Seed-NANOHA_140氏_第16話_前編

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:45:18

「ねえねえなのは、はやて。今日フェイトの家にお見舞いに行かない?」

アリサとすずかは、授業が始まる前に先生から、今日フェイトは体調を崩し学校を休むと聞いた。

それで、今日は4人とも塾や習い事は無いので、帰りに一緒にフェイトの見舞いに行こうといってきた。

「みんなで言ったらフェイトちゃん元気になると思うしね」

すずかも笑いながら言う。

それを聞いてうん…とどこか乗り気でないなのはとはやて。

「二人ともイヤなの?」

なのはとはやての表情を見て、アリサが不思議に思う。

そんなことはないと、慌てて弁明する二人。

それを見てアリサが少し考え込む。

「二人とも、なんか隠し事してない?」

それを言われてギクッと反応する。

「そ・・・そんなことないよ。ねえ、はやてちゃん」

「そうそう、うちらはなーんも隠してへんで」

と、どうみてもばればれな嘘をつく二人。

どうにも、二人は隠し事や嘘をつくことが苦手のようだ。

だが、流石にフェイトはクローン人間で、別のクローンから自分の考えを真っ向から否定されて凹んだ、など言えるはずもない。

「ま、いっか」

まだ二人を睨むアリサだが、やがて睨むのをやめる。

この二人が考え事があると自分達だけで考えてしまうことを二人は知っている。

しかし、二人とも同じことで黙っているということはよほどのことなのだろう。

だとしたら自分達に話さないのにも納得がいくし、もしかしたらいるか向こうから話してくれるかもしれないから待つことにした。

「あ、早く席に座りましょ。あの先生うるさいし」

話しているうちにチャイムが鳴り、なのははそういうことをわかってくれる親友に感謝しつつ自分の席に着く。





「おい、坊主」

ムゥは、することが無いのか、デスティニーの整備をしているシンに話しかける。

昨日のこともあり、正直今話すべきかどうか悩んだが、意を決して話すことにした。

「何ですか…」

シンは呼ばれながらもデスティニーの整備を続ける。

敵同士とはいえ礼儀がなってない奴だな、とムゥは思う。

「話があるんだ……ステラについて……」

ステラという言葉を聞いて、作業していたシンの手が止む。

今あいつはなんていった?……ステラ?……

「何であんたがステラのことを……」

まだ地球軍の人間なら解る。だが、オーブの人間である彼がステラのことを知っているのだろうか……

「話を聞きたいんだったら俺の部屋に来い」

そういってムゥはその場を後にして、シンもその後についてゆく。

ムゥの部屋に入り、ムゥはベッドに、シンは椅子に腰掛ける。

シンは、まず最初に聞きたかった。

「何であんたがステラのことを?」

そういうとムゥは静かに言った。かつて彼が自分に言ったことを。

「約束してくれ」

「え?」

「戦争とは関係ないあったかい世界へ、ステラを返すって」

その言葉を聞いてシンははっとする。

シンがこの台詞を言った人物は、一人しかいない。

ステラを返すときに来た人物で、おそらくステラが自分よりも慕っている人物。

「ネオ……」

ステラがそういっていた、ネオという人物。

「ああ、そうだ、俺は、ネオ・ロアノーク。元ファントムペイン大佐」

シンは、何故彼がムゥ・ラ・フラガと名前を変えたのか解らなかった。

だが、それはシンの勘違いということに気付く。

彼の話を聞くと、彼も被害者であった。

エクステンデッドのように薬物を使った強化はされていないが、彼は記憶を操作され、ムゥ・ラ・フラガという人格を消され、新たにネオ・ロアノーク、という人格を上書きされた。

だが、ムゥがネオだということがわかったとたん。シンはムゥの胸ぐらを掴む。

だが、ムゥは抵抗はせず、申し訳なさそうにシンを見る。

「約束しただろ!ステラを戦いには出さないって!!なのに…なんであんな……」

ムゥ(というかネオ)との約束。

(約束してくれ。ステラを、戦争とは関係ない、暖かい世界へ返すって)

だが、結局彼女は連合の新型巨大MS、デストロイに乗っていて、死んでしまった。

すでに、シンは泣いていた。怒っているようにも見える。



(こいつが、こいつが約束さえ守ってくれればステラは……)

そしてムゥも、重い口を開く。

「俺だって…出来れば助けてやれなかった……」

「だったらどうして……」

「けどな!!」

ムゥの叫びにシンは怯む。

「俺はブルーコスモスの兵士だった!だったら上司の命令には従わなけりゃならん!!さらに、上司がロード・ジブリールだったらなおさらな!!」

そうだ、結局は彼も兵士の一人、上が命令を出せば従わなくてはいけない。

それはシンも同じである。

ふと、アスランが言っていたことを思い出す。

(だったら、なおさら彼女は返すべきではなかったんじゃないのか?)

おそらく、彼はもしかしたらこうなることがわかっていたのかもしれない。

だとしたら、シンにはどうにも出来なかった。

もしあのままステラを放っておいても、プラントに輸送され研究材料とされる。さらにいえば、そのまま処分されていた可能性もある。

結局、どうあがいても自分ではステラを守れなかったのか……

「くそ!!」

シンはそのやりきれない思いをはき捨てるようにムゥを突き飛ばし、そのまま部屋を出て行った。

そこへ、ちょうど仕事でアースラへ来ていたシャマルに会うが、シンは気づかないままそのまま通り過ぎる。

「シン君?」

シャマルは、かなりいらいらしているシンを見て、何があったのだろうかと思ったが、とても聞ける雰囲気ではなかく、そのまま医務室へと向かった。



「え?美由希まだ彼と進展ないの?」

美由希前例の如く学校の屋上で友人と昼食を食べていた。

だが、最近はほとんど彼…シン・アスカの話ばかりである。

「進展って…別に好きとかそういうわけじゃ……」

美由希は友達が言っていることを否定しているが、実際自分でもどうなのかわからない。

「でもさ、この前美由希居眠りしてたじゃん」

といってもちょくちょく居眠りしているのでいつのことなのかわからないが。

「そのときにね、なんか「シン」って言ってたけど、もしかしてその男の人の名前?」

その友達の名前を聞いて、一気に顔が真っ赤になる美由希。

「ちょっと真木、それほんと?」

つい自分が聞いてしまう。

それを聞いて真木がうんと頷く。

さらに美由希の顔が真っ赤になっていく。



「なんだ、そうならそうとはっきり言いなさいよ」

そういいもう一人の友達、ゆかりが美由希の肩を叩く。

そのやり取りを見ていて、最後の一人でおとなしい性格の綾が笑いながら見ている。

学校でいるときは大体この4人で行動している。

美由希は恥ずかしくて、その場にうずくまるしかできなかった。

「そして、そんな恋愛に不器用な美由希のために……」

なにかぶつくさ言いながらかばんの中から何か紙を2枚取り出す。

「じゃーん、海鳴ランドの1日チケットー!」

海鳴ランドは、ここ最近できたばかりのテーマパーク。

絶叫系アトラクションが有名で、人気があるらしい。

「これね、本来私と彼で行こうと思ってたんだけど……」

ゆかりには彼氏がいて、本来なら彼と行く予定だったのだが……

「なーんか急な用事でいけなくなっちゃったんだって……あー思い出すだけでムカつく。せっかく難しい中手に入れたのに」

だが、うだうだ言っている割にはうれしそうだった。

何回かその彼氏を見たことがあるが、ゆかりとはとても中がよく、今回のようなことが会ってもすぐに仲直りする。

だから今回も大丈夫だろう。ゆかり自体本気で怒ってなさそうだったし。

「そんで、このチケットどうしようか迷ってたけど……これ美由希にあげる」

ぐいっとチケットを差し出すゆかり。

「いいの?せっかくなのに?」

「だから言ってるじゃない。もったいないって。代金は、あとでその分あいつになんかおごってもらうし」

そう笑いながらいうゆかり。

まあそういうことならとチケットを受け取る美由希。

実際行ってみたかったのも事実であった。

「あ……」

そういえば、シンに対することですっかり忘れていたことを思い出す。

「どうやって渡そう……」

居場所は、なのはの友達のはやての家に居候していると聞いたが、流石に家の人にわたしておいてもらえるか、とも言えず、いればシンを呼んでもいいが、おそらくばれるので何か恥ずかしい。

どのようにして家族にばれないように渡そうか、美由紀は本当に困ったような顔で考える。





「くっそ……」

シンはショッピングモールをぶらつきながら愚痴る。

どうも最近気分が悪い。

特に今日は格段だった。

その不機嫌さは一目でわかり、道行く人々もシンの顔を見ないようにしている。

さらに言えば、シンの赤い目、顔の傷などがさらに怖さを拡大される。

仕方がないとは言え、約束を守らなかったムゥ。

そして思い出されるアスランの言葉……

……考えただけでやってられない。

このままじゃいけないと思い、何か少しでも気分を和らげるものはないかと思ったとき、ふとシンの目にとまったひとつのゲームセンター。

オーブに言っているときはちょくちょく行っていたが、プラントにいるようになってからは行ってないと思い出す。

たまにはよってみるものいいかと思い、シンはゲームセンターに入っていく。



フェイトは自分の部屋で休んでいる。

彼女は昨日のレイの話がずっと頭に残っていて、ずっとふさぎ込んでいた。

それで、病は気からとよく言うが、本当に体調を崩して、今はずっと寝込んでいる。

「フェイト……」

今日はリンディも急用で本部に戻っており、時々クロノやエイミィが様子を見に来るが、ほとんどアルフ一人で看病している。

「ゴホ……心配しなくても大丈夫だよアルフ……ただちょっと風邪ひいただけだから……はぁ」

朝に病院にもいって、熱は高いが数日休んでいれば問題ないと医者も言っていた。

「けど………」

もちろんアルフもそれはわかっている。

それより、アルフが一番心配していたのが……

「あんな奴のいうことなんていちいち考えなくてもいいよ」

アルフはフェイトがレイの言葉で未だに落ち込んでるのをわかっている。

だから看病と同時に慰めようとしていたのだ。

「でも……レイの言っていることは本当だと思うから……」

(所詮クローンはクローン。どんなに甘く優しい言葉で包もうとも、それはゆるぎない事実。クローンは、人であって人でない存在……)

思い起こされるレイの言葉。

「とりあえず、今は休んでで。じゃないと治る風もなおんないよ」

そういってフェイトを寝かせ、布団をかけるアルフ。

とりあえず今は何よりも風邪を治してもらわないと。

アルフはフェイトの使い間として自分が今出来ることをする。

「アルフ……ありがと……」

そういって布団にもぐった後、幾分か楽になったのかすぐに寝息を立てて眠った。

その顔を見て一安心するフェイト。

そのとき、呼び出し音が鳴り「ごめんください」という声が聞こえた。

その声のなのはで、おそらくフェイトの見舞いにでも着てくれたのだろう。

今は家にはフェイトとアルフしかいないので、アルフはフェイトを心配しつつもなのはたちを迎えるために玄関へ向かった。