Seed-NANOHA_140氏_第16話_後編

Last-modified: 2007-12-23 (日) 03:45:41

「え、じゃあフェイトちゃん今は寝てるの?」

フェイトの見舞いにきたなのはたちであったが、残念ながらフェイトは今ぐっすりと眠っていた。

「わるいねぇ、せっかくきてくれたのに」

そうアルフは言うがなのははうんうんと首を横に振る。

まさか本当に体調を崩しているとは思わなかった。

昨日のことで、ずっとふさぎこんだままだったと思っていたからだ。

だが、風邪を引いているのなら、ゆっくり寝て体調を整えて、早く直したほうがいいと思った。

「ねえ、なのは……」

なのはがアルフと話していると、アリサが不思議そうにアルフを見る。

「その人、だれ?」

え?だれってこの人は……とおもったところで思い出す。

アリサたちはまだアルフの人間形態を見ていない。

「あ、そういえば、あんたたちの前じゃ、この姿は初めてだったね」

そういったとたんアルフが光り始めたが、その光はすぐに止んだ。

光が止んだころには、アルフがそこにはいなかった。

え?え?と思いながらアリサとすずかはあまりを見回す。

すると、下だよ、という声が聞こえてきて、下を向くと、そこには、いつも家ではフェイトと一緒にいる子犬がいた。

……それも二本足で右手(犬だから右前足だが)を上げながら……

え?とアリサとすずかはアルフを見る。

そしてまた人間形態に戻るアルフ。

「まあいろいろあって、あたしは人間の姿にもなれるんだよ」

犬のほうが本来の姿ね、と念も押しておく。

それを聞いて、はあ…としかいえない二人。

魔法のこととかはいろいろ聞いたが、まさか人になれる犬がいるなど想像もしたことが無かった。

「じゃあ、フェイトちゃんにお大事にって言っておいてね」

あいよ、と返事をして、アルフはフェイトのところに戻り、なのはたちも自分の家に戻っていった。



「で、どうするの、美由希?」

美由希たち4人は、ショッピングモールで少し買い物をしながら帰っている。

「彼は携帯持ってないし、とはいっても家の電話番号に書けるわけにもいかない…弱ったもんね」

美由希にかわってゆかりがいう。

一応もってることは持ってるのだが、向こうの世界のものなので使えないのでは意味が無い。(勿論向こうの世界のことは言ってないが)



正直美由希はどうしようか迷っていた。

そこへ、真木がちょっといいかなといってくる。

「ちょっとあのゲーセンよっていきたいんだけど」

そういって真木は近くにあるゲームセンターを指差す。

真木はたまにこうやってゲームセンターで足を運んでいろいろ遊んでいる。

「私はいいけど、美由希はどうする?」

美由希は少し考えて、自分もいくことにした。

結局4人で店に入ることになって、店内に入ったそのときだった。

ガスン、と重い、何かを殴った音が聞こえる。

その原因は、目の前にあるパンチングマシーンで、それを誰かがやっていただけだった。

「あ……」

美由希はその後姿を見て、それが誰だか気付く。

「シン?」

シンは、ゲームセンターに入って、とりあえずこれでもやってたら少しはすっきりするかなと思い、さっきからパンチングマシーンをしていた。

ちなみに、ただいまプレイ800円目(1回200円)

ある程度すっきりして、そろそろ帰ろうかと思って、出口に向かおうとしてここから離れようとしたときに、シンも美由希を見つける。

ほかにも美由希の周りに数人の女子がいる。

美由希と同じ制服をきているから友達なのだろうか。

「何か用?」

おそらくすこし前からいたみたいで、自分に何か用でもあるのかと思い、声をかけるシン。

「え、えーと……」

今あれを渡せばいいのだが、恥かしくてなかなか渡せない美由希。

「あ、美由希。私用事思い出したから、先に帰ってるね」

ゆかりの声を筆頭に、次々と友達はゲームセンターを後にする。

気を使ってくれてるのはわかるのだが……いないのはいないですこし寂しい気がする。

だが、勇気を振り絞り、チケットに手をやる。

「これ……今度の休みに…一緒に行かない?」

そういって二つあるチケットのうちの一つを差し出す。

シンはチケットを受け取り何なのか見る。

どうやら、どこかの遊園地のようだが……

「ちょっと前に出来たところで……偶然手に入れたんだけど……」

それを聞いてシンは考える。そしてあんまし周囲に聞こえないように言う。

「まあ、局の仕事が入らなかったらいいけど」

それを聞き、少し顔を赤らめたままだが、どこかうれしそうな美由希。

その後、待ち合わせ場所、時間を決めて、美由希はさっさと店を出てゆく。

そして、シンも家に戻る途中でやっと気付く。

というか、今まで何故気付いていないのか。

(あれ……俺ってもしかして……デートに誘われた?……)



「うーん……」

「どしたのゆかり?さっきからずっと悩んで?」

美由希の邪魔になると思い、さっさとこの場から退場した3人だが、さっきからゆかりが何か考え込んでいた。

「いやね、美由希の好きなタイプってあんなひとだったから意外だと思って……」

ゆかりは、美由希が好きな(おそらく)相手、シンをみて、意外と思った。

美由希だったら、もっと真面目そうな男を選ぶと思ったのだ。

「まあ確かに……でも意外と顔は良かったよねえ……」

真木はシンの顔を思い出す。

だが、彼女はシンを見て一番目に浮かんだのは。

「そういえば彼、赤い目だったけど…珍しいね、赤い目って」

それを聞いて綾も頷く。

あの目はカラーコンタクトでも入れているのだろうか……

「まあ、友達として、美由希の恋が実ることを祈っときましょ」

そだね、といいながら3人はそれぞれの家に帰っていった。



「ただいまー」

シンは家に戻って、リビングに行くと、各自おのおの思い思いのときを過ごしてきた。

「あれ?はやてとヴィータは?」

もうすでに小学校は終っている時間で、はやてはとっくに帰ってきていると思っていた。

そしていつも家にいるはずのヴィータもいない。

「主はなのはたちとテスタロッサの見舞い。ヴィータは少し出かけていている。主はわからんが、ヴィータはもうすぐ帰ってくるだろう」

なるほど、とシンは横を見る。

最近の事件で、シャマルははやての迎えにいっているが、今日はリビングでドラマを見ている。

おそらく友達の誰かに送ってもらう約束でもしたのだろう。

帰ってもすることもないシンは、そのまま自室に戻った。

本来なら誰もいないはずのシンの部屋。だが……

「何でお前がいるんだよ」

彼の部屋には、彼が持っている中身が空っぽのデバイスを見つめているリィンフォースがいた。

『だって、マスターはまだ学校だし、ヴィータは出かけるし……』

すねた口調で言うリィン。

これが本当にデバイスなのかと思うほどである。

シンが今まで見たことがあるデバイス。つまり、なのはたちのデバイスは機械的な声しか出さないし。

だが、このリィンフォースは、あまりにも人間味がありすぎる。

「っていうか、デバイスから離れても大丈夫なのか?」

シンはあたりを見渡す。



リィンフォースはデバイスから実体化されるから、おそらく近くにデバイスでもあるのかと思ったが、どこにも無い。

『ある程度なら離れることができますよ』

ふぅん、といいながらベッドに座るシン。

だいぶ魔法の世界に慣れてきたが、自分もまだまだだなと思ったシンであった。

……何がまだまだなのか自分でもよく分からないが。



「大丈夫、フェイトさん?」

リンディは、まだぼうっとしているフェイトを見る。

あれから、本拠に、シン達のことで呼ばれて、本局に言っていたが、以外にも早く用事が終わり、こうしてフェイトの下に来ていた。

「はい、お薬」

リンディは薬を私に来ていた。

しかし、リンディの手には薬があったのだが……

「あの……リンディさん?」

フェイトの問になに?というリンディ。

「それ、何ですか?」

薬の横には、いつもリンディが飲んでいる、大量の砂糖やらクリームやらが入った緑茶があった。

「お薬、苦いと思ったからこれ作ってきてね。それに緑茶は栄養あるし、ね」

ね。といわれても……フェイトは「はぁ」とため息を突きながら少し頭を抑える。

気持ちはわかるのだが、なんでわざわざこれなんだろう。

そう思うのだったらべつにジュースでもいいのに……

「リンディさん。私は別に水でいいです…」

それをきいて、「そお?」言いながら水を取りにいくリンディ。

だが、リンディがいつも飲んでいるあれに、少し興味があり、フェイトは緑茶(と呼べるかは不明)に顔を近づける。

(……なんだろう、これ……)

いちおうお茶の匂いはする。

だが、薄い。砂糖とクリームのせいでお茶の匂いがほとんど消えている。

飲めばすこしは違うのだろうが、残念ながら自分にはそんな勇気は無かった。



「そういえばシン君」

シャマルは夕食の準備中、昼間のことが気になってシンに聞く。

「お昼、ムゥさんの部屋からものすごい形相で出てきたけど、何かあったんですか?」

それを聞かれて「うっ」とうつむくシン。

いつ見たんだよと思ったが、そういえば…と思い出す。

確かに、あいつの部屋から出てくるときに何人かとすれ違ったが、誰なのか確認してなかった。

おそらくその中にシャマルがいたのだろう。



「なんだ?喧嘩でもしたのか?」

ヴィータに言われて「まあそんなもん」と答えるシン。

喧嘩にしては物騒だったが……

「ほな、はよう仲直りせなあかんな」

そういいながらはやては料理を持ってくる。

仲直りか……だが、いくらあいつと仲良くなっても、元の世界に戻ればまた敵同士。

だったらこの際、この調子が続いいていたほうがいいのかもしれない。

ここにいればはやてたちがいるし、アースラにいってもレイがいる。

一人ぐらい仲が悪い奴がいてもいいような気がする。

そう考えてると、ふと、こんなことを口にする。

「結局、人って運命からは逃れられないのかな?」

ブルーコスモスによって戦うことを運命付けられたステラ。

そして、クローンとしての運命を生きているレイ。

ほかにも、おそらく人はなにか運命付けられているのかもしれない。

もしそうだとしたら、デスティニープランもそう悪いもんじゃないかもしれないと思った。

ただ、その人に与えられた運命の内容が明確になっただけで………

「いきなりなに言ってんだよ?」

いきなりのシンの発言で、皆は困惑する。

「気にしなくていいよ、ただの独り言だからな」

そういってシンは夕食の手伝いを始めた。

だが、はやてはさっき言っていたシンの言葉を真剣に考えていた。