X-Seed_新たなる道_第08話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 13:09:19

「あ…足が…」
「痛い…」

 

ガロードとミリアリアは重力下の廊下で正座させられていた。
話はガロードがアークエンジェルに帰る時までさかのぼる。
ガロードがこわごわストライクから降りると銃を持った連合兵に囲まれた。
これはガロードも予想していたので素直に指示に従いある一室に護送された。
その中ではミリアリアがナタルと連合の上官と見られる男に色々説教されている。
ガロードが入ってくるとナタルはミリアリアへの説教を切り上げガロードの方へ来る。
ガロードが体を硬くするとナタルは、

 

「アークエンジェル及びモントゴメリの為の行動だとミリアリアから聞いているが…」
「そ、そうだよ」
「なぜ我々に何も言わなかった?」
「だって思いついたのが戦闘配備が掛かった後だし…説明する時間もなかったし良いかな~って」
「良い訳は無いだろう!!!」

 

ナタルがそう怒鳴るとその部屋のほか全員(ミリアリア、コープマン、ガロード、フラガ、マリュー)は、
すくみあがった。

 

「軍には規律と言うものがある! 
 それは傭兵だからといって決して無視して良い物でもないのだぞ!!
 それがなんだ!? 確かに結果的に我々は助かりザフトも引いた。
 しかし一歩間違えばお前はラクス嬢ごと殺され我々には護り人すら居なくなる所だったんだぞ!!」

 

ナタルの剣幕にガロードはおろかマリュー、フラガですら近寄れなかった。

 

「…もうそれくらいで良いだろう、ナタル少尉…彼も十分反省しているよ」

 

そんなナタルをコープマンは宥めた。
彼をナタル以外の全員が尊敬の眼差しで見たのは余談である。

 

「しかし軍の規律は!!」
「彼らはあくまで傭兵だ、軍に属しても軍人ではない…
 どうしても罰が必要と言うのなら重力ブロックの廊下で1時間ほど正座させればいいだろう。
 子供への罰なのだからそんなに重いのもな…」

 

コープマンがそう言うとナタルも黙らざるえない。
彼の方が上官でもありそれなりの処置を行おうと言うのだから…
なおこの処罰はこれからアークエンジェル内での習慣になったりするがこれも余談である。

 
 

「し、しびれる…」
「ガロード、しっかり…」

 

ガロードとティファは懲罰を終え部屋に入った。
ミリアリアはトールに抱えられる形で別の部屋へ運ばれたが、その際顔を真っ赤にしていた。
ガロードがこれ幸いとからかい返したからである。
そのガロードはティファに多少支えられて部屋へ来たのだが、
完全にお姫様抱っこされたミリアリアとどっちがからかわれ易いかは一目瞭然である。
なおティファは変装としてピンク色のかつらを頭に乗せていただけなので、懲罰は無しとなっている。

 

「ありがとう」
「へ?」

 

ガロードをベットに腰掛けさせるとティファはそういってガロードの顔を見た。

 

「歴史がまたガロードの手で変わりました。
 悲しいものから明るいものへ…」
「過ちは繰り返してない…んだよな?」
「はい」

 

ティファが頷くとガロードはうれしそうに笑った。
なお部屋の外では盗み聞きしてドアにへばりついているトールとミリアリアがいるのを、
お礼を言いに着たフレイが発見、それに便乗していた。

 
 
 

アークエンジェルはモントゴメリと共に地球衛星軌道上に展開している第8艦隊に合流した。

 

「うっへ~…こんなに戦艦が並んでるなんてすげえな」
「ええ…」
「俺達帰れるのかな?」

 

カズイがそう言うとヘリオポリス組みは安堵のため息を付いたが、

 

「けどそれってここが襲われると無理じゃねえ? 
 なんか連合軍ってかなり弱っちくて足止めだって満足にできてないじゃん」
「「「「う」」」」

 

ガロードがそう言うとカズイ達は思い当たる節がありすぎてうめいた。
先程の攻防ももしガロードが機転を利かせなかったらモントゴメリは完全に墜ちていただろうし、
アークエンジェルすら持っていた保証は無い。

 

「なかなか手厳しいな…とは言っても否定できん事実であるのが情けないな」
「おっちゃんは?」
「私はこの艦隊を指揮しているハルバートンだ」
「俺は炎のMS乗りガロード・ランだ」
「ティファ・アディールです」

 

ハルバートンが名乗った後ガロードとティファが名乗り、
それとフレイとサイを除いたヘリオポリス組みが自己紹介をした。
その二人は今フレイの父親のところにいる。
ハルバートンはそれを全て聞いた後、

 

「すまない事をした」

 

そういって頭を下げた。

 

「「「え? ええ!?」」」
「上層部の…いや、私の指示でヘリオポリスにMSを作らせた事で、
 関係のない君達まで巻き込んでしまった…
 本来軍人とは君達のような民間人を護らなければならないと言うのに………すまない」
「「「…」」」

 

ヘリオポリス組みは頭を下げるハルバートンに何も言えずただその光景を見ていた。

 

「へへ、まあそれは良いよ、もう終わった事だしさ…それより、俺達はこれからどうなるんだ?」

 

ガロードは、照れたように一度鼻の下を擦ると真面目な顔でそうハルバートンに訊いた。

 

「君達には除隊許可証を渡しておく。
 これで君達は他の人達と同じく船から降りる事ができる」
「あ~…報酬は?」
「報酬?」

 

ガロードがマリュー達と交わした約束をハルバートンに伝えるとハルバートンは唸った。

 

「う~む…しかしそうすると他の人達よりもオーブへ帰るのが遅くなってしまうぞ?」
「いや、その前に他の人達ってまさかこのまま降下させる気なのか?」
「そのつもりだが…」

 

ハルバートンがそう言うとガロードはあちゃ~といって上を向き手で顔を覆った。

 

「何か問題でもあるのかね?」
「あるに決まってんじゃん、大気圏突入しちゃったら身動き取れないでしょ?」
「ああ、しかしそれは我々第八艦隊が…」
「いや、無理無理」

 

ガロードがそう言うと流石にハルバートンもむっとした顔をした。

 

「なぜそう言えるのかね?」
「だって連合ってザフトにぼろ負けなんでしょ? 
 確かに艦隊戦だったらこっちに分があるかも知んないけど、
 MSなんて連合は持ってないって話しだし、
 そんなんじゃすぐにMSに抜けられるって」
「いや、確かに抜けられる可能性はあるがだからとてそう簡単には…」
「それにガンダムが向こう4機あるし、なんかこっちを目の敵にしてるっぽいから絶対来るよ?」
「ガンダム?」
「ヘリオポリスで作った5機のMSだよ」
「Gの事か…しかしガンダムと…こちらの方が響きがいいな」
「そんな事より!
 そのGってのが向こうは4機もあるんだから普通にやったら簡単に抜けられちゃうって」
「そんなにすごい物なのかね? 我々が開発したMSは」
「ああ、戦艦なんてはっきり言って大きいだけの的でしかないって」
「う~む…」

 

ハルバートンはガロードの言い分に腕を組んで考え出した。
これがただの民間人なら歯牙にもかけないが、
MS乗りと自称するこの少年はGを乗りこなし相手方のGと戦った経験を持つ。
それだけに決して軽視して良いものではない。

 

「そんでもしザフトが攻めてきたらちょっと考えがあるんだけど…」

 

ガロードは悪戯小僧の様な顔でハルバートンにある提案をした。

 
 
 

「で? 一体どうするんだ俺達?」
「除隊許可証があってもこれって無期限じゃないよね?」

 

ハルバートンとガロードがなにやら離している間に、
ハルバートンの副官がヘリオポリス組みに渡したものだ。
なおここはヘリオポリス組み女子に割り当てられた部屋で、
人数はキラやフレイ、サイを含めたヘリオポリス組みとガロード、ティファがいる。

 

「アークエンジェルは補充要因がいるらしいから俺達がもう手伝うことは無いよな」
「私はパパと一緒に月に行くわ…できればサイも…」
「え? 俺?」

 

サイは自分を指差すとフレイが頷いた。
それに対しトールとカズイがヒューヒューと冷やかした。

 

「…そうだな、もう俺達は何もできないんだし…わかったよフレイ」
「俺は残るぜ」

 

サイが決断するとそれを割るようにガロードが言った。

 

「「「「え?」」」」
「なんたってまだ俺は報酬もらってないからな…」
「ガロードが残るのなら私も残ります」

 

ティファがそう言うと残りのヘリオポリス組み(トール、ミリアリア、カズイ、キラ)は唸って腕組をした。
最初に4人の中で喋ったのはミリアリアだった。

 

「それじゃあ私も残るわ、ティファが残るって言うんですもの、あたしの残らなきゃね」
「ミリィ…」
「トールはどうするの?」

 

ミリアリアが首をかしげながらトールを見るとトールは一瞬迷うが、

 

「彼女が残るのに俺だけ降りたんじゃかっこがつかないしな、俺も残るよ」

 

と言った。
ミリアリアはそれに嬉しそうに笑うがその横でカズイが弱弱しそうに、

 

「僕は降りるよ…」

 

と言った。

 

「そうね、カズイは戦いとかに向いて無いし…」
「ごめん」
「謝ることなんてねえよ、別に俺達は責めたりはしないからよ」

 

ガロードがそう言うとカズイは頷いた。
最後のキラは悩みに悩んだすえ、

 

「僕も残るよ」

 

と言った。

 

「キラ…別に降りてもいいんだぞ?」
「うん、だけどミリィもトールも残るって言うしさ…
 それに補充要員って言ったって整備員は殆どいないんだよ。
 それに僕じゃないとストライクやジンのOSの書き換えができないしさ」
「そっか…けどそれってさ…」

 

トールはそう言うとガロードだけをちょいちょいと手招きして男三人で円陣を組み、

 

「フレイとサイがいちゃいちゃしてるのを見たくないだけだろ?」

 

と言った。

 

「え? 何キラってフレイの事…」
「え!? ち、違うよ!」
「ドモルところが怪しいって、なあガロード?」
「そうだな、トール」

 

ガロードとトールは怪しく笑いあった後キラの方を向いた。

 

「な、何二人とも、そのちょっと可哀想な視線…や、やめてよね! そんなんじゃないんだから!」
「はいはい」
「解ってます、解ってますよ」

 

キラが必死に否定するがこう言うのは否定すればするほど図星という事になるのをキラは知らない様だ。

 
 
 

『総員、第一戦闘配備! 繰り返す! 総員、第一戦闘配備!』
「お、始まったな」

 

ガロードはそう言うと指を鳴らした。

 

「とりあえずストライクは大気圏に単独で突入はできるけどまだプログラムは完全じゃないんだ。
 それでも初期の物よりも断然良い筈だけどね…ティファ、そのシステムはこれに書いてあるから」
「はい」

 

ティファはキラからファイルを受け取ると早速そのファイルを読んだ。
元々ティファは頭が悪い訳でないので、道中ミリアリア及びフレイからの読み書き集中特訓が行われた。
とわ言えすべて解る訳ではないのだがそれでもプログラムの変更、起動ぐらいはできるようだ。

 

「そんじゃ行ってくっから」
「気をつけて…」
「おい坊主! フラガ大尉はどうするんだ?」
「大尉はゼロでお願いします、ジンよりもゼロの方が速いですし大尉も乗りなれているはずですし」
「解った!」

 

キラはそう言うとコクピットから降りて、他の整備員ともども退避を始めた。
途中、

 

「それじゃガロード、ティファ頑張って!」

 

と大きな声でいい、ガロードがそれに対し手を振って答えた。

 

「さって、それじゃいっちょ頑張りますか」

 

ガロードはそう言うとティファはプログラムの起動を何度も何度も確認していた。

 
 
 

「前方の艦隊の人員は全て脱出させたな?」
「は! セレウコス、カサンドロス、アンティゴノス、プトレマイオス 、
 モントゴメリの5艦には趣旨を説明、志願した者のみが残るだけであります!」
「彼らの働きでこの第8艦隊の存続が掛かっている…決して無駄死にはさせん!」

 

ハルバートンはそう言うとガロードから言われた作戦を思い出した。

 
 

「艦をミサイルとして使う!?」
「そ、ぶっちゃけMSに対して艦砲なんて当たれば嬉しい宝くじみたいなもんだよ、
 それよりもザフトの戦艦を落とす事を先に考えないとね」
「戦艦を?」

 

ハルバートンがそう訊くとガロードは頷いた。

「MSはバッテリー式なんだろ?
 だったら戦艦を落とせばその残りのバッテリーを使い切らせばいいだけだよ。
 何よりも狙うのは相手の戦艦…とは言っても遠距離ではそうは当たらない」
「ニュートロンジャマーやアンチビーム爆雷などがあるからな」
「ならそれが無効化するぐらい近づけば良い話だろ?」
「だがそう簡単に…」
「たとえばさ、足の速い戦艦を自動操縦にしてさ敵艦のいる座標に突っ込ませるとか」
「それは!?」
「んでこっからが本題、そういう戦艦を盾にして時間を稼がせるの、
 盾にするのは傷ついたモントゴメリ当たりがいいんじゃない?
 その間に本体も攻めて戦艦を落とすもよし、尻尾巻いて逃げるもよし…
 あ、逃げるんだったらあの艦も囮にすれば完璧だよ」

 

ガロードはそう言うとメネラオスを指差した。

 

「しかしザフトはMSもいるのだしGは強力なのだろう? すぐに落ちると言うことも…」
「その為にMAがいるんじゃん、って言ったってほんのオマケでしかないけどね」
「オマケ?」
「そ、オマケ…先遣隊の戦いを見てたけどMSにMAじゃ勝てないよ、特にガンダムには」
「そ、そうなのか?」
「うん、俺が乗ったストライクでも3~40機は一人で行けるね、まず装甲が違うもん」
「む…」
「だからMSはとりあえず無視、MSが盾の戦艦に取り付こうとしたら出せばいいじゃん、
 そっからでも遅くないよ」
「そうか…」

 

ハルバートンはそう言うと唸った。

 
 
 

「敵ザフト軍ナスカ級、及びローラシア級からMS発進を確認!」
「こちらもMAを出しますか?」
「いや、主砲のジャマになる、MA隊は決死艦にMSからの攻撃が届くぎりぎりまで待て」
「解りました」
「アークエンジェルも艦隊砲撃に加わるように指示を出せ、あれは強力な火力を持っているからな」
「ですがそれでは…」
「決死艦が落とされるまでだ! それ以降は一目散に降下して貰わねばならん」
「了解、伝えます!」

 

ハルバートンはそう言うとじっと前方をにらみつけた。

 

「各艦に伝達! 射程範囲に入った艦より砲撃開始、目標敵艦ナスカ級及びローラシア級!!」

 

ハルバートンの命令道理、艦隊前方にいる決死艦と250m級戦艦、メネラオスが砲撃を開始した。
その射線はすさまじく、合計10艦以上のビームは、アンチビーム爆雷を展開していたザフト軍3隻に雨あられと降り注いだ。
それから遅れること数秒、130m級駆逐艦からミサイルとビーム、
アークエンジェルからビームと大型リニアキャノンでの砲撃も加わる。
この濃密な砲撃戦は、互いに近づいているからできたものだが、
これに巻き込まれる形になったザフトMS隊はビーム、
ミサイルをかわすのに必死で、決死艦5隻になかなか近づけなかった。
その中にあってG4機さらにジン1機は避けならがらも決死艦に確実に近づいていた。

 
 
 

「くそ、まだ射程外だ…ディアッカ! バスターもそろそろ射程じゃないのか!?」
「後ちょっとだミゲル…これで!」

 

ディアッカはそう言うと戦艦の主砲と同程度と思われるビームを決死隊の先頭、
モントゴメリへ撃つも、アンチビーム爆雷を前面に展開している為少し船体に傷がつく程度だった。

 

「グレイト! アンチビーム爆雷の量がハンパじゃないぜ…っと!」
「奴さんようやくMAも出してきたな…ディアッカはそのまま戦艦へ砲撃、その他は俺と一緒に艦へ取り付くぞ!」
「その他って言うな!」
「了解!」
「解りました、ミゲルさん」

 

 ヘリオポリスで何とか生き残ったミゲルをリーダーにザフトレッド(+1)は戦艦に取り付こうとしていた。

 

「よし、このままいっき…うわ!」

 

艦砲の雨を潜り抜け、バスター以外も射程範囲に入ろうとした時横合いから無数の実弾がMSを襲った。
ザフトは艦に取り付こうとそこばかりに集中していた為、
艦砲射線軸上を回避する様に遠回りしてきたMA、メビウスが大群でザフトMSにリニアガンを発射していた。
これに気を取られた後方ザフト機であるジンは今だ決死隊へと降り注ぐ援護射撃に巻き込まれ、
またはそれに気付かずにリニアガンの餌食となり最初に出撃した数の3分の2にまで減った。

 

「くそ! こいつら~~~!!!!」
「よせイザーク! 熱くなってもどうしようも…」
「あ、え? …足つきからMSとMAの発進を確認したそうです!!」

 

ニコルの報告の通り、援護射撃に混じって白と赤い物が近づいてきた。

 
 
 

「敵MS以前数変わらず! …!! モントゴメリ轟沈!」
「く…MA隊の方はどうか?」
「総数の20%は戦闘不能です!」
「決死艦の残りは?」
「残り4艦とも被害はあれど前面に集中、まだ動けます!」
「あ…」
「どうした!?」
「は、はい…決死艦、MAの包囲網を突破したMSが2機…いや、3機!!」
「なんだと!?」
「機体はデュエル、イージス、ブリッツです!」
「ストライクは!?」
「現在イージス、デュエルと交戦中! フラガ大尉がブリッツを攻撃中であるものの苦戦しています!」
「く…」

 

メネラオスブリッチでは次から次へと来る報告や命令が入り混じっていた。

 

「アークエンジェルは!?」
「現在わが艦の横で砲撃しています!」
「…アークエンジェルに伝えろ! 『ここはわれらに任せ降下を始めろ』…だ!」
「しかしそれでは!」
「あくまで奴らの目標はアークエンジェルだ! 今のままだと決死艦はずべてやぶられる…
 彼の艦は、明日の戦局の為に決して失ってなぬ艦である。
 陣形このまま! アークエンジェルは急ぎ降下させよ!」
「「は!」」
「それと決死艦が落ちたら事務次官が乗る船は護衛をつけて下がらせろ!」
「しかしそれでは…」
「民間人も乗っているのだぞ!? 危険にさらす訳にはいかんだろう!?」
「了解であります!」

 

ハルバートン指示の元、連合は圧倒的多数の艦砲を出し惜しみなく発射し、
ザフト艦隊に少なくないダメージを与えていた。

 
 

クルーゼは報告を聞いてはたと考え込んだ。
ザフトは基本的にMSの搭乗、発進が前提の戦艦だ。
射撃能力もあるにはあるが、連合の戦艦には一歩及ばない節がある。
そのお陰で先制攻撃は向こうに渡してしまったが命中率は低い。
だがそれも数の差で覆せるものであり、現に発進したMSのうち1機はその流れ弾に当たってしまっている。

 

「近づいている敵艦はまだ落とせないのか!?」
「現在一番先頭の艦を破壊、しかしそれ以降はMAが邪魔をしてなかなか有効だを打てない状況です」
「くそ!」
「やはり足つきを目標に急ぎすぎたのかもしれません…いまから」
「あ、足つきが敵艦隊から離脱し始めています!!」
「チィ! ハルバートンめ! 第8艦隊を盾にしても、足つきを降ろすつもりか!」
「どうします?」
「ミゲルたちに足つきを追わせろ! 残りの者はまずあの4隻だ!」
「は!」

 

クルーゼの指令の元まず高機動のイージス、ステルス機能のあるブリッツ、
アサルトシュラウドという特殊装甲を装備し推進力の上がったデュエルが決死艦を抜き去った。
バスターとミゲルの乗るジンはいまだ艦砲とMAの射撃をかわすのに必死で抜けないが、
それも時間の問題だった。
ジンがMAを無視し、戦艦に攻撃を始めたからである。

 
 
 

「アンティゴノス、プトレマイオス共に撃沈!」
「後残るは2隻か…」
「セレウコス、行動不能!」
「カサンドロスはどうか!」
「は! …左ローラシア級まで後1分で接触します!」
「…よし! 火力を左ローラシア級に集中! カサンドロスの為の道を開けさせろ!」
「了解!」

 

決死艦も残り一隻となったものの囮としてはかなり有効で、攻撃のほぼ全てが決死艦に集中した為、
今だ第8艦隊の大部分は無傷だった。
しかしそれも決死隊が居るからでありもはや一隻となりGに抜かれた艦隊は、
ストライクとメビウスゼロによりGを足止めしているからこそ持っているのであり、
このままでは壊滅すらありえる。
それを防ぐ為にもザフトの戦艦を例え一隻でも撃破すればそれだけMSへの整備補給、
またそのパイロットへの精神的追い込みが必要である。

 

「このまま行けば…」
「いや、カサンドロスを失えば決死艦は全滅だ…アークエンジェルはどうか!?」
「現在フェイズツー…大気圏降下限界点まで、あと4分!」
「ううむ…」

 

ハルバートンの必死の指揮の元第8艦隊は戦艦に猛攻を続けていた。
しかしそれももはや終わろうとしている。

 

「左ローラシア級にこちらの砲撃が命中!」
「カサンドロス、左ローラシア級の脇を抜け右ローラシア級と接触…今!」

 

それはまさに吉報だった。
戦艦一つを撃沈、もう一つもこちらの戦艦が体当たりをしたことで戦闘続行不可能にまでなった。
これは砲撃戦で15対1となったことを現す。

 

「事務次官の乗った船は離れているな?」
「は! 避難民の乗っている船は護衛艦2隻を連れ月に向っています!」
「アークエンジェルは!?」
「現在…フェイズスリーまで後2分!」
「現在生き残っている戦闘艦は?」
「は! 戦艦4、護衛艦7、あとはこの艦だけです!」
「MA部隊は!?」
「60%以上はやられました!」
「やはりMSを甘く見すぎていたか…」
「敵MSのうちジンは6機の撃墜を確認しています!」
「Gは?」
「ムウ大尉がブリッツを何とか抑えています、ストライクはイージスとデュエル!」
「バスターはどうした!?」
「どうやら弾切れのようです!」

 

本来バスターは砲撃戦仕様であり、その能力を決死艦に対し遺憾なく発揮したが、
そのせいで弾切れ、エネルギー切れが速くなってしまったのだ。

 

「よし! 残っている艦はそのまま砲撃しつつ後退! 殿はこの艦だ!」
「了解」
「アークエンジェルはどうか!?」
「フェイズスリーまで後1分! ムウ大尉はアークエンジェルの中へ帰還しました!」
「ストライクは!?」
「いまだ交戦中! どうやらデュエルを道連れに単独での大気圏突破を図るようです!」
「イージスは重力圏を突破! どうやらそのまま戻るようです」
「そうか」

 

ハルバートンは一度目を瞑り黙祷すると第8艦隊を少しずつ後退させていった。
アークエンジェルはストライク回収の為大きくその突入角を変え、本来の目的地アラスカを外れてしまった。