1.
キラはクリスと共に、MSを使い破壊されたモルゲンレーテから物資を搬入していた。
その二人にジンが突入することを知らされ、迎撃を行なうよう命ぜられる。
「なんでですか!? ここは中立なんですよ!」
「さあな。ザフト兵の考えてることなんざ、俺は知らんよ」
キラの問いかけにムウは肩をすくめる。
「俺のゼロと中尉のイージスがオフェンスだ。キラ、だったな。君はアークエンジェルを守れ」
しかしキラは俯いたまま黙っている。
「……自分と同じコーディネイターを撃つことが気になるのか」
「!!」
「安心しな。俺も中尉も、君の素性を話すつもりはないぜ」
連合は基本的にナチュラルが中心の国家である。
それがコーディネイター中心国家のプラントと戦争をしているのだ。
キラの素性が知られたら、拘束される可能性もある。
「君が戦うのは今回だけでいい。後は俺がイージスに乗って、余ったストライクには中尉が乗ってもらうようにする」
クリスもムウの言葉に頷いているが、キラは首を振って叫んだ。
「ぼ、僕は戦争が嫌で、中立のヘリオポリスに来たんです。戦うなんて……」
「いいかキラ! 怖いのは分かる。コーディネイターとはいえ民間人なんだからな。でもザフトはコロニーを破壊するつもりだ。
そうなったら軍人、民間人なんて立場は関係ない! 今ヘリオポリスを守れるのは俺達だけなんだぞ」
「でも、僕は……」
声を震わせるキラに、ムウは語りかけた。
「君はできるだけの力を持ってるだろ? なら、できることをやれよ」
はっとキラは顔を上げると、モニターには優しい表情のムウが写っていた。
2.
上空では進入してきたジンにゼロとイージスが戦っていた。
基本的にゼロのオールレンジ攻撃でジンを釘付けにし、その隙をイージスが撃ち落す戦法だ。
しかしゼロとイージスだけでは全てのジンを落とすことはできず、2機のジンが抜け出した。
それはアークエンジェルを発見すると、艦に向けて大型ミサイルを発射する。
「くっ! 対空砲火!!」
ナタルの指示で弾幕を張るが、ミサイルは次々と迫っていた。
「やめろおぉぉ!」
キラは迫り来るミサイルを57ミリ高エネルギービームライフルで撃ち落す。
そして銃口をジンに向けると、迷わず引き金を引いた。
その一撃はジンの胴体を貫き爆発する。
「なに!?」
僚機を一撃でやられたことに動揺するザフト兵。
その隙を、キラは見逃さなかった。
「うわあぁぁぁっ!」
声を上げながら、アサルトナイフを抜くとジンの頭部に突き刺し、離れ際にライフルを一発撃ってもう1機のジンを撃破する。
息衝ぐ暇もなく、別のMSがストライクに迫る。
そのMSは先刻ゼロと戦っていたMSとは違い、オレンジに塗装されたものだった。
<キラ! キラ・ヤマト!>
「アスラン! アスラン・ザラ!」
<やはりキラ? キラなのか?>
しばし呆然となるキラであったが、爆発音が鳴り、辺りを見渡すと他のジンがミサイルをヘリオポリス中に撃っている。
コロニーを攻撃するザフトのMSと目の前にいるかつての親友に怒りがこみ上がる。
「なぜ……なぜ君が!?」
<お前こそ! どうしてそんなものに乗っている!?>
アスランの方も真意を問いただそうとするが、
「キラ君!!」
クリスの叫び声と共に轟音が鳴り響きコロニーのシャフトが折り曲がる。
地面に亀裂が入り、空気の流出にが始まる。
そしてそれはストライクの足元にも――
「うあぁぁっ――!」
キラのストライク、そしてアスランのシグーは宇宙に放り出された。
――C.E.0071年1月25日、クルーゼ隊が潜入して約6時間後、ヘリオポリスは崩壊した。