レリンの日記

Last-modified: 2015-10-21 (水) 16:12:16

レリンの日記 (BOOK97)

暗黒の森の入口近くで、シャドーに殺されたシーフらしき男の死体から手に入れたものである。最後の項に興味深い記述を見つけた:

「まるで、想像してたものと違った。マジー・フェンタンの仲間に入れてもらった時、英雄になれるものと信じて疑わなかった。やすやすと怪物共をなぎ倒し、勝利の栄光に酔いしれる。まるでおとぎ話のようなそんな毎日を夢見ていたが、甘かったようだ。

果てしなき強行軍、戦いのたびの殺戮、たちこめる死臭。衣服に、この死の臭いが染みついてしまったようにすら思える。陰の化け物や真っ黒な狼を、数え切れないほど殺してきた。腕どころか、頭まで感覚が無くなってしまいそうだ。返り血が身体中にこびりついているが、それを洗い流す気力すら残っていない。

マジーがいてくれなかったら、とうに気が狂っていただろう。我々を耐えず元気づけ、化け物共の犠牲になった村人達や、未だ恐怖に震えている人々のことを思い出させてくれる。彼等を救うためには、我々が恐れと闘わなくてはならない。マジーは本当に勇敢だ。無力な自分が恥ずかしい。

戦いは始まったばかりだ。本日、我々は廃墟と化した寺院の、入口に辿り着いた。そこは陰の巣窟だった。マジーの機転がなければ、その場で八つ裂きにされていただろう。多勢に無勢であったが、彼女が廃墟のステンドグラスを使って僅かな光を反射して集め、陰共を撃退してくれた。この光の中にいる限り、我々は安全だ。光に入ろうとした陰はいずれも消滅してしまうからだ。

明日、寺院とそれを取り巻く闇を調べに入ってみるつもりだ。これほど恐怖を感じたことが今までにあっただろうか。マジーの勇敢さが欲しいが、そんなのは到底無理だ。この場所から一目散に逃げ出したい気持ちで一杯だ。戦いが始まったときに、そうしてしまわないことを願うのみである。」