Z-Seed_◆x/lz6TqR1w氏_第04話『イミテーション』

Last-modified: 2007-11-12 (月) 12:30:49

「カガリ……大丈夫か?」
「ああ、問題ない」

ミネルバのMSデッキに着艦するMS――ザクウォーリアのコックピットには二人の若い男女の姿があった
会談先での騒ぎに巻き込まれ、難を逃れるためにこれに乗り込んだのだ
しかし、運悪く騒ぎの張本人たちに目を付けられ、援護を受ける形で、ここ、ミネルバに逃げ込んだのである
昇降ワイヤーに足を掛け、女を抱き締める形で地に降り立つ男――アスラン・ザラは複雑な心境であった
再びザフト艦の敷居を跨ぐとは思ってもなかったのだから無理は無い
見渡す先には、懐疑的な目でこちらを見つめる人だかりがあった

「アスラン?」

傍らの女――カガリ・ユラ・アスハは、いぶかしげに顔を覗き込んだ

「いや、なんでもない。それと、俺は『アレックス』だ」
「あ、ああ。アレックス」

世を逃るための偽名を念押しすると、カガリは慌てて訂正した

「貴方、なぜこの機体に乗っているの!?」

足を人工の地面に下ろすと、真っ先に赤髪の女兵士が尋問してきた

「緊急事態を回避するためにやむなく搭乗した。こちらはオーブ代表のカガリ・ユラ・アスハ
俺は随人のアレックス・ディノだ」
「……って、代表ですか!?」

ルナマリアが驚嘆した時だった

「うわっ!?」

倒れそうになったカガリをアスランは両手で抱き止めた
艦が振動を始め、足下がおぼつかなくなったのだ

「この艦……どこに行くんだ!?」

強い語勢で問いただすアスランに、面食らったようにルナマリアは答える

「どこって、強奪部隊の追撃ですけど……」「……そんな……」

アスランは歯噛みする――逃げ込んだ先は、戦場行きのバスだったのだから
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機動戦士ZガンダムDESTINY
第04話『イミテーション』

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「ったく!なんだあの男は!!」
自室にてストレスを物にぶつけるシン
あの騒ぎのおかげで、挨拶どころではなかった

「カリカリするな」

これでは玩具を買ってもらえない子供と同じではないかとレイはレイは辟易していた

「気分転換でもしよう。俺の機体のザクファントムの調整を手伝ってくれないか?」
「……ああ、わかった」

破壊衝動が治まったのか、踵を返して部屋を出るシンの後ろ姿を、レイは見つめていた

「先が思いやられるな……」

溜め息を一つついて後を追い掛ける。
アカデミーの同期という関係上から慣れているとはいえ、
シンの癇癪は問題である
これからもカミーユと衝突を繰り返して行くと想像すると身の毛がよだつ思いだった

MSデッキに着くと、辺りがざわめいていることに気が付いた。
多少は気になるが、今はそれどころではない
先着がいたのだ――間の悪いことにカミーユ・ビダンだ
カミーユは、少しだけ表情を曇らせながら此方へ近付いてきた
それを見たシンが身構える
「……なんですか?」
「さっきは言い過ぎた。済まない」

予想外の謝罪の言葉にレイは安堵した――相手は大人だったのだ

「別に……」

対照的に、シンは戸惑っていた

「俺は、名前にちょっとコンプレックスがあって……
克服したつもりだったんだが、
つい古傷がうずいてしまったんだ」

カミーユから謝罪の握手がさし延べられ、
不満げながらもシンはそれに応じた
二人の手が離れたとこれで、レイは疑問を投げ掛けた

「ところで、騒がしいようですが、何かあったのですか?」
「ええと、君は……」
「レイ・ザ・バレルです。ザクファントムのパイロットであります」
敬礼するレイにカミーユも応えた

「さっきオーブの代表が着艦したらしいんだ。今はブリッジにいるらしいが……」

カミーユの言葉に、明らかに表情が強張るシン

「なんでアスハが……!?」

その理由は二人には理解出来なかった

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「流石、綺麗ごとはアスハのお家芸だな!!」

シンの叫びがデッキに木霊する

――事の顛末は、カガリの『平和』への理想論が原因だった
それに猛反発したシンが怒りに声を荒げたのだ――

「シン、止めろ!」

見かねたカミーユが制止に入った

「うるさい!」
「自分の立場をわきまえろ!今すぐ代表に謝るんだ!」
「嫌だ!」

脱兎の如くその場を離れるシンを、カミーユはカガリに一礼してから追い掛けた

――走る――無重力とはいえ、床を蹴る作業は疲労の蓄積をきたす
「待てよ!」

カミーユは、全力で走った甲斐あって、シンの腕を捕まえることに成功した
シンは怒りに顔を歪めている

「あんたには関係無いだろ!?」

シンの姿に喚起されたのだろうか
一瞬、カミーユの頭の中で、まるで走馬灯のように
過去の記憶がよぎった

「……お前を見てるとな……イライラするんだよ!
昔の俺を見ているようでな!」
「はぁ!?」
「いいか、よく聞け!
一人前になりたかったら、
精神的にも強くなるんだ!わかったな!?」

カミーユはシンの腕を乱暴に離し、そのまま去っていく
残されたシンは、その言葉の意味が理解できず、
また、理解しようともしなかった