X-Seed_新たなる道_第02話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 12:45:22

「うわ、これすげ~!」

 

ガロードはそう言うとストライクガンダムのコクピットを見渡した。

 

「なんか俺が今まで乗ってたのより複雑そうだな」
「そうなの? 僕はこれ以外見た事ないから…」

 

ガロードがコクピットに座るとキラの他に数人の男の子が物珍しそうに見ていた。

 

「ちょっと動かしてみっからはなれてな」

 

ガロードがそう言うとキラ達数人はストライクから離れた。

 

「よっと…うわ! っとっとっと…くそ! む~…」

 

ガロードはしばらくストライクをDXと同じ感覚で操縦しようとしたが、そう簡単には出来なかった。
それでもMSを転ばせたり、派手に移動したりはさせなかったのは流石である。
取り合えずストライクをもう一度跪かせ、

 

「お~い、キラ! ちょっとこっち来てくれ!」
「何?」

 

このMSのOS調整者であるキラを呼んだ。

 

「上半身と下半身がなんか別々の動きになったりしてんだよ…このまんまじゃ戦闘所じゃねえよ」
「うん…動きを一体化させればいいんだね?」
「つうかなんで前に一歩動かすのに上半身がお辞儀したり後ろにそったりすんだよ?
それにこっちで動かしてから実際にやるまでにタイムラグがあるし…」
「それはちょっと時間が…」
「ま、それはこっちでなんとかすっから…まずはそれだけ頼むな?」
「うん」

 

ガロードの要請にキラは頷いた。

 

時間は戻ってジンが自爆した後、ガロードはまずティファを連れてストライクが跪いている所まで行った。
そこでは数人の人影がMSの中から女性を引っ張り出していた。

 

「お~い!」
「え? あ、あなたはさっきのジンにぶら下ってた?」

 

ガロードに対応したのはMSから人を運んでいる傍らでそれを見ている女の子だった。

 

「ああ、俺の名はガロード・ラン、んでもって…」
「ティファ・アディールです」
「ミリアリア・ハウよ。 けどビックリしちゃった、あなた生身でジンにぶら下ってんだもん」
「ジン?」
「さっきのMSよ」

 

ミリアリアがそう言うとガロードとティファは互いに顔を見つめて首をかしげた。
二人は避難の前に話し合い、ここがクラウド9といわれる革命軍のコロニーでない事までは解ったが、
ここが異世界であるとまでは結論付けてはいなかったからである。

 

「ま、このMS狩りのガロード・ラン様に掛かればあんなのはな…本当はあれ奪う積もりだったんだけどな」
「ガロードさんってMSに乗れるの?」
「こう見えてもちょっと前まではバリバリであっちこち駆け回ってたんだよ」
「凄い」

 

ミリアリアがそう驚く横でティファはじっとキラを見ていた。

 

「それよりもさ、さん付けで呼ぶなよ…なんかこう背筋がむずむずすんだよ」
「クス、解ったは」

 

ミリアリアが笑うと、近くで3人を呼ぶ声がした。
どうやらコクピットから意識を失った女性、マリューを運び出し終えたらしい。
その後ガロードとティファはキラ達と互いに自己紹介をした。
その時、さっきまでの話しが出て取り合えずガロードはストライクのコクピットへ、
ティファはミリアリアとマリューの介護を行った。

 

「う…ここは?」

 

マリューは意識を取戻し起き上がった。
ミリアリアとティファはそれを支えようとしたが、
マリューはストライクのコクピットに人がいるのを見て、

 
 

「機体から離れろ!!」

 

と叫びながら一発空へ拳銃を撃った。
これにトール・ケーニヒ、カズイ・バスカーク、サイ・アーガイルはその言葉に慌てて従う。
ガロードはコクピットからひょこっと顔を出した。

 

「この機体は地球軍の最高機密よ。 民間人が勝手に触っていいものではないわ。
私はマリュー・ラミアス、地球軍の将校です。
申し訳ないけど、あなた達をこのまま解散させるわけには行かなくなりました。
事情がどうあれ、あなた達は”見て”しまった。
然るべき所と連絡が取れ、処置が決定するまでの間、私と行動を共にしてもらいます」

 

と、整列させたガロードとティファも含む7人に向けて言う。

 

「なんで!」
「無茶苦茶だよ、そんなの!!」
「僕等はヘリオポリスの民間人です、中立ですよ!? 関係無いです!!」

 

マリューのあんまりな言い草にミリアリア達は不満を述べたが、
それをマリューは上空へもう一発銃を撃つことで黙らせた。 そして彼等に向けて、一喝する。

 

「黙りなさい、何も知らない子供が!! 
中立だ、関係無い、と、さえ言っていれば今でも無関係でいられる、
まさか本気でそう思っているわけではないでしょう? 周りを見なさい!!」

 

彼等は周囲を見る。
そこには、つい数時間前までは信じて疑わなかった景色が、
今は戦火によって無残に踏み荒らされた光景が広がっていた。

 

「これがあなた達の現実です、戦争をしているんです。あなた達の外の世界はね」

 

「そんな勝手な理屈、俺は知るもんか」

 

ガロードはそう言うとばっとマリューに飛び掛った。
行き成りの事にマリューはとっさに動くことが出来なかった。
それが仇となりガロードに銃を蹴られ、逆にガロードに銃を突きつけられた。

 

「ホールドアップってね、取り合えずこのガンダムの追加パックがどこにあるか教えてよ」
「な、なんで!?」
「ほら、さっさと話す!」

 

マリューは蹴られた手を庇いながらしばらく睨みつけたが、
ここには味方はおらずサイ達は呆然と成り行きを見ていた。
マリューは自分に味方がない事、さらにそれが今自分にも必要な事は解っている為、
感情を無理やり抑え、ランチャーパックの場所を話した。
サイ達がそこへ走っていく横でティファがガロードの手を取った。

 

「ティファ?」
「銃をおろして…大丈夫」
「………解ったよ」

 

ガロードはそう言うとしぶしぶマリューへ向けていた銃をおろした。
マリューはそれにほっとため息を付くと、

 

「取り合えずザフトはストライクがある限りまた襲ってくるわ。
それまでにある程度体制を整えないと…」
「わーったよ、そんな事…それじゃさっさとその体制とやらを立て直しましょう?」
「助かるわ」

 

マリューはそう言うとストライクの方へと向った。

 

「ティファ?」
「ガロード…彼は…悲しい、そして間違った道を歩む人」
「ティファ…何か見えたのか?」

 

ガロードがそう言うとティファは首を横に振った。
二人の視線の先には黙々とストライクとランチャーの接続プログラムを組み込んでいるキラがいた。

 

「見えていました…ですが今は見えにくい…またガロードに未来を変えられてしまいました」

 

ティファはそう嬉しそうにいった。
ガロードはその横で顔を赤くしながらそっぽを向き鼻の頭をかいた。
ただしティファの手をぎゅっと繋ぎながらだが…

 

「………ティファ」
「?」
「俺達…どうなるんだろうな?」

 

ガロードがそう訊くとティファは目を閉じた。

 

「沢山の出会いがあります、そして別れも…この先はぼやけて見えにくい、
戦闘が幾度も行われるとしか…その中で私達は私達ができることをするしか…」
「そっか…」
「けど…」
「?」

 

ティファはしっかりとガロードを見つめ、

 

「それでも私はガロードと一緒にいたい」

 

と言った。 ガロードはそれを真正面か見た為顔を赤くしながら頷いた。
勿論ティファの顔も負けないくらい赤かった。

 

「は!?」

 

ようやくストライクとランチャーパックの接続が終わろうとする時、ティファははっと上を見た。

 

「ティファ?」
「来ます…悪意が」
「く、キラ! ストライクはもう出れるのか?」
「まって、もう少し…」
「くそ…しゃあ無い、こうなりゃ…サイ達は隠れててくれ!」
「一体どうしたって言うの?」

 

マリューはキラ達を代表してそう聞いた。

 

「敵だよ! もうすぐ…いやもう来た!」

 

ガロードがそういって指差す先に、戦闘機らしきオレンジの飛行物体とそれを追いかける白い一つ目の巨人がいた。

 

「く…キラ君、プログラムは?」
「後ちょっとです」
「そんなら俺と一緒に乗るぞ! ティファはサイ達とどっか隠れててくれ!」
「はい!」

 

ティファはサイ達を引きつれ、近くの施設の影へ急いで向った。
その途中サイやミリアリアなどの学生組はキラの事を心配そうに見ていたが、

 

「大丈夫…ガロードが護ってくれます…勿論私達も」

 

と言い、少し不安が残るものの従った。

 

「で? こいつの武器は?」
「アーマーシュナイダー、イーゲルシュテルンの他にアグニとバルカンとガンランチャーがある」
「は? イーグル…なんだって?」
「それは頭部についてる機関砲の事、後アグニは左手にある大きなビーム砲だよ」

 

その他にもキラはプログラムを書く傍らガロードに説明した。

 

「ビーム砲って…んなもんぶっ放したらコロニーに穴開かないか?」
「解らないけど多分…くるよ!」

 

キラが言う様に白いジンとはやや形の異なるMS、
シグーは空中から手に持ったマシンガンをストライクへと撃った。
ガロードはいまだ慣れないながら、ストライクを左右へ振って攻撃の殆どを交わした。

 

「ち、全弾回避っては行かないか」
「またくるよ!」
「させっかよ!」

 

シグーは今度は盾に装備されているガトリングガンを構えたが、
そこへガロードは負けじと右肩に装備されている大型バルカン砲をシグーへ発射した。
その弾はシグーには当らなかったものの、確実にコースは合っていた為、シグーは体制を崩した。

 

「今だ!」

 

ガロードはすかさずバルカン砲の横に装備されている2門のミサイルを発射した。
シグーはそれを見て慌てて上昇、手に持ったマシンガンでミサイルを打ち落とした。

 

「くそ、こいつかなりやる…」
「アグニは使わないの?」
「コロニーに穴あけたく無いし…威力の調整って出来るか?」
「まって…あった、2分…いや、1分耐えて。 それだけ時間があれば出来るから」
「解った…揺れるぜ!」

 

ガロードがそう言うとおりストライクのコクピットは左右にランダムに揺れていた。
シグーの攻撃は基本的に実弾だけなので、ストライクにとってはダメージは無い。
しかしそれはエネルギーを消費してダメージを無効化しているので、限界が来る。
ガロードはマリューからこのMSがバッテリー式だと聞かされていたので、
フェイズシフト装甲で無効化するより、多少はあたるが避ける事に専念した。
さらにストライクを動かすことによって、徐々にだがこのストライクの癖やそれの捌き方を実戦で学んでいった。

 

「ガロード…」

 

ティファは今まさに空に浮かぶMSと戦っているストライクを両手を胸の前に組んで見守っていた。
はたから見るとその動きは今だたどたどしいが、時間を追う毎にそれが改善されて行く様に感じた。

 

「大丈夫よティファさん…ストライクに実弾は効かないの…ある意味私達よりもあそこは安全よ」

 

マリューはそうティファに囁いた。
どうやらマリューはガロードから自分を庇ってくれたティファに、親しみが湧いたようである。
そうこうする内にストライクは左肩の後ろにあった大きな銃…アグニを構えた。
しかも構えながら回避行動は続けている為シグーは一度距離をとるように上昇した。
それを狙ったかのようにストライクは右肩のミサイルを発射、
シグーは当然の様に手に持ったマシンガンで撃ち落した。
しかしその為に動きを抑えなければならず、そこを同じ右側にあるバルカン砲で狙われた。
シールドを掲げダメージを軽くするも、シールドの先端に付いているガトリング砲があっけなく壊れた。
ストライクは追い討ちにミサイルを撃つがシグーは今度はストライクへ迫り、紙一重でミサイルをかわした。
ミサイルは流石に180度の方向転換は出来ず空中で爆発した。
ストライクは肩のバルカン砲のほかに頭についている小さめのバルカンも動員して弾幕をはった。
流石にシグーも今までのダメージも有り避けたが、そのコースにアグニが発射された。
といってもマリューが実験で見た威力からは程遠く、精々エールパックに付いているビームライフルほどの威力だった。
これにシグーは右肩にかすり、マシンガンを落とした。
どうやら今の衝撃で回路に異常をきたしたようだ。
シグーはさらに左足の間接部分にナイフが突き刺さっていた。
どうやらアグニは囮でこちらが本命だったようだ。
シグーは千切れ掛けている左足を庇いながら後退していった。

 

「ふう…狙ったとこと違うけどこれは作戦成功か?」
「そうだね…けど流石にあれを投げて頭を狙うのは無謀だったんじゃ?」
「使えるもんは何でもつかう、これ戦場の常識よ? 
ナイフだから投げちゃいけないって法則はないだろうが」
「ま、まあ…うん」
「さってと、そんじゃティ…うお!?」
「何? また敵?」

 

シグーを退けホッとしている時にコロニーの外壁がビームで吹き飛び、白い戦艦が現れた。

 

「くそ!」

 

ガロードはアグニをその戦艦に向けたが、

 

「まって、あれは味方よ!」

 

マリューが拡声器を使ってガロードを止めた。
その後ガロード達はマリューに言われ、アークエンジェルという白い戦艦に乗る事となった。

 

ストライクが武装パックがあったトレーラーごとアークエンジェルに運ぶと、そこに制服を着た人物が数に表れた。

 

「ラミアス大尉! 」
「バジルール少尉! 」
「御無事で何よりでありました! 」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを…おかげで助かったわ」

 

マリューがそう言っている横でサイやミリアリアなどの学生組がトラックから出てきた。
さらにストライクのコクピットからガロードとティファが出てきた。
マリューにトラックを運ぶよう言われた時、
ガロードがキラと交換にティファをコクピットに呼んだのである。

 

「おいおい何だってんだ? 子供じゃないか!」

 

黄色の整備服を着たおっちゃんにそう言われ、ガロードは何か言い返そうとしたがティファが止めた。

 

「ティファ?」
「ガロード、今は黙って…」

 

ティファにそう言われガロードはしぶしぶ頷いた。

 

「彼らは?」
「御覧の通り、民間人の少年です。 襲撃を受けた時、何故か工場区に居て…私がGに乗せました」
「ふーん」
「なおその時…とても言いにくいのですが、こちらの少年、
名前をガロード・ランと言うそうですが彼が生身でジンを撃破、
さらにストライクにこちらのキラ・ヤマトと共に搭乗、シグーを退けました」

 

マリューがそう言うと辺りは一度しんと静まり返った。

 

「ラミアス大尉」
「何?」
「私の聞き間違いでしょうか? 生身でジンを撃破したと…」
「ええ、間違ってないわ」

 

マリューがそう言うとしばらく静かになった後、

 

「「「「「ええ~~~~~!!!」」」」」

 

絶叫が起こった。

 

「キミ、コーディネイターだろ?」

 

絶叫が一段落した時、ヘルメットを持った軍人…ムウ・ラ・フラガがガロードに訊いた。

 

「はあ? なにそれ」
「いや、だからその…遺伝子を弄って生まれたのかって訊いたんだ」

 

フラガの問いにきょとんとした顔でガロードは答え、
それに対しフラガは質問を細かくして再度訊いた。

 

「何で遺伝子を弄んなきゃいけないの? 一々そんな余裕も技術もこっちにゃねえよ。
つうかさ、それやってなんか得すんの?」
「取り合えず病気にかかり難くなったり運動神経が普通より良かったり…だな」

 

フラガの応えにガロードはへ~と感心しているような声を上げた。

 

(カリスみたいな強化って事かな?)
(それとは違うと思います…そんな雰囲気は有りませんでした)

 

ガロードとティファはそうひそひそと話した。

 

「で、どうなの? まあ話し聞くとなんか違うっぽいけど」
「俺らは普通に生まれたよ、なあティファ?」

 

ガロードがそう言うとティファはこくんと頷いた。

 

「へ、へぇ~…けど普通の人がジンを生身で相手なんて」
「さっきそっちの人が撃破っつったけど俺はただ奪おうとしただけだぜ?」
「う、奪う?」

 

ガロードのあまりに飄々とした言い草に、フラガ達は顔を引きつらせた。

 

「ちょうどあのストライクっつったっけ? 
あのガンダムに掛かりきりで回り見えてなかったっぽいから簡単に…
ただメインカメラだけ破壊すればよかったんだよな…肩までいかれさせる必要なかったじゃん。
結局自爆されたし」

 

ガロードは前半は自慢げに、後半は反省点を自ら上げた。
フラガ達はそれにぽかんと口を開けマリューを見るとマリューは疲れた顔で頷いた。
その後幾度かガロードがコーディネイターかと訊かれたが、それに否と答え続けた。