Zion-Seed_51_第二部第4話

Last-modified: 2008-06-09 (月) 21:06:32

 L1宙域での戦闘は、敵艦一隻を取り逃がしたとはいえ、第六艦隊が勝利したと報道された。しかし、突如
現れたガルバーニの攻撃を受け、アサクラ司令が乗っていたザンジバルが撃沈。この他にもチベ級、ムサイ級
を合わせ九隻の艦艇が犠牲となった。テロリストを殲滅したにはあまりに大きな痛手である。
 作戦を終え、プラントに戻って来れたのはザフト艦隊の四隻のみであった。ガルバーニは第六艦隊に攻勢を
かけたが、ザフト艦隊には手を出さなかったのだ。
 この事態を受けた宇宙軍高官はレイ・ユウキ大佐等を出頭させた。そして査問という名の追及を受けさせた。
この中には、アスランとニコルも含まれていた。

 

「しかし、どうして僕達も査問を受けることになったのでしょう?」

 

 二人の査問は比較的早く終了した。二人はパイロットだったが、第六艦隊に配属されて直の事件だったので、
ザフト残党軍と内通しているのではないか、といういらぬ嫌疑を掛けられたのである。もちろん二人に限って
その様な事はないが、生き残ったのがザフト艦隊のみという不利な事情もあった。そして――

 

「……俺が居たからだろう」

 

 そしてアスランが居たこともあった。彼はあのパトリック・ザラの息子であるのだ。世間から売国奴扱いを
受けてはいるが、当時のプロバガンダ“英雄アスラン”は馬鹿には出来ない。事実プラントには彼に同情する
者もいる。ボタンを掛け違えた場合、彼が残党軍を率いることはありえた。

 

「ニコルは俺のとばっちりを受けただけだ」
「あ、えっと……」

 

 ニコルは、不用意な自分の発言がアスランの傷に触ってしまったことで、慌てて話を変えようとする。

 

「結局なんだったのでしょうね、あの艦?」
「……あのローラシア級の事か?」
「はい。査問会でも散々問い詰められましたけど……」

 

 突如現れたガルバーニによる奇襲攻撃。幾らアサクラ司令が技術将校とはいえ、あそこまで接近に気付かれ
なかったのは、ミラージュコロイド並のステルス能力を有していなければ不可能である。しかし、ガルバーニ
は老朽艦であり、その様な技術は組み込まれていない。艦を改修したと考えるのが妥当だが、ザフト残党軍に
そんな技術力はない。彼等は脱走兵の集まりで技術者は少ない。高度な分野になれば専門職の力が必要になる。
目ぼしい技術者は皆、ユーリの下で働いており、抜け出した者はいない。

 

「第一、あいつ等に艦艇一隻を改修するドッグはないだろう」
「そうですね。あの老朽艦にミラージュコロイドを取り付けるとなると、専門家以外にそれなりの施設が必要
になります。彼等に投資する組織があれば別でしょうが、そんな物好きいませんし……」

 

 その着の身着のまま脱走した彼等を庇ったところで得られるものなど何も無いのだ。

 

「そうだ。ザフト残党軍じゃなかったとしたら?」
「それは無いだろう」

 

 元々ミラージュコロイドは連合の技術だ。連合がザフト残党を名乗って、ジオンに攻撃をしてきたとすれば、
辻褄はあう。しかし、そうなるとガルバーニを何処で手に入れたかという疑問が生じてしまう。

 

「やっぱり、支援している組織があるのでしょうか?」

 

 その答えは、二人がタクシーに乗った所で知る事が出来た。二人を乗せたタクシーが指示した場所とは違う
方向へ走り始めたのだ。方向の違うことに気付いたアスランは、運転手に声をかけた。しかし、運転手はその
声を無視する。更に問い詰めると、彼は静かに言った。

 

「おい、聞いているのか!?」
「アスラン・ザラ。それにニコル・アマルフィ。手荒な事は致しません。暫しの時間を頂きたい」

 

 アスランとニコルは顔を見合わせた。そして再び運転手に問い詰めたが、彼はもう話す気はないのか、その
後一言も話さず車を走らせるのだった。
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――――第2部 第4話
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 ペンキの剥げかけた看板がかかる取り壊しが決まったコンサートホールに、アスランとニコルの二人は連れ
て来られた。『ホワイト・シンフォニー』――そこはラクスが初めてコンサートを開いた、オクトベール市に
あるホールである。
 二人の背後から、運転手が拳銃を突きつけて進むよう指示する。

 

「手荒な事はしないんじゃなかったのか?」
「もしも……という場合がありますので」

 

 皮肉を交えつつ、アスランは相手が何者なのかを考えた。自分とニコルがプラントに戻り、査問会を終えた
タイミングで自分たちを拉致するとなると、自ずと正体が見えてくる。
 それは査問会に呼ばれたことを知っている者。真っ先に思いつくのがジオン軍関係者だ。しかし、聞きたい
事があるなら査問会で聞く筈だ。非公式な場所を選んだ可能性もあるが、その為にわざわざシャトルをついで
オクトベール市のホールまで来る必要はない。そうなると残る可能性は……。
 古くなったドアの前まで来ると、中に入るよう男が促す。アスランはドアをそっと開け、真っ暗なエントラ
ンスホールに入る。閉鎖されてどれ位経つのだろうか。床には埃が厚く積もり、歩くと割れたガラスが足元で
小さな音を立てた。かすかに、歌が聞こえてくる。
 まさかという思いがアスランを貫いた。彼は早足になり、ホールへ続く防音ドアを押し開けた。

 

 だが次の瞬間、歌声はプツリと消えた。そして舞台にスポットライトが灯り、廃墟を模したセットが照らし
出される。その舞台の上に一人の人物が立っていた。アスランとニコルはその人物に僅かに気圧されたように
身を引く。

 

「久しいなアスラン、ニコル」

 

 そこに立っていたのは嘗ての上官、ラウ・ル・クルーゼであった。
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               *     *     *
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「クルーゼ隊長! どうして貴方が!?」
「私がここに居ることが不思議かな?」
「だって……あの歌声は……!?」
「ああ、知人から借りた歌姫のCDを、暇つぶしに流していただけだ」

 

 どうやらからかわれた様だ。その悪びれない態度にアスランはかっとなるが、冷静さを失ってはクルーゼと
話すことは出来ない。アスランはその事を自分に言い聞かすと、自分たちを拉致した事を問い詰めようとする。

 

「……どういう事ですか、これは?」
「それはこの場所への招待か? それとも、先日の戦闘についてかね?」

 

 ――やはり。
 先日の第六艦隊襲撃はクルーゼによるものと確定した。
 アスランは更に問い詰めようとするが、クルーゼがそれを遮って口を開く。

 

「君が査問会に呼ばれるとは……どうやらジオンは相当君たちが嫌いらしいな。奴らのやり口は判っているよ、
アスラン。ジオンは腐っている。君がプラントを救いたいのなら、私の仲間になれ」

 

 クルーゼの誘いに、アスランは顔を顰めて逸らせてしまった。それを見たクルーゼは嫌らしい笑みを浮かべ、
今度はニコルへ目標を変える。

 

「ニコル、私のところにくるがいい。ジオンは君が仕える価値のない国だ。このままではプラントに住む者達
は虐げられ、差別され続けるだろう。君はそれでいいのか?」
「……よくありません」
「だろう。ならば私に……」
「お断りします。隊長のやり方には共感できません」

 

 ニコルはクルーゼの誘いに拒否を示した。あの戦闘時、クルーゼはザフト残党が壊滅してから姿を現した。
始めから彼らを助ける気はなく囮として利用していたのだ。敵とはいえ、同じコーディネイターを騙す手法に
ニコルは看過できなかった。
 しかし、彼にとってニコルが誘いに乗らないのは予想済みだった。ニコルの父ユーリは、今はジオン軍MS
開発局長だ。立場を考えれば、現状でも文句はないのだろう。

 

「……愚かだなニコル・アマルフィ。アスラン、君も同じ考えなのか?」

 

 突然、話を振られたアスランは黙ったままクルーゼを見た。
 クルーゼの言う事は、アスランにも理解できる。プラントでは秘密警察による監視、先の戦闘では同胞同士
の殺し合い、謂れの無い疑いをかけられた自分たち。確かにクルーゼの言う通り、ジオンは元ザフト兵を都合
のいい便利屋として使っている。この流れは誰かが変えなくてはいけないのかもしれない。

 

「隊長の言う事は分かります。ならば価値のある国に変えるべきだと思うのです。ジオンの中から」
「変える?」
「間違った方法で手に入れたものに価値はありません」

 

 強い非難の言葉にクルーゼの顔色が僅かに代わる。

 

「ならばジオンはどうなのだ? 奴らはプラントを併呑したのだぞ」
「ジオンから仕掛けたのなら、それは侵略戦争でしょう。でも、ジオンとプラントの戦争は、プラントが先に
宣戦布告したんです。その結果負けたのです」

 

 確かに彼らは嘗ての仲間だ。彼らの思いも理解は出来る。状況が状況なら自分も賛同していたかもしれない。
 しかし、戦争はもう終わったのである。ジオンが勝利し、プラントは敗北した。それもぐうの音も出ない程
の完璧な敗北。いかにコーディネイターとはいえ、愚かにも見切り発車で戦争を始めたプラントは、ジオンの
支配下にされてしまった。
 最早自分たちに出来る事は、ジオンと協力し、戦後復興に勤めるしかない。アスランはそう考え、売国奴の
汚名を着せられながらもジオン軍に入隊したのである。

 

「自業自得とでも言うのかね? だとしても些か妙な事があるぞ」

 

 それでもクルーゼは口調には若干の余裕があった。

 

「ザラ議長の自決」
「……」
「タカ派で知られるザラ議長が戦争終結の為に自決するなど、あまりにも不自然とは思わないかね、アスラン。
もしかしたら、自決というのはジオン側が流したブラフで、真実は暗殺かもしれんよ」

 

 アスランにクルーゼは突きつけるように言った。確かにパトリックの死は不自然すぎるものだ。それはあの
場にいた誰もが感じることだろう。横に居るニコルも、あの場にいた父ユーリの様子から、パトリックの死は
ジオンの暗殺によるものではないかと考えている。

 

「父親の死の真相を知ってもなお、ジオンに組するというのか?」

 

 パトリックが亡くなってから、アスランには変化が生じていた。母親レノアの敵を討とうとザフトに入った
彼は、ユニウスセブンを地球に落としたジオンを恨んで当然なのだ。それにも拘らず、今は世間で言う売国奴
と呼ばれながらもジオンに属している。
 パトリックの死は、アスランにとってトラウマになっている。そう考えていたニコルは、クルーゼの言葉に
アスランが靡いてしまうのではないかと、肝を冷やした。しかし、それは早合点であることをニコルは知る。

 

「……クルーゼ隊長、その説得の仕方はダメですよ」
「なに?」

 

 次の瞬間、機敏な動きで背後に居た運転手に殴りかかった。

 

「ニコル!」

 

 声と共に男から奪った拳銃を投げ渡す。ニコルはそれをクルーゼに向けた。クルーゼは二人の行為に、落ち
着いた声でどういうつもりなのかを問い質す。

 

「これは何の真似かな?」
「ラウ・ル・クルーゼ。貴方を逮捕します。貴方のやったことは、プラントの危機を徒に煽るだけです」
「アスラン、君は父親の死の真相を知りたくは無いのか?」
「……真相なら既に知っている」
「なに……!」

 

 この発言は予想外だった。さすがのクルーゼも目を見開く。だがニコルも驚いたのか、一瞬顔をアスランに
向けてしまった。殴られた男が懐からナイフを取り、ニコルの手にした銃を弾いたのだ。

 

「なっ……!?」

 

 男はクルーゼにアスランと距離を取るよう促す。クルーゼもこれ以上の説得は無駄だと判断、逃げに転じる。

 

「待て!!」
「アスラン! ラクス嬢とは近頃どうかね?」
「何の話だ!!」

 

 ラクスとはアスランが地球に降りてから会っていない。プラント敗北後、一度だけクライン邸を訪ねたが、
そこは変わり果てていた。ジオンの官憲の手によって隅々まで捜索された後だった。主であるシーゲルは戦争
犯罪者として逮捕されており、残ったラクスは行方不明になっていた。

 

「彼女は私の組織に居る……」
「なんだって!」

 

 足元が抜けるような衝撃だった。

 

「いや、言い直そう。私が彼女の作った組織に居るのだ」
「ッ!! 貴方はラクスの命令で動いているのか!?」
「その通りだアスラン。君たちを勧誘に来たのも、彼女のたっての希望でね」

 

 パトリックの事を問われても冷静でいられた彼が取り乱す。
 ラクスがそんな事をする筈がない。アスランの知る限り、彼女は世間知らずのお嬢様で、平和なプラントで
安穏とした生活をしていた。そんなきな臭いことに加担しているわけがない。

 

「嘘だ! 隊長……いや、クルーゼ! 貴方がラクスをかどわかしたのか!?」
「信じられぬのも理解できるが、残念ながら本当なのだよ。彼女の願いと知った上で今一度考えてくれたまえ。
勿論、ニコル。君もだ」

 

 クルーゼは笑みを漏らし、踵を返す。二人は直に後を追うが、走り去っていく男の哄笑を聞くしかなかった。
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               *     *     *
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 クルーゼを取り逃したアスランとニコルは、国防委員会本部まで戻ってきた。艦隊襲撃犯がユウキではない
事を宇宙軍に知らせる為だ。
 ところが二人が国防委員会本部に着くと、まだ査問を受けている筈のユウキに建物の前で出くわした。

 

「ユウキ隊長!」
「アスラン・ザラ中尉、それにニコル・アルマフィ少尉。君たち、査問はもう終わったのでは?」
「それよりも聞いてください!!」

 

 アスランとニコルは先のやり取りを包み隠さず話した。犯人がクルーゼである事、そしてラクス・クラインが
その組織に関与している事を言った。ラクスの関与にはユウキも表情を変えるが、クルーゼに関しては驚きは
なかった。戦後にクルーゼが行方をくらました段階で、彼がよからぬ事を考えているのではないかとユウキは
推測していたらしい。二人の話を聞き終えると、ユウキはその事実はジオンに伝える必要はないと言った。

 

「実は、査問会の結果は不問で終わったのだ。疑いは晴れていないだろうが、一先ずは無罪放免さ」
「でも、それなら尚更……」
「アスラン・ザラ中尉、切り札はここぞというべき時に取っておくべきだぞ」

 

 ユウキは周囲を伺いながら声を潜めてそう言い、二人と分かれるのだった。
 立ち去ったユウキを後に、アスランとニコルは軍の宿舎に向かう。途中、ニコルがアスランを気遣うように
声をかけてきた。

 

「アスラン、ラクスさんの事はどう言っていいのか」
「彼女がクルーゼ隊長と一緒にいるのには驚いた。でも、俺は大丈夫だよ」
「まさか組織の長なんて……」

 

 ニコルの呟きに、アスランは黙り込む。そしてラクスの事を考えた。あのラクスが、誰よりも平和を愛する
彼女が、テロリストに興じるとは……。
 しかもあのクルーゼと共にだ。シーゲルが逮捕され、パトリックが亡くなった今、婚約は破棄されている様
な物だが、それでもアスランとしては彼女の真意を知りたかった。

 

「そういえばアスラン。あのブラフはお見事でした」
「何の事だ?」
「ザラ議長自決の真相ですよ。ああ言えばクルーゼ隊長も気を取られるでしょうから。貴方の咄嗟の判断力に
は脱帽です」

 

 感心するニコルに、アスランは複雑な表情をした。

 

「あれはブラフじゃない」
「えっ?」

 

 アスランは一瞬考えると、ニコルなら話しておくべきだと思い立った。

 

「パトリック・ザラは……俺が殺したんだ」
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               *     *     *
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「世間知らずのお姫様の遊びは、まだ済みそうにないな」

 

 一方のクルーゼは、アスランの説得に失敗した事をラクスにどう説明しようかと頭を悩ませていた。

 

「お飾りの人形とはいえ厄介なものだ」

 

 ラクス・クラインは「平和を訴え続ける歌姫」だが、それはマルキオ導師によって与えられた立場であった。
彼女はあくまでも錦の御旗であり、実質的な権限はクルーゼが持っていた。彼はラクスを最大限に利用して、
自分が扱える駒を集めている。
 クルーゼは人類抹殺という目的を持っている。始めはパトリックをたぶらかして目的を果たそうとしたが、
ジオンとも戦火を交えた所為か、次第にコントロールが利かなくなり、最終的には己の自滅という無様な形で
頓挫していた。

 

「あの二人、どのようにしますか?」
「暫らくは放置しても問題は無い。それよりも、今回の一件でジオンどのように動くかな?」
「第六艦隊の壊滅は、痛手となるでしょう」

 

 現在のジオンは、軍の再編と平行して戦力の回復に努めていた。第六艦隊もその一つだが、それが3ヶ月も
経たないうちに壊滅してしまったのである。軍高官にとっては笑えない冗談だろう。

 

「艦隊を再建するには時間がかかります。一時的に、本国の部隊が廻されるかと」
「今動ける部隊となると……」
「ギレン親衛隊です」

 

 ギレン親衛隊――エギーユ・デラーズ中将を長とし、ギレンの優性思想に基づいて構成された特殊部隊だ。
その規模はガルマのものとは違って一個艦隊に匹敵する。通常はジオン本国ないし月面上空の防衛を任されて
いる部隊だが、重要な作戦になると前線に赴く事もある。

 

「親衛隊は優先的に新型機が廻されます」
「フッ……おもしろい」

 

 そのような事は問題ではなかった。クルーゼにとってはジオン内部を混乱させる事の方が重要なのだ。

 

「願わくば、あの男の部隊が来て欲しいものだ」
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               *     *     *
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「隊の様子はどうだ?」

 

 ギレンの執務室。そこでは二人の佐官がギレンと謁見していた。

 

「部下は皆、大佐を慕っております。ヤキンでの失態は、もう起こらないと確信できます」
「まるで自分は慕われていないような物言いだな少佐」

 

 二人とも親衛隊のエンブレムを付け、目の前の最高司令官に向けて直立不動の構えをしている。

 

「さて、第六艦隊の件は知っているな」
「ハッ」
「プラントの防衛が薄まるのは問題だ。そこで貴官の部隊にプラントに行ってもらう」
「了解しました」

 

 戦後、突撃機動軍は解体され、それぞれ宇宙攻撃軍と地上攻撃軍に振り分けられた。その中で唯一ギレンが
自分の手元――つまりは親衛隊に招いた部隊があった。

 

「大佐、マハラジャの娘が配属されたと聞いたぞ。父親を護るなら、彼女の士気も上がるものだ」

 

 その部隊は、専門の研究機関から輩出された人物で構成されており、一人で一個大隊に匹敵する力を持つ。
普通のエースとは比べ物にならない彼らはギレンの目に留まり、親衛隊へと強制的に招かれていた。

 

「親衛隊に入った以上、相応の働きをしてもうぞ、大佐」

 

 大佐と呼ばれた男は不快そうにギレンを見た。彼はキシリアではなくドズルの配下であったが、その部隊が
ギレンの下に付く事を知り、自ら親衛隊に名乗り出ていた。

 

「この身に代えてもプラントを守り抜きます」

 

 それはジオンのトップエース、“赤い彗星”ことシャア・アズナブルだった。