イベント/愛しい過去よ、どうか振り向いて

Last-modified: 2023-05-07 (日) 22:49:31

シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント





オルフェウス
「――私はオルフェウス
過去(うしろ)を振り向いて、
 未来(あした)を無明に閉ざした愚かなオルフェウス」



ニャルラトホテプ
「この問をキミ達に投げかけるのは、これが最初でもなければ、きっと最後でもないのだろう。悲劇も喜劇も全ては永遠に繰り返すのだから」
「この世もあの世も、全てのものは運命の歯車を回す溝鼠。だがね、君たちが救おうとしているのは、溝鼠でさえない程度の能力(舞台装置)
「慈悲深いのか? それとも、障害のための壁だからか、あるいは――ただ、見てみたいだけなのか?」

レミリア・スカーレット
「いいえ、単なる決着よ」
「それに、ニャルラトホテプ。オルフェウスが果たしてだれの舞台装置が、解っているでしょう?」
「どこの世界の、いつの時間のレミリア・スカーレットだろうが――私の力の決着は、私が付ける」

愛しい過去(おもいで)よ、どうか振り向いて~トラジディ・オルフェウス解放戦

エスカ-紅魔館を支配するトラジディ、オルフェウスの攻略解説。
他のトラジディの攻略と比べて非常にシンプルだが、その分だけ戦闘難易度が高い。

攻略手順

  • オルフェウスはエスカ-紅魔館の館内の最奥でPTを待ち受けている。だがその道のりはファウストによってねじ曲がっている。前提としてファウストを「解放」し、エスカ-紅魔館を正常化させなくてはならない。
  • ファウストを「解放」するとエスカ-紅魔館の構造が変化し、迷いの森と化した中庭が一本道に戻る。
    館内も非常識な構造が正され、それに伴ってそれまで取れなかったアイテムも取れるようになっている。
    モンスターは相変わらず出現するが、オルフェウスに会う前に一度くまなく探索するのもよいだろう。
  • オルフェウスは館内の最奥にある扉から行けるバルコニーにいる。



バルコニーには、黒いシースルードレスを纏った女性が椅子に座りながら瞑目していた。
黒い髪と白哲のモノクロの色彩の中に、胸に飾られた深紅のブローチが異彩を放つ。
そして――その(かんばせ)は、大人になったレミリア・スカーレットそのものであった。

レミリア・スカーレット
「あの顔は……まさか私もトラジディになってたの?」

顔をしかめるレミリアに反応して、瞼を伏せていたトラジディは薄っすらと真紅の瞳を開けると窶れた笑みを浮かべる。

????
悲劇(トラジディ)、か。皮肉が上手ね」
「やれることはやったつもりだけど、そう……」

十六夜咲夜
「……話が通じるタイプのようですね。流石はレミリアお嬢様」

レミリア・スカーレット
「私にしては、なんか弱々しいけど。ん"ん"っ」
「……単刀直入に言うよ、お前は何なのかしら」

????
「……私は、そうね」

オルフェウス
「――私はオルフェウス
過去(うしろ)を振り向いて、
 未来(あした)を無明に閉ざした愚かなオルフェウス」

オルフェウス
「――諧謔としてはそれなりだと思うわ」







  • 諧謔的に名乗ったオルフェウスは、自身の未練にまつわる話を聞いてほしいと頼んでくる。
    なお、レミリアに関する話なのでレミリアがいない場合は彼女を呼んでほしいと請われる。
    PTにレミリアを入れた状態で了承すると椅子に座るよう促され、オルフェウスが自身が辿ってきた複雑な経歴を語り始める。この話の聞き取りがクエスト「オルフェウス調査任務」となる。ちなみにさとり、こいし、神子がPTにいてもオルフェウスの心(欲)が「わからない」となる。何かが複雑に混ざり合っていて読み取れないのだとも。
    話の内容はある世界線における2019年のレミリアに起きた悲劇から端を始まり、失われた想い人の命を救うために過去を変えるまでを第三者視点から見たダイジェスト。



フランドール・スカーレット
「……」

パチュリー・ノーレッジ
「並行世界が一本の枝から広がる無数の枝葉のひとつであると考えれば、あなたが行なったのは……」

オルフェウス
「別の枝葉の葉緑素ひとつを生かすために、自らと属する枝葉ひとつを切除した、ということになるのかしら……」

パチュリー・ノーレッジ
「ええ。……口性なく言えば、そのようになるわね」

フランドール・スカーレット(AS)
「だから過去(うしろ)を振り向いて、未来(あした)を消した、か。
 なるほどね、オルフェウスというのは納得」

フランドール・スカーレット
「でも、ある一点で消えてしまったお姉様は彼の詩人とは違うわ」

オルフェウス
「……それは?」

フランドール・スカーレット
「消えたお姉様は、冥府から愛する人を取り返した。オルフェウスのように失敗はしていない」

レミリア・スカーレット
「――答えて、オルフェウス。あんたの未練って何?」

オルフェウス
「……僅かに思ってしまったの」
「消えてなくなる直前……"彼"を見て思ってしまった」

オルフェウス
「……もっと良いやり方があったのではないか、と」
「未来を歪めず、誰も傷つかない方法が……」

レミリア・スカーレット
「そう。少なくともわかったわ……オルフェウス。
 お前が消えた私そのものではない、ということが」

オルフェウスが悲しそうに目を伏せた。
何処か他人事のように語るオルフェウスを見て、レミリアは溜息を吐く。
第一、消えたレミリア・スカーレットは悩みながら苦しみながらも決断してそれを貫徹したのだ。
「もっと良いやり方があったのではないか」。確かに最期の最期には思うのかもしれない。
それを後になって恋人を連れ戻せなかった詩人(オルフェウス)に準え、愚かだと自嘲するのは。
――トラジディになったからだとしても、あんまりではないか。
だから、目の前のトラジディが自虐しているのは――レミリアそのものではない。

フランドール・スカーレット(AS)
「あんた自身、自分が消えたお姉様とは一度も言ってなかったものね」

レミリア・スカーレット
「――もう一度尋ねるわ、オルフェウス」
運命を操る程度の能力そのもの」
「"私"の未練は?」

オルフェウスはレミリア・スカーレットであってレミリア・スカーレットではない。
オルフェウスの核の大半を占めているのは2019年のレミリアがとある事件を期に強く発現してしまった「運命を操る程度の能力」。それを宿したブローチである。
そのブローチにレミリアの消失に伴って嘆きの感情が集まったことでトラジディの核として取り込まれたが、イレギュラーがあった。
運命を歪め、未来をかき消した彼女の能力を宿したブローチに、消滅直前のレミリアが遺した未練が宿っていたのだ。
レミリアの遺した未練は自らの行ないをやり切った後に抱いたものであるため、未練というよりは祈りに近い穏やかなものだった。
だが、ブローチに集束していた嘆きとレミリアの未練(いのり)が入り交ざった影響で、オルフェウスはトラジディとしては中途半端な存在となった。
これらの経緯からオルフェウスの未練は混濁し、希薄である。そのためトラジディの中でも例外的に倒せばそれだけで「解放」できる。







オルフェウス
「レミリアの未練は、本当にささやかなものよ。
 ――"あと数秒くらい、この時間が続けばよかったな"。
 ……それだけ」

悲しそうに呟くオルフェウスになるほど、と一同は頷いた。
そして、オルフェウスは椅子から立ち上がり――黒い翼を広げた。

オルフェウス
「どうか……振り向く前に終わらせてほしい」
「もう二度と、余計な未練を抱けないように」

お世辞にも愉快といえない表情を浮かべながら椅子から立ち上がる彼女たちを、オルフェウスは静かに見据えた。

十六夜咲夜
「仔細は理解致しました。それが望みとあらばお相手しますわ」

パチュリー・ノーレッジ
「本人ではない誰かがトラジディの核になった、というのは初めてのケースね。
 そして誰も幸せにならない、という点で……本当に貧乏くじよ」

フランドール・スカーレット
「……オルフェウスは最期、狂える女性たちに襲われて命を失ったそうよ。
 別に狂ってないんだけどな、わたし……」

フランドール・スカーレット(AS)
「本当、先輩がいないと病む……。だからってセンパイを揶揄うのも失礼だし。
 やっぱり――こんな世界、壊した方がいいわ」

レミリア・スカーレット
「どのみち倒さなきゃ解決しない問題だから応えてあげる。
 ……終わったら言いたいことがあるから、首を洗って待ってなさいよ」



VS.オルフェウス

  • BGM:If you're my destiny, end this fated determination
    ヴォヤージュ200⑨-バックトゥザフューチャーのBADENDを迎えたレミリアのブローチを核としたトラジディ。
    常時2回行動。HPは25万。VITとMND、回避、魔回避が絶望的に低いことを除けば全ての能力値がバランスよく高い。
    加速スキル「豪快速」を習得しており、加速スキル「快速急行」以下の対象にダメージを与えた時さらに追加で通常攻撃を行なってくる。
  • 戦闘開始と同時にオルフェウスは『「マーシレスディスティニー」』を使用。
    これは戦闘終了までの間、自身を含めたすべてのキャラクターのスペルカード、魔法、JA、SPアビを含めたアビリティ、アイテムによるHP・MPの回復効果量を90%減少させるというもの。HPやMPを全回復させる効果さえ、最大値の10%まで減らされる。その代わりオルフェウスには強力なリジェネとリフレシュ、PT側にはそれに加えて非常に強力なHP・MP吸収強化とリゲイン、ストアTPが付与される。これらの効果は戦闘不能から復帰しても再度付与される。
    つまり膨大なHPを持ちながらリジェネで再生するオルフェウスをそれ以上の火力でひたすら削り切りながら回復するという凄絶な戦いを強いられる。
    また、『「マーシレスディスティニー」』は開始時に使用されるため、スタンなどで止めることはできない。
  • だが、やたら滅法にダメージを叩きだせばいいかというとそうでもない。
    1ターン中に同じ種類の行動を3回以上発動されると、オルフェウスは行動をキャンセルさせる『「イマジナリーチェイン」』を使用してその行動を妨害してくる。
    ダメージを与えた瞬間にHPやMPが一瞬で回復する分、攻撃などを止められるとその時点で窮地に陥る。通常攻撃、魔法、スペルカード(SC・LS・LW)、WS、アビリティ、アイテム。全てをバランスよく組み合わせる必要がある。
  • 他に全体複数回攻撃『運命「ミゼラブルフェイト」』、強力な単体攻撃『神槍「スピア・ザ・グングニル」』や黒魔法「メテオ」、「インパクト」、「デス(味方仕様)」を使用。「インパクト」数回か「デス」使用後はMPが枯渇するため、MPが一定値まで回復するまでヒーリングや通常攻撃を使用する。
    HPが10%以下になるとラストワードとして回避できない即死攻撃、『「ハートレスディスティニー」』を宣言。次のターンで使用してくる。
    最後の行動順かつ『「イマジナリーチェイン」』を使用してこないので、こちらも手札を出し切って残り25000未満のHPを削り切ろう。








――オルフェウスが静かに(くずお)れた。
武器をしまい、攻略班はオルフェウスを見る。

レミリア・スカーレット
「……もっと良いやり方があったのではないか。
 それが、あんたの未練だったわねオルフェウス。
 ――ハッキリ言って、そんな冴えた方法はないわ」

オルフェウス
「……」

オルフェウスは――消えたレミリアの残滓が宿ったブローチは、異なる世界のレミリアを無言で見上げる。

レミリア・スカーレット
「結局最後にそれを望んだのは、運命を歪ませた私本人よ。
 何が正しくて、何が間違いなのか……あいつを失ったことのない私には、全て測れない。
 それでも決断して、実行したのは……私」



何度か自身の言葉を咀嚼させながら、レミリアはオルフェウスと向き合う。
誰かを喪った痛みは、レミリアにもある。
この痛みが、ブローチの持ち主と関わった誰かの嘆きに寄り添えることを信じて、語りかける。

レミリア・スカーレット
「失われたものは取り戻せないけど……過去(おもいで)は残ってる。
 ……だから、後ろを振り返ってもいいのよ、オルフェウス」

オルフェウス
「……いなくなってしまった人の過去(おもいで)だったとしても?」

レミリア・スカーレット
「確かに、いなくなった人との思い出は、痛くて辛いわ。
 でもそれだけじゃない。重ねてきた時間は無駄にはならない。
 ……私は、そう思ってる」

オルフェウス
「そう、か。レミリアは……強いのね……」

レミリア・スカーレット
「違うわ」
「……そう言えるくらい、私たちが強くなっただけよ」

オルフェウスが眩しそうに目を細め、笑う。

オルフェウス
「だったら……お願い。
 この下にいるトラジディも、たすけてあげて……」

レミリア・スカーレット
「ここまで来たらもののついでね……」
「今更よ、乗ってあげる」

オルフェウス
「ありがとう……」



――真紅の燐光と共に、オルフェウスは消え去(ふりかえ)った。

フランドール・スカーレット
「……これでよかったのかな?」

レミリア・スカーレット
「私たちにできるのは思い、考え、想像するだけよ。
 トラジディが納得する最良の方法を」

フランドール・スカーレット(AS)
「少なくとも間違いではないはず……?
 後輩なお姉様の言葉に納得したように見えたし」

床に残された灰色の槍を拾い上げ、レミリアは溜息を吐く。

フランドール・スカーレット
「溜息なんか吐いて……どうしたの?」

レミリア・スカーレット
「ん、ああ……」
「オルフェウスなのに琴じゃないのね……」













その日、どこかの世界線で。


――2019年4月 陰陽鉄学園。
春の陽気と桜に迎えられて、新入生たちが入学する。
その中に陽気に気だるげな姉妹がいた。


姉妹のうち、姉の方が学園長の胡散臭い話を聞き流していると……
ふと少女の目線が別方向に向かった。


視線の先には保護者席には親愛なるメイド長の他に、もう一人男性がいた。
男性と少女の視線が交錯する。
少女は男性へいたずらっぽく笑みを浮かべると視線を戻して、胸元のブローチを弄った。


――使い込まれてはいるものの。それは美しい、深紅のブローチだった。