イベント/無実は苛む

Last-modified: 2022-12-12 (月) 21:45:27

シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント



射命丸文
「無節操な血の轍……レッドラム、でしょうか。敢えて名前を付けるとしたら」

フランドール・スカーレット
「……蔑ろにされて嬉しいわけがないよね」

無実は苛む~トラジディ・レッドラム解放戦

エスカ-紅魔館の地下を徘徊するトラジディ、レッドラムの攻略解説。
ちなみにイベント描写のPC役はリューサンにお願いしている。あくまで一例のひとつ。

攻略手順

  • レッドラムの存在はオルフェウスが最後に示唆するまでノーヒントとなっており、そこでエスカ-紅魔館に地下があると気付くレベルで情報が秘匿されている。
    まずは地下への道を探さねばならない。館内が正常化するまで行けなかった場所のひとつにアトリエのような一室がある。
    アトリエには赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の一色に塗りつぶされたキャンパスが7つあちこちに意味深に置かれており、部屋の床にはこれまた意味深なカーペットがキャンパスと同じ数だけ敷かれている。
    部屋をくまなく調べるとキャンパスに対応するカーペットの図が書かれたメモ書きが見つかるので、キャンパスを対応するカーペットまで移動させることで地下への階段が現れる。
  • エスカ-紅魔館の地下は無数のエスカンモンスターの死体が足の踏み場もないくらい転がっており、何者かによってそれが為されたことがわかる。
    PTはこれをトラジディの仕業だと仮定し、レッドラムと命名することになる。
  • レッドラムは地下を決まったルートを一定の周期で徘徊しているが、地下は入り組んでいるうえに釣り天上や落とし穴、凄まじい勢いで迫る壁など危険なトラップがわんさと積まれており、プレイヤーのリアルラックがない限りはそう簡単に遭遇できない。だが一部のトラップは近くにあるスイッチを押すことで停止し、もう一度押すまでそのままの状態で動かない特徴を持つ。これの性質を利用して、釣り天上や迫る壁を起動させた後に素早く停止スイッチを押すことで通路を封鎖することができる。レッドラムはルートを遮られると立ち往生になるのでこの方法で確実にコンタクトを取れる。


    端的に言ってしまえば、レッドラムはフランドールを核としたトラジディである。
    その容姿も、禍々しく肥大化した翼に無数の首を吊った人形を提げていることを除けば、巨大な両手剣を引きずっているフランドールに酷似している。
    だが、レッドラムに話しかけようとするとレッドラムは問答無用で凄まじい衝撃波を叩きつけ、PTを上階まで戻してしまう。
  • レッドラムに吹き飛ばされたくだりでクエスト「レッドラム調査任務」が開放され、レッドラムを「解放」する手段を探ることになる。
    「解放」にはトラジディのモデルとなった人物をPTに入れることがほとんどだが、フランドールをPTに入れてもレッドラムの反応は変わらない。
    ここでさとり、こいし、神子の力を借りよう。彼女たちのいずれかを入れたままレッドラムに接触すればよい。入り口まで吹っ飛ばされるのは変わりないが、その際に断片的にレッドラムの心(欲)が開示される。
    そのまま3、4回ほど接触すればレッドラムの心情――無念が理解できるだろう。前述した通路封鎖を活用すればあっという間である。

古明地さとり
「……レッドラムの感情は複雑に入り組んでいました。他人との繋がりを求めながら他者を拒絶する、二律背反の感情です」

古明地こいし
「お姉さんとの擦れ違いで自棄になっていた心を癒してくれた人から、裏切られたショック……」

さとりはやや険しい表情で淡々と話し、こいしは悲しそうに目尻を下げてレッドラムの絶望を告げる。
そして、神子は粛々と――未練を伝えた。

豊聡耳神子
「――レッドラムの未練は、レミリアさんとフランドールさん、そして[PC]さん……あなたがたの繋がりが失われたことです」



会話ログ
レミリア・スカーレット
「人間関係が破綻して、拠り所からも見放されたフラン、か……」

フランドール・スカーレット
「わたしたちがそういう未来になる可能性も、あったんだ、ね」

レミリア・スカーレット
「お父様たちが亡くなって、事業を継いだ時……ギクシャクした時があったでしょう?
 私たちの場合は元鞘に収まったけど……にしたって」

フランドール・スカーレット
「いくら思い余ったからといって……やっぱり、誰かを手にかけようとするのはだめよ」

レミリア・スカーレット
「もうっ! 私も不甲斐ないけど、[PC]は一体何をやってたのかしら。
 婿ならもう少し上手いことやってくれると……ッ。あ、いいや、前提が違うし、これは無責任な野次ね……」

(この辺りはPC次第で反応が変化。もう一人の自分に悪態をついたり自己批判したり凹んだり申し訳なさそうにする)

フランドール・スカーレット
「……あなたは[PC]だけど[PC]じゃないもん。気にすることなんてないよ」

レミリア・スカーレット
「何も知らないのだから、まあそうよね。……よし、決めたわよフラン」

フランドール・スカーレット
「うんうん。聞かせて、お姉様」

レミリア・スカーレット
「私に代わって、私自らが出る」

フランドール・スカーレット
「お姉様だけだと、レッドラム(あのわたし)は逆上すると思うよ? ……わたしも行く」

レミリア・スカーレット
「そう……よねえ。どれだけ力になれるかわからないけど、可能性は多い方がいいわ」

フランドール・スカーレット
「……[PC]、あなたにも来てほしいの。代役になってもらうのは、ごめんなさい。だけど……」
「お姉様と、わたしと[PC]……レッドラム(あのわたし)が望んだ関係のひとつなら、少しでも寄り添いたいの」
「――こんな未来もあるよ、今から全てが手遅れじゃないって」



情報をコンプリートした状態でPC、レミリア、フランドールをPTに入れ、レッドラムに話しかけることで反応が変化する。



ぎ、ぎ、ぎ、ぎ、ぎ
ひた、ひた、ひた――
闇の奥から、何かを引きずる音と素足で歩く音が近づいてくる。
あなたたちは、その主と向き合うために待ち受けていた。

リューサン
「……顔を会わせてからなんて言えばいいか、結構緊張するな」

レミリア・スカーレット
「……付き合ってもらって悪いわね」

リューサン
「PTのお誘いを断る理由なんてないさ。
 それに同じ俺の不誠実さが招いたことなら猶更協力させてほしい。
 比較するのは失礼だけど……周りから蔑ろにされるのは辛いしね」

フランドール・スカーレット
「ありがとう……リューサン」

――音が止まる。
闇の奥で、能面のような無表情でこちらを見つめる存在。
――トラジディ・レッドラム。外に救いを求めて、壊れた幼い心の成れの果て。
PC(リューサン)、レミリア、フランドールの姿を認めると、それは立ち尽くし――

レッドラム
「……ヒトリぼっちはイヤ/そうヤッテみせツケタイの?」

かつて求めていた理想のカタチ。もう、手に入らないモノ。
二律背反する羨望と怨嗟。
入り混じって、レッドラムは攻撃衝動を向ける。

リューサン
「いいや、レッドラム。君の望みを叶えに来た」

レミリア・スカーレット
「これが、どれだけストレス解消になるかはわからないけど……」

フランドール・スカーレット
「遊びましょう、レッドラム。
 あなたがあなたの悩みを証明(なっとく)できるまで、付き合ってあげる」

レッドラム
「……イイノ?/ウルサイッ!!」

フランドール・スカーレット
「いいよ! 嫌も厭も好きのうちっていうしね?」
 「――さあ。始めましょう、今宵楽しい火遊びを!」



VS.レッドラム

  • BGM:Ultimate;Nervous;Obscured;Weird;Egoistic;Nasty;Girl
    攻略√におけるSADEND後のフランドールを核としたトラジディ。
    常時2回行動。HPは17万前後で、STRとINTとAGIが高い。オルフェウスほどではないがHPが高く、回避を含めて防御面がおざなりなボスとなっている。
    プレイアブルのフランドール程ではないがクリティカルヒットの確率が高めで、1ターンに3回までクリティカルヒットした対象に通常攻撃で追撃を叩き込んでくる。
    悪疫に加えて蘇生を禁じる『禁忌「禁じられた遊び」』、被クリティカルヒット率をあげる『禁忌「カゴメカゴメ」』、炎属性の全体魔法攻撃『禁忌「レーヴァテイン」』など、フランドールのスペルカードの効果をアレンジ・変更した攻撃手段を多様する。
  • レッドラムのクリティカルヒットはダメージに変動がないものの、クリティカルヒットからの追撃は痛いので被クリティカルヒット率を下げるアクセサリなどがあれば持っておくと多少楽になるだろう。
    HPが35%以下になると「ブラッドウェポン」か「ソールエンスレーヴ」を発動した上で、性能を変化させる『禁忌「フォーオブアカインド」』を使用。常時4回行動となる。こうなると一気に倒したいところだが、実は弱体デバフがとても通用する。攻撃力ダウンも有用だが、「アブゾアキュル」「インデスリップ」「ジオスリップ」で命中率を下げたり、「インデヴェックス」「ジオヴェックス」で魔法命中率を下げておくとそれなり以上の確率で攻撃が失敗するのでオススメ。フラッシュも低確率で通用するがやや博打。狙うなら余裕があるうちにやっておきたいところ。
  • 総括するとソツがないようにみえて搦め手に弱い強敵となる。綻びを上手く突いていこう。







からん、と乾いた音をたてて剣が地面に転がった。
――レッドラムがぺたん、と座り込む。

レッドラム
「寂しかったの。お父様たちが亡くなって傷ついたのはお姉様も同じ……」
「あいつは自分のことしか考えてない……わたしのことなんてどうでもいいんだ!」

そして、レッドラムは内心の吐露と怨嗟の恨み言を同時に吐き出す。

レッドラム
「リューサンが頑張ってたのだって、わかる……わたしのためにいっぱいいっぱいだった」
「裏切った裏切られた、あんなにやさしくして、最後には玩具みたいに捨てて!」

――レッドラム(フランドール)はすすり泣く。
幼いゆえに、未熟であるがゆえに、少女の心はいっぱいいっぱいだった。
寄り添える相手を求めていた。


だけど、姉は自分をおざなりにするしかなかった。
たったひとりの家族には違いない。だからこそ優先順位がどうしてもあったのだ。
――唯一の肉親である妹を含めた自分の世界を守るためには。


頭の中ではわかっていた。
だけど、おざなりにされるにつれて心は乾いてゆく。
学校でも姉の多忙は許される。
だけど、家庭の事情を伏せていた自分は恵まれた家というだけで罵倒される。


いくらお金があったって、心は全然恵まれてない!

レッドラム
「頭ではわかっても、心は納得してくれない……だから、……」

フランドール・スカーレット
「嫌に、なったんだよね」

こくり、とレッドラムは頷く。

レッドラム
「自分勝手に振る舞えば、最初は心配してくれる……気にしてくれる……」
「でも、だめ。だんだん厭きられて、嫌われて……そしてひとりぼっちに、なるの」



――PC(リューサン)とフランドールがレッドラムの前に座り込む。

フランドール・スカーレット
「誰が悪いわけではないと思うの。……それでも、蔑ろにされて嬉しいわけがないよね」

リューサン
「俺も……ひとりぼっちの怖さはよく、わかるよ……辛かったな。君を傷つけた俺に代わって……謝らせてほしい」

レッドラム
「……わたし、でも……嫌われちゃったよ……お姉様は……」

フランドール・スカーレット
「お姉様は、きっかけがわからないだけだよ。だって自分から謝れるようなひとではないでしょう?」

レミリア・スカーレット
「うぐ……」

フランドール・スカーレット
「……ほんの少しだけでいいの。勇気を出して、部屋の外にでてみよう? あって話してみましょうよ」

レッドラム
「話、聞いて……くれる、かな……」

フランドール・スカーレット
「大丈夫だよ、だって……」

フランドールがレミリアの手を引く。

レミリア・スカーレット
「そうね、だって私たちは……」



レミリアは目尻を下げて座ると、フランドールと一緒にレッドラムの手に掌を重ねて、伝えた。

レミリア&フランドール
「――私たちは、世界でたった二人しかいない姉妹だもの」

――だから信じて、と。


やがて――レッドラムは静かに頷くと――七色の光となって空気に溶けた。
フランドールは、床に転がっていた灰色の両手剣を手元に引き寄せると、杖代わりにして立ち上がる。



フランドール・スカーレット
「……どうか、がんばってね。わたし」

リューサン
「大丈夫さ、みんなの思いはしっかり彼女にも伝わったのである^^」

レミリア・スカーレット
「そうね……それでも、ちょっとだけ感傷的になるわ」

ぺち、とフランドールがレミリアの頬に親指を押し付ける。

レミリア・スカーレット
「なによ」

フランドールはくすり、と笑った。

フランドール・スカーレット
「もっとふんぞり返ってもらわないと調子狂うわ? お姉様~」













その日、どこかの世界線で。


――PC(リューサン)が過去へ帰ったその日の夜、レミリアは自室でパソコンと向き合っていた。
あれだけ仲良くしていたフランドールは、見送りにはこなかった。PC(リューサン)も最後までそのことを気にしていた。
それを思い出して、溜息がこぼれる。彼が妹に心を砕いていたことはわかっていた。
……全部任せっぱなしにしていたな。

レミリア・スカーレット
「…………」

そのことを思うと、自分の細い双肩がのしかかっていた目に見えない圧が重量を増したように思え……
――ふと、ドアをノックする音に物思いに耽っていた意識が引き戻される。

レミリア・スカーレット
「……開いてるわ。手が離せないからどうぞ」



返事は、ない。
ドアが開く気配も、ない。

レミリア・スカーレット
「……?」



続いて、弱々しくドアをノックする音。

レミリア・スカーレット
「……悪戯? 開いてるって言ったでしょ」



レミリアはわざとらしく溜息を吐き出して椅子から立ち上がると、歩いてドアを開ける。

レミリア・スカーレット
「一体何の用――」

声は続かなかった。
開けたドアの目の前には、フランドールが立っていた。
両手でスカートをぎゅっと握りしめて、小さく震える妹が。
唇をかみしめながら真っ赤に晴らした目で、レミリアを見上げていた。

レミリア・スカーレット
「フ、フラン……あなた」



そのまま、寄りかかるようにフランドールはレミリアの胸元に縋りついた。
嗚咽を押し殺そうとして、失敗したような泣き声を漏らしながら。
レミリアはフランドールに何かを言おうとして、できなかった。


ただ、レミリアはフランドールを抱きしめ返した。
――わんわん泣きじゃくる妹の背中を、そっと抱きしめた。
目の奥が熱くなって、視界がぼやけるのがはっきりとわかった。