X-Seed_新たなる道_第07話

Last-modified: 2008-03-05 (水) 13:01:47

「へ~、ラクスって歌手なんだ」
「はい・・・ですが父は最初あまり言い顔はしませんでしたわ」
「へ? 遺伝子を弄ってそうなったんじゃないの?」
「はい、なんでも本当は普通の女の子にと・・・コーディネイター同士での子供ですから、
どうしても自然にと言う訳に行かないそうですが」
「自然にするとどうなるの?」
「6割が死産、生まれても長く生きられるのが5割を切るとか・・・」
「そうなんだ・・・」

 

ラクスの話にヘリオポリス組みは沈黙してしまった。

 

「なあ、ちょっと歌聞かせてよ」
「そうですわね、では僭越ながら・・・」

 

ガロードが沈みがちな話題の変換にそう訊いて、ラクスは了承するとすんだ歌声で歌い始めた。
ティファはそれに鼻歌であるが続き、二人の歌声は周りを癒しながら広がっていった。
二人が歌い終わると自然と拍手が沸き起こった。

 

「ラクスさんもすごいけどティファもすごいじゃない!」
「ティファさんすごいですわ、私の歌に付いて来れる人はそう多くはないんですよ?」

 

ミリアリアとラクスが絶賛し、フレイもただただ拍手をしていた。

 

「へっへっへ~、他にもティファは絵も上手いんだぜ~?」
「ガロード・・・そんな」

 

ティファは俯いて顔を赤くした。

 

「え~? 見てみたいわ」
「ですわね」
「・・・絵の道具がないので今は見せられませんが、その内でいいですか?」

 

ティファはそのままぼそぼそと言ったが、ガロードを含む全員が頷いた。
その後終始和やかに会話は弾んでいった。

 

「先遣隊?」

 

ラクスの部屋はその後用がない時のヘリオポリス組みの溜り場となり、必ず二人以上はそこにいた。
マリュー達にはっ最初の事を伝え監視役と言っているのでさほど咎められなかった。

 

「この船を捜しに来ているの?」

 

ティファに無理やり連れてこられたフレイだが、
少なくともラクスがフレイに危害を加えるという事は無いとわかったようだ。
まだ積極的という訳ではないが自分だけ仲間外れにされるのも悔しいのかティファと一緒にこの部屋にいる。

 

「そうみたいだ・・・それとフレイ、君のお父さんも乗っているみたいだぞ?」
「ええ! パパが!?」
「フレイのことは当然知らなかったろうけど、こっちの乗員名簿、さっき送ったからさ」
「パパが・・・よかったぁ 」
「よかったね」

 

フレイはそう言うとほっと胸を撫で下ろした。

 

「羨ましいですわ」

 

とそこにいままで話を聞いていたラクスがぼそっと言った。
今まで話していて忘れていたが彼女は捕虜と言う立場に近い。

 

「う・・・」
「ほ、ほら・・・向こうに着いたら色々あるかも知れないけどさ、
すぐって訳じゃないと思うけど返してくれるって」
「そ、そうよ・・・私もパパに掛け合ってみるから・・・」

 

それに対しサイとフレイが必死にそう言うが、ラクスは頬を膨らませてぷいっと横を向いた。
なお部屋には知らせを持ってきたサイとフレイ、ラクスとティファの他にガロードだけがいた。
その後すこし話をした後、サイとフレイはこそこそと部屋を後にした。

 
 

「総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!」
「ぬお!?」

 

ラクスとティファとミリアリアが喋っている(ティファをミリアリアがからかいそれをラクスがまぜっかえすと言う事だが)
のを見ていたガロード(微妙に赤くなっていたりもする)は、行き成りの放送でその場で転んだ。

 

「大丈夫?」
「ああ・・・」
「戦闘配備・・・ですか?」
「ああ、またザフトが攻めて来るみたいだな・・・ザフト?」

 

ガロードはそう言うとしばらくぶつぶつと一人で喋り、そしてにやりと笑った。

 

「三人とも、ちょっと手伝って欲しいんだけど」
「はい」
「はい?」
「何?」

 

ガロードがそう言うとティファは疑いもせずに頷き、
逆にラクスとミリアリアは幾つもの?マークを浮かべた。

 
 

「ガロード! ティファ!」

 

二人が宇宙服を着て駆け出しているとフレイと出会った。

 

「戦闘配備ってどういうこと? 先遣隊は?」
「ザフトに攻撃受けてんだろ!? 兎に角速く行かなきゃ!」
「大丈夫だよね!?」
「え?」
「パパの船やられたりしないわよね? ね!?」
「わかんねぇ」

 

ガロードは自信なさげにそう言った。

 

「とりあえず俺らはもう行くから、速く行かないと助かるもんも助からねえ!」
「う、うん・・・」

 

フレイはそれに困惑しながらも頷いた。

 
 

「お前ら遅いぞ!」
「悪りい!」

 

ガロードがそう言うともう一人をそっとコクピットに乗せ、自分も乗った。
ただその相方はなぜかお腹が大きかったりするのだが、
その事を突っ込む余裕は今のアークエンジェルクルーにはなかった

 

『敵は、ナスカ級に、ジン3機。 それとイージスが居るわ。 気を付けてね』
『ガロード、先遣隊にはフレイのお父さんが居るんだ。頼む!』
「解ってる、ミリィもそっち頼むな!」
『任せて! カタパルト、接続! エールストライカー、スタンバイ! システム、オールグリーン!
進路クリア!ストライク、どうぞ!』
「ガロード・ラン、エールストライクガンダム、いくぜぇ!!」

 

ガロードはそう言うと機体を動かした。

 
 

『ガロード、もう少し掛かるわ』
「了解、この!」

 

ガロードはそう言うとビームライフルを発射、背中を向いていたジンはコクピットを貫かれ爆発した。
しかしこれでザフトもストライクとアークエンジェルの参戦がわかり、
残りのジン2体がアークエンジェルへ、イージスがストライクへ向かった。

 

『今日こそキラの事話してもらうぞ!』
「あら? アスラン?」
『え? その声はラクス?』

 

例によって例のごとく通信を入れてきたイージスはガロードと一緒に乗っているパイロット、
ラクスを見て驚いていた。

 

『なぜあなたがそこに?』
「実は一人で漂流していた所この方達が助けてくださいましたの」
『なるほど・・・ってそういう訳じゃなくてなんでストライクに乗っているんですか?』
「さあ? 私もまだよく解りませんがあれよあれよと言う間に・・・」
「へへ、それはもうちっとで解るよ!」

 

ガロードがそう得意そうに言うと、そこへミリアリアから通信がきた。

 

『ガロード、言われたとおりザフト、連邦どちらにも聞こえるようにしといたわ』
「よっしゃ! それじゃ回線を繋げてくれ!」
『了解!』

 

ミリアリアがそう言うとブツッと電子音が聞こえた。

 

『あ~、あ~こちらアークエンジェル所属炎のMSパイロット、ガロード・ラン!
ザフト及び連合軍に告ぐ!』
「なんだ!?」
「足つきからの全周波放送です!」
「足つきから? だが映像はブリッジではなくコクピットだぞ?」
『現在ストライクガンダムにはラクス・クラインが乗っている! 両方とも一旦下がれ!』

 

クルーゼがそう言う様に目の前のモニターには少年と少女が並んで座っている。
さらにヘルメットはラクスだけとって解り易くしている。

 

『連合はアークエンジェルの方へ! ザフトはそのまま動かないでよ!』

 

「格好の悪いことだな、援護に来て不利になったらこれか」
「隊長!」
「ああ! 分かっている。 全軍攻撃中止だ!」

 

クルーゼはそう言うと苦虫を噛むように苦笑した。
連合の艦隊はアークエンジェルを除くともはや後1隻、
今乗っているナスカ級で後数秒遅ければその最後の一隻も落とせていただろう。

 

『なおザフト軍がこのまま攻撃してるとこの子の安全は保障しないぜ!?』

 

ストライクのパイロットはヘルメットをしたまま懐の銃をラクスの頭につけた。
ヘルメットのせいか顔はよく見えないが口元が若干笑っているのが見える。
先遣隊は残り一隻、しかもダメージを受けている様でそのまま素直にアークエンジェルへと向った。
アークエンジェルからストライクへ何度か通信がある様だが、
その声はクルーゼ達にはよく聞こえなかった。

 

『あともしザフトが引くってんならラクスを引き渡してもいいぜ?
返事はここに居るイージスからだけ受けっから、
イージスは補給とかに戻ると交渉決裂ってことだから、そのつもりで!』

 

ストライクからの通信はそう言うとぷつっと消えた。

 

『隊長!』

 

その後すぐにアスランがヴェサリウスへ通信を入れた。

 

「聞いての通りだ、どうやら私達はここまでの様だな」
『では!?』
「引くしかあるまい・・・最低でもその演技をしなければラクス嬢がどうなるか解らん」
『追ってくるでしょうか?』
「それはあるまい・・・それよりアスラン、バッテリーの方はどのくらいだ?」
『・・・4割を切りました』
「その状態での戦闘行為は難しいな・・・アスラン、ラクス嬢を迎えに行ってやりたまえ」
『ありがとうございます!』
「隊長?」
「念の為私のシグーの用意をしてくれ、すぐ出られるようにな」
「解りました」

 

クルーゼはそう言うとブリッジを後にした。

 

『これがお前達のやり方か!』
「うわ!」
『まあいい、ラクスを本当に返してくれるんだろうな?』
「そっちが本当に退くんならな!」

 

ガロードがそう言うとアスランは黙り込んだ。
なおアークエンジェルからの通信は、全周波放送と共に切っていた。

 

『・・・隊長がラクスを迎えに行けと言っていた、つまりこの場は引くと言う事だ』
「へ、それが本当だって断言できんのかよ!」
『それは・・・』
「アスラン」
『ラクス?』

 

今まで成り行きを見守っていたラクスが喋った。

 

「どうかこの方達を見逃してもらえないでしょうか? とっても良い人達なのですよ?」
『良い人だからって、戦争なんですから見逃すわけには・・・それにキラの事だって』
「キラ様・・・ですか?」
『あいつはコーディネイターなんです・・・なのにアークエンジェルで働かされて・・・』
「あら? そうだったのですか? 彼もてっきりナチュラルだとばかり・・・」

 

ラクスがそう言うとその横でガロードがうんうんと頷いていた。
ガロードは今までキラと他のヘリオポリス組み、
さらにマードックやフラガともよく喋っているのを見かけている。
そこには何の気兼ねもなかったからてっきり彼もナチュラルだと思っていた。

 

『コーディネイターはコーディネイターと共に居た方が幸せなんだ!』
「それは偏見ってもんだろ? 俺達は全員人なんだからさ、人それぞれって奴だよ」
「そうですわ、必ず同じ人種が集まる事が幸せではありません」
『うう・・・と、兎に角ラクスは返してもらおうか?』
「約束は護ってくれるんだろうな?」
『少なくとも俺は・・・部隊の指揮をしている訳じゃないから何とも言えないが』
「・・・わかりました、私からその隊長さんに直接掛け合う事にします。
ガロード様もそれでよろしいですね?」
「ん~、もう一声欲しい所でもあるんだけどな・・・」

 

ガロードがそう言うとラクスは困った顔をした。

 
 

「私、もうそれ以上の事はできませんわ・・・」
「う~ん・・・」

 

ガロードはそう言うと腕組をした。
コクピットでそれをやるのはある意味致命的だが、ラクスと言う盾があるのでザフトは攻撃できない。

 

「・・・しゃあないか」
「でわアスラン、コクピットを開けてくださりませんか?」
『解った』

 

そう言うとイージスのパイロット・・・アスランは言われたとおりコクピットのハッチを空けた。
ガロードがラクスにヘルメットを被せ空気漏れが無いかチェックした後ハッチを空けた。

 

「それではガロード様、他の皆様もお元気で」
「そっちもな! 今度は平和になって会えたらいいな!」
「その時はティファ様の絵も一緒に見たいものですわ」
「ん、帰ったら伝えとく」
「楽しみにしていますわ」

 

ラクスはそう言うと一礼しイージスのコクピットへ飛んだ。
その後クルーゼが単身ストライクへ攻撃しようとしたがそこへラクスが凛とした声で反論、
結局ザフト艦はラクスを載せ一時撤退していった。

 

「さ~ってと、そんじゃ大目玉でも食らいに行きますか!」