X-Seed_新たなる道_第09話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 13:14:34

「あ、あち~~!!」
「あふ…」

 

ガロードとティファはストライクから出るとその場でへなへなと座り込んだ。

 

「おめえ達、もうすぐ担架持ってくっからちょっと待ってろ!」
「あ~、頼むわ」
「…」

 

ガロードとティファは互いにパタパタと風を送りあいながら先ほどの戦闘の事を考えていた。
ストライクはゼロと共に早期に出撃、決死艦を抜けたMSの相手をしていた。
その時イージスのパイロットが色々と通信を繋げていたが、ガロード、ティファ共に無視を決め込んでいた。
しばらくイージスとデュエルの相手をしているとアークエンジェルより帰艦命令が来た。
とはいえこちらは2対1、重力圏に入ってすぐイージスは帰って行ったがデュエルはしつこくガロード達に付いて行った。
その為デュエルの攻撃を避けている内にアークエンジェルに単身で帰還する事は困難となり、
アークエンジェルが移動、ガロード達を拾う事となる。
その時キラのプログラムが良かったのか、コクピットは少し熱くなる程度で済んだ。
もっともそれが長い時間続いたので二人とも暑さでダウンしているのだ。

 

「おめえら取りあえず病室行けよ」
「りょ~か~い」

 

ガロードがそう言うとガロードとティファの二人は一つの担架に乗せられて運ばれた。

 
 

「マニュアルは昨夜見たけど、なかなかたのしそうな機体だねぇ。
しかしまぁ、ストライカーパックも付けられますってのは、俺は宅配便か?」
「はっはっはっは。大尉なら、じゃねぇや、少佐ならどんなとこにもお届けできますってね」
「それに下手な戦闘機よりも火力が強力ですし」
「ま~な…ハルバートン提督の計らいとはいえ、この状況で昇進してもなぁ。
給料上がんのは嬉しいけどさぁ、いつ使えんの?」
「この坊主の調整のお陰で明日の朝には…」

 

マードックはそういいながらキラの頭をぐりぐりと撫でた。

 

「やめてくださいよ、けどいくら調整しても実際に飛ばしてみないと何とも言えませんね」
「確かにな」
「あ~、うん…そうだな」

 

フラガは何ともいえない顔でマードックとキラのやり取りを見ていた。
はたから見てもキラの能力は抜きに出ていたしナチュラルではありえない。
しかしその能力はアークエンジェルに欠かす事の出来ないものだし、
フラガも助かっているのだが人間だからといってすぐ納得できるものではない。
なのにマードックはキラの能力を認めていて、自らもそれに学ぼうという姿勢だった。

 

「ああいう奴が世の中に多かったら戦争は起きなかったのかねぇ?」

 
 

「ふー、少佐!今日はこれくらいにしときましょうや」
「調整はほぼ完璧ですが飛ばしてみないと解らない問題はありますね」
「ガロードも一晩寝てすっかり良くなったのはいいが…」
「あの嬢ちゃんはそうは行かないみたいだな」

 

フラガやマードックが言うようにガロードは大気圏突入の翌日けろっと直ったが、ティファは今だだるそうにベットで寝ている。
ガロードはそれでもストライクのOSを宇宙用から陸戦用に切り替える為格納庫へ来ているが、
その間の看病はブリッチ要員をお払い箱になったミリアリアがおこなっている。

 

「こう言っちゃあなんだが…俺達ってダメな大人だね~」
「…そうですね」

 

ガロードはいつものように元気いっぱいと言う風に装っているが、実際は心ここにあらずといった感じだ。
それでもこのアークエンジェルにとってガロードの力の重要性は解っているので、
己を奮い立たせて調整をおこなっている。

 

「そういえばあのジンは使えるの?」

 

フラガはストライクの横に設置してある鹵獲したジンを指差した。

 

「取りあえずOSはガロードの坊主用に書き換えてありますがまだ調整が…」
「ふ~ん…俺でも乗れるの?」
「少佐用に調整すれば乗れない事もないと思いますが…結構慣れるのに時間がかかるんじゃ」
「けど俺も乗れるようにしないとね、MS…坊主達ばっかに戦闘を押し付けてちゃまずいっしょ」
「ですね」

 

フラガとマードックはそうしみじみと言った。

 
 

「ミリィ、ティファの調子は…」
「アハハハ、でねぇ…トール?」

 

トールが雑用<トール、ミリアリアは雑用係になっていた>を終えて病室に来ると
ミリアリアとティファの笑い声が響いていた。

 

「その調子なら大丈夫そうだな」
「はい」
「お医者さんの話じゃサウナに長時間入ってのぼせた状態だってさ」
「ふ~ん、なら平気か」

 

トールがそう言うとティファはこくりと頷いた。

 

「そっか」
「けど大事を取ってしばらく寝てなさいだって、それなら部屋でもいいのに」
「ティファ立てるのか?」

 

トールがそう聞くとベット端に背を預けていたティファはこくんと頷いた。
その後トールとミリアリアが面白おかしくアカデミー時代の話をして、
それを聞いてティファが笑うという構図ができていた。

 

「ティファ、大丈夫か?」

 

しばらくしてMSの調整が済んだガロードが病室に入ってきた。
ここまで走ってきたのか息を切らしていたが、ティファがミリアリア達と笑っているの見てほっと息を吐いた。

 

「大丈夫よ、ね? ティファ」
「はい、ガロード、私は大丈夫だから心配しないで?」
「そっか、うん」

 

ガロードはティファにそう言われ顔を赤くしながら頷いた。
それをこの前の逆襲とばかりにミリアリアとトールが攻め、ガロードはたじたじになっていた。
勿論ティファは顔をうつむかせて真っ赤になっていた事も追記する。

 
 

『第二戦闘配備発令! 繰り返す! 第二戦争配備発令!』
「とうとう来たか!」
「確かここってザフト圏だったんだっけ?」
「ああ、そんじゃ俺は言ってくっから、ティファはまだ大人しく寝ててくれよな!」
「私も…」
「「「駄目」」」

 

戦闘準備の放送が来ると病室はにわかに慌しくなった
ティファは今まで同様ストライクに自分も乗る為に起き上がろうとしたが、
それをミリアリア、トールそしてガロードに駄目だしを受けた。
その声が重なった為ティファは一瞬きょとんとしたが、意味を受けとると俯いた。
それに動揺したガロードであるがミリアリアに速く行くよう言われしぶしぶその場を後にした。

 

「大丈夫だって、ガロードはそん所そこらのザフトになんか負けないって」
「それにティファがここにいるんだから絶対帰って来るさ」

 

そんなティファをミリアリアとトールは励ました。
ティファはそんな二人を見て微かに頷いた。

 
 

「坊主! エールはまだ大気圏突入の時にブースターの回路の一部が焼けちまって使えねえ!」
「了解、そんじゃ…ソードとマシンガンをよろしく!」
「わかった」
「ガロード、一応照準は出る様にしているけど射撃はOSの補助は無いから気をつけてね!」
「俺はそっちの方がなれてっから大丈夫だよ」

 

ガロードはそういって手を挙げるとストライクのコクピットの中に入っていった。

 

『敵は戦闘ヘリだ、行けるな!?』
「へ、そんなもん余裕だぜ!」
『先に少佐のスカイグラスパーを出す! 重力に気をつけろよ?』
「俺は元々そっちの方が得意なんだよ」
『ふ、そうか。ハッチ開放、スカイグラスパー、ストライク発進!』
『先に行ってるぜ?』

 

ブリッチとの交信パネルとは別にもう一つのパネルが開き、フラガがそう言って来た。

 

「へ、おっちゃんこそ落とされんなよ?」
『お兄さんと呼べ! ああもう、スカイグラスパー、ムウ・ラ・フラガ、出るぞ!』

 

フラガがそう言うとストライクの横をスカイグラスパーが発信して行った。

 

『続いてストライク、発進どうぞ!』
「おう! ガロード・ラン、ソードストライク、いくぜ!」

 

それに続くようにストライクは発進した。

 
 

「よっ…は、っと!」

 

ガロードはフラガと共に難なくアークエンジェルの上に乗ったまま戦闘ヘリを落としていった。

 

「へへ、こんくらいなら楽勝だぜ」
『そうも言ってられなくなったぞ、お客さんだ!』

 

フラガがそう言うと、四足のキツネの様なロボットが3機地を這うように高速で来た。

 

「なんだありゃ?」
『TMF/A-802…ザフト軍モビルスーツ、バクゥと確認!』
「あれがモビルスーツ~?」
『そうだ! 陸戦用に特化しているから気をつけろ!』
「了解!」

 

ガロードはそう言うと右手に持つマシンガンでバクゥを牽制、
バクゥは1機がそのまま突進し、2機が左右にわかれた。

 

「そりゃ!」

 

ガロードはそんな掛け声と共にアークエンジェルを飛び降りた…が、

 

「うおっとっとっと…」

 

着地に失敗し砂に足を取られ、体制が崩れる。
しかしそれでも右手に持つマシンガンは正面バクゥに向けられていた。
そのバクゥは一度右に機体を流すと背中に背負っているミサイルランチャーを撃つ。
ガロードはそのミサイルをマシンガンとバルカンで迎撃すると、
バクゥとストライクの間に煙幕ができた。
バクゥはその場で煙幕の方を向いているとそこから一本のワイヤーが伸びてきて、
バクゥの右前足を掴み、ワイヤーは巻き戻った。
抵抗するように背中のミサイルランチャーを撃つも、
それを無視するかのようにストライクは右手を対艦刀に持ち換え、片腕でバクゥを切り裂いた。

 
 

「ますは一つ! ってね」

 

ガロードがそう言い砂漠を歩こうとするも足を砂に取られ、なかなか上手くいかなかった。

 

「くそ! どうす…うわ!」

 

アークエンジェルから離れるようにのたのた歩いているストライクを、
残りのバクゥ2機は取り囲んで攻撃を開始する。
その衝撃でコクピットが揺れたがダメージはさほど無いようだ。

 

「つってもこれじゃあ…ん?」

 

砲撃が一時やみ、バクゥが煙を上げている。
よく見るとバクゥの近くにジープが何台書いてバクゥを攻撃しているようだ。

 

「…にしては威力が弱いな~」

 

ガロードの世界では車に積む火器は大抵が対MS用の物だ。
これは総じて威力が高く命中精度も上がっている。
これは装甲が硬いMSの少しでも弱い所を狙えるようにそうなっているのだが…
ジープの攻撃はどう見ても嫌がらせ程度であり、当っている場所も装甲が厚そうな場所だ。
ジープはストライクにワイヤーガンを放つと、

 

『そこのモビルスーツのパイロット! 死にたくなければ、こちらに指示に従え! 
そのポイントにトラップがある! そこまでバクゥを誘き寄せるんだ!』

 

そう言ってジープは走り出した。

 

「…それ以外の手も無いし…いっちょ乗ってみるか!」

 

ガロードはそう言うと機体をジャンプさせた。
指定のあった場所渓谷でそこまで行くとバクゥもそれを追ってきたが、
ガロードは崖の上へワイヤーを伸ばしてジャンプ、その数瞬後にその場所一体は爆風に包まれた。

 
 

「え~と、空は俺達の知って…いや、知らない空だな」
「え?」
「あそこになんか浮いてる」

 

ガロードが指差す先には砂時計状のコロニー、プラントがあった。
ガロードとティファは砂漠に抱き合って寝転んでいる。
時間を少し戻して、バクゥを追い払うことに成功したアークエンジェルは、
それに協力したレジスタンス『明けの砂漠』と武器を持ったまま話し合った。
それにより協力体制を一時取る事になったのだが、
話がまとまりガロードがストライクから降りると、

 

「ガロード!」

 

という声と共によこから誰かがタックル…もとい抱きつく。
ガロードは反応できず、しかし辛うじてティファと解るとティファが正面から倒れないよう自分を下敷きにした。
これに周囲も唖然となったが、それを無視してティファがガロードを気遣った。
それにガロードが大丈夫と答え、その後まが持たずにガロード達は先ほどの会話をした。
そこに金髪の少女が覗き込むように抱き合っている二人を見た。

 

「…大丈夫か?」
「平気平気…ティファ、起き上がるからそろそろ」
「…はい」

 

ガロードがそう言うとティファはしぶしぶという感じに起き上がった。
金髪の少女、レジスタンスのリーダーから『カガリ』と呼ばれた少女はそれを溜息を付いてみていた。