Seed-NANOHA_140氏_第15話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:44:53

「どういうことか説明してくれる?」

場所を移して、翠屋にいたアースラ関連の人はリンディの家にいる。

いきなり苦しみだしたレイは、いったんリンディの家に運ばれて、今では先ほどの異変がうそのように元気でいる。

リンディは彼らを保護している立場にある。

それ以上彼らのことを詳しく知っておく必要がある。

レイも、これでは隠し切れないと思って正直に話すことにした。

「まず…あの薬は何なの?何か病気でも持っているの?」

苦しんでいたとき、飲んでいた薬、あれが何の薬なのかわからなかった。

「別に病気なんてもっていません」

病気ではない。じゃああの薬はなんなのだろうか。

「あの薬は……一種の延命剤といったところです。あれがないと俺は生きていけない」

そういいながらレイは薬を取り出す。

「俺は…普通の人間ではありませんから」

レイから突然発せられた言葉、それはアースラの乗組員は勿論、ムゥ、そしてシンも驚愕させる。

「俺は、ある男を模して作られたクローンだから……」

クローン。いきなりそんな言葉を言ったレイに、シンは疑問を持たずに入られなかった。

レイは静かに事実を言う。

シン達の世界にある一人の男がいた。男は代々続いている名家の人間。

彼の跡継ぎに息子が一人いたが、彼を跡継ぎにすることを男は認めなかった。

その理由は、彼は妻に似すぎた。ただそれだけのことだった。

なら跡継ぎはどうするのか、男は考えて、一つの答えを出した。

簡単なことだ、自分をもう一人作ればいい。

そう思った男は一人の科学者に資金提供をする代わりに自分のクローンを作らせた。

その科学者は快く受け入れた。

出来ると思うから、ただそれだけで……

だが、それは失敗に終った。

出来たのはテロメアが短く、極端に寿命が短いクローンだった。

それで彼は男に捨てられた。

だが、そのクローンは捨てられた復讐としてその男の家を焼いた………

結局、その家の家族は男の息子を除き全員が死んでしまう。

だが、その後も研究自体は続けられていて、同じ男の遺伝子を使って研究が続けられていた…



「こうしてその研究のために作られたのが俺だ……」

レイの話を聞いて、あたりは暗い雰囲気に包まれる。

レイにそんな過去があるなど思っても見なかった。

特に、フェイトはありありとレイを見る。

まさか自分のような人間がシンの世界にいるとは思わなかった。

「テロメアが短く、人よりはるかに寿命が短い。だから薬で老化を抑えるしか生き永らえる手がない」

レイは薬を見ながら言う。

そんな中、ムゥが聞きたかったことを聞く。

「じゃああんたが言っているクローンと男って言うのは………」

以前ラウ・ル・クルーゼから聞いた頃とほとんど一致している。

もしかしてと思いムゥは聞いた。

「ああ、クローンとはラウ・ル・クルーゼ。そして男とはあなたの父親、アル・ダ・フラガです」

それを聞いてムゥは頭を落とす。

愚かな父のエゴによって作られた者がまだいたのか……

そう思うとムゥは複雑だった。

「あの~~」

ほとんど二人で話し押していると、なのはが話しかけてきた。

「ちょっと話についていけないんだけど……」

ほとんど二人の話をしていて、話についていけないアースラ組とシン。

つい感情的になってしまったらしい。

「つまり……あなたはムゥさんの父親のクローンということでいいのね」

簡単にクローンという存在を認めたリンディに驚きつつも頷くレイ。

「はい。俺はレイ・ザ・バレルでもあり、アル・ダ・フラガでもあるということです」

それを聞いてあたりは暗い雰囲気を出す。

さらにレイは付け加える。

「所詮クローンは、人であって人じゃない存在……」

しかし、その言葉に反論フェイトだった。

「それは違うと思う。たとえクローンだろうと、レイはレイ自身だと思し、人であることには変わらないと思う。ただ、ちょっと生まれ方が違うだけで……」

フェイトはレイの言葉に反発したが、どこか様子がおかしい。

なのはにリンディ、クロノはそのフェイトの反応したのかすぐにわかった。

レイの言葉は、フェイト自身の存在を拒否しかねない言葉だった。

「フェイト……」

アルフはそんなフェイトを手を添える。

一方レイも、目も前にいる少女が、キラ・ヤマトと同じことを言ってきたことに驚いた。

(君は君だ!彼じゃない!!)

思い起こされるキラの言葉……だが……

「違うな。クローンとして生まれた以上、オリジナルの模造品であることには変わらない」

レイの言葉を聞いて、驚愕するフェイト。

「所詮クローンはクローン。どんな甘く、優しい言葉で隠してもそれはゆるぎない事実」

これが、あれから彼が考え出した答えの一つだ。

自分はクローン。それ以外の何者でもない。

それに、人類として一つの頂点に立った男に「君は君だ」といわれても、説得力のかけらもない。

そして、このフェイトという少女、どこか自分に似ている感じがするが、今そのことを気にせず言葉を続ける。



「所詮クローンは、製作者にとってただの道具、人形でしかない」

そのとき、フェイトにある記憶が蘇る。

(あなたは私にとってただのお人形…)

蘇ってくる「母だった人」の言葉。

もう大丈夫なはずなのに…フェイトは心臓を締め付けられたような感じだった。

「さっき寿命が短いといったが、寿命も短いと同時に老化も早い」

その中でレイは淡々と告げる。

「俺の見た目の年齢はシンとあまり変わらないが、実年齢はなのは達とそう変わらない」

それを聞いてなのはたちは驚く。

自分よりも6つも7つも年上に見える人が、実は自分達と同じくらいの年齢であることに。

「そして、寿命は……薬を飲み続けてももて後数年。早ければ1年持つかどうか……」

今まで前例がないから本当の寿命はよく分からないがそのようなものだろう。

この少年の暗い過去をきいてあたりはいっそう暗くなる。

「フェイトちゃん?」

はやては、さっきから放心状態であるフェイトを不思議に思っていた。

しかし、呼んでも呼んでもまるで反応がない。

「フェイト……」

アルフに抱くように抱えられ、フェイトはやっと我に返る。

「アルフ……」

しかし、そのフェイトの顔は青白く、先ほどまでとは別人みたいだった。

だが、八神家の皆は、フェイトが何故ああなったのか全然わからなかった。

レイがそれを見てなるほど、といった感じでフェイトを見て、先ほど自分が思っていた疑問をぶつける。

「フェイト・テスタロッサといったな」

レイはフェイトを見ながら、突き刺すように言う。

「お前も俺と同じように誰かのクローン体なのか?」







「いけ!」

『シュート』

マユの命令とともに、掌から放たれた光の弾は、まっすぐ飛び、目標物に着弾する。

さっきからこういう魔力コントロールの練習を繰り返し行っている。

さらに言えばマユはほかの魔術師とは違い、デバイスが無く、その代わりに心臓にあるデバイスがマユの意思に連動し魔法を発動する。

「たいしたものね。もうここまでコントロールできるなんて」

プレシアはマユの魔法適応力に驚きを見せる。

まだ練習して2時間かそこいら。それなのに、まだ光弾は1個とはいえ、ほとんど完璧にコントロールしている。

「これなら次の段階に進んでもよさそうね」

そう思ったプレシアは、マユに練習をやめさえ、こっちに呼んだ。

「そろそろバリアジャケットを装着してやってみるわよ」

バリアジャケットという言葉がわからないマユ。

「といりあえず、自分が魔法使いになって、着てみたい衣服を想像してみて」

そう言われても……と思いつつ、衣装を想像するマユ。

やはりそこは女の子。戦いやすさよりもかわいさを連想したくなる。

そして、大体の構造が決まった。

そのとき、マユ自身が光に包まれた。



光が止んだかと思うと、マユの姿はさっき自分が想像した衣装に変わっていた。

マユがよく見ていた漫画やアニメなどの、小さい女の子が見るような魔法ものの衣装と、御伽噺に出てくる魔女の服を足して2で割ったような感じの服。

そしてその服についているヘッドキャップ。それをどこかで見たような気がした。

家族誰かが来ていたのだろうか……

まあ、とりあえず、マユが連想したちょっと変わったバリアジャケット。

その次に目に留まったのはマユの右手。

右手の甲の部分に変な球体が埋まっていた。

おそらくこれが彼女のデバイスなのだろう。

「さっきまでのは基本だけど、これから使う魔法はあなたにしかわからない。だから自分でいろいろ試してみて」

そういい、またターゲットである的を出すプレシア。

その中でマユは、本当に魔法使いになったんだと、うれしくなって練習を再開した。



レイの発した一言で、はやてたちはフェイトを見る。

フェイトも、彼と同じようにクローンなのか……

そのレイの言葉に、フェイトは静かに頷く。

そして、フェイトも静かに語りだす。

彼女を作ったのは、ある有名な魔術師。

名前はプレシア・テスタロッサ。

しかし、彼女はある実験を失敗してしまい、娘であるアリシア・テスタロッサを亡くしてしまう。

それ以降彼女は、アリシアのクローンであるフェイトを作り、アリシアの代わりにした。

だが、フェイトではアリシの代わりにはならないとわかったプレシアは、彼女を魔術師として育て、ジュエルシードというロストロギアを集めるように指示した。

だが、なかなか結果を出せないフェイトにプレシアは怒り、フェイトは彼女に見捨てられてしまった。

なのはとはこのときに出会い、そして現在の自分がいる。

フェイトはあることをすべて話した。

今までフェイトの事を聞いていなかったはやてたちは、まじまじとフェイトの話を聞いていた。

「けど、私もクローンだけど、レイみたいにテロメアが短くないから普通の人間と同じ寿命なんです」

それを聞いて今度はレイが驚く。

てっきり彼女も自分と同じようなものだと思っていた。

おそらく魔術が関係しているのだろうが、それでもレイはフェイトを見る。

まさか目の前に自分達の目指すべき結果に出会えるとは思わなかった。

やはり科学だけでは人のクローンを完全に作るには無理があるのか………

そしてフェイトがレイに聞く。



「あなたは…」

「ん?」

「あなたはどうしてそう悲観的なことしか言えないんですか?それに…それでも尚生きようとするのも気になって……」

さっきからレイの言っていることを聞いていると、悲観的なことしかいていない。

どうしてこうまで自虐的になれるのか。

そして、そうでありながらどうして生きていけるのか気になった。

自分はなのは達がいなかったら、プレシアに捨てられたときに自暴自棄になっていたかもしれない。

「悲観ではなく、事実を言っているだけだ。

それに……生きようと思うのはこんな俺でも今まで育ててくれた人のためだ」

彼はさらに説明した。

自分が幼いときに、もう一人のクローン、ラウ・ル・クルーゼが彼を研究所からつれだし、その友人、ギルバート・デュランダル議長と二人に育てられた。

そして知った。自分が生まれた理由を。

そのときに、レイはあの薬を渡された。

これが、君の運命。

レイはその運命を受け入れ、同時に今まで育ててくれた彼らを慕う。

そして、自分達の世界を変える。自分達のような子供が、二度と生まれてこないようにするために………

これが、彼の生きる理由である………