BGEE Manual/バルダーズ・ゲートの世界

Last-modified: 2015-02-04 (水) 07:25:01
 

レルムの概観:バルダーズ・ゲートの世界 (Overview of the Realms: The World of Baldur’s Gate)

 フォーゴトン・レルムとフェイルーンの世界へようこそ! 魔法と冒険の地フェイルーンは、1つの恒星を中心に回っている8つの世界のうちの、第3番目の世界に存在する1つの大陸である。これらは、混沌の中に浮かぶ水晶の球体に包まれており、この球体は多次元に存在する数多くのもののうちの1つでしかない。しかし、トーリルの種族たち-すなわち、エルフ、ドワーフ、ノーム、ハーフリング、そして人間-にとっては、フェイルーンは非常に大切な場所である。なぜなら、ここは彼らの故郷だからだ。

 

 アビアー-トーリル(一般的にはトーリルと呼ばれる)はフェイルーンやフォーゴトン・レルムがその上に載っている球体の名前である。ちょうど地球という球の上にユーラシアが載っているように。この名は、古い言葉で「生命のゆりかご」という意味を持つが、今日の会話では滅多に使われなくなった。アビアー-トーリルは地球と同程度の大きさの惑星であり、北半球に大きな大陸が1つ存在し、より小さな陸地部分がいくつも点在している。北の大陸のうち、西方をフェイルーン、東方をカラータール、南方をザカラと呼ぶ。この書の趣旨は、大陸の西方について言及することにある。特にフェイルーン内でソードコーストと内海に挟まれた地域について、さらに詳しくはバルダーズ・ゲートと呼ばれる都市とその周辺地域について扱っている。

ソードコースト (The Sword Coast)

 北を大都市バルダーズ・ゲート、南を賑やかな都市、アムン、西をグレートオーシャン、東をシャープティースの森に囲まれたウォーターディープの地は、長年何もない土地だと思われていた。この広大な荒野には、別の場所へと移動する人々だけがあえて足を踏み入れる。この地には、オークやトロールやホブゴブリン(やそれよりももっと悪いもの)による軍勢がはびこっており、それらの手によって不運な旅人にもたらされるおそろしい運命が数多く言い伝えられている。

 

 人と獣両方の襲撃者たちにより、この地を旅することは非常に危険になっている。そのため、ソードコーストという名がつけられたのだ。時代を経て、多くの民が荒野に隠れた緑の谷間に王国を築こうと夢みてきた。最近では、新しい脅威が隊商たちに持ち上がっている。アムンの北にあるクラウドピークス山脈の鉱夫たちから強奪を行うヒューマノイドの強盗団が現れたのだ。

 

 この地には夢が破れた廃墟-うち捨てられた村々、無人の塔やダンジョン-が各地に点在しており、ところどころにバルダーズ・ゲート、ベレゴスト、ナシュケル、フレンドリーアームイン、キャンドルキープなどといった町や都市や砦も存在している。このガイドブックは都市の観光地、宿泊地を旅人に案内するためのものである。隊商に参加せずにソードコーストを旅しようとする場合には、護衛の軍隊か頼りになる冒険者を雇うことを強くお勧めする。

 

 アムンのゼイン・ヘラーはウォーターディープからアムンの間の海岸についてこう記している:行けども行けども無法の荒野であり、海賊や荒くれ者たちの住処である。彼らは、剣の海を道標として北や南へ旅をする者たちを餌食にしている。

 
ヴォロはすこし、言い換えをしているかもしれんのぅ。 -エルミンスター
 

 ゼインの記すところはほとんど正しいのだが、しかし今日では、ソードコーストはこの地域に2つ存在する巨大で強力な都市のうちの1つ、バルダーズ・ゲートがここに存在している(もう1つは、内陸部にあるアイラエボールである)。バルダーズ・ゲートから南のアムンへかけての沿岸では、海岸街道の両側に緑の農地が広がっている。チオンサール川から北、ウェイ亭の糧としている者にとっては狩猟場であるし、開拓者の農民がまばらながら入植している。

 

 バルダーズ・ゲート近隣の貴族が配備している、よく装備の整えられたベテランの警備隊によって、無法状態が解決されるだろうと、旅行者たちには知らされている。しかし沿岸のその他の地域では、旅人は自ら武器を準備し、魔法に通じることが自分の身を守るには一番なのである。山賊、ドッペルゲンガー、コボルドといった危険は、今でもかわらず存在している。多くの山賊は移動しながら野営をし、盗品を使って暮らしをたてている。それらの拠点から、旅人や、倉庫や、弱小な入植地などを望みのままに、主に夜間や悪天候をついて襲う。

 

 一方この地域全体には、旅人の狩猟の対象になる生き物が豊富に存在している。素早く静かに動ける者ならば、撃ったり、石を投げつけたり、網を投げたりなどして、ライチョウやノガン、ドバト、あるいは他の海岸に住む鳥を捕らえることができるだろう。 使用人が馬に縄をつないだり、鞍をはずしたり、水をやったりしている間、ハンドクロスボウをもった太ったキャリステ商人が夕飯のため、3か4羽のウサギを得るのは珍しくはない。 また、足絡めの罠とクラブを持ち合わせた3体のオークが、その太った商人をしとめ、そして彼とそのウサギを食べてしまうことも珍しくないということも常に覚えていなければならない。ただし安全を最優先にしている限り、旅行者は豊富なナッツと野生のキイチゴを集めて、美味しい自然の野菜を楽しむことを期待できる(野菜が新鮮なうちに集められるならだが)。旅行者であるか野獣であるかに関わらず、我慢強く追跡するものや目ざといものにとって、この海岸は多くを与えてくれるだろう。

SwordCoast.jpg

キャンドルキープ (Candlekeep)

 
あんたの故郷がキャンドルキープだってことは解ってるから、ここについては俺よりもあんたの方が詳しいだろう。
なあ、間違ったことが書いてあっても、気にしないでくれよな。 -ヴォロ
 

 この学問の砦は火口の岩角にあり、海を一望し、たくさんの塔を持つ要塞である。かつては著名な予言者アラウンドーの住居であり、彼の予言書とレルム中から集めることのできた記録や学問書が保管されている。キャンドルキープは旅行者向けの行楽地ではないが、店や寺院やよい宿が存在する。多くの旅人にとって、砦に入るための代償は本を一冊寄付することである。砦の図書館で調べものをしたい場合は、最低でも10,000GPの価値のある新しい書物を、キャンドルキープに寄贈しなければならない。

 
たとえあんたがこの町に長いこと住んでいたとしても、このしきたりは変わらないぜ。
モンク(修道僧)どもはほとんど例外ってものを認めないし、
仲間うちだけが入館料をまけてもらえるからな。
あんたが中に入ることができるのは、本当のところ、ゴライオンの口利きがあるからだぜ?
まあ、こういった規則がちがちで堅っ苦しいのは、俺の趣味じゃないぜ。 -ヴォロ
 

 キャンドルキープのモンクたち(彼らは特定宗派には関係ないと主張しており、自分たちのことを「率直な者」と呼んでいる)はまた、彼らの元に集められる書物を買い取ったり、仲介する代理人を通して、秘密裏に望む本を買い求めたりしている。図書館で閲覧を希望する者は普通、力あるメイジが後ろ盾になっている。そのため、キャンドルキープへの支払いとして寄贈される書物には、大したものではない呪文書が多い。

 

 この共同体は、「キーパー・オブ・ザ・トーム」によって統治されている。「キーパー・オブ・ザ・トーム」は「ファーストリーダー」(第2の権威であり、伝統的に修道院でもっとも学識の高い賢者である)によって補佐されている。これら2つの役職の下には8人までの「グレートリーダー」たちがおり、それぞれが「チャンター」「ガイド」「ゲートワーデン」によって補佐されている。「チャンター」はアラウンドーの予言にある終わりない詠唱を、「ボイス・オブ・ノース」「ボイス・オブ・サウス」「ボイス・オブ・ウェスト」「ボイス・オブ・イースト」という4人のアシスタントと交代しながら唱えつづけている。「ガイド」は信奉者たちの教育を管理しており、「ゲートワーデン」は訪問者の対応、警備、共同体内での必要な物品の補給などを行う。中央にある砦内でもっとも高い塔は、多くの木の生えた岩の庭園のあるテラスに囲まれている。砦の下には巨大なダンジョンが太古から存在し、最も賢い書記官の墓室として使われるという噂がある。

 

 まれな例外を除き、よそ者はキャンドルキープ内には10日間しか滞在できず、一度砦を出ると最低1ヶ月が経たなければ再び入ることはできない。砦内の秩序は「ゲートワーデン」の5人の士官(4人の「ウォッチャー」と1人の「キーパー・オブ・ザ・ポータル」)によって維持されている。彼ら5人はそれぞれ武装したモンクを率いている。

 

 「シーカー」は最下層のモンクである。彼らは下調べや使い走りや荷物持ちである。その上には「スクライブ」(代筆人)がおり、彼らは書物を写したり図書館内のいろいろな資料から売るための本を編集したりする。この本の売り上げが共同体の主な収入源である。「スクライブ」の上が「チャンター」や「リーダー」である。現在の「キーパー・オブ・ザ・トーム」は尊大で高慢な二流のメイジのウルラーントである。現在の「ファーストリーダー」であるテストリルは賢く、威厳があり、気配りが利くのでしばしば「キーパー・オブ・ザ・トーム」であると勘違いされる。

 

 キャンドルキープには1つの絶対的な法がある。それは、「知識をインク、火、剣などによって破壊したものは滅せられる」である。ここでは、人の命よりも一冊の本の方が大切なのである。

バルダーズ・ゲート (Baldur's Gate)

 この港町は、沿岸に住む人々にとって安全な居住地であり、生命線である。ここでは、鑑識眼のある買い物客に、幅広い種類の品を提供している。数百の雑多な建物の中に、6つの大きな宿屋、6つの大きな酒場、7つの色々なものを取り扱う店、6つの主要な寺院、どんな注文も可能なメイジの店がある。バルダーズ・ゲートは寛大だが、よく治安の維持された商人の都市であり、毎日の様に通商や商売がとり行われている。千人を超える規模を持つ「フレイミング・フィスト傭兵団」はこの都市を拠点にしている。都市の人口の10人に1人は、「フレイミング・フィスト」の一員であるか調査員(すなわち、スパイ)であるか、もしくはある期間の間、この巨大な軍隊に所属していて武器の扱いに慣れているかしている。来訪者は自由に散策や買い物ができる。この都市には魔法の照明システムが備えられており、夕暮れや夜間は住人たちに明かりをもたらす。これはこの都市で犯罪率が低いひとつの理由である(商人や店主たちは非常によろこんでいる)。

 

 この都市の名前は、伝説的な遠洋探検家であるバルダランの名にちなんでいる。バルダランはかつて、エルフの故郷であるエヴァーミートを越えて、伝説上の財宝の島アンコローメをもとめて航海を行った。バルダランは海を越えた先にある巨大で不思議な大陸の話とともに帰還した。同時に彼はたくさんの財宝を持ち帰った。彼はその富を費やして、故郷の閑散とした港の集落に、オークの部族や蛮族の襲撃(現在でもこの地に存在する脅威であるが、当時も同様であった)に備える城壁を築かせた。その後バルダランは、彼が発見した不思議な大陸への航海につき、そして二度と帰らなかった。

 

 その後の彼の運命は定かではないが、彼の富は都市の城壁建設に費やされた。城壁の守りのおかげで、都市はみるまに発展し、すぐに城壁内はいっぱいになった。城壁は農民たちによって建設されたので、彼らの土地を囲むように建てられた。そのため波止場は城壁の庇護の中には入らなかった。そのため、船着場から都市へと入ろうとする荷馬車に対して、簡単に関税をかけることができた。波止場を我が家とするバルダランの仲間の船長たちは、南から都市に入る通商用の波止場と都市を結ぶ門は「バルダーの門」であると怒って強く主張し、税の支払いを拒絶した。この争いは、富裕な農民たちと都市(バルダーズ・ゲートと呼ばれるようになった)の住民を船長たちが屈服させて終結した。

 

 海の上を共に過ごしてきた4人の年長の船長たちは、船を若い者に譲り、この独立都市の支配者となった。これら4人は冗談で「公爵」と自称したが、この称号は他の支配者たちと会う時に役に立ち、後に「大公爵」と称されるようになった。現在では「四者会議」と呼ばれ、住民によって選挙で選ばれ、終身職(辞任することはできる)である。現在の大公爵はエンタール・シルバーシールド(高いレベルのファイター)、リーア・ジャナス(強力なメイジ)、ベルトと知られる冒険者(強力なファイター)、エルタン(フレイミング・フィスト傭兵団の司令官)である。

 

 バルダーズ・ゲートの建物は、どれも小さくて背が高い。窓は高い位置に取り付けられており、冬の風が入り込むのを防いだり、海鳥が巣を作るのを妨げたりするために雨戸がついている。建物の中でも、大公宮殿はいっそう高くそびえ立っている。大公宮殿はハイホールと呼ばれ、祭礼の場であり、裁判所であり、行政事務を行う場所である。宮殿からそれほど離れていないところに、ゴンド神に奉じられたハイハウス・オブ・ワンダーズがある。これはバルダーズ・ゲートに3つある神殿の中でも、1番大きなものである。この東にはホール・オブ・ワンダーズとウィンドスペル通りがある。ここではゴンドの発明品のうちもっとも成功したものが一般に公開されている。ホール・オブ・ワンダーズから北にそれほど遠くないところ、ブラックドラゴン・ゲートのそばには、広場がある。ここは巨大な開けた場所で、バルダーズ・ゲートの市場である。ここには昼夜問わず人が一杯で、建物は1つもない。陳列台や、物置や、露店などと、それらに押し掛ける買い物客たちで肩がふれあうくらいに混んでいる。広場をはなれると、バルダーズ・ゲートには特におもしろいところはない。いつも立ちこめる湿気が、看板を出したり店を開いたりすることのやる気を削いでいる。

 

 酒を飲んだり異性との社交を行ったりしたい場合は、地下酒場(アンダーセラーズ)へ行く。これは細かくはいりこんだ一連の地下貯蔵庫で、暗くじめじめしており、広場から離れたところに入り口がある。

 
この素晴らしい都市には、見るべき場所もまだいくつかある。
以下では、俺が以前にバルダーズ・ゲートのなりたて冒険者向けに準備したすばらしい都市の地図について触れよう。
あんたの為に主な宿屋、酒場、店、寺院などを紹介しようじゃないか。 -ヴォロ
 

ホール・オブ・ワンダーズ-博物館/寺院 (Hall of Wonders-Museum and Shop)

 巨大な尖塔を持つ石のホールは、ゴンドの偉大な栄光を忠実に、そして奇妙に示している。ここの倉庫には、ワンダーズの模型も展示されている。この展示物を見物に人々が遠くからやってくる(多くは思索しながら通り過ぎ、自分の手で似たようなものを作ろうと判断するため、ここで買ってゴンドの僧侶から法外な値段をふっかけられることはない)。

 

 ホールは、魔法でほのかに光る球体によって照らされており、注意深いゴンドの司祭によって管理されている。ここは、匠と工芸と建築の神であるゴンド・ワンダーブリンガーの偉大な栄光を示す数々の発明品を模した、輝く機械類で満たされている。母体の寺院であるハイハウスはウィンドスペル通りを挟んだ向かいにある。長い年月に渡って、ホールは多くの驚くべきものを保管してきた。現在展示されているものの多くは小さな道具だが、大きなものもいくつかある。小さなものは、杯、像、椅子といった、一見そうは見えないように工夫された金庫に入っていたり、鍵がかけられていたりする。大きなものには自動書記装置、スチームドラゴン、ゴンドのポンプ、エヴァーライト(永久照明)、プロペラ椅子、テレスコープ(望遠装置)などがある。誰かがこれらの装置を壊したり、動かしたり、いじったりするか、露骨な獲得の意思を示さないかぎり、司祭たちは、いつも恐れかしこまって飽きずに驚異の数々にみとれているノームに受け答えするのに忙しく、訪問者に話しかけることができない。ホールに展示されている装置類は司祭達の手によってオリジナルの原型を複製したものであり、オリジナルはどんな状況でも売却されることはない。

エルフソング亭 (Elfsong Tavern)

 この酒場は、地元のバーであり、会合場であり、冒険の斡旋場である。ここは沿岸地をうろついている海賊や無法者の集まるところであり、たとえ喧嘩や戦闘があっても警備隊すら目をつむって引きかえす。ここには、盗品を売りさばいたり、大きな声では言えない仕事のための非凡な者たちを雇ったり、たくさんの危険な冒険についての話を聞く者が朝早くからやってきて遅くまでねばっている。

 

 この酒場の名前は、他にはいない幽霊が由来となっている。酒場ができてから、女性のエルフの声がたびたび聞こえるのだ。大きな声ではないが、どこにいてもはっきり聞き取ることができ、美しくも悲しい声である。彼女は海で死んだ恋人のことを嘆く歌を歌っているのだが、だれもこの歌い手が何者か、なぜここにいるのかわからない。エルフソングでは、他の音楽は禁忌となっている。

 

 1階はとろけるチーズのサンドイッチ(スパイスを利かせるかどうかは客の好み)、ピクルス、こぶし大に切ったニシンの干物、そしてもちろん各種の酒類を出すバーになっている。いくつかの暗く曲がった階段は談話室へと続いており、これらの部屋はろうそく時間(小ろうそくが燃え尽きるあいだの時間)か一晩かで借りることができる。敵がいるような者は、階段の暗がりには飛び出すナイフや毒を塗ったクロスボウボルトが隠されていると、注意を受ける。

 

 バーテンダーは、有用なゴシップや噂話に精通しているが、何か飲み物を頼んで彼の手に金を掴ませないとなにも話してくれない。常連は護衛をひきつれてエルフソングに入ることができる(そしてそれが望まれている)。よく知られているしきたりは、ここでは自分の背中は自分でまもらなくてはならないということだ。

ブレード・アンド・スターズ (The Blade and Stars)

 この宿屋の名前は、はるか昔の戦争でアムンの廃墟となった村で戦利品として得た魔法の看板に由来している。これは大きな黒い看板で、弧を描いたサーベルが細くて形のよい女性の人間の手に握られている図柄が描かれている。この看板には魔法がかかっているので、看板内の星はまたたき、刀のまわりをゆっくりと移動している。この宿は刺激的ではないがよい宿であり、安全で清潔で滞在するには快適な場所である。

 

 ブレード・アンド・スターズは細長くて背の高い建物であり、馬小屋と台所が一方の側に設置されている。もう一方には階上の部屋のためのバルコニーがある。調度品は清潔で新しい。正面のロビーには来客者と会うための小さなラウンジがある。油断のない警備員が来客の出入りを把握しており、やっかいごとを持ち込む泥棒やドッペルゲンガーを近づけない。

 

 乱暴な客やマナーの悪い客はまず注意をされる。そして問題を起こしたら、宿から出ていくように言われる。寒い夜には、経営者のオーンデガル・シャウンは喜んで話をするが、それは彼の手のひらに気前よく金が渡されたときだけである。

ブラッシングマーメイド (The Blushing Mermaid)

 ここは沿岸地域中に、犯罪者や危険人物が非合法の仕事を相談するために集まる場所であることが知られている。ここは騒々しく、喧嘩の多いところである。腕が立って信頼のおける友人が多くおり、そして自身も戦いに習熟した人物のみにおすすめする。

 

 ここは細長く、背の低いボロボロな建物であり、離れや別棟や柵や壁によって迷路のような場所になっている。三方を家畜小屋で囲まれており、地元民のいうことには隠れて宿に近づいたり、宿から出たりするのに都合がよいということである。地下は4階までしかないが(もっと存在するという者もいる)、地下水路をとおって波止場へと続く秘密の通路があるという噂がある。

 
ヴォロが言ってるのは下水のことかの? わしゃ、そこは渡りたくないのう。 -エルミンスター
 

 ブラッシングマーメイドの部屋は天井が低くて薄汚く、長い年月が経ったちぐはぐな調度品がある。これらは略奪品や廃品を回収したもので、ここに備え付けられてからだいぶ使い古されている。

 

 客はここで、口の達者な年老いた船乗りたちが四六時中酒の番をする、驚くべき集団を見るだろう。彼らはそれぞれ、あちこちの秘密結社や盗賊団、密輸業者、傭兵団、故買屋、売春の斡旋屋、その他胡散臭い連中との仲介人である。彼は、数枚のコインを渡すまではニヤニヤ笑うだけで耳の聞こえないふりをしている。金を手渡すと、彼は言葉や耳や、作法などを思い出し、用件を尋ねる。十分にコインを渡していれば、彼は、知りたかったことを教えてくれたり、会合の手はずを整えてくれたり、もしくはそれらのことをやってくれる別の仲介人を紹介してくれる。もちろん、これは私が他人から聞いたことである。

 

 ブラッシングマーメイドでの滞在はどちらかというと安全である。なぜならだれもが戦いをさけようとし、極端な侮辱や愚かなことはしないからである。ブラッシングマーメイドのビールには海のエール(普通に我々の舌を楽しませるビールよりも、濃くて苦い)、スタウト、ミンターン産の軽くて金色のラガーがある。ワインはないが、ペンキをはがしたり木を燃やしたりできるくらいに強くてくすんだウィスキーがある。これを飲んだものの大半が目から涙を流すが、胃の中はもっとひどいことになっているだろう。

ヘルム・アンド・クローク (The Helm and Cloak)

 この大きな宿屋兼下宿兼宴会場は、食堂で楽しむバルダーズ・ゲートの市民にしろ、旅人にしろ、金を持っている者に人気がある。多くの部屋は現在、宿の常連が上品におどけて評するところの、ロマンティックな冒険者たちであるユニコーン騎士団のメンバーによって占められている。ここは食事も会話も上品な店で、有力者たちに好まれている。重要な商取引や同盟交渉が豪華な小部屋で行われてきた。ヘルム・アンド・クロークには、尊大なところやけばけばしさはなく、親しみやすくて美味しい食事、伝統的な調度品、思いやりのあるサービスというものがまさに選び抜かれている。朝、あなたが起きると暖かいローブとスリッパが部屋に運ばれてくるだろう。シナモン入りのミルクも(頻繁に)出される(好み次第で温かいものも冷たいものもある)が、ビールやその種の飲み物は出てこない。

 
どうして酒を出さないんだ?ってそこの召使に聞いたら、
「わたくしどもは酒場を営んでおるわけではございませんので、旦那さま」だとよ。 -ヴォロ
 

スリーオールドケッグ (Three Old Kegs)

 木と石でできたこの和やかな宿には、ちょうど看板の代わりに梁から3つの古い樽(Three Old Kegs)がぶら下っている。風変わりで、入って部屋を取るのに勇気がいるが、1度泊まるとフェイルーンでももっとも良い宿の1つということがわかる。ちょっと古くなっているが快適で、宿の従業員も親切である。普通なら絵画を飾ってあるところには本棚があり、古い日記や旅行の本、歌集や伝承集、過去の偉大な英雄たちの伝記などが詰め込まれている。常連はうたたねしながら、1日中それを読んでいる。時には1杯のワインや、スープや、さいころ賭博やトランプやピン倒しゲームなどをするために起きだしたりする。ワインもスープも最高で、氷水と風味豊かな大麦のパンなどもあるが、ここの献立はそれらだけである。厚手の毛皮の絨毯、羽目板、本、タペストリーがたいていの音を吸収する。

 

 ここは静かな場所である。喧噪や仕事や冒険から逃れて、安価で快適な休息が欲しければここへ来るとよい。宿泊客は自分の武器を部屋に置くように言われ、大きな音を出すのは禁じられる。酔っぱらいはしばしば、朝になると積まれた干し草の陰や台所の扉のそばで眠っていたことに気づく。

 

 宿の主人は背が高く、カールした長髪で無口な男で、剣の傷痕が鼻から頬にかけて斜めについている。彼の名はナントリン・ベログリンといい、元はテシリアの貴族の引退した衛兵だった。市民暴動が起こって彼の君主が殺された時、その地から逃れてきた。

ベレゴスト (Beregost)

 バルダーズ・ゲートとアムン間のコーストウェイを旅する者が疲れると、しばしばベレゴストへ泊まる。コーストウェイからライオンズウェイが分かれる地点から、南へちょうど1日行ったところにベレゴストはある。この町はバルダーズ・ゲートに比べればはるかに小さいのだが、3つの宿屋、2つの商店、魔法の店、寺院、上品な酒場がある。ここはアムンの北の境界の内部にあり、北方のウォーターゲートや東のフォールンスター海への危険な陸路を使うキャラバンの集合場所として使われている。そのため、予想できない周期でこの小さな町は非常に混雑する。

 

 ベレゴストは魔法の学院の庇護下の農村として始まったが、現在ではラサンダーの寺院であるソング・オブ・モーニングによって統治されている。

 

 ベレゴスト近郊で興味深い事柄といえば、ウルキャスターの学院跡である。著名なコンジュラーである魔術師ウルキャスターは300年前に学院を設立した。学院はあまりに成功しすぎて、ソードコースト中のメイジ志願者がおしかけるようになった。カリシャイトのメイジたちが学院の力を恐れて、呪文による戦闘でこれを破壊した。争いの最中にウルキャスターは行方不明になり、その後姿を見た者はいない。学院は今では焼けた骨組みだけになってしまったが、東の丘の上にまだ残っている。地元には、呪文を唱える幽霊が廃墟に出没するという怪談があり、そのため町はコーストウェイの西側へと発展していき東の丘は羊の放牧場のままである。ついでに言うなら、ベレゴストの唯一の宿屋の名前は、(もちろん)バーニングウィザードという。

 

 ベレゴストの統治者はケルダス・オーミリアである。5人からの町議会も存在するが、統治者の言葉が法であり、彼が農業、商業、町の発展に関する責任者である。彼はモスト・レイディアント・オブ・ラサンダー(寺院の高司祭)でもあり、寺院の部隊が町を警備し、安全を守っている。彼には二人の強力な友人がいる。一人は名声あるコンジュラーのサランティールであり、もう一人は鍛冶屋のタエロム “サンダーハンマー” フイルイムである。

ハイヘッジ (High Hedge)

 ベレゴストの居住地の西側には、サランティールの邸宅であるハイヘッジが建っている。サランティールは上品な男性で、黒く長い杖を手に郊外を散歩しているのがよく見かけられる。地元の人々の話では、サランティールははるか遠くの場所と事柄に興味をひかれており、長い間ぼーっとしていることもしばしばあるという。彼の住居は、暗くて塔のある石の家だという。

サンダーハンマー・スミシー (Thunderhammer Smithy, Armor Maker and Weaponsmith)

 タエロム “サンダーハンマー” フイルイムは無愛想な大男である。栗色の髪とマトンチョップタイプの頬ひげは、今ではだいぶ短くなり白いものも混じっているが、彼の大きな手は今でも力強く、器用である。彼は達人の武具師であり、その武具はフェイルーンでも最上質のものである。時にはサランティールが魔法を込めるための物を作ったり、ドワーフの鍛冶屋ですら彼の仕事に感服することもある。入ってくる注文(ほとんどがアムンから)をこなすために、十数人の徒弟たちを忙しく働かせている。戦いには巨大な鉄の杖を使い、かつて一撃でノールを倒してしまったことは有名であるが、普段は物静かな男である。指導者的な素質はないが、町の中で一番尊敬されている人物である。

バーニングウィザード (The Burning Wizard)

 この酒場は賑やかな場所で、地元民にも旅人にも人気がある。ラサンダーの信奉者たちは、にぎやかな会話や宴会をここで行う様にしている。ここは小さなすてきな場所であり、幾つかの小部屋は常連から送られた小物類で装飾されている。部屋には十二分にクッションがあり、ベッドの上で起き上がるのが楽であるのがうれしいところだ。

フェルデポスト・イン (Feldepost's Inn)

 今では亡くなった設立者から名前をとっている、古くからある快適な宿である。少々退屈ではあるが、サービスは心が行き届いて親切である。部屋は(暑い日を除いて)火を使って照らされており、笑顔を絶やさないが無口な老人たちが温かい風呂を入れてくれる。ここの食事は特上である。チーズとキュウリのサンドイッチや、夜に炉端でタマネギとマッシュルームのタルトを焼いてくれる(飲み物を頼めばタルトは無料である)のを、食べ損ねることのないように! 宿の酒蔵には、上質のシェリー酒が置いてある。

 
時々、ヴォロは飲んだくれではないかと勘繰ってしまうのぅ。 -エルミンスター
 

レッドシーフ・イン (Red Sheaf)

 素早いサービスを受けたい者はレッドシーフへ来る。この宿は部屋や食事の準備が可能な限り素早いことを自慢にしている。寒くて雨の降る日には、火のはぜる音が聞こえると同時に君は温かいガウンにつつまれており、濡れた服は台所の奥の乾燥室に運ばれている。ここはベレゴストでもっとも大きな宿屋であり、商取引を行う商人や静かに暮らしたい人々に人気がある。

ジョヴィアルジャグラー (The Jovial Juggler)

 この宿は町のはずれの、街道の西側にある。道化師の格好をした、大笑いしている祭りの曲芸師の絵が看板に大きく描かれており、一目ですぐにわかる。これは平均的な街道沿いの宿屋で、ベレゴストの若者に人気がある(ここで彼らはダンスをしたり飲んだりする)。吟遊詩人やその他芸人たちが集まり、うるさい馬鹿騒ぎのない夜はめったにない。さらに、牛や豚やイノシシを丸焼きにしてぶっ続けで宴会をすることもある。ありがたいことに、こういう騒ぎは一角でしか行われないので、宿泊客は多少は眠ることができる。

フレンドリーアーム・イン (The Friendly Arm Inn)

 この壁で囲われた村落は、コーストウェイをベレゴストから北に数日行ったところにあり、石造りの砦(宿屋)と厩、菜園、水飲み場、キャラバンの馬車置き場などがある。他には数軒の家、幾つもの柱の立った入口のある集会場、小さな商店に魔法の店、ノームの主神ガール・グリッターゴールドの寺院が存在する。フレンドリーアームはかつて邪悪なバールのプリーストの砦だったが、ノームのシーフ兼イリュージョニストであるベントリー・ミラーシェード率いる冒険者たちによってそのプリーストはアンデッドの姿で破壊された。ベントリーは戦友たちと砦を修理し、まもなくして山賊やオーク、コボルド、バグベアー、トロールなどの略奪団などの危険にさらされるこの土地に、コーストウェイでの要塞化された休憩所を開いた。設立後も何度かフレンドリーアームもこれらの脅威にさらされたが、現在でも安全で清潔な宿は人気がある。

 
ベントリーはかつて、わしに秘密を打ち明けたことがあったのぅ。
自分の成功にもっとも重要だったものは、失くしてしまったある強力な魔法の指環であった、と。
彼は残念がっておったが、大切なものは見つからないままのほうがよいとわしには思えるのぅ。
もし汝らがベントリーの指環を見つけたら、彼に感謝せねばなるまいの。 -エルミンスター

ウィズダム寺院 (The Temple of Wisdom)

 この背の低い建物は、内壁に宝石や黄金の粒が埋め込まれている。多くの幻影に守られた、ノームの主神ガール・グリッターゴールドの寺院である。人間の信者(のうちの幾人かが、この寺院に「背の低い社」というあだ名をつけたが)も歓迎される。

フレンドリーアーム・イン (The Friendly Arm)

 フレンドリーアームの城壁の内部では、ここがレルム内でも珍しい中立の避難所であるという訪問者たち共通の認識によって平和が守られている。もちろん、ベントリーは魔法や冒険者の協力を要請することができるし、魅力的な女性の店員らが実は強力な幻影で隠されたアイアンゴーレムだという噂もある。実際に宿の女中の手触りを確認して、この説の真否を知ろうとしたが、彼女が掃除をしていた寝室から投げ飛ばされて確認できなかった(もしかしたら彼女にちなんで宿の名前がつけられたのかもしれない。その後彼女は私を助け起こしてくれた)。精力的で愛想の良い店の主人は、ベントリーとその妻ゲランナである(彼女は寺院の代表者でもある)。この2人は親切でよく気が回り、一文なしになったアムンの商人の面倒をみてやったりすることもある。これは簡単にできることではない。彼らが維持している宿には広くて風通しのよい部屋があり、簡単だが美味しい食事を出してくれる。清潔で、気持ちの良い宿であり、ここで会合が行われでもしないかぎり混雑していない。フレンドリーアームは、徐々に商取引や交渉の場として用いられるようになってきている。

ナシュケル (Nashkel)

 ベレゴストの南、クラウドピーク山脈の北にナシュケルの村がある。噂ではここは良いところだというが、私が訪れた時はそうでもなかった。ベレゴストよりも小さな村と聞いていたが、寺院、宿屋、2つの商店(片方は魔法のアイテムも取引していると噂されている)、上等の酒場がある。私は次にソードコースト各地に逗留する機会に、ここを訪れてみるつもりだ。私がここに近づかないのは、山脈に住むコボルドやその他の邪悪な存在を恐れているからだという噂を聞いているかもしれないが、そんなことはあり得ないとここで明言しておこう。

ガリキン (Gullykin)

 このハーフリングの小さな村は、バルダーズ・ゲート近辺の東部に存在する。ナシュケル近郊のコボルドの噂を聞いてから、私はここを訪れていない…、いや、単に私がハーフリングの穴に興味がないだけだ。しかし、ハーフリングたちは少なくとも1つの寺院を持っているので、近くを通りかかったら一見の価値はあると思う。

 

コメント欄

コメント欄は編集ができない方のためのものです。また、議論はこのコメント欄で行って下さい。

  • 当方 → 東方、誤字の修正ありがとうございます。PDF版にも反映させて、後ほどまとめてアップし直しますね。 -- 2015-02-01 (日) 19:40:42
  • 素晴らしいお仕事、ありがとうございました -- 2015-02-02 (月) 02:12:38