XXXⅧスレ268 氏_Select of Destiny_第4話

Last-modified: 2011-02-28 (月) 02:29:03

カガリからDr・Kに手紙を渡すよう頼まれたシン・アスハは、
モルゲンレーテ社内にあるDr・Kの研究室の前に訪れていた。
「……よし」
扉の前で軽く深呼吸をしたシンは、意を決したように扉の先へと足を踏み入れる。
「失礼します。Drに用事が……わぁ~~」
深々と頭を下げながら入室したシンの足が1歩目で止まる。
そして、研究室の中を見渡しながら感嘆の声を上げた。

 

(相変わらず、綺麗な部屋だなぁ)
扉の先でシンが目にした物、それは明るい蛍光の光に包まれた真っ白な部屋であった。
ゴミどころか塵1つ落ちていない綺麗な床。綺麗に整頓され、無駄な物など一切置かれていない棚と机。
微かに花の香りを感じるのは香水か何かを使っているからなのだろうか。
「待っていたぞ、シン・アズサ」
まるでホテルの一室のような研究室の主、Dr・Kはシンの姿を見ると椅子から立ち上がる。
彼女が裾を通している白衣も、皺1つない新調したてのような美しさを放っていた。

 

「こんにちは、Dr」
歓迎される形となったシンは、笑みを浮かべながらDrに近づく。
「相変わらず綺麗好きですね」
かねてからDrと親交があったシンは、何時訪れても綺麗に整頓されている部屋に率直な感想を述べる。
先入観から来るのかも知れないが、彼にとってMSの研究室というのはもっと雑多な部屋だという
イメージがあったからだ。
「そうか?あまり気にした事がないが」
そんなシンの感想に対し、Drは「よく分からない」と言う様に首を傾げる。
(うっ!)
子供にしか見えない容姿の持つDrのその動作を見て、シンは思わず「かわいい」と感じるが、
決して口に出さない様努力する。
仮にもモルゲンレーテ社MS開発部門主任に対し面と向かってそんな事が言えるほど、シンは図太くない。
(最初に会った時はメチャクチャ失礼だったからな…)
初めてDr・Kと出会った際、本気でジュニアスクールの生徒だと思って話しかけてしまった時の事を思い出し
思わず頭を抱えるシン。
「どうかしたのか?」
急に頭を抱えたシンを不思議に思い、眉を顰めるDr。
「い、いえ!別に…その…?」
話しかけられ慌てて首を振ったシンは、何か別の話題に逸らそうと部屋の中を見渡すと、
部屋の一角に綺麗な部屋には似つかわしくない『ある物体』が置いてある事に気が付いた。
「あの、Dr?」
「ん?」
「あ、あの人…大丈夫なんですか?」
「ああ、あれか?」
白い所が全く残っていないまるでボロ雑巾の様な白衣を身に纏い床に転がっている物体、
サイ・アーガイルの姿に心配そうな声を上げるシンに対し、
まるで道端に転がる小石を見るような目で一瞥するDr。

 

「あれなら大丈夫だ。昨日からの徹夜で疲れていて、ああやって仮眠を摂っているんだ」
「…………」
「あの、イビキどころかピクリとも動きませんけど…それに何であんな部屋の隅で仮眠を?」
「奴はMSの研究をしすぎてちょっと頭を…な。
 ああやって部屋の隅にある『シミ』と交信するのが唯一の楽しみなんだ……
 まぁ暖かい目で見守ってやってくれ」
「は、はぁ……MS研究者って大変なんですね…」
(………不幸だ)
可哀想な人を見る視線を背中に感じながら、世の理不尽さにむせび泣くサイを放ったまま、
Drはシンの方を向き直る。
「処でシン。今日も『いつもの』手伝ってくれないか?」
「いつもの、ですか?」
Drの言葉にシンは困ったように頭を掻く。
「すみません、仕事の途中で抜けて来ているので時間が」
「安心しろ、アスハへの連絡ならもう入れてある」
「えっ、ホントですか?」
「ああ、本当だ」
部屋の隅で「うそだ…」と掠れた声が響いたのだが、残念ながら大きく頷いたDrの声にかき消され、
シンの耳には聞こえなかった。
「それなら大丈夫ですよ」
「そうか、なら早速準備してくれ」
安心した様に頷くシンを見てDrは満足そうに微笑むと、シンを連れてサイが居る壁とは反対の壁に
設置された扉へと向かう。
Drの研究室と直結で繋がるもう1つの部屋。
それは、MSのコックピットブロックをむき出しにして設置したような機械、
MSの操縦を疑似体験できるシミュレーターが置かれた一種のシミュレーションルームであった。
「うれしそうだな」
嬉々とした様子でシミュレーターに乗り込むシンに対し、Drも微笑を浮かべながら話しかける。
「はい!実はこれに乗るの楽しみにしてたので」
「そうか、それは何よりだ。今日は7-Aから8-Dの間でランダムに選出するぞ」
「了解です!」
Drの指示に手馴れた様子でシミュレーションの準備をするシン。
そして、3分後…
『準備はいいな?ミッションスタート』
シンの目の前には、本物となんら変わることのない青空、海、
そして連合軍のMS・ウィンダム小隊の姿が映し出される。

 

『いつもの』…それは、こうしてシミュレーターを使ってシンのMS操縦のデータを採取する事であり、
一年ほど前から続いていた。
何故「一般人」の自分のデータが欲しいのか最初の頃は疑問に思っていたシンであったが、
ある意味下手なゲームなど比べものにならないリアルさと難易度を持つシミュレーターを、
今ではレクリエーションの一種の様な心境で楽しんでいた。
「……始まりましたね」
何時の間にか復活したサイが、シミュレーターの横に置かれた端末の前に陣取った
Drの横へと移動し声を掛ける。
しかしDrの視線は目の前の端末と繋がる、シミュレーター専用のモニターに釘付けとなっており、
サイには見向きもしなかった。
(相変わらずだなぁ、この人は…)
Dr・K、彼女は生粋のデスティニー信者であると同時に、シンに対しても只ならぬ入れ込み具合を見せていた。
それは彼がデスティニーのパイロットだったからなのか、
それとも『シン』という彼個人に対してのモノなのかは判断の難しい所であるが、
モニターに映るシンの横顔を見つめるDrの姿は、まるで近所に住む優しくてカッコいいお兄さんに
憧れを抱く少女を見ているようだ。
もっとも見た目はともかく中身的には、いい歳して美少年アイドルグループに熱を上げるオバサ…
「ひぎぃ!?」
突如左足を襲った鈍痛に、情けない声を上げるサイ。
「いきなり何をするんですか!?」
「気にするな、今一瞬無性に腹が立っただけだ」
ぴょんぴょん跳ねながら抗議するサイに対し、不自然に突き出された右足(特注上げ底スリッパ装備)を
元の位置に戻しながらDrは答える。
無論、視線はモニターに注がれたままだ。
「気にしますって!」
地の文を読まれた事に内心焦りながら、抗議を続けるサイ。
そんなコントのようなやり取りを2人が続ける間にも、シンは順調にシミュレーションを続けていく。

 

「ふむ…やはり凄いな」
次々とモニターに映し出される数値、搭乗者の操縦技術をリアルタイムに表すスコア表に
目を通したDrは感嘆の声を上げた。
「現役時代とは比べ物にならんが、それでも十分エースパイロット級の動きをしている」
「そうですね。記憶を無くしてこれだけの動きが出来るなんて…」
「興味深いのはそれだけじゃない」
そう言いながらDrが手元の端末を操作すると、モニターに先程よりも細かく分類されたスコアが表示される。
「これは?」
「シンのシミュレーション結果をミッション別に表した物だ」
シミュレーターにはより多くのデータを採取できる様、様々な戦況や地形がミッション別に用意されており、
当然選ぶミッションによってその難易度が変わってくる。
先程、Drがシンに伝えていた番号がそれだ。
「これを見る限り、シンはミッションの難易度が高ければ高いほど操縦技術が向上している。
 より正確に言うと、敵が強ければ強いほど…劣勢な状況に置かれれば置かれるほど
 真価を発揮しているんだ。それらの中でも突出して評価が高いのが……これだ」
「!このミッションは…」
モニターに映し出されたミッション名と設定された戦況にサイは息を呑む。
『Mission 12-B』
動く事ができない母艦の護衛を行いながら襲い来る敵軍中隊…
空母艦2隻、僚艦4隻、MA1機、そしてMS30機を撃退せよ。
お涙程度の援護射撃はあるものの実質1人で戦わなければならないという難易度があまりにも高い
このミッションは、MS操縦訓練にこのシミュレーターを採用しているオーブ軍内部においても
クリアした者は居ないと言われている。
しかし一見無謀に思えるこのミッションだが、
実は実際に起こったある戦闘を基に設定されている事をサイは知っていた。

 

「オーブ沖における地球連合軍とシンが所属していたミネルバ隊との間に起こった戦闘、
 結果的にはミネルバ側の勝利に終わり、シン・アスカとインパルスの名を一躍有名にさせた戦いでもある。
 Mission12-Bはこの戦闘をベースにして設定されたわけだが、
 先日シンはこのミッションをかつての自分とほぼ変わらない戦果でクリアした」
「クリアした!?」
Drから放たれた言葉にサイは衝撃を受ける。
少なくとも先程の平均スコアを見る限り、記憶を失った今のシンには
絶対にクリアする事はできないはずだからだ。
「他にも友軍の護衛や民間人の救出といった『何かを守る』為のミッションにおいて、
 シンは常に高スコアを記録している」
「守る?」
「これは現役時代にも該当する事だが、シン・アスカが類まれな戦果を記録した戦いの殆どが、
 戦闘の途中自身の母艦や友軍が劣勢に立たされている。
 つまりシンは何かを守る為に戦った時、その真価をフルで発揮することができるんだ」
「しかし、キラ…フリーダムを撃墜した時は……」
「そうだな」
サイの言葉にDrは肩をすくめる。
「確かに、エンジェルダウン作戦はその例に該当しない。
 しかし、その時のシンの心境を知る術がない今となっては、例外であったという結論しかだせん」
「なる程……」
仮にその時の心境が怒りや憎しみだったと分かったとしても、
それらをシミュレーションで再現する事はできないし、データを採取する事も不可能だ。
それに、真価を発揮するのがどんな時であれ、シンが最強クラスのパイロットであった事は疑いようが無く、
フリーダム撃墜したというのも頷ける。

 

(だけど…)
ここでサイに、以前から薄々感じていたある疑問が浮上する。
シン・アスカが世界最強クラスのパイロットであることは分かった。しかし、
「何故彼は、彼はアスランに負けてしまったんでしょう?」
大戦終盤、シンはアスラン・ザラの駆るIジャスティスと2度対峙し、敗北している。
確かにIジャスティスは一対一に強い機体であり、(セイバーに搭乗していた時分はともかく)
アスランもまた世界指折りのエースパイロットであった事は疑いようの無い事実だ。
しかし記録によると戦争終了直後、Iジャスティスはほぼ無傷のままエターナルに帰還している。
いくら何でも、この様な事が起こり得るだろうか?
(やはりデスティニーがけっかん…)
「イタタタタタ!?」
今度は左足を思い切り踏み付けられ、悶絶するサイ。
「お前今考えてはならない事を考えていたな」
「素で人の感情を読むの止めてくれませんか!?」
サイの左足から自身の右足を退けたDrは、大きく溜息をつく。
「確かに私は、百歩譲ってデスティニーが欠陥機であった事を認めたが、
 それだけであんなリフターが無ければ飛ぶ事すらままならない、
 ゴテゴテマゼンタMSに大敗するわけないだろう」
「ゴテゴテしてるのはデスティニーも同じ…アイタタタタ!?」
「あの戦いはデスティニーがジャスティスより弱いとか、アスラン・ズラがシンより強いとか、
 そういう話じゃない。もっと別の次元の問題だ」
「ザラです、Dr……と言いますと?」
踏み付けられていた左足を庇いながら尋ねるサイ。
「お前はさっきまで何を聞いていたんだ?」
するとDrは多分に蔑みの感情を込めた、「このゾウリムシが…!」とでも言いたげな視線をサイへと向ける。
「えっ?」
「パイロットの事をMSの部品か何かと同列に考えて居るだろう?だから分からないんだ」
そう言うとDrは再び端末を操作し始める。

 

「これは…?」
それから数秒後、サイはある異変に気付く。
モニターに映るシンの顔色が険しくなり、操縦桿を握る手の動きが目に見えて鈍くなったのだ。
それに比例するかのように、スコア表の数値も見る見るうちに減少していく。
「難易度を上げたんですか?」
サイの質問にDrは首を振る。
「いや、私が弄ったのは視覚に関る部分だけだ」
「視覚?」
「先までシンの目に映っていた敵機はウィンダムやゲルズゲー等、
 対地球連合軍を想定してプログラムされた物だった。
 それに対して今シンの目に映っている敵機がこっちだ」
Drに促されたサイは、部屋に設置されたもう1つのモニターへと視線を向ける。
シンが操るシミュレーターのメインカメラの映像を表示しているのだろう、
モニターの映像は上下左右、360°絶え間なく動き回り、長時間眺めていると吐き気を覚えそうだ。
しかし高速で動き回る映像の節々で、サイは見覚えのある機影を見つける事に成功した。
赤と白を基調にし、頭部にV字アンテナを持つ可変式MS…
「ムラサメ?」
「そう、シンが戦っているMSはムラサメやM1アストレイ……
 つまり今シンはオーブ軍と敵対している様に感じているわけだ」
「はぁ…しかし、何故これでシンの動きが鈍くなるんです?」
「今のシンにとって、オーブ軍は『守る』立場であり『守られる』立場でもある。
 何かを守る時に最も真価を発揮するシンにとって、『守るべきもの』と敵対するというのは
 それだけで大きな足枷となるんだ。
 これの他にも、MSを持たない弱小ゲリラの殲滅戦や暴動の鎮圧など、
 対人戦を想定したミッションでは軒並み動きが悪かったからな」
「力の無い者、だからですか」
「ルナマリアの話が正しければシンは、力が無い者を守りたい、という理由でZAFTに入隊したのだからな。
 それが逆の立場になってしまえば、動きも鈍くなるさ」
『守る』為の戦いでは無類の強さを発揮し、逆に『奪う』側に自分が立つと極端に脆くなる。
軍人としては些か…いや、致命的なまでに感じやすい体質であると言えるが、大戦当時若干16歳、
しかも入隊するギリギリまで戦争とは無縁と思われていたオーブで暮らしていた事を考えると
致し方ないのかもしれない。
「ジャスティスに負けたのも、その所為だと?」
「そうだ。デスティニーの初陣でもそうだった様に、本来シンは味方を本気で討つなんて真似が出来るほど
 『染まっちゃ』いない。例え相手が裏切り者の蝙蝠男であろうとな」
「何かアスランに恨みでもあるんですか?」
「しかも1度は自分の手で殺めてしまったと思っていた元上司だ。
 そんな男からやれ「過去に囚われて戦うのはやめろ」とか
 「お前が欲しかったのは本当にそんな力か」とか訳のわからない言葉で惑わされれば、
 すでに精神的に限界が来ていたシンが惨敗しても無理はないだろう」
「……なるほど」
Drの説明を聞いたサイは感心して頷く。
何故Drがアスランの言った説得紛いの言葉まで知っているのかは知っているのかは置いておくとして、
かねてから喉に刺さった小骨の様に気になっていた疑問の1つが解決したことにサイは満足していた。

 
 

結局、1時間程シミュレーターに乗り続けたシンは「もう少しだけ」と制止するDrの言葉を丁重に断り、
惜しまれつつも研究室を後にした。
「Dr、これ読まないんですか?」
終始シンから可哀想な人を見る目で見られていたサイは、
シンが去り際に置いて行ったカガリからの手紙を手に取る。
「ん~?」
Drはというと、シンが手紙を渡そうとした時は快く受け取っていたのに対し、
彼が居なくなった途端興味が失せた様に再び寝る準備に入っている。
「あの脳筋娘からの手紙だろう?読む気が起きん」
「またそんな事言って」
「だったらお前が読め」
「はぁ、まったく……?」
身も蓋もないDrの言葉に、サイは溜息を付きながら手紙の封を開ける。
そして面倒くさそうに手紙の文面に目を通した始めたサイであったが、その途中で顔色が変わった。
「Dr…本当に読んでいいんですか?」
「ああ、さっさと読め」
念を押すように聞き返すサイに、視線を向けることなく答えたDrは
白衣のポケットからキャンディを取り出す。
「では……
 『先日、プラントから私宛に連絡が入った。
  内容は、私を介してモルゲンレーテ社に依頼していた次世代量産型MSの
  開発状況を知りたいという類のものだ…』」
「ほぉ」
「『だがDrも承知している通り、次世代MS・スサノヲをオーブとアメノミハシラ以外に流通させるのは
  もっと先にする予定だ。その為、プラントには開発は難航し、プロトタイプすら完成していない、
  という返答を行った。
  しかしその結果、プラントはラクスとキラの名前まで使い、
  開発途中のプロトタイプで良いから実物を見たい、と言ってきた』」
「ふん、向こうからすれば当然の反応だろう」
サイの読むカガリの手紙の内容に、Drは鼻を鳴らしながらキャンディの包み紙を開く。
「それで、そんな事を私に愚痴ってどうするつもりなんだ?あの脳筋娘は……」
そして、包み紙の中から現れた水色のキャンディをゆっくりと口元へと運んでいき、

 

「『そこで、お前が私に隠れて今まで開発してきたと思い込んでいる『オモチャ』を、
  一時的にプラントに持っていく事になった。じゃ、そういう事で
                               カガリ・ユラ・アスハ』」

 

「…………」
「『P.S. 戻ってくる日取りは決定していないからそのつもりで』……だ、そうです」

 

「…なん…だと……?」
口の中へと到達する前に、手元から滑り落ちた。

 
 
 
 
 

Turning Select

「……そろそろか?」
執務室で書類へと目を通していたカガリは、部屋に置かれたアンティーク風の時計を眺めながら呟く。
そろそろ自分からの手紙に目を通したDrから抗議の電話が来る頃だろう。
いや、もしかしたら直接こちらに向かってくるかもしれない。
もっとも、彼女のわがままを一々聞いてやるほど自分はお人よしではないし、
元々Drの方がスサノヲの開発費を横領して自分の趣味に使っていたのだから、
あまり強くは出られないだろう……Drにそういった感覚があればの話だが。
「はぁ…まったく」
Drにも困ったものだ、とカガリは溜息を付く。
見た目と性格はともかく、MS開発に関する彼女の頭脳は本物だ。
その為、他の国に取られないよう今まで自由にやらせて来たのだが、少々好き勝手やらせ過ぎたようだ。
今回の件はそんなDrに対するお灸の意味も含めている為、彼女に何を言われても取り消す気は毛頭ない。
そんな事より、カガリには今考えるべき事柄があった。
「さて……どうするかな」
カガリが見つめるパソコンのモニターには、あるメールの文面が映し出されていた。
送り主はカガリ・ユラ・アスハの弟にしてラクス・クラインの恋人、
世界で唯一人のスーパーコーディネーターにしてフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトである。
メールの内容自体は当たり障りの無い世間話と言っていい。
しかし、追伸として書かれたある一文が、プラントからの新型MSの催促以上にカガリの頭を悩ませていた。
その内容とは…

 

「『そろそろ、シンをプラントに遊びに来させてあげても良いんじゃないかな』だと?
 しかも、こっちの返事も聞かずに日程まで組んで…」

 

私の弟はここまでフリーダムだったろうか?
先程から鳴り響く自身の携帯電話をナチュラルに無視しつつ、
カガリはプラントのオーブ大使館へと繋がる電話へと手を伸ばした。

 
 
 
 

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