Seed-NANOHA_342氏_第02話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:21:21

「キラ君、鍋の火を弱めてくれん?」
「うん、このぐらいでいいのかな?」
八神家キッチン。
そこで、はやてとキラはシチューを作っている。まぁ、ほとんどははやてが作っているわけなのだが…。
「それにしても、遅いですね。シグナムさんも、シャマルさんも。」
「ん~、二人とも子どもやないし、大丈夫やろ?
ヴィータも、ザフィーラがついとるし…」
お玉に少量シチューをすくう。
「前のシチューと味が一緒やったらつまらんと思って、ちょっとコンソメ多く入れてみたんやけど…」
小さい皿にうつし、キラへ差し出した。
「ちょっと味見してくれへん?」
小皿を受取り、キラはシチューを味見する。
「うん、美味しいよ。いいんじゃないかな。これで」
「ほんなら、後はしばらく煮込むだけやさかい、キラくん、お話でもしよ。」
はやては火を皿に弱火にして、リビングへと移動した。

「終りだね。名前と、出身世界を言ってもらおうか。」
フェイトは赤い服の少女にバルディッシュをつきつけた。
アルフの捕縛魔法が自由を奪うことに成功したのだ。しかし…。
「何かやばいよ。フェイト!!」
アルフがフェイトに警告した刹那、目の前に突然、女が現れ、持っている剣を…横一線。
バルディッシュで受けたものの、すさまじい力で数メートル吹っ飛ばされる形になった。
「レヴァンティン」
『Jar』
「紫雷一線!!」
機械的な音がして、剣の柄の部分から何かが排出される。
刃を中心として炎が渦を巻き、そのまま…
縦一線。
ガキィッ!!
バルディッシュの柄にレヴァンティンの刃が食い込み、切断。
「なッ!?」
バルディッシュを割られたことに気をとられ、フェイトの反応が一瞬遅れた。
女はそれを見逃さない。降り降ろしたレヴァンティンを再び構え、振りおろす。
『Defenser』
フェイトの代わりにバルディッシュが障壁を展開。
だが、レヴァンティンはあっさりと障壁を破壊する。
フェイトは空中から叩き落とされる形となり、垂直に真下のビルに突っ込んだ。

ズドォォオンッ!!
コンクリートを砕くような音がシン、なのは、ユーノの耳に届いた。
まだ、自由に動けないなのはには何がおこったのか確認できなかったが、シンとユーノは直ぐに理解する。フェイトがやられたのだと。
理由は単純、一人、結界内に人が増えていたからだ。

「危なかったな。ヴィータ。」
「シグナム!?」
「張り切るのはいいが、あまり無茶をするなよ?
お前が怪我でもしてみろ。主は…。」
「わかってるよ。ここからが本気だったんだよ!」
ヴィータの子供じみた(実際子供なのだが)言い訳に少し、厳しい表情を和らげながら彼女を拘束している魔法を解いてやった。
「フェイトォォオ!!」
突然の出来事にあっけにとられ、呆然としていたアルフがフェイトの落下したビルに向かおうとする。
ふと、視界の隅に人影がうごめくのが入った。
とっさに顔の片面に両腕を構え防御体勢に入る。
衝撃。
やや、後方に飛ばされ、アルフはそこで初めてその人影を確認した。
白髪の男。
犬耳に尻尾が特徴。
服は全体的に青でまとめている。
鋭い目つき。
アルフと同じ、使い魔の容姿をしていた。

「なんなんだ、あいつらは!」
『バリアジャケット、ブラストシルエット。』
「シン君!ちょっと待って、何を!?」
ユーノはシンを制止させるため、手を掴もうとするが、シンが一歩前に進んだ為、掴み損ねた。
『ケルベロス get set』
シンの持つジャベリンから音声が発せられ、両脇に真紅の魔法陣を纏いながら待機している赤い魔力の塊が徐々に肥大化して行く。
『バースト!』
すさまじい衝撃波とともに膨大な赤い魔力の塊が二本、シグナムとヴィータに矢のごとく一直線に向かっていく。

シグナムとヴィータは難無くそれを回避した。
「何だぁ?このヘタクソな砲撃は?」
方向補正、誘導性、全くなっていなかった。
ヴィータの言葉に同感と思いつつ、飛んできた方向に目をやると、緑色の魔法陣に包まれた少女が一人。
先程、叩き落とした少女の元へ向かう少年が一人。
赤い魔法陣を二つ待機させている少年一人の姿「現状、四対三…。一対一ならば我々、ヴェルカの騎士に負けはないと見ていい。しかし…」
「白い方は障壁がはってあるから面倒だ。赤い方を二人でボコっていけば?丁度一対一にできるんじゃねぇ?」
なんて、安直な…とも、思ったが実際、やれないことはないだろう。それに名案でもある。
どの道、白い方は戦えないだろう。ならば、無視して赤い方をやるべきだ。
「よし、ヴィータ、行くぞ。」
「言われなくても…、グラーフアイゼン!!」
『シュワルベフリーゲン』振り上げたグラーフアイゼン、空中に浮かぶ4つの弾。
「やるってんなら、こっちだって!!」
『バリアジャケット、ソードシルエット』
「はぁぁああ!!」
『フラッシュ・エッジ』 4つの飛行するオレンジ色の光を、シンの放つ、赤い光の刃のフラッシュエッジが薙払う。
響きわたる炸裂音。
生ずる煙。
その、煙をかきわけるようにして、シグナムが特攻を仕掛けてくる。
「くそー!何なんだよ。こいつら!」
シンは地を蹴り、こちらからも攻撃を仕掛ける。
アカデミーで訓練を受け、ある程度は生身で戦えるが、しかし、生身で空を飛ぶのがこんなにも勝手が悪いとは思っていなかった。
何と言うか、落ち着かないのだ。
シグナムの一撃を連結エクスカリバーで受ける。
「くそっ!なんでこんな!!」「テートリヒ!!」
「後ろから!?」
連結しているエクスカリバーを解除し、
「シュラーク!!」
ヴィータの攻撃をも受ける。
(どうすりゃいいんだ?このままじゃ…だいたい、こいつら、どこにこんな力を…)
焦るシン。一人は女、一人は子供と言うことで侮っていた。
(武器破壊が目的だったのだが…、魔力刃か少々厄介だな。)
シンのエクスカリバーは、実際にインパルスソードシルエット時とサイズこそ違えどほぼ同じものだ。
実体部分と魔力刃の二つの部分に分かれている。
シグナムは力負けしないようにしつつも、相手の情報を少しでも多く得ようとしていた。
『フォトンランサー』
「撃ち抜け、ファイア!!」
同時、シグナムとヴィータはシンから離れ、金色の閃光を回避する。
「シン、大丈夫?」
飛翔してきたフェイトが心配そうな声音で聞いてきた。ユーノも飛翔してきている。
「あ、あぁ。」
「ユーノ、結界を破って、ここから全員転送…いける?」
「わからないけど…、アルフと協力すれば、たぶん…。(アルフ?)」
「(ちょっとしんどいけど、やってみるよ。)」
「私は、あの赤服の子の相手をします。彼女の射撃魔法は厄介ですから、シンはあっちの剣の人をお願いします。ユーノはシンをサポートしてあげて。」
「へっ?お、俺が!?」
「わかった。行くよ!シン君。」
「あ、あぁ。」

「二対一…か。」
ユーノとシン、両方に視線を走らせながら呟く。
『エクスカリバーアンビデクストラスフォーム』
「できるだけ注意をシン君に引き付けて、僕が君をサポートするから。」
ゴクッと唾を飲み、頷くシン。
「やってやる。」
沈黙が続く。
そんなことは知らない、フェイトとヴィータがデバイス同士を打ち合った。
それが合図となり、シンもシグナムも同時に相手に向かって突進。
「おぉぉぉ!!」
「はぁぁぁ!!」
お互いの渾身の一撃がぶつかり合い、初撃でパワーでは不利と判断したシグナムはすぐに距離をとる。無駄な力をここで使うわけにはいかない。
(パワーでは俺の方が上)
チャンスとばかりにシンが追い討ちをかける。
「レヴァンティン。」
シグナムの持つ剣から、薬筒が弾け飛ぶ。
「もらったぁぁ!!」
「紫雷一線!!」
シンが縦一線を繰り出したのに対し、シグナムは強化された横一線を見舞う。エクスカリバーの実体部分を狙った攻撃。
ガシャアァンッ。
見事にそれは効果をあげた。
「そんな?」
片方のエクスカリバーが砕け、散る。
「シン君、後ろ!!」
ユーノの声にハッと我にかえる。振り返るとニ撃目が繰り出されていた。
駄目だ、やられる!
そう思ったが、防御障壁が発生し、シグナムの攻撃を阻む。ユーノが発生させた障壁だった。
「(転送の準備はできたけど、空間結界が破れない。アルフ!)」
「(こっちもやってんだけど、無茶苦茶かたいんだよ。この結界)」
「うわぁぁぁ!!!」
「シン君!!」
ユーノが展開した障壁を破られ、シンは残っているエクスカリバーでシグナムの攻撃を受ける。
「(これだ、この弾丸みたいなやつ、これが打ち出されてパワーが上がってるのか?)」
剣圧でエクスカリバーに亀裂が入り始める。折れるのも時間の問題だろう。
(せっかくフリーダムを討ったのに、こんなわけの分かんないことで俺は…俺は!)
何かが自分の中で弾けた気がした。頭の中に音が響く。
パリィィン。
『バリアジャケットフォースシルエット』
シンの目付きがかわり、今まで押していたはずのシグナムが逆に押され始めた。「うぉぉぉ!!」
そのまま、力で強引にシグナムを弾き飛ばし、一瞬で間合いをつめ、最速の突きを繰り出す。
紙一重でかわすシグナム。さっきまでと違い、パワーもスピードも格段に上がっている。そして何より一撃一撃に気迫がこもっていた。
「ちょこまかと…」
シグナムへ向き直り、怒りに満ち溢れた目で睨み、凄まじいまでのスピードで追い掛けていく。豹変したシンの姿を目の前にしてユーノは呆然としていた。
「シン…君?」

「(ユーノ君、フェイトちゃん、アルフさん、それからシン君、私がスターライトブレイカーで結界を破ります。その間に転送を!)」
「(なのは、大丈夫なの?)」シンを除く三人には念話が通じた。

「うぉぉぉおおお!!」
(こいつ、ここに来てまだ早くなるのか!?)
「いい加減、落ちろぉ!!」
『エクスカリバー get set』
「くっ、レヴァンティン」
『シュランゲ フォルム』
「エクス…ッ!?」
シンが大技を放つ前に、二本目のエクスカリバーが砕け、散った。
レヴァンティンのもう一つの形態、シュランゲフォルム。剣が分断され、複数の刃がワイヤーの様なものに付属している。
それが、シンの持つエクスカリバーを締め付け、実体部分をへし折ったのだ。
「魔導士としては微妙だが、剣士としては思いきりのいい、良い太刀筋をしていた。お前…、名は?」
「…シン・アスカ、あんたは?」
丸腰でシグナムと対峙するシン。
「私はシグナムだ。」
レヴァンティンに弾丸を込め、再び構えを取る。
「なのはぁぁぁ!!」
フェイトは叫び、なのはの元へ飛ぼうとするが、ヴィータによってそれは妨害される。
シンもユーノも、フェイトの焦りようから、なのはへと視線を移す。
「な、なんだよ、あれは?」「なのは!?」
ユーノも向かおうとするが、シグナムがそれを許さなかった。
なのはの胸のあたりから、人の手が生えていた。手は淡いピンクに光る何かを掴み、やがて、輝きは小さくなっていく。
なのはの顔が苦悶の表情に歪む。しかし、それでも彼女は
「す…スターライト…ブレイカー!!」
魔法を放った。
ピンクの魔力の塊が空中に打ち上げられ、破裂。
天に向かい、一筋の光が走る。そして、膨大な魔力が一気に爆発し、空間結界をぶち破った。
「なんて火力とパワーなんだよ、こいつは…。」
その理不尽なまでの破壊力に目を奪われているシン。その一方で、シグナム、ヴィータ、ザフィーラはすぐに撤退を開始する。
「追わなくていいのか?」
隣にいるユーノにシンが聞いた。
「無理に追っても仕方ないからね。それよりも、なのはを…。」