フリーゲームや動画を制作する時、多くの人はフリー素材を使うことでしょう。
では、「フリー」とはどういうことなのでしょうか?
結論から先に言うと「利用時に金銭授受が発生しない」場合がほとんどです。
もちろん、「自由」という意味の「フリー」でもありますが、自由といっても、大半は何らかの規制があります。
例えば、再配布不可、改変不可、商用利用不可、といった規制はよく見かけるのではないでしょうか。
また、「著作権フリー」と謳っていても、実際の規約を見れば著作権を放棄していない場合がほとんどです。
このページでは、「フリー」とはどういうことなのか、利用時にはどのような注意がいるのかを記載します。
「フリー」の種類
「フリー」と一口に言っても、様々なものがありますが、ゲームや実況(プレイ)動画の制作でよく見かけるのは、次のようなものではないでしょうか。
- パブリックドメインの素材
- クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの素材
- オープンソースソフトウェアの素材
- その他(ロイヤリティフリーなど)の素材
この中で、著作権が消滅しているのはパブリックドメインの素材だけです。
パブリックドメインの素材
パブリックドメインの素材は、著作権の保護期間が過ぎた著作物、著作権の相続人がいなかったために著作権が消滅した著作物、著作権が放棄された著作物、以上の3つに該当したものが当てはまります。
著作物の利用に一切の制限がありませんが、注意点があります。
パブリックドメインを利用して作られた作品には、新たに著作権が発生します。
例えば音楽では、パブリックドメインの曲を演奏してCDに収録し、販売した場合は著作隣接権が発生しますので、自由には使えません。
ゲーム制作・動画制作を考えている人は、覚えておいてください。
また、著作権は消滅していても、著作者人格権は守らなければなりません。著作者人格権は「著作者の生存中のみ適応される」とされていますが、著作権法では著作人格権の侵害を禁止しています。
ですので、著作者が望んでいない扱いをすれば、遺族から訴えられることもあります。
この場合の遺族とは、著作者の祖父母から孫までと規定されています。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの素材
クリエイティブ・コモンズは2001年にアメリカで出来た比較的新しい利用許諾(ライセンス)で、インターネットを閲覧していればどこかで目にしている可能性が高いです。
(※ 〇の中にアルファベットの「C」が二つ並んだロゴが使われています。)
単純に「クリエイティブ・コモンズ」や「CCライセンス」とも言います。
クリエイティブ・コモンズの日本語サイトでは、以下のように記載されています。
>クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称です。
CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールです。
CCライセンスは、絵・文章・音楽・動画などあらゆる分野に適用され、
後述するオープンソースライセンスがソフトウェア限定なのに対し、適用範囲が広いのが特徴です。
ゲーム用にグラフィック素材や音楽素材を提供している素材配布元の中にも、CCライセンスの適用が見られます。
そして、著作権は著作権者が保持しています。
CCライセンスには4つの条件があります。
その条件は、「作者名の表示」「著作物の改変を許可しない」「商用利用を許可しない」「元の著作物と同じCCライセンスで公開すること*1」です。
そして、この4つを組み合わせて6種類のライセンスがあり、著作者はその中から自分の著作物に適したものを選ぶことが出来ます。
ただし、組み合わせを自由に変えることは出来ません。
オープンソースライセンスの素材
オープンソースライセンス(Open Source Software license、OSSライセンス)は、ソフトウェアに限定された利用許諾(ライセンス)の一種です。
GPL(GNU General Public License)、MITライセンス、Apacheライセンス、MPL(Mozilla Public License)などが有名です。
そして、RPGツクールMV以降のスクリプト素材に多く適用されているのが、MITライセンスです。
これについては後日別途ページを設けて詳細を記載する予定です。
オープンソースライセンスの特徴をザッとまとめると、「著作権表示を消さなければ、改変や再配布は自由に行って良い」「何が起こっても自己責任で使う」といった条件が共通事項としてあげられます。
つまり、オープンソースライセンスも、著作権者が著作権を保持しているということです。
ライセンスによって、「CCライセンスと同様に、改変元の素材と同じ利用条件で配布しなければならない」など詳細が異なるため、使用の際にはよく確認しなければなりません。
その他(ロイヤリティフリーなど)の素材
その他によく見られる「フリー」の種類に、「ロイヤリティフリー」があります。
写真素材によく見られるもので、決められた範囲内のものなら、著作権利用料(ロイヤリティ)は必要ない、というものです。
この場合の著作権利用料は、「追加の著作権利用料」という意味合いで、素材自体は有料という場合も多いです。
背景に写真を多用するノベルゲームや女性向け恋愛シミュレーション、恋愛アドベンチャーといったジャンルのゲームを制作する場合に、一番関わる確率が高いと思われます。
そして、個人でフリー素材を配布している場合に最も多いのが、「利用規約の範囲内であれば、無料で自由に使える」というもので、この場合も著作権は保持されています。
そのため、利用規約に違反した使用は著作権侵害となってしまいます。
これは、クリエイティブ・コモンズや、オープンソースライセンスでも同じです。
ただし、利用規約の内容を作者が自由に決めていることが、クリエイティブ・コモンズやオープンソースライセンスとは異なっています。
フリー素材利用時の注意点
ここまで読んでくださった方は、一口に「フリー」といっても、様々な種類があり、「フリー素材全て≠何をしても良い無料素材」ではないことを理解していただけたのではないでしょうか。
では、「フリー素材」を使うときには、何に気をつければ良いのでしょうか?
みんなの著権というサイトに、分かりやすいまとめがありましたので、それを元に説明します。
最初にまとめると、気をつけることは以下の点です。
- どうしてフリー素材を提供できるのか説明がある
- 素材の出所がハッキリしている
- 利用規約が明確に示されていること
1.どうしてフリー素材を提供できるのか説明がある
これは、自作素材を自分の意思でフリーとして配布している、あるいは素材のダウンロードサイトに登録して配布している、などがきちんと分かるということです。
著作権者が誰か明示されていて、連絡先もきちんと書かれている素材は安全です。
それに加え、パブリックドメインであることがハッキリしていることも、この条件に当てはまります。
2.素材の出所がハッキリしている
素材の中には、フリー素材を改変して新たな素材として配布しているケースや、「再配布可能な素材」「パブリックドメインの素材」を配布しているケースもあります。
1の「どうしてフリー素材を提供できるのか説明がある」と合わせて、自分が使いたい素材がどんな素材なのかをしっかり確認する、ということです。
3.利用規約が明確に示されていること
きちんとした素材なら、必ず「利用規約」があります。
「商用利用は有料」「素材のままの再配布不可」「色替え、サイズ変更はOKですが、元の素材が判別出来ないほどの加工は不可」……内容を確認するだけでなく、しっかりと書かれているかどうかも確認しましょう。
あまりにも大雑把で分からない場合は、問い合わせをするのが無難です。
きちんとした配布元なら、Twitterだけでなくメールやブログのコメント機能など、複数の連絡手段を用意しています。
最後に大事なことですが、利用規約は「著作者人格権」の行使と同義です。
通常「フリー」という場合は、「著作権を行使しませんが、著作者人格権は行使します」ということです。
ですので、利用規約違反=著作権法違反となり、最悪の場合は裁判にもつれ込む場合もあります。
くれぐれも、素材利用時に利用規約違反はしないようにしましょう。