近年、ゲームのプレイ動画や実況動画を動画投稿サイトにアップロードすることが活発になりました。
しかし、ゲームソフトには著作権がありますので、ゲームのシーンが映り込んだプレイ動画や実況動画を無断でアップロードするのは違法行為です。
では、動画投稿サイトにそれらをアップロードするには、何に気をつければ良いのでしょうか。
以下に、順を追って解説します。
ゲームソフトの著作権
結論からいうと、ゲームソフトは「映画」に分類されます。
「物に固定された動画」という考え方で、ストーリーや画像、音楽が含まれるRPGやSRPG等は、映画と同じだといえるからです。
ですので、映画と同じ著作権を持ちます。
ただし例外があります。
ストーリー性や動きの少ないシミュレーションゲームや、将棋・チェスなどのテレビゲームは、プレイヤーの思考そのものを見るのが主体であり、ストーリーや映像を楽しむことが主体ではないため、映画の著作物には該当しない、という裁判例もあります。
参考:判例「東高判平成11年3月18日・平成7(ネ)3344・三国志3事件」
この場合でも、画面構成や音楽に著作権がありますので、著作物として扱われることに代わりはありません。
このように書けば、RPGだってプレイヤーが考えて動かしてるじゃないか、と疑問に思うかもしれません。
しかし法律では、キャラクターの動きは、制作者が作成した物で、プレイヤーはそれを選択しているにすぎない、と考えられます。
実際、キャラクターの操作でストーリーが大幅に変わったり、結末がプレイヤー事に異なることはありません、
また、恋愛シミュレーションのように結末が複数ある場合でも、あくまでも制作者が用意した結末のなかの一つにたどり着いているにすぎません。
つまり、著作権はやはり制作者にあるということです。
プレイ動画、実況動画に関わる著作権
プレイ動画・実況動画に関わる著作権は以下の二つが共通です。
1.上映権(著作権法22条の2)
2.公衆送信権(著作権法23条1項)
1.は「著作物を公に上映する権利」、つまり映画をスクリーンに映し出し、多くの人に見せる権利のことです。
2.は、インターネットなどを通じて、著作物を公に配信する権利のことです。
実況動画には、これに加えて解説などの「二次的著作物」部分への著作権が発生します。
しかし、これは「他人がアップロードした実況動画を、第三者がアップロードする場合」に問題となりますので、現状、それほど気にすることはないと思います。
いずれにしても、プレイ動画・実況動画を、動画投稿サイトにアップロードする際には、ゲームごとに著作権者の承諾が必要です。
「ふりーむ!」などのフリーゲーム登録サイトで、動画について作者の意思を明記するようになったのも、動画のアップロードが活発になり、著作権関連のトラブルを未然に防ぐ必要があるためと考えられます。
フリーゲームの動画をアップしたい場合は、必ず事前に作者(著作権者)の意思確認を行ってください。
また、商用ゲームの場合は制作者によって対応がまちまちですが、プレイ動画や実況動画が販促の役割を果たしている一面も無視できないため、大手動画投稿サイトと契約を結び、条件付きで収益化を認めているケースもあります。
いずれにしても「必ず、ゲームごとに確認を取る」作業は必須です。
以下、大手ゲーム会社が公開しているガイドラインをまとめたサイトがありますので、リンクをつないでおきます。
参考:BCN eスポーツ部
また、動画投稿サイトではないSNSでは、プレイ動画のアップロードは著作権法違反になるケースがあります。
多くの人が利用しているTwitterがそれにあたりますので、注意してください。
実況動画のみに関わる著作権
ゲームのプレイ画面のみをアップロードするプレイ動画と違い、実況動画には編集の際に音楽を追加したり、画面を編集したりする場合があります。
多くの場合は、「素材」を使うことになるかと思いますが、その際には「利用規約の確認」が必須です。
また、実況動画は、画面の編集の際に、新たに音楽や画像を追加したり、解説を入れたりするため、この部分にはアップロードした人に著作権が発生します。
つまり、自分がアップロードした実況動画が無断で転載されていた場合は、相手を訴えることが可能なのです。
そして、同じ権利はゲームの制作者にも発生しますが、これを著作権法の「二次的著作物利用権」といいます。
ただし、無断転載された場合でも、その実況動画に「プレイ動画とは異なり、新たに音楽や画像を追加したり、解説を加えたりする」という「独自の創作部分」がない場合は、著作権侵害とはなりません。
例えば、ネット配信に敵した画像に修正したり、必要部分のみを取り出して繋げたり、という「技術的な創作」は「著作権で認められる創作」とはなりません。
これについては、「東地判令和3年4月23日・令和2(ワ)5914」という判例があります。
(知財FAQに解説が載っています。)