ほわいとがーる

Last-modified: 2010-03-30 (火) 05:57:07

もくじ

ちゅういがき





さくひんに おしかりをいただいたばあい さくじょなりの たいしょをしたいとおもいます。




なお このさくひんは おこさまといっしょに のんびりごらんになることを おすすめいたします。



―ほわいとがーるとかなでるしょうじょ―





 らららー らららー らららららーらー・・・。




 うたがきこえてました。
 ゆきがふる しろいくうかん。




 ひとびとがあるく えきまえからやさしいうたが きこえてきました。
 きれいにかなでられる かわいらしいこえ。
 しょうじょはひとり うたいつづけていました。




 つきのように きいろにかがやくかみに 
 そらのように すきとおったあおいひとみ。
 あたまには しろくかわいらしいぼうしをかぶっている
 しょうじょがいました。




 かのじょのなまえは≪じょうげん≫といい、
 なまえのとおり つきのようなきれいなしょうじょ。
 でんしゃがとおりすぎるなか
 かのじょはうたいつづけていました。




 いつからかは わかりません。
 かのじょが いつからそこで 
 ろじょうらいぶを ひらいていたのかは、
 だれも しらなかったのです。




 とおりすぎるひとびとは、とおくから かのじょのことをみますが
 あしをとめて うたをきこうとはしません。




 かなでられる うた。
 かなでられる ぎたー。




 かのじょは ひとめもきにせずうたい 
 とてもこころがつよい しょうじょでした。




 そんなかのじょが うたをおえると、
 ぱちぱちと どこかから はくしゅがきこえてきました。
 じょうげんはおどろくと くびをさゆうにうごかし
 はくしゅしているひとを さがします。




「うた、じょうずなんだね。」




 はくしゅのなかに ちいさく、りりしいこえがきこえてきます。
 じょうげんが そのこえのほう、はいごをふりかえると
 そこには ひとりのしょうじょが すわっていました。
 しろいかみと しろいきものが いんしょうてきな
 かわいらしい おんなのこでした。




「あら、ありがとう。あなたおなまえは?」
「ん~。≪ほわいとがーる≫とでも なのっておこうかな?
 あまりほんみょうは いいたくないんだよね。」
「あらあら・・・ほわいとがーるさん、こんにちは。
 よければ もういっきょくきいていきませんか?」
「ぜひとも、おねがいします。」




 じょうげんは にっこりとわらうと
 ぎたーをてにとって うたいだします。




 きょくめいは ≪まいがーる≫。
 たくさんのひとのこころを ゆらしたきょく。
 かのじょも このきょくがすきで やがてほわいとがーるも すきになります。




 これが ふたりのであい。
 ふたりの おもいでのきょく。
 ほわいとがーるは しろいゆきとともに やってきました。








「じょうげんさ~ん。
 さいきんいそがしそうだけど どこにいってるの?」
「ないしょ ないしょー♪」




 ここは ねちょねちょがくえん。
 りゃくして ねちょがく。
 いろんな ふつうじゃないひとたちがあつまる しりつがくえん。
 やさしさにつつまれている がくえんでした。




 ここのせいとである ≪まな≫というおとこのこに よびかけられましたが
 じょうげんさんは ぎたーかたてに いつものところにかけだします。




「あら? またきいてくれるんですか?」
「はい。またうたを ききにきました。」
「うれしいです。
 わたしのうたをきいてくれるひとが すくないものだから・・・。」
「それがあなたのなやみ?」
「そうだよ。」
「――だいじょうぶ。そのなやみは うたっているうちに なくなるはずだから。」




 じょうげんと ほわいとがーるは、そんなかいわを かわします。
 じょうげんはいつしか、ほわいとがーるにうたをきかせるのが にっかになりました。
 ほわいとがーるは じょうげんのうたがすきなのか いつのひも ききにきています。




 それからでしょうか。
 じょうげんのうたに みみをかたむけるひとが ふえてきていました。




 たくさんのはくしゅ。
 たくさんのかんせい。
 かのじょはうたで たくさんのおもいを ひとびとにとどけました。




「ほわいとちゃんがきてから わたし、うたに じしんがでてきたみたい。」
「わたしがいなくても じゅうぶん、あなたはうたが うまかったけどね。」
「うふふっ。ありがとう。」
「うん。――あなたはもう、だいじょうぶ。」




 きょうもうたいおわり じょうげんは ほわいとがーるにてをふってわかれます。
 またあしたも きてあげるからねと じょうげんは ほわいとがーるとやくそくしました。
 ほわいとがーるは わらいながら かのじょにむかって てをふり、
 しろいゆきとともにきえていきます。




 どこか ふしぎなおんなのこでした。






 じょうげんはつぎのひ いつものじかん。
 いつものばしょで ろじょうらいぶを ひらいていました。
 ほわいとがーるが あらわれるまえには
 おもってもいなかったほどの かんきゃくがうたをきいてくれていて、
 たくさんのはくしゅをおくってくれます。




 でも、そこにほわいとがーるのすがたは ありませんでした。
 どこをみまわしても かのじょのすがたが みあたりません。




 つぎのひも。そのまたつぎのひも。
 かのじょは、すがたをみせなくなりました。




「・・・なんで。いなくなっちゃったの。」




 じょうげんのうたは かなしみにかわってしまいました。
 かなしいうたごえが えきまえにひびきます。
 それでもうたは すばらしいものだったのでしょうか。
 たくさんのかんきゃくが うたをききに きていました。




 でも、ほわいとがーるは あらわれません。
 なぜなんだろうと じょうげんはかんがえました。
 どうしたらここに かのじょはもどってくるのだろうと。




「・・・いつまでも くよくよしてるなんて わたしらしくないね。」




 きっといろいろあったのだろう かのじょにもじじょうがあるのだろうと
 じょうげんはおもいました。




 じょうげんはまた かわいらしくあかるいうたを かなではじめます。
 かのじょらしいうたを またうたいはじめました。




 いつのひか、かのじょはかえってくるだろうと
 かえってくるまで わたしはうたいつづけようと ちかいました。
 かのじょはずっと、ずっと まいにちのように うたいつづけます。
 ひとびとにおもいを つたえつづけることにしました。




「それではきいてください。
 ゆうめいばんどの るーどれいんぼうより ≪まいがーる≫ですっ。」




 ほわいとがーるとのおもいでのうたを おもいをのせてうたいました。
 かのじょはひさしぶりに そのうたをうたったのです。
 なぜかなみだがあふれてきましたが それでもじょうげんは さいごまでうたいきりました。




 やがてうたいおわると、たくさんのあたたかな はくしゅにつつまれ
 じょうげんは、かんきゃくにむかって れいします。
 うしろをふりむいて かえるじゅんびをしようとしたとき。




 ――そこに ほわいとがーるはいました。




「ほわいとちゃん・・・!」
「それがいちばん あなたらしいよ。わたしが いちばんすきな あなた。」
「え?」
「もうだいじょうぶ。わたしがいなくても だいじょうぶ。あなたはがんばっていける。」
「で、でもほわいとちゃんがいないと・・・。」
「わたしは もういかないと。じかんがあまりないから。」




 ほわいとがーるは そういうと、きれいにほほえみました。
 とてもやさしいえがお。




「がんばってね。わたしはいつでも あなたのそばで おうえんしているから。」




 ほわいとがーるはそういって ゆきのように きえていってしまいました。
 じょうげんは ほわいとがーるの てをつかもうとしましたが
 もう そこには かのじょいません。




 じょうげんは またひとみから なみだがあふれてきました。
 でも、かのじょのことばをおもいだし そらにむかってわらいます。




「わかったよ。わたし・・・これからもうたいつづけるよ。
 たくさんのひとに おもいをとどけたいから、
 だから――みまもっててね。」




 ほわいとがーるにとどけた めっせーじ。
 かのじょのほほえみが ほんのちょっとだけ じょうげんはみえたきがしました。






                ―ほわいとがーるとかなでるしょうじょ―





―ほわいとがーるとぶきようなしょうねん―





「どうして、あいつは おこっているんだろう・・・。」




 ぼさぼさのたんぱつで すこしめつきがするどい ひとりのしょうねんが、
 ねちょがくとよばれる しりつがくえんのおくじょうで つぶやきました。




 かれのなは ≪どっくんどーる≫。
 このがくえんの せいとかいちょうです。
 たそがれるように しろいくもをながめていました。




 やがて そらからしろいゆきが ぱらぱらとふってきます。
 しかし、かれは そんなことにもおかまいなしに そこでぼーっとしていました。




「なにか、なやみごと?」




 きゅうに、どっくんどーるのめのまえに だれかがあらわれました。
 しろいかみと しろいきものが いんしょうてきな
 かわいらしい おんなのこでした。




「うわぁぁぁ!?」




 どっくんどーるは おどろきのこえをあげ、
 かのじょからすこし あとずさりしてしました。




「だ だれだ!!」
「あぁ わたしのなまえは・・・≪ほわいとがーる≫。
 ほんみょうはにがてだから このなまえでいいかな?」
「あ あぁ・・・かまわないけど・・・。」




 どっくんどーるは、いきなりきたしょうじょに おどろくあまりか
 こんらんじょうたいに おちいっていました。
 かのじょがなにものなのか、どうしてここにいるのかも わかりません。




「それで、あなたのなやみごとをききたいんだけど・・・いいかな?」
「なんでですか? とつぜん・・・。」
「――わたしはそのために ここにやってきたからね。」




 んーっと どっくんどーるは くびをひねりました。
 だが このがくえんのひとたちにそうだんするよりも
 みずしらずのひとに そうだんしたほうが、きがるに はなせる。
 そうおもった どっくんどーるは ほわいとがーるに はなすことにしました。




「ひとりのじょせいがね。なぜかぼくにたいして おこってきたんだ。」
「それは、あなたの かのじょ?」
「いや・・・どうだろう。
 それはよくわからないけど あっちはおこっているんだ。
 ぼくはなにもしていないというのに・・・。」




 そういいおえると、どっくんどーるはまたそらをながめ ぼーっとかんがえます。




「なんでおこってんだろうな・・・あいつ・・・。」
「わかってあげて。」




 ほわいとがーるが、そうつづくように どっくんどーるにはなしかけました。
 どっくんどーるは ほわいとがーるのかおをみつめ、
 なにがといった ひょうじょうで みつめます。




「おんなのこは とてもふくざつなかんじょうをもっているの。
 だから あなたがなにもしてなかったとしても、すこしはわかってあげて。」
「んむぅ・・・。」
「わかってあげるだけでも かのじょはとてもあんしんするはずよ。
 ――だいじょうぶ。いまのあなたなら・・・。」




 そうほわいとがーるがつぶやくと、
 ゆきがとけるかのように かのじょはきえていってしまいました。
 どっくんどーるは おいっ とさけんで てをのばしましたが
 すでに ほわいとがーるはいません。




「わかってあげる・・・か・・・。」




 どっくんどーるはたちあがり、とあるところにむかって はしりだします。
 おくじょうのとびらが いきおいよくしまって だれもいなくなりました。




「けいね!!」




 どっくんどーるは ≪けいね≫という
 このがくえんの せいとかいしょきの なまえを さけびました。
 ろうかを あるいていたけいねは そのこえに おどろきながらも ふりかえります。
 そのひょうじょうは すこしつめたくかんじました。




「なんだ? わたしはいそがしいんだが。」
「ごめん!!」




 どっくんどーるは、おもいっきりあたまをさげ あやまりました。
 けいねがきょとんとして かれのさげたあたまを みつめます。




「ぼく ぶきようだからさ・・・
 おまえを どうしてきずつけてしまったか わかんないんだ。
 だけど、ごめん。――それだけは つたえておこうとおもう。」




 けいねが どっくんどーるをみつめ すこしほほえみました。




「おまえはほんとうに ぶきようなやつなんだな・・・。」
「む・・・。」
「いや すまんかった。
 なんでもないんだ へんなたいどとって わるかったな。」




 そういうと けいねはどっくんどーるにむかって あやまります。
 けっきょく なにがげんいんか わからないまま
 どっくんどーるは まぁいいかと、じぶんになっとくさせることにしました。




 げんいんは そのぶきようでむしんけいなところに
 けいねは ちょっとおこってしまっていただけなのです。
 ちょっとだけ いじわるしただけなのでした。
 でも、かれのようすをみてると それすらもゆるせてしまったのです。




 ちょうしょとたんしょは かみひとえ。
 ふたりはこれからも なかよくしていくでしょう。






                ―ほわいとがーるとぶきようなしょうねん―





―ほわいとがーるとたそがれしょうねん―





 とあるおはかのまえで、ひとりのしょうねんが すわりこんでいました。
 おはかは きでできたじゅうじかを じめんにさしているだけの かんたんなものです。




 しょうねんのなは ≪すー≫といい、
 たそがれるように めのまえにひろがるまちを みつめていました。
 ここからなら みおろすように まちをみることができ
 あおいそらも みることができます。




「あなたどうかしたの?」




 きゅうにはいごから こえがしたとおもい すーはふりかえります。
 するとそこに しろいかみと しろいきものが いんしょうてきな
 かわいらしい おんなのこがいました。




「だれっすか?」




 そうすーがきくと しょうじょは ほほえみながらいいます。




「わたしは≪ほわいとがーる≫。ほんみょうはちょっとひみつで。」
「あ、あぁ。はあくっす。」




 すーは、またおはかをみつめ だまりこみました。
 ほわいとがーるも なにもいいません。
 しずかなときがすぎ、ようやくすーが くちをひらきました。




「いのちって、なんでこんなにはかないんだろうね。」




 ほわいとがーるは なにもいわず、かれのはなしをききつづけます。




「ひとが しぬ。めのまえで、たくさんのいきものが しぬ。
 ときには いのちをうばってでも いきていく。
 しんだやつはたくさんみるけど わたしはこうして、へいぜんと いきている。」
「あなたはそれで どうおもっているの?」
「どうってか、なんでいきてるんだろうなぁとか おもったりはする。
 いのちはこんなにも もろいのにさ。」




 かれのおもいを ほわいとがーるがきいて かのじょはかおを すーにちかづけてきました。




「なら、いきているあなたは どうしたいの?」
「・・・・・・。」
「いきているひとは、そのしんだひとのことも かかえていきていくんだろうね。」




 ほわいとがーるは そういうと、おおきく せのびをした。
 すーは、そのすがたに ふしぎと みとれていました。




「あなたいったい・・・。」
「もうだいじょうぶ。あなたはやさしいから。――わたしはそろそろいくね。」




 すると、ほわいとがーるのからだは ゆきのようにとけて なくなっていきました。
 すーは すこし あぜんとしていましたが、
 やがておちついたのか たちあがって せのびをします。




「――まだまだ、わかんないことだらけだねぇ。」




 そうつぶやくと、おはかにせをむけて まっすぐあるきだします。




「じゃあね。」




 おはかに せをむけたまま
 かれは てをぶらぶらふって おはかと さようならをしました。




 かれはこれからも せいちょうしていくでしょう。






                 ―ほわいとがーるとたそがれしょうねん―





―ほわいとがーるとこいをしないしょうじょ―





 あいってなんだろう。
 こいってなんだろう。
 あおくすきとおったひとみと みどりのかみのしょうじょ
 ≪りぃ≫は、そうつぶやきました。




 ここは、ねちょがくとよばれる しりつがくえんの としょかん。
 りぃは ふとしたことで かんがえています。




 こいとはなんだろうと。
 りぃは こいにかんしては うといそんざいでした。
 おとこもおんなも かんけいなく かかわるそんざいだったのも あるからでしょう。




 りぃは、なやんでいました。




「なやみごと?」




 するととつぜん。
 はいごから じょせいのこえが きこえてきました。
 びっくりして りぃは はいごにふりかえって かまえます。




 そこには しろいかみと しろいふくが いんしょうてきな
 かわいらしい おんなのこが たっていたのでした。
 りぃはいっしゅん とあるしょうせつのはなしにでてくるひとかと おもいましたが、
 それとはちがったようです。




「あなたは?」




 そうりぃは しろいしょうじょにといました。




「わたしのなは ≪ほわいとがーる≫。
 ほんみょうは いますてているから、これでがまんしてくれるかな?」
「ぁ、ぅん。わかった。」




 ほわいとがーると なのるしょうじょに りぃはすなおに うなずきました。
 ほわいとがーるは ほほえむと りぃのまえにすわりこみます。




「なやみがあるならきくよ? だいじょうぶ。だれにもはなさないから。」




 りぃは ほわいとがーるをみて なんだかふしぎなきもちになりました。
 あのおはなしのひとと おなじように、どこか やさしいかんじがしたのかも しれません。
 りぃは けっしんすると ほわいとがーるに なやみごとをはなします。




「ねぇ。ほわいとさんは、こい って したことある?」




 ほわいとがーるはいっしゅん おどろいたひょうじょうを みせましたが、
 しんけんなかおで こたえました。




「えぇ、あるよ。・・・とてもたいせつなおもいでだね。」
「でも、うちにはわからない。
 あい ってどんなものなのか。こい ってどんなものなのか。
 ・・・うちにはよくわからないの。」




 りぃがそういいおえると、ほわいとがーるは ふっ と いきを はきました。
 ほわいとがーるは りぃのかおのまえまでちかづき・・・
 なんとそのまま かるく きすをかわしたのです。




「ふぇ!?」




 りぃは、きゅうなできごとにおどろき いっぽおおきく あとずさりしました。
 ほわいとがーるは くすくすとわらうと りぃにむけていいます。




「こいは かんじるものだとおもうの。
 かんがえても、きっと こたえはみつからない。
 だからいまは わからなくていいとおもう。
 おもいが かんじるときが きっとくるから。」
「ほわいとさん・・・。」
「じゃあ、わたしはそろそろいくね。――だいじょうぶ。いまのあなたならね。」




 そう、ほわいとがーるがいうと かのじょのすがたは
 みるみる ゆきのようにきえて なくなってしまいました。




 そのようすをみていたりぃは ほわいとがーるへ てをのばしましたが、
 もうかのじょは いなくなっていたのです。
 しばらくぼーっと りぃはそこにすわりこんで かんがえていました。




「ん? りぃちゃんどうしたの?」




 するとそこに としょかんししょである ≪らいぶらり~≫があらわれて、
 りぃに はなしかけてきました。
 りぃは いそいでたちあがり あわてたようにいいます。




「な なんでもないですっ。」
「そう? ならいいんだけどね。」




 らいぶらり~は、ほんだなにむかってあるきだし ほんをながめはじめました。




 こいはかんじるもの・・・か。




 りぃは ほんのちょびっとだけ わかったようなきぶんになり ほほえみました。
 いまは わからなくてもいい。




 かのじょはすこしずつ せいちょうしていきます。






                 ―ほわいとがーるとこいをしないしょうじょ―





―ほわいとがーるとうたかた―





「ねぇ。≪ほわいとがーる≫ ってしってる?」
「とつぜん なやみごとをもっている ひとのまえに あらわれて
 ゆきのようにきえていく ようせいのことを。」
「でも なにものなんだろうね あのこ?」
「さぁ? でもわるいやつ ってわけじゃなさそうっすね。」




「しろいかみに、しろいきもののしょうじょ・・・か。」




 ここはねちょがく。ちょっとかわったしりつがくえん。
 このがくえんに ひとりの しょうじょのうわさが ひろがっていました。




 そのなまえは ≪ほわいとがーる≫。
 しろいかみと しろいふくが いんしょうてきな
 かわいらしい おんなのこ。




 かのじょは なやみをもっているひとのまえにあらわれ
 なやみをきいてくれる そんざいでした。
 ふしぎとなやみを ほわいとがーるにうちあけると みんなこころが あたたかくなるのです。




 そんなうわさを、こくごのせんせい ≪ばんじろう≫ のみみに はいってきました。
 なんとなくきいたうわさでしたが、かれはどうしても むなさわぎがとまりません。
 なにか こころあたりがあるようで、ばんじろうは
 ほわいとがーるにあおうと あちらこちらをあるきはじめました。




 ほわいとがーるに あえたばしょ。
 えきまえ
 とあるなぞのおはかがあるばしょ
 がくえんのおくじょうに、としょしつ。




 しかし、どこにもほわいとがーるは いませんでした。
 ばんじろうは あうのをあきらめようかとおもいましたが
 ひとつだけ こころあたりのあるばしょを おもいだし
 そこにむかって ほをすすめます。




 それはかれにとっては たのしかったおもいでもあれば、
 かなしかったおもいでもある ばしょでした。






 ゆきが ぱらぱらとふるなか ばんじろうは とあるさくらのきのまえに とうちゃくします。
 いまのじきでは はなはさいておらず だれもおとずれないようなところでした。




 そこでばんじろうがみたのは・・・
 さくらにもたれかかってねむる しろいしょうじょ。
 ほわいとがーるが そこにいました。




 ばんじろうは、おおきくめをみひらき つぶやきます。
 かのじょの ほんみょうを・・・。




「≪さき≫・・・!」




 するとほわいとがーるは めをさまし
 さびしそうなめで ばんじろうをみつめました。




「ひさしぶりだね。ばんじろうさん。」




 ――ふたりは、かこにかかわったことのある なかでした。






 それはまだ、ばんじろうが がくせいだったころ。
 ほわいとがーる・・・ さきにあいます。




 かのじょはやさしく かわいらしいそんざいでした。
 しかし さきは のろわれていたしょうじょで きらわれているひとでもあったのです。




 さきは ≪じぶんにこいしてきたひとをのろいころしてしまう≫ という
 のうりょくの もちぬしでした。




 もしかしたら ぐうぜんだったのかもしれません。
 しかし さきをあいしてくれた おとこのこは
 ごにんちゅう ぜんいん しんでしまったのです。
 げんいんふめいの やまいで、いのちをうしなっていきました。




 とあるひ ばんじろうは さきのことをすきになり
 さきも ばんじろうのことを すきになります。
 ふたりは つきあいはじめ、しあわせのひびを おくっていました。
 さきが このまま なにごともおこらなければいいな とおもうようになります。
 あのさくらのきのしたで かれらは たのしそうにしていました。




 しかし、やはりばんじろうも なぞのやまいでたおれてしまいます。
 このままでは ばんじろうがしぬのは めにみえていました。
 さきは くらすめいとに ひどいひなんをうけてしまいます。




「おまえがいるから、あいつはしんでしまうんだ! このひとごろし!!」




 そう くらすめいとに なんどもいわれ さきは けついします。




 ――かのじょは ばんじろうとおもいでぶかい さくらのきのしたで じさつしました。




 あいするひとのために。
 あいしてくれたひとをもう ころさぬためにも しをえらびました。




 さきがしぬとすぐに ばんじろうのやまいは もとからなかったかのように なおります。




 ――しかし さきはもういません。




 ばんじろうはなきました。
 いつまでもいつまでも なみだをこらえようとしてもなみだはながれつづけます。




 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
 おまえのきもちに、きづいてあげられなくて ごめんなさい。
 わたしなんかのために なんでしんだんだ・・・。




 わかいばんじろうは なんども あやまりつづけました。
 そしてときがながれ・・・、ばんじろうは おおきくなります。






「まさか、いまさら ゆうれいになってかえってきてるとは おもわなかった・・・。」




 ばんじろうは さき・・・ ほわいとがーるにむかって いいました。
 かのじょは しびとで、ゆうれいだったのです。




 もう いきてはいません。




「わたし いろんなひとにめいわくかけちゃったから・・・。
 そのぶん ひとだすけがしたかったの。」
「さき・・・。」
「ちがう。もう≪さき≫は しんだ。いまのわたしは ≪ほわいとがーる≫なの。」




 ばんじろうは それをきくと、だまりこんでしまいました。
 ほわいとがーるは ひとみになみだをためながら ばんじろうにむかって いいます。




「さぁ、あなたのなやみはなに? きいてあげる。」




 やさしい やさしいこえでした。
 ばんじろうは しばらくかんがえこむと ほわいとがーるにいいます。




「おまえのなやみを ききたいという なやみをもっている。」
「ぇ・・・?」
「もっているんだろう? ほんとうは。わたしにうそはつけないぞ ほわいとがーる。」
「でも わたしは・・・。」
「たまにはいいじゃないか。わたしは なやんでいるんだしな。」




 ばんじろうは しぶいこえでそうつたえると ほわいとがーるはなきだしてしまいました。
 かのじょのことばを ばんじろうはしずかに ききとります。




「わたしっ・・・ともだちがほしかった。かれしがほしかった。
 あいされたかった。こいをしたかった。
 みんなといっしょに・・・ふつうのせいかつを、おくりたかった・・・っ。」




 いっきに ほわいとがーるは、なやみをはきだしました。
 おえつがまじって かなしみがにじみでてくるように
 ほわいとがーるは なきくずれます。




 ばんじろうは かおにてをあてて だまっていました。
 かれは なくのをがまんしているのです。




 そんなときでした。




 ばんじろうのはいごから たくさんのひとのこえが きこえてきます。
 ばんじろうは うしろをふりかえってみると くすりとほほえみました。




「なくな ほわいとがーる。
 ――おまえにはもう、こんなにもたくさんの なかまがいるんだぞ。」




 ほわいとがーるは それをきくと、かおをあげました。




 そこには じょうげん どっくん すーに、りぃ。
 それだけではなく たくさんのねちょがくのみんなが そこにいました。




 えがおでみんなは ほわいとがーるを みつめます。




「いままでさびしかっただろう。ほわいとがーる。」
「うん・・・。」
「いままでつらかっただろう。ほわいとがーる。」
「うん・・・っ。」
「ありがとう ほわいとがーる。――あいしているよ。」




 ばんじろうがつたえました。
 じぶんのきもちを・・・ おもいを、ほわいとがーるに つたえたのです。




 ばんじろうのひとみから ひとしずくのなみだが ながれおちていきました。




 ほわいとがーるは ねちょがくのみんな そしてばんじろうにむけて
 なきながらも きれいにわらいます。




「――ありがとう。・・・もうみんなは だいじょうぶだね。」




 ほわいとがーるのからだが みるみるうちに ゆきのなかにとけていきます。
 かのじょのえがおは しょうめつし、
 ほわいとがーるは このよから さっていきました。




 おもいのこすことが なくなったから さっていったのです。




 ほわいとがーるが さったあと さくらのきに しろいはなが さきました。
 ふゆにさくさくらは げんそうてきで きれいです。




 ねちょがくのみんなは きれいなさくらにみとれて いきをのみました。
 そのさくらをみて ばんじろうは つぶやきます。




「ありがとう・・・さき。」




 ほわいとがーるは みんなにやさしさをつたえました。 




 ――しょうじょが、うたかた ゆれる。




 かのじょは、しろいゆきのように きえていってしまいました。






 もしかしたら あなたのもとにも ほわいとがーるが あらわれるかもしれません。




 まだ、ここにいるのかもしれないのだから。




 そのときはきっと こんなことをいって あらわれるのでしょう。






「あなたのなやみごと きいてあげる。」






                    ―ほわいとがーるとうたかた―








                    ―さくひん ほわいとがーる―








                                                  おしまい。





あとがき





 こんにちは。ほわいとがーるです。
 さくひんは いかがだったでしょうか?
 さくしゃは ひんとを たしょうだしているので、
 たぶんだれかはすぐにわかるとおもうけどね。
 それではまた あなたのなやみを ききにきます。



ネタバレ。保護者の方へ

後書き







                ――この『優しさ』は、一体誰のものでしたか?








 真の後書きです。


 どうもこんぱろは。酒飲みスーさんです。
 今回の作品は如何だったでしょうか?
 私の作品というのが分かった方が、何人いたのか楽しみにしています。


 出来れば全員正解でいて欲しいっていうのが、私の気持ちだったり。
 この優しさは、一体誰のものだったのか。
 それを思い出してもらえれば、幸いです。


 さてもう感想では幾つか出ていますね。
 ほわいとがーるは、ビジュアルノベルのしにがみのバラッド。ひとつのあいのうたという作品を参考にしました。
 実はこれが最初に完成した時は、この作品読んでなかったのですが、古本屋に偶然売ってあり、購入してきました。
 ですからそれを参考にした為、一回だけ大幅な訂正をしましたが、気づいたかなw
 それを参考に今回の作品が出来ました。
 ただほわいとがーるは死神じゃなく、自殺した白の着物をきた霊ですけれども。


 ちなみに私の話のお墓なのですが。
 あれは私の家の近くに立っている昔死んでしまった兎のお墓が舞台になっています。
 昔聞いたことある人はいるんじゃないでしょうか?
 それすらも思い出した人はかなり凄いですね。
 もう一つの説を上げるとなると、ネちょSSの酒飲み学園に出てくる銀音さんの墓とも考え手も良いと思います。




 そして今回のテーマソング。


 http://nicosound.anyap.info/sound/sm4137102


 『天野月子』の【ウタカタ】という曲。


 『選ビ損ネタモウ片方ハ アナタガ笑ウ ヤワラカナ旅路。
  今コノ全テ置イテイッテモ 届カナイ夢ノ果テ』
 ほわいとがーるの踏み出した足はこれからどこへ続くのでしょうね。
 もしかしたら、もう片方は二人で笑うことができる道があったのかもしれない。
 ほわいとがーる自身の全て、命を置いていっても、彼女の夢には届かなかった。
 うたかたな恋。うたかたな夢。


 ウタカタというのについては、後の説明から。
 というわけで、今回のテーマソングでした。
 毎回こんなの出してますが、自分の好みで選んでいるので、それぞれ他の人には違うテーマソングが耳で奏でられているのかもしれません。








独り言




 今回の最後の話に出てくるキーワード『ウタカタ』。
 漢字で直すと、泡沫。
 水面に浮かぶ泡や、儚く消えやすいものの例えです。


 泡って聞くと、皆さんはどんな想像をしますか?
 泡は擦ると、沢山増えます。
 何度も何度も擦ることによって、泡はどんどん大きくなります。


 それはまるで思い出のようですね。
 沢山人と関わり、沢山経験を積んでいくと、思い出はどんどん大きくなります。
 思い出は覚えてないと、儚く消えていくものです。
 思い出そうとしても、なかなか思い出せない。


 泡沫→泡=思い出。
 私はそんな風に思ったりします。
 いつも通り何が言いたいのかハッキリしてませんね私はw
 でもこれでいいんじゃないかなぁとか思ったりしています。


 まぁ、何を思うかは人それぞれだと思います。






 さて、仮面SSを発案して下さった狐さん。
 今回はこのような素晴らしいイベントに参加させて頂きありがとうございました。
 発想が来たから良かったけれども、次回は参加できるかなぁ・・・。
 まぁ色々と勉強して、頑張りたいと思います。




 それでは皆さん。
 ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
 読んでくださった皆様に……。




 最大級の感謝をこめて。








 萃まる楽しき炎:酒飲みスーさん






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かんそうすぺーす

こめんとらん:

  • ほわいとがーるというちいさな《きせき》。ひととかのじょのこうりゅうのきろくがとてもこころにしみわたりました! -- まなしきここな? 2010-03-19 (金) 13:45:33
  • ……しにバラ? そんな感じが凄いする。いや、うん、こういう話好きですがw そして、僕が出てるw というか、何故にそんなカップリングさせたが(ry にしても、ばんじろうさんはどんな作品でも格好いいなぁ。流石だ! 優しい、よい話でした! さぁ、連載作業に入るんだ。 -- ドックンドール? 2010-03-20 (土) 04:53:17
  • 上弦さんの曲名がどこぞかで聴いた事あった気がしてニヤニヤしましたわw(;´∀`) そしてSS中の私は一体何をしているんだorz 優しい感じのするお話でした。執筆お疲れ様でしたー。 -- 酒飲みスーさん? 2010-03-20 (土) 06:06:46
  • ペロッ。……これは!しにがみの(ry イイハナシダナー(・∀・) -- ぽき? 2010-03-20 (土) 13:32:05
  • しにバラ。ときいてつられてきましたw 全部平仮名なのにすごく読みやすかったです。 -- リィ? 2010-03-21 (日) 16:25:09
  • お子様はいないのでお子様に戻った気分で読みました← どの話も短く纏まっていてスラスラと読めました 切ないハッピーエンドは見てて気持ちが良いね!(どの口が言うか -- 上弦? 2010-03-22 (月) 01:49:09
  • 素敵なお話だのう(つд`) そしてひらがなオンリーとは思えない読みやすさが印象的でした。 ほわいとがーるに幸あれ! ところでほわいとがーる、うちの生徒達が私のクレスタを爆破しまくるのでなんとかしてください。 -- てんぬ? 2010-03-29 (月) 17:15:40
  • リィさんの項目で、百合・・・!そうか白・・・!ってなりました( ゚∀゚ ) ほわいとがーるさん おれのこころも しろくしてください -- 青黴? 2010-03-30 (火) 05:57:06