W-Seed_運命の歌姫◆1gwURfmbQU_第35話(2)

Last-modified: 2007-11-11 (日) 13:11:44

 モビルスーツがすぐ外で姿を現したホテル内では、様々な場所で、それぞれの人物が動き回っていた。
 最上階から、なんとか外へ脱出しなければいけないロッシェとミーアの足取りは、予想以上に重かった。
ホテル内の全ての電源が落とされているため、エレベータもエスカレーターも起動しない。
外に通じる道まで、歩かねばならないのだ。

 ロッシェは敢えて懐中電灯等の明かりを使わずに進んでいた。
下手に明かりを付けていると、敵に発見される確率が高くなる。
「ミーア、もう少しだ、もう少しで外に出られる」
 励まし、宥め、ミーアに気を使いながら歩き続けるロッシェだったが、ミーアの体力は長続きしなかった。
激しいライブを行って、まだ時間もそんなに経ってはいない。むしろ、疲れが出るとすれば今だろう。
そんな状態にもかかわらず、広いホテルの中を歩き回っているのだ。
「もう、ダメ……」
 ミーアが突然、地面へとへたり込んだ。疲れたようなその声は、いつになく弱々しいものだった。
「ミーア、立つんだ」
「ダメ、もう歩けない……歩くの、疲れた」
「ミーア!」
 ロッシェは語気を強めるが、その瞬間予想外のことが起きた。
 ロッシェのことを見上げた彼女の目から、涙が溢れていたのだ。

「ロッシェ、もういいのよ。私なんて置いて、貴方一人で逃げて……」
「何をいうんだ。そんなこと出来るわけ無いだろう」
「あたしに……あたしにそんな価値はない!」
 ミーアは、声を上げて叫んだ。少女は泣いている。
 涙を流して、泣いていた。
「ロッシェ、私には判ったの。いえ、判ってたのよ、いつかこんな日が来たとき、
 自分の存在価値が証明されたとき、自分がどうなるかって」
「……どういうことだ?」
「SPたちが姿を消したのは何故か、判らないなら教えてあげるわ。
 彼らはね、みんな議長の下へ行ったのよ。彼を守るために」
「何?」
 予想していなかったわけじゃない。可能性の一つとして、それも思い浮かべはした。
だが、それでも、これは意外な事実だった。
「何故だ、何故、議長の下へ行くんだ? 彼らは、君の……」
「護衛部隊? 違うわ、彼らは議長の用意した監視役に過ぎない。
 彼らはあたしじゃなくて、議長の忠誠を誓っているのよ。
 だから、爆発が起きたとき、真っ先に議長の身を案じて、飛び出していったの」

 護衛対象であるはずのラクス・クラインを放り出し、本来の護衛対象の下へと向かったのだ。
 全ては、ギルバート・デュランダルという男を守るために。

「だが、それじゃあ君はどうなる? 君の身は誰が守る」
 無論、ロッシェは守り抜くつもりであるが、そういうことを言っているのではない。
「言ったでしょ、これがあたしの存在価値……議長はね、あたしが危険な目に合おうが、
 極端に言うと死んだって全然構わないのよ」
「そんな、馬鹿な……」
「事実よ。そもそも、どうしてあたしの今回の地球行きが決まったと思うの?
 こういう事が起こるかも知れないって判ってて、それでも行かせたのよ。
 国の象徴であるはずの『ラクス・クライン』を」
 
 つまりそれは、ラクスの身に何かあっても大丈夫だと、構う必要がないということなのだ。
 議長は、ギルバート・デュランダルという男は……

「死んだら死んだで、また新しいのを用意すればいい。これが議長の本心よ」
 
 それほど重要などと、思ったことは一度もない。
 死んでも、また新しいのをあてがえばいい。
 そもそも、ミーア自身、ラクス・クラインの変わりとして『作られた』存在である以上、
 容易に想像できることだった。

「これが真実、これが私の、価値よ」
 ミーアは寂しそうに、自嘲めいた口調で呟いた。

「君は……君は、それを知りながら、ラクス・クラインを演じていたというのか?」
 彼女の口から発せられた事実に、ロッシェは動揺を隠せなかった。
 デュランダルの思惑と、それを明確に理解していたミーア、
 知らなかったのは、自分だけだった。
「だって……だって、仕方ないじゃない! もうあたしはミーアじゃない、ラクスなのよ。
 ラクス・クラインになった以上、それをやり通すしかないじゃない!」
「ミーア!」
「ロッシェ、貴方だけ、貴方だけなのよ、今も私のことを『ミーア』と呼んでくれるのは……」
 誰か一人でも、自分がミーア・キャンベルであることを知っていて欲しい、憶えていて欲しい。
 だからミーアはロッシェに近づいた。
 ラクス・クラインという存在を見たことも聞いたこともない異世界の迷い人。
 そんな彼なら、自分自身、ミーア・キャンベルとしての自分で、接することが出来る。
「だけど、そんなのいつまでも続くわけがない……ロッシェだって、いつかきっと元いた世界に帰っちゃう。
 そうしたらあたしは、あたしは、一人になる」
「ミーア……私は」
「待ってる人がいるんでしょう、その世界には」
 何故ミーアがそれを知っているのか、この時のロッシェはそれを尋ねることが出来なかった。
 気高い男であるはずのロッシェが、動揺で口がきけなくなってしまっている。
 彼は何と、ミーアに声を掛けるべきか迷っていた。

 どんなことを言えばいいのか、声が、出ない。

「いたぞ! ラクス・クラインだ!」
 その時、ロッシェとミーアの前に数人の男たちが駆けてきた。
 ロッシェは瞬間的に銃を抜き放つと、ミーアを壁際へと寄せた。
暗闇においても、ロッシェは敵に後れを取ることなど無いと思っていた。
精神的動揺はあったが、それを除けば条件は同じだ。
 
 同じのはずだった。

「これはっ――!?」
 先に撃ったのは、テロリストたちであった。
ライフルから放たれた銃弾は、正確にロッシェの持つ拳銃を弾き飛ばしていた。
 ロッシェは瞬間的に壁際にいるミーアを抱え、廊下の角へと身を寄せた。
「ロッシェ、大丈夫?」
「あぁ……どうやら、奴らは暗視スコープ付きのライフルを持ってるらしい」
 比べて、こちらは唯一の武器を早々に失ってしまった。こうなれば格闘戦を挑むしかないが……
「もう無理よ、ロッシェ、貴方だけでも逃げて!」
「そんなこと出来るか!」
「どうして? どうして貴方はあたしなんかを……」
 少なくとも、嫌われていないとは思う。好意的であることも判っている。
だが、それだけでは、命を賭ける理由にはならない。
命を賭けて、自分を守ってくれる理由には、ならないはずだ。

「私は……私は騎士だ!」
 ロッシェは断言でする。

「騎士は、騎士道を重んじる男は、一度守ると決めた相手を、絶対に守る!」
 そして……少なくとも、ロッシェはミーアに好意を持っている。
これは動かしようのない事実だった。
「ラクス・クラインだとか、そんなことは私には関係ない。
 私はミーア・キャンベルという女性と知り合い、ミーアとしての君と接してきた。
 ラクスとしての君が必要ないのだとしても、私はミーア・キャンベルという人を守りたい」
「でも、私は……」
「ラクス・クラインがなんだ。例え、そいつがどんなに偉大な奴でも、今ここにいるのは紛れもない君だ! 
 君は君に出来ることを、精一杯やれば良いんだ!」
 今必要なのはラクスという虚像かも知れない。ならば、それを変えればいい。
 自分の意思で物を決め、自分の意思で物を言う、行動は結果だ。
 人はその人が何を言ったかでも、何を行ったかでもない。
 その結果、どう変わったのかを判断するのだ。
「そんなこと、私に出来るわけが」
「君と同じぐらいの歳の女に出来たことだ、やってやれないことはない」
 コーディネイターの性能だとか、個体差の優劣だとか、そんなことは関係ない。
「君自身が、自分で動いてこそ、人々はミーア・キャンベルという君を認めてくれる、そうじゃないのか?」
「ロッシェ……」
 涙を拭うロッシェに、ミーアは寄り添う。
 
 今は、ロッシェ一人かも知れない。
 だが、やがては全ての人が知るようになればいい。
 ミーア・キャンベルという少女のことを。

「その為にも、まずはここを切り抜けなくてはならないな」
 テロリストたちは慎重に動いているようだが、手持ちの武器がないこちらが圧倒的に不利だ。
一か八か飛び出して、格闘戦を挑むか?仮に失敗しても、ミーアを逃がす時間ぐらいは稼げるかも知れない。
「ミーア、ここは私が……」
 言いかけて、すぐ側で銃撃音が響いた。何人か、男たちの悲鳴が響く。
数からいって、今し方ロッシェと対峙していたテロリストたちのものだろうが……
「ラクス様! 大丈夫ですか!?」
 ザフトの警備官の制服を着た若い男が駆けてきた。
ロッシェは少しだけ身構えるが、男は肩で息をしながら身分証を提示した。
「階下の警備をしていた者です。お二人とも、ご無事ですか?」
 身分証は本物で、このホテルの警備を任されている兵士の一人だった。

「貴方、どうしてここに?」
 何故、議長ではなく、自分の下へなど来たのか。ミーアはそれが不思議でならない。
「自分は、ラクス・クラインの警護をするためにこのホテルにいたのです。
 議長を守るためではありません」
 青年といっていい年頃の兵士は、ミーアに関する事情は知らないようだったが、
自分の意思でこの場に駆けつけたらしい。
「確かに議長が来られた際、何事にも議長優先でとの命令は受けましたが、私は最初の命令を遂行します」
 単純にラクス・クラインが好きなのか、それともデュランダルが嫌いなのか、
どちらにしろ味方が増えるのは良いことで、自分のために駆けつけてきた人間がいるという事実は、
ミーアの心を随分と軽くした。
「何とかして外に出たいのだが、どこか出られる場所はないか?」
 ロッシェは弾き飛ばされた銃を拾いながら、青年兵に道を尋ねる。
「ここから近い場所に非常階段があります。
 爆発が起こった中庭の真裏ですし、そこなら外に出られると思います」
「よし、ならば当面はそこを目指そう……もう少し頑張れるか?」
 ミーアの方を振り向くロッシェ。暗闇の中だが、ミーアはハッキリと頷いた。

 

 ハイネ・ヴェステンフルスが乗るセイバーは、ミネルバから発進しすると、すぐにホテル上空へと到着した。
ビームライフルを構えて、地上のディンを威嚇するが、ディンはメインカメラを向けただけで、全く動じない。
「くそっ、ホテルを背にすればこちらが撃てないと思ってやがるな」
 敵が地上に降りてきたのは、恐らくホテルを背にすることで、こちらの攻撃を封じる意味もあったのだろう。
確かにこれでは、ホテルへの着弾を恐れてビームライフルなどの射撃武器が使えない。
 さらに、敵がホテルと密接している以上、爆散させずに倒す必要もある。
「なら、ビームサーベルで……」
 接近戦を挑もうとするハイネだったが、それをいち早く察したのか、敵は驚くべき行動に出た。
 何と、ディンの持つライフルの銃口を、ホテルへと向けたのだ。
「下手に動けば、ホテルに攻撃するってことかよ! なんて野郎だ!」
 やはり一人でこの敵をどうにかするのは無理だ。
 ハイネは膠着しつつある状態に冷や汗を流す。
余り長引かせれば、ホテルの中に残っている面々の危険が増すばかりだ。早くなんとかしなければ……
 
 改めて敵機体を見るハイネ。先ほど、ディオキア基地の方からデータが送られてきた。
この機体は、ディンのカスタム機で『ディンレイヴン』というらしい。
地上用のディンをステルスタイプにカスタマイズした機体で、大戦末期に少数作られたという。
通常のディンに比べ、推力や機動力がかなり高くなっており、モビルスーツの性能としても、並の機体とは訳が違う。
「しかし、何だってこんな機体をテロリストが持ってるんだ?」 
 パイロットは、ザフトの過激派だろうか? 
以前、ユニウス7で事件を起こしたテログループは、ザフトを脱走した過激派グループだったという。
同じか、もしくは似たような連中が、ラクス・クラインの命か、
それとも身柄を狙って動いているのだとすれば?
「それにしちゃ、随分とずさんな計画だな……」
 今夜起きた一連の出来事は、非常に上手く計算され、練りに練られた作戦であるようにハイネには思われた。
 偽の情報を流して基地の部隊を遠くへ追いやり、その隙を狙ってホテルへと侵入を果たす。
 ここまではいい。だが……

「モビルスーツを出すタイミングが早すぎる。
 これじゃあ、ホテルの中に入った連中は隠密な行動が取りにくくなるはずだ」
 まさか、とハイネは思う。
 もしかして、千分の一、いや、万分の一ぐらいの確立で、あのモビルスーツと
ホテルの中にいるテロリストたちが、まったく違うグループで、たまたま居合わせただけだとしたら?
 この状況が、奇妙な偶然が重なった結果だとすれば?
「そうすれば、この噛み合わなさに説明が付く」
 そんな偶然起こりうるのか? 
 そう考えないでもないハイネだったが、敵の呼吸の合わなさは明らかにおかしい。これは何かあるはずだ。
「案外、あのモビルスーツのパイロットも動揺しているのかもな」
 これは予想というより希望である。
 敵が動揺なり、混乱していてくれれば、それだけ時間が稼げるのだから……

 動揺を期待されたディンレイヴンのパイロットは、確かに動揺していた。
この機体が持つ優れた索敵機能で、ホテル内を調べた結果、
何と別のテロリストがホテル内で激しい戦闘を繰り広げているのだ。
「何でこんなことになった……」
 慌てたような声を出す男の声は、聞く人が聞けば非常に耳障りな、甲高い声をしていた。
 男は、名をヨップ・フォン・アラファスという。
 今日の夕方まで、アスラン・ザラと会話をしていた、あの男だった。

 彼はアスランとの会話を終えると、すぐに地上協力員の下へ赴き、渋る相手を銃殺し、
モビルスーツを奪ってここまで来たのだ。
 全てはアスランを殺し、デュランダル議長の身柄を確保するため。 
 計画はもっと簡単にいくはずだった。
 ホテルの中庭に軽い爆発を起こし、何事かと窓際に現れるであろうデュランダルの身柄を確保する。
 それだけで、済むはずだった。
 
 それがどうだ。爆発後、突如としてホテルの照明が落ち、落ちたと思ったら各所で銃撃戦が行われる始末。
これでは、デュランダルを探すどころか、アスランを始末することさえ出来ない。
「俺の計画は、完璧のはずだ!」
 ヨップは確かに頭が良い。組織の中にあって、それを運営する能力には確かに長けていたし、
特殊戦などの任務でも高い成功率を誇っていた。
 それが彼の自信であり、自分を高く評価する理由、自負であった。
「何とか、何とかしないと……」
 しかし、彼は自分の計算外の事が起きると、途端に焦り、動揺した。
 彼が意識しない弱点、精神面の脆さだった。
 だからこそ彼は、アスランに論破されたときも何も言い返せず、
一方的に相手に怒りをぶつけることしかできなかったのだが、今それを言っても仕方ないだろう。

「せめて、アイツだけは……アスラン・ザラだけは殺す。ぶっ殺してやる!」
 怒りに吠えるヨップだったが、彼には余裕がなかった。
この状況、確かに膠着状態を保ってはいるが、長くは続かない。
 もし、ヨップがホテルに攻撃を仕掛ければ、眼前の機体は復讐心に身を躍らせ、
全力でヨップを倒すため、襲いかかってくるだろう。
 では、逃げ出すとして、ヨップも敵の機体のことは知っている。
 ZGMF-X23Sセイバー、セカンドステージシリーズにおいて、もっとも空中戦に適した航空機系統の機体だ。
その圧倒的な加速力を前に、ディンレイヴンで逃げ切ることが出来るのか? 
ステルス機能など、この際飾りにしかならない。
「俺は、どうすれば……」
 ヨップは迷い、焦り、悩む。
 
 そしてその時間は、彼の敵に決定的な時間を与えつつあった。

 ヨップの標的である二人、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルと、
特務隊フェイスに所属する男、アスラン・ザラは行動を共にしていた。

 デュランダルは、この夜に起きた出来事を、一生忘れられないだろうと思っていた。
 既に幾度もテロリストと遭遇してはいるのだが、
「ハァッ!」
 一人、テロリストの身体が宙を浮く。
アスランが恐ろしいほどの威力のキックを放ち、その身体を蹴り上げたのだ。
そして、その宙に浮いた男に皆の目が集中した瞬間、ライフルを連射して残りを始末する。
 アスランの強さは、圧倒的だった。
 向かい来る敵を、その驚異の身体能力を駆使して、バッタバッタと薙ぎ倒す。
射撃の腕は、敵のそれを凌駕していたし、格闘能力は一撃で相手の意識を奪うほどのものであった。
「なんて強さだ……」
 デュランダルはそんな光景をまざまざと見せられ、いや、見せつけられ、感嘆せずにはいられなかった。
 アスランの強さ、自分を守ってくれる頼もしい存在、そんな彼を重用した自分、
様々な考えが頭の中で巡り会い、デュランダルの気持ちを高ぶらせる。
強さを持って敵を倒し、デュランダルを守るアスランの姿は、彼にとってヒーロー像となりつつあった。
 
 所謂、吊り橋効果という奴である。
吊り橋など、揺れ幅の激しい極限状態に身を置いた男女が、極限を一緒に体感したという事実から
互いを信頼し合い、恋愛に発展するというものだが、デュランダルはそれに似ていた。
もっとも、この場合は恋愛感情ではない、ただの偶像かと信頼で、アスランの方は議長に何の感情無かったので、
まあ良くて議長の片思いといったところだろうか。
「それにしても、ラクスたちは大丈夫でしょうか?」
 アスランは、ライフルの弾倉を交換しながら、呟くように言った。
彼なりに、一応は気にかけているらしい。
「そうだな……無事だといいのだが」
 彼女にした仕打ちのことなどすっかり忘れ、心にもないことをデュランダルは口走る。
彼の中で、ミーアがどうなろうと知ったことではないのだ。
「先ほど外にモビルスーツの影を見ました。これは早く、ホテルから脱出したほうが良いでしょう」
 アスランはテロリストが持っていた端末から、ホテルの詳細な地図を手に入れていた。
この分なら、非常通路の一つから外に出ることが出来そうだ。
 今まで出会ったテロリストたちは、デュランダルの姿を見ると誰もが意外そうな、驚いた顔をしていた。
これから考えるに、敵は議長の存在を知らずに、ラクスを狙ってきたのだろう。
 ならば、彼女の泊まる部屋から使われるであろう経路を全て無視し、
離れた経路を使えばある程度は無事に外に出られるはずだ。
「彼女には悪いが……な」
 
 アスランとしては、彼女を助けて感謝されるよりも、デュランダルの命を助けて恩を売っておきたいのである。
 
 そうすれば、今後有利に動けるだろうから。