概要
2002年4月に「マイクロソフト初の本格RPG」として発売され、
世界中で高評価を獲得した3人称視点・ハック&スラッシュ型の3Dロールプレイングゲーム。
日本でも同年5月に日本語版が日本マイクロソフトから発売され、スマッシュヒットとなった。*1
グラフィックが2Dと3Dという大きな違いはあるものの、
世界中で大ヒットしたBlizzard Entertainmentの「Diablo」(1996)、「Diablo Ⅱ」(2000)からの影響が見て取れる。
「Total Annihilation」(1997)で世界中のRTSファンの心を掴んだChris Taylor氏が監修している。
日本語版のキャッチコピーは「鬼才、クリス テイラーが描く戦慄のロマン」。
本作の特徴
完全シームレスで展開するフィールド
本作では、フィールドを移動したり、建物やダンジョンに入ったり、チャプターをまたいだりする時に、
従来のRPGでは当然のように発生していたローディング画面の発生が一切ない。
なので没入感や緊張感を持続させたままゲーム世界に浸ることができる。
これはゲーム史上画期的なことであり、特に広大なオープンワールドを実装した「ウトラエアン半島」編は、
RPGの新境地を切り開いたと言っても過言ではない。
Bethesda Softworksの
「The Elder Scrolls Ⅱ: Daggerfall」(1996)など、
オープンワールドRPG自体は過去にもあるが、*2
3Dグラフィックで描かれたフィールドが完全シームレスで展開するオープンワールドRPGは、本作が世界初だろう。
スキルツリーに依らない、キャラクター成長システム
キャラクターの成長は、獲得したポイントをプレイヤーが任意で割り振る「スキルツリー」「スキルポイント」方式ではなく、
プレイヤーがキャラクターに取らせた行動によって「接近戦闘」「遠隔戦闘」「戦闘魔法」「自然魔法」という4種類のスキルがそれぞれ成長してジョブ(職業)が変わっていく独自の試みが採用されている。
各スキルレベルはジョブだけでなく「強靭性」「敏捷性」「知性」という3つの重要ステータスの成長とも密接に関連しており、
これによりキャラクターの攻撃力や防御力、ヘルス・マナ量などが変化するほか、
装備可能な武器・防具にも大きな影響を与える。
洗練されたインターフェイスとRTS譲りのシステム
本作の操作方法は一般的なRTSとほぼ同じ。
特にシングルキャンペーンでは、プレイヤーはパーティー(最大8キャラクター)を1人で操作することになるため、
RTSをプレイしている印象が一層濃くなる。
マウスホイール操作により、視点を引いて広い視野を得たり、寄ってTPS風にして没入感を高めたりと、
好みや状況に応じてカメラ位置の調整が瞬時に行えるのもRTS譲りで、RPGでは珍しい機能と言える。
バトルも当然リアルタイムバトルだが、敵を攻撃する際に対象をクリックし続ける必要はなく、
Space(or Pause)キーを押せばゲームを一時停止できる(その間にポーションを飲んだり、
武器やフォーメーションを変更したり、立ち位置や攻撃対象を再指示したり…というRTSの「お作法」が行える)ので、
アクションゲームが苦手な人でも安心してプレイできる。
ゲーム自体の難度はやや高めながら、*3快適に遊べる工夫が随所に施されている。
優秀なゲームエンジンとロケーションデザイン
本作は、グラフィックが美麗というだけでなく、さほど高くないシステム要件を満たせば、
ノートPCでもプレイ可能な「敷居の低さ」も併せ持つオリジナルゲームエンジン「Siege Engine」が使用されている。*4
また本作は、Diabloのようなダンジョンのランダム生成機能を持たない分、ロケーションデザインは予めよく練られており、
変化にとんだ美しい風景をはじめ、プレイヤーの好奇心・探求心をかき立てる工夫が随所に見受けられる。*5
敵クリーチャーの配置も適切で、あらゆる点で考え抜かれたデザインとなっている。
1本で2本分のボリューム
本作は価格がやや高めながら、
「エッブ王国」「ウトラエアン半島」という、それぞれ個別のシナリオ&ロケーションが用意されていて、
通常のRPG2本分相当のボリュームがあるので、むしろお買い得と言える。
下記にそれぞれ簡単に紹介しておく。
- 「エッブ王国」編
シングルキャンペーンがメインだが、マルチプレイも行える。*6
シングルキャンペーンでは、最大8キャラクターから成るパーティーをプレイヤーが1人で操作することになる。
また任意のタイミングで手動セーブが行え、登場する敵の数が有限となる。
国中で起きている異変を探るために大佐の知人を頼って旅に出て、
やがて道中知り合った仲間たちと協力して捕らわれの身となっていた国王を救出し、
騒動の元凶である悪の首領を倒しに行く…というもの。
それらを探しながら進んで行くとそれなりのプレイ時間を要する。 - 「ウトラエアン半島」編
主としてマルチプレイが想定されているが、シングルプレイも行える。
ただし、シングルプレイはエッブ王国編のシングルキャンペーンとは異なり、
マルチプレイヤーモードでのシングルプレイとなるため、
相棒は召喚獣のみという完全なぼっちプレイとなる。
エッブ王国編シングルキャンペーンのセーブデータからキャラクターを選んでインポートすることができるので、
最初にエッブ王国編シングルキャンペーンをクリアし、
クリア後のセーブデータからキャラクターをインポートして開始しても良い。
各地を巡って、失われた8(7)つのタウンストーンを探し出すというメインクエストのクリアだけでは、
未知未踏のロケーションが半分以上も残ってしまうほどの広大さがある。
ワールドレベルを上げていけばより強力なアイテムが入手可能になるので、
探索とアイテム収集とキャラクター育成を兼ねて、繰り返し冒険の旅に出たくなること請け合いである。 - 「アランナの伝説」編
2003年11月(日本では2004年1月)に発売された
「ダンジョン シージ 拡張パック:アランナの伝説」(以降「完全版」)に追加収録された
Mod Doc Software制作の大規模クエストMOD。
海を隔てた先にある、かつて古代ウトラエ人の王国があったと伝わる大きな島が舞台。
エッブ王国編同様、シングルキャンペーンの他、最大8人までのマルチプレイが行える。*7- ストーリー
冒険者に憧れる主人公の両親は、かつてアランナ大陸中にその名が知られたアーホック出身の冒険者で、
島での冒険の後、消息を絶った。
奪われたグレートクロックの鍵「天星の杖」を取り戻す任務を引き受けた主人公の、
両親の軌跡を辿る冒険の旅が、今始まる…
- ストーリー