとは違う。

「あ、目が覚めました?」

声が聞こえて声のほうを向くと、緑色の服を身にまとった女性がいて、優しく微笑えむ。

「私はここアースラの医療班で、シャマルといいます」

アースラ?聞きなれない名前に困惑するムゥ。

それに、まだ記憶があいまいで記憶を少しずつ思い出していく。

確か自分は戦闘に参加していて、アークエンジェルがミネルバに狙われてて、それを見て自分が飛び出して…

そしてその男、ムゥ・ラ・フラガはすべてを思い出した。

「そうだ!戦闘は…!…つぅ…」

急に起き上きあがった瞬間、痛みが走りわき腹を押さえる。

「焦るのはわかりますけど安静にしてください。」

シャマルはムゥをベッドに寝かせる。

「あ、艦長。」

そこへ、先ほどの女性が艦長と呼ぶ人物と金髪と黒髪の少年が入ってきた。

「どうやら目を覚ましたようね。」

シンに頼んでコックピットを空けてもらったら、この人が意識を失っていたので医療班を呼んで治療に当たらせていた。

そのなか、ムゥは艦長ではなく後ろの少年を見て驚く。

(あの服はザフトの…)

彼らが着ている制服はザフト、それもトップガンの証でもある赤を着ている。

そして、黒い髪と赤い目をした少年には見覚えがあった。

(あいつは、あのときの坊主…)

自分がまだネオ・ロアノークと名乗っていた頃、ステラを返還した少年だった。

名前は確か、ステラがシンといっていたか…

この少年がいるということは…

(ここは…ミネルバか)

だが、さっきの人はここはアースラといっていた。

それに、その艦長が着ている服もザフトのものではない。

わけがわからない。

そんなムゥを見て、この船の艦長が言った。

「私はリンディ・ハラオウンと言います。ここはアースラという船で、私たちは時空管理局というものです」

リンディが言ったことにきょとんとするムゥ。

そんな組織など聞いたことがない。

「おいおい、冗談はよしてくれ。時空管理局?なんだよそりゃあ?」

まあ当たり前の言葉を言う。

しかし彼女は…



「ですがこれは事実です。あなたと後ろにいる二人は時空を超えてこの世界へ飛ばされて私たちの世界にやってきました」

漫画やゲームのようなことをさらっと言ってのけるこの女性。

(すまん、なんか俺頭痛くなってきたわ)

ムゥは頭を抱える。

流石にいい年した大人が言うと破壊力も抜群だった。

「じゃあ何か?俺はゲームや漫画の主人公みたいに時空を飛んで別の世界ににきたってのか?」

そういうと、リンディとシャマルは首を縦に振った。

マジかよ…

ふと、リンディの後ろにいるザフトの制服を着た少年をみる。

彼らはどう思ってるのだろうか。

「参考までに聞きたいが、後ろのザフトのお二人はどうなんだ?」

あの二人はどう思っているのか、それをムゥは聞きたかった。

先に金髪の少年が言う。

「信じたくありませんが、どうやらそうらしいです」

レイも彼が気を失っている間、この人に詳しい話を聞いて、どうやら本当に異世界にきてしまったと認めるしかない。

それを聞いてため息をつくムゥ。

「で、あんたはどう思ってんの?」

次はこの黒髪の少年、シンの番である。

シンは少し悩んでこういった。

「俺はレイより一足先にここに来て、実際魔法も見てますから」

さらっと、そして何気にすごいこといいっている。ムゥは思った。

魔法なんてあるわけないだろう。そう思うのが普通である。

「だったら実際見たほうがはやそうね」

リンディがため息をつきながら言う。

(ため息をつきたいのはこっちだ)

「そういえば、あなたの名前をまだ着てなかったわね」

なぜか話を勝手に進まされた感じがしたが、とりあえず名前は言っておこう。そう思いムゥは答える。

「俺はムゥ・ラ・フラガだ」

ムゥが名前を言ったとたん、レイが驚いたような顔でこっちを見る。

「どうしたんだよ・・・・」

「いや・・・・何も・・・」

いかにも怪しいレイの反応を見てムゥは考える。

そのとき、

「シンー」

艦には不釣合いの、まだ幼い少女の声が聞こえる。



「ん、はやてか?」

シンがそういい医務室に入ってきたのは、まだ小学生くらいの女の子。

こんな子供までいるのか、そんな感じでムゥははやてをみる。

「なんだよいったい?」

「シンにはまだリィンを見せてなかったけん紹介しようと思って」

しかも、シンはその少女と親しげに話をしている。

そういって少女が取り出したペンダントらしきものから光が発して、そこから小人のような少女が出てきた。

「な…」

ムゥ、そしてレイは驚きながらそれを見る。

「今度は小人かよ」

そのなか、シンは別の意味で驚いていた。

『マスター、この人たちは?』

しかも普通にしゃべっている。

「この人はシン。最近うちと暮らし始めた人や」

はやてがそういうとリィンフォースはシンを見る。

『私、リィンフォース』

そういい手を差し出した。

握手のつもりなのだろうか、とりあえず小指を差し出すシン。

その差し出された小指を笑顔で握るリィン。

それを尻目にリンディは言う。

「少しは信じてくれましたか?」

「え、ああ…」

正直あんな小人を見たら納得するしかない、といった感じだ。

「あなたの体調が回復したら今度のことを詳しく話しますから、今日はゆっくり休んでください」

リンディにいわれて、頷くことしか出来ないムゥ。

次にレイを見るリンディ

「あなたは…」

どうしようかといいかけたとき、

「この艦のあいている部屋があれば、そこでかまいません」

そういうレイに「それでいいの?」と聞くリンディ。

レイはもう一度頷き、シャマルに空いている部屋を案内させた。

シンはついていこうかと思ったが、レイに

「しばらく考えたいことがあるから一人にしてくれ」

といわれる。

レイがそういうのが珍しく、向こうの世界で何かあったのかと思った。

シンはどうしようかと思ったとき、はやてが話しかけてきた。

特等席なのか、リィンフォースがはやての右肩に座っている

「シン君。ちょっとこれからなのはちゃん家にいくことになったけん」

なんでだよ?と思ったが、大体察しがついた。

「なのはちゃんの家族に説明せなあかんけんうちらも行くことになったってこと」

まあそうだろうとシンは思った。

「以前に魔法のことは話した見たいやけど、こういうことをしとるって言ってなかったみたいで」

おいおい、とシンはおもった。

一番大事は事じゃないか。何で話してなかったんだよと思いたくなる。

まあ、早くいったほうがよさそうなので、はやてと一緒になのはの家に向かうシン。

『レッツゴー!!』

それにしてもこのリィンフォース、ノリノリである。





「まさかフラガの一族が生きていたとは」

レイはあてがわれた部屋で先ほどの男、ムゥを顔を思い出す。

レイは彼の父親を知っている、いや、憎んでいる。

自分勝手なことで自分やラウというクローンの失敗作を生み出した張本人。

おかげで自分も薬があっても身体はそう永くは持たない。

あいつはそのことを知っているのだろうか。いや、知っているはずがない。

だが、今はそんなことはどうでもいい。

それよりも、さっきからまとわりついている言葉。

(君は君だ!彼じゃない)

その言葉は、今までのレイ・ザ・バレルという存在を否定する言葉だった。

「俺は……」

彼は彼でもあり、クルーゼでもあり、アル・ダ・フラガでもある。

それなのに彼は、おそらくラウからすべてを聞いた上で、自分は自分だ、ラウやアルとはちがうといった。

(自分は誰なんだ?)



「ん?この感じ…」

クルーゼはいきなり不可解な感覚に襲われた。

この感覚は何回か体験したことがあった。

幸い、マユは今ではだいぶ落ち着いて、隣の部屋を使わせていて今は自分ひとりであった。

「ふふふ、そうか…奴が生きていたのか」

クルーゼはこの感覚の理由はすぐに解り、身体を震わせる。

「まさか生きていたとは。つくづく血は争えんな」

奴が生きていた。予想外だったが自分も生きていたのだ。奴が無事でもおかしくはない。

それに、感覚はもう一つあった。

「まさか彼も着ているとは…」

面白いことになりそうだ。クルーゼは静かに笑った。

ちょうどいい、この世界でこの血の決着をつけよう。クルーゼは誓った。

「私がお前たちを感知したのだ。お前たちも私を感じて見せろ!ムゥ・ラ・フラガ!そしてレイ!」





「なるほどねぇ」

戦いが終った後、ハラオウン家と八神家はなのはたちの事情を説明するためになのはの自宅で士郎たちと話をしていた。

以前に魔法を使って仕事をしてると聞いていたが、あんなことをしているなんて思っても見なかった。

さっきのように魔法による戦いがほとんどで、下手をすれば命を落とす危ない仕事である。

それを家族は身をもって知った。

しかも、それをまだ小学4年生のなのはがしているのだ。

なのははどんなことを言ってくるのだろうと思ったが、返ってきた答えは

「別にこのまま続けてもいい」というものであった。

意外な返答に驚く一同。

士郎たちは「本人がやりたいのだったら別にとめる必要はない」といった。

続けてもいいという言葉に喜ぶなのは。

ただし・・・と二つだけ条件をつけられた。

それは・・・

「その日に何があったかを絶対に言うこと。もう一つは困ったことがあれば相談すること」

なのはは何かあれば一人で考えてしまうことがある。

もう家族にも魔法のことは知っているのだから迷ったことがあれば迷わず相談しにこい、というものであった。

なのははその約束を守ると言って、この話は終ることになった。



「にしても、レイまでこっちにくるとは・・・」

シンはふと呟く。

まさか自分以外にもこの世界に来る人がいるとは思わなかった。

それが自分が知っている人間だったらなおさらのことだった。

「ねえシン君」

そこへ、なのはとフェイトが何かききたそうな顔でこっちを見てきた。

「そのレイってどんな人なの?」

なのはたちはレイの顔しか知らない。

だから、これからまた一緒にいることもあるだろうからどんな人か聞きに来たのだ。

「レイは、簡単に言えば…物静かな優等生かな」

部屋も同室でよくいるが、そう感じかなとシンは思った。

「あんまししゃべんないし無表情なところもあるけど、悪い奴じゃないよ」

それを聞いて「わかった、ありがとう」といって自分の部屋に戻るなのは。

簡単にレイのことを説明して、皆は各自の家に戻ることになった。

その帰り道、シンはあることが気になっていた。

(どっかであったことがあるんだよな・・・あのオーブのパイロット)

自分はあのパイロットを知っている気がする。

が、どうにも思い出せない。

「どうしたんだよ?」

ずっと考え込んでるシンにヴィータが気になって答える。

「ああ、あの金色のMSに乗ってる奴、どっかで知ってる気がするんだけどなかなか思い出せないんだ」

まあ、あんまり気にすることじゃないけど、と付け加える。

あんまり敵のことを考えても仕方がない。

それよりも今心配なのは…

「レイも来たってことは…今ミネルバにいるのはルナだけか…」

自分とレイがここにいるということは、今ミネルバにいるのはルナマリアだけということになる。



「なあ、そのルナってだれ?」

さっきの独り言がはやてに聞こえていて、ルナについて聞いてきた。

まあ隠す必要もないので素直に言う。

「俺の同僚でルナって呼んでるけど本名はルナマリアって言うんだ。レイもこの世界に来たから多分ミネルバにあるパイロットはあいつ一人だと思う」

流石に補充パイロットはいるだろうが、ルナも気持ち的にまだ参ってるだろう。

思えば、レイと別れる前にミネルバはどうなっているかだけでも聞いておくべきだった。

「その人のこと、心配なん?」

当たり前だ、とシンは言った。

「仲間なんだから当たり前だろう。それに…」

あのことを言うか一瞬迷うシン。

いきなりシンの言葉がつまったことに困惑する一同。

「約束したんだ。『俺があいつを守る』って…」

その言葉を言った瞬間、皆が急に吹き出した。

「な、なんだよいきなり…」

いきなり笑われて戸惑うシン。

「だって…『俺がお前を守る』って…ドラマみたいで…」

ヴィータが言っている意味が分からないシン。

「まあ、告白としてはへんだけど、シン君らしいといえばシン君らしいわね」

告白という言葉を聞いて、シンの顔が赤くなる。

「ち・・違う!別に告白とかそんなんじゃ…」

何故守るといっただけで告白と勘違いするのだろうか。訳が分からない。

「え?ちゃうの?」

はやてを含む全員が意外と思った顔でシンを見る。

「決まってるだろ!ただ単純に守りたいだけだ!!」

シャマルが特に残念そうな顔で見る。

普段真昼間からドラマを見ているせいだろうか。それとも女という生き物自体がこういう類の話が好きなのだろうか。

「でも、本当は照れ隠しなんでしょ?」

一瞬本気でシャマルの顔をぶん殴ろうかと思ったシン。

いつまでたっても話が終わりそうにないので、シグナムが話を切り上げようとする。

「シャマル。あんまり通路でそんな話をするのは…」

まだ夕暮れで、下手をすれば声が聞こえているかもしれない。

「あ、ごめんなさい」

本人もやっと理解したのか、素直に謝る。

「ほなはよ家にかえろ」

そういって家に帰る八神家の一同。