二次創作の注意点

Last-modified: 2023-05-24 (水) 01:10:12

日本では、ゲームやアニメ、漫画、映画、小説……といった様々なジャンルの二次創作(二次的著作物の創作)が盛んです。
確かに、お気に入りの作品を元に「ああだったらいいな」「あのキャラとこのキャラのこんな絡みが見たい」という自分の想像を作品にするのは楽しい行為です。

ファンの二次創作については、原作者も心待ちにしているという話はよく耳にします。
二次創作をどんどんやって欲しいと希望している作者もいるぐらいです。
それは、フリーゲームも例外ではありません。

ですが、著作権に照らし合わせると、二次創作は基本的に違法行為となってしまう場合が多いことを知っている人は、少ないと思います。
このページでは、二次創作と著作権の関係性、基本的に違法行為であるのに活発に二次創作が行われている事情、二次創作が合法的に行えるケースなどを記載します。

 
 

二次創作の定義について

ネットで一般的に「二次創作」と呼ばれているものは、ある著作物を元に作られた、別の著作物のことを指します。
分かりやすいのがゲームキャラのファンアート、ゲームのストーリーを元に創作されたSSや漫画でしょう。
また、コミケで頒布された同人誌などもこれに分類されるものが多数あります。

動画では「MAD」と呼ばれる、作品のシーンをつなぎ合わせてそれに合わせたBGMを挿入し、一つの物語を作り出したものが二次創作の代表例でしょう。
さらに、ゲームの実況動画やプレイ動画が二次創作に該当します。

この「二次創作」を著作権法では「二次的著作物」といい、「ある著作物に新たに創作した部分を加えた、新しい創作物」と定義しています。
大事なのは「原作を変形させ、新たに創作した部分を加えているか否か」です。

例えば「あるゲームのクリア後の世界を想像してSSを書く」という場合について考えてみます。
作成したSSにゲームに使われていた文章そのものや、キャラクターグラフィックそのものを流用していないのであれば、そのSSは「二次的創作物」には当たりません。
キャラクターの設定や世界観などは、創作物ではない「アイデア」と見なされるためです。
(※ キャラクターに対しては、「イラスト」部分に著作権法が適用されます。キャラクターの性格や経歴などは、アイデアと見なされるために、著作権法は適用されません)

ところが、一般的に上記のようなSSは「二次創作」と認識されています。
そしてそれは、間違いではありません。
何故なら「二次創作」とは、法律的な「二次的著作物」とは異なり定義が曖昧で、ある作品を元に作られた創作物であれば、法律的に「創作」と認められる部分がなくても良いからです。
つまり「二次的著作物」と「二次創作」は、厳密には似て非なるものだといえます。

ですが上述したとおり、一般的に「二次創作」と認識されているのは「ある作品の世界観や登場人物を使った創作物全般」のことです。
裁判沙汰になったりしない限り、細かく考える必要はないといえるでしょう。

二次創作が著作権違反になる理由

冒頭部分で述べたとおり、二次創作は基本的には著作権法違反になります。

著作物は作者の同意なく改変することを禁止されています。
(翻案権、同一性保護権の侵害)
改変がなかったとしても、例えばゲームのキャラグラフィックをトレースし、友人などに配れば「複製権の侵害」となります。
それを自分のブログや趣味のサイトなど、インターネット上にアップロードすれば、公衆送信権の侵害となります。

そして、二次創作の多くが作者の許可を得ずに行われている(作者のほとんどが黙認している)のが日本の現状です。
ですので、「基本的に二次創作は著作権法違反」となるのです。

二次創作が黙認されている理由                     

上術のとおり二次創作は、著作権法違反にも関わらず、多くの原作者が黙認しています。
その理由は、大きく二つあります。

まずは、制作会社の事情です。
二次創作が盛り上がれば、キャラクターグッズやDVDといった関連商品の購買意欲の向上に繋がります。
それだけでなく作品の宣伝にもなりますので、利益の向上も見込めるというわけです。

そして原作者にとって、自分の作品でファンが盛り上がってくれることは、決してマイナスにはなりません。
自分自身の創作意欲も上がりますし、自分の利益を損なうことがなければ、あえて咎め立てする理由はないのです。

こういった事情で、日本ではファンの二次創作が黙認されています。
ただし「黙認されている」ということは「合法ではない」ということです。

有料の同人誌が「販売」ではなく「頒布」とされているのも、「あくまでもファン同士の交流である」という建前なのです。

トラブルを防ぐには

二次創作の大半が黙認状態だといっても、トラブルは起きています。
原作のイメージを損なうような二次創作を行えば、原作者や原作のイメージを損なったり、何らかの損害を与えてしまうことは十分にあり得ます。
実際、原作者が不快に思った二次創作作品に対して、裁判となり同人作家が刑罰を受けたケースもあります。

このようなことを避ける確実な方法は、原作者の意思を確かめることです。
ただし、これはあくまでも個人制作の作品、主にフリーで配布されている作品では、という話です。

アニメ制作会社やゲーム制作会社など、二次創作の対象となる作品を有償配布している企業では、問い合わせをしても答えを得られない場合も多いのが現状です。
それは、二次創作のガイドラインを決めていない、または決められないためです。
「どこからどこまでの範囲で二次創作を認めるかを、詳細に決定することが困難である」
「想定外の不快な内容でも、ガイドラインで明確に禁止定めていなかった場合、黙認せざるを得なくなる」
こういった事情があるために、ガイドラインをあえて作らず、黙認しているのです。
ですので、原作者の意図を確かめるという行為は、全ての二次創作において可能ではありません。
とはいえ、近年ではガイドラインを定める企業も少しずつ増えてきており、今は過渡期だといえるのでしょう。

話をフリーゲームに戻しますと、フリーゲームの場合は、
事前に「こういう内容の二次創作をしたいのですが、いいですか?」と確認して了承を得ていれば、まずトラブルは起きません。
最近では、原作者が予め「どの範囲までなら二次創作を認めるのか」という意思表示をしているケースも多くなりました。
必ず、「Read me」など、添付されている注意書きには目を通しておくことも必要です。

二次創作は、原作者の気分を損なわなければ、原作者とファン両方にとってWin-Winだといえるでしょう。
TPP発行の際にも、著作権絡みで二次創作がしづらくなるのを避けようと、多くの創作者が声を上げていたことはその証明だといえます。
また、twitterを見れば二次創作作品に対して喜びのツイートをしているフリーゲーム作者は多くいます。

作者とファン、両方が気持ちよく過ごすためにも、マナーを守ることは大切です。


参考:
これだけ知っとけ著作権
骨董通り法律事務所