【SS】走攻機ガイアダッシャー

Last-modified: 2024-05-05 (日) 20:04:09



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あらすじ

西暦2023年、バローカー国
長きに渡って平穏であり続けたこの国に、地球破壊を目的とする組織「チェーン」が攻撃を開始した。
しかし、時を同じくして一つの防衛チームが動き出していた。
その名も「ガイアダッシャー(G.D)隊」。
今、五つの切り札が走り出そうとしていた……!
(予定:全24話)

注意

  • このSSを勝手に編集するのはご遠慮ください。
  • 続編、外伝の無断作成も禁止です。
  • 文章が低質なのはご了承ください。
  • 本作の「SS」は「スーパーロボット・ストーリー」の略語です。

登場人物

G.D(ガイアダッシャー)隊

  • 嵐田 真 (あらしだ まこと)
    本作の主人公。21歳。
    正義感の強い熱血漢で、やや無鉄砲な性格。
    ベータアタッカー・ダッシャーワンのパイロット。
  • 上条 鈴 (かみじょう れい)
    21歳。
    強気な性格で、真とは良く口喧嘩をする。
    ベータアタッカー・ダッシャーツーのパイロット。
  • 木戸 淳 (きど じゅん)
    22歳。
    チーム一の巨漢で、ムードメーカー的な存在。
    ベータアタッカー・ダッシャースリーのパイロット。
  • 大門 克司 (だいもん かつし)
    22歳。
    射撃の腕前で彼の右に出る者はいない。
    ベータアタッカー・ダッシャーフォーのパイロット。
  • 富野 良和 (とみの よしかず)
    45歳。G.D隊チーフ。
    冷静沈着な性格で、真達の良きリーダー。
    ベータアタッカー・ダッシャーファイブのパイロット。
  • 長谷川 康二 (はせがわ こうじ)
    56歳。バローカー国の科学者。
    人型兵器「ベータアタッカー」の開発者で、G,D隊の長官も務める。
  • 白川 理沙 (しらかわ りさ)
    20歳。長谷川博士の助手。
    大型戦艦「アタックシャトル」の艦長も務める。

チェーン

  • ゴストラ
    約30年前から行方不明となっていたバローカー国の科学者で、チェーンの首領。
    過去の出来事から長谷川博士に憎悪感を抱いている。
  • シグル
  • アバル
    ゴストラに作られた二体のアンドロイド。チェーンの幹部。

用語集

  • ベータアタッカー(BA)
    バローカー国で開発・製造された機動兵器の名称。
    開発者は長谷川 康二。
    ガイアダッシャー」や量産型の「ブレイクロス」などがこれに該当する。
  • G.D(ガイアダッシャー)隊
    五人の隊員で構成されたバローカー国の防衛機構。
    大型戦艦「アタックキャリア」やベータアタッカー「ガイアダッシャー」を主力兵器として運用する。
  • バローカー軍
    バローカー国の防衛組織。
    量産型戦闘機「ボルトラー」や量産型ベータアタッカー「ブレイクロス」などを主力兵器として運用する。
    G.D隊と共同作戦を取る場合もある。
  • 戦闘組織・チェーン
    ゴストラがリーダーの悪の組織。
    地球の環境破壊による人類の殲滅を目的とし、ベータアタッカーや機械生命体・機獣などを操る。

コメント

独り言多めです
感想等は気軽に受け付けてますので、ぜひどうぞ!

  • 6000人突破!総選挙中に達成できました、皆さん毎度ありがとうございます!! -- 超合金のスープ 2023-12-31 (日) 17:56:58
  • SS総選挙優勝おめでとうございます -- さくらだんご 2024-01-04 (木) 11:47:02
    • ありがとうございます!
      まさか総合優勝までできるとは思わなかったので嬉しいです! -- 超合金のスープ 2024-01-04 (木) 12:06:46
  • 他のSSとは別ベクトルで面白い。頑張ってほしい -- 2024-02-14 (水) 07:51:57
    • ありがとうございます!
      「他のssに負けないよう、新しい事をやってやろう!」と思って書いてたので、嬉しい限りです! -- 超合金のスープ 2024-02-14 (水) 15:46:50
  • 今更にはなりますが、総選挙優勝記念として本編完結後に後日談みたいなのを書こうと思ってます
    いつになるかは分かりませんが楽しみに待っていてもらえると幸いです! -- 超合金のスープ 2024-02-20 (火) 06:14:30
  • 7000人突破ありがとうございます!! -- 超合金のスープ 2024-03-08 (金) 07:29:10
  • やっぱり面白いですね~ 戦闘シーンの迫力がすごい
    あと白川さんがかわいい -- ドードー鳥(コテハン) 2024-03-16 (土) 12:20:45
    • 毎度ありがとうございます!
      我ながら文と擬音の組み合わせ方には気を使って良かったなと…

      理沙、何となく清楚ってイメージで喋らせてただけ(おい)なのでそう言ってもらえるとは驚きです。
      やはり黒髪&眼鏡っ娘は正義なのか…? -- 超合金のスープ 2024-03-16 (土) 13:01:47
      • 3話の艦長COのとき、ウッキウキで名札見せてそうで自慢したかったんだなと考えるととてもかわいいです(小並感) -- ドードー鳥(コテハン) 2024-03-16 (土) 13:31:53
      • >ウッキウキで名札見せてそう
        その通り!(某タケモト)す、鋭い…
        あの描写は「フフン」と自慢げに名札を渡してると思ってもらっても差し支えないですね -- 超合金のスープ 2024-03-16 (土) 15:36:15
  • そういや執筆始めて一年が経ちました
    のくせに三話しか書けてないとかマ? -- 超合金のスープ 2024-03-29 (金) 22:01:39
  • 次回予告つけようかなって迷ってるワシ(3)
    でも怪文書になりそうで怖い -- 超合金のスープ 2024-04-02 (火) 14:22:34
  • 8000人ありがとうございます!!
    引き続き書き進めなきゃ… -- 超合金のスープ 2024-04-27 (土) 16:41:00
  • ざまぁないぜ...?
    つまりアバルのイメージCVは飛田展男さん!? -- かねやん丸(編集者) 2024-05-05 (日) 19:43:49
    • ラガーをぶっ壊しながら機動兵器二体をフルボッコにするカ◯ーユ・ビ◯ン…
      違和感どこ…?ここ…? -- 超合金のスープ 2024-05-05 (日) 19:58:00

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パイロット版

第1話「G.D隊発進せよ!」



???「どうして信じてくれないのですか!?」
一人の男が叫び声をあげた。
男の名はゴストラ。バローカー国の科学者である。
彼が叫んだ理由を説明しよう。


ゴストラは、バローカー国の優秀な科学者だった。
彼が開発した兵器はどれも画期的な物で、人々から高く評価されていた。
しかし、それは長く続かなかった。


科学者・長谷川 康二が人型戦闘兵器「ベータアタッカー」を開発したためである。
これにより世間の注目は長谷川に集まっていき、ゴストラの下には開発の為の資金すら集まらなくなっていった。
ゴストラは絶望し、酒に溺れる日々が続いていた。
そんなある日の事だった。


世界各国の科学者による国際会議が開かれる事となり、兵器開発で忙しい長谷川に代わり、ゴストラが会議に出席する事となった。
ゴストラはこれを資金を集める絶好の機会と見て、あらゆるデータをでっち上げ「地球崩壊の危険性」という論文を作り上げた。
論文を発表する事で科学者達を騙し、兵器開発の資金を得ようと考えたのである。
そして会議当日、ゴストラは科学者達の前で論文を発表した。


ところが、発表を終えたところ、科学者達からは「あり得ない」と一斉に笑われてしまった。
怒り狂ったゴストラは、前述のような叫び声をあげたのである。


科学者A「そう言われましても...普通あり得ないでしょう、「巨大な怪物が地球を破壊し尽くす」なんて」
科学者B「もし仮にそうなったとしても、ベータアタッカーで怪物を食い止められるでしょう」
ゴストラ「な...何ですとぉ...!」
科学者C「こんな薄っぺらい論文で資金を集められるほど、社会は甘くありませんよ」
科学者達の笑い声が会場に響き渡る。
ゴストラは俯きながら、会場を後にしていった。


ゴストラは、怒りにわななきながら住宅街を歩いていた。
ゴストラ「...そうだ。地球を俺の手で破壊し尽くし、奴らに復讐すれば良いんだ!ハハハ...ウヒャヒャヒャヒャ!」


その日から、ゴストラを見た者は誰もいなかったという。




それから四年後、2022年。
???「...来たか」
バローカー国のバローカー海に存在するG,D(ガイアダッシャー)隊基地の滑走路に、四機の戦闘機が着陸した。
それぞれの戦闘機のコックピットから、四人の若者達が現れた。
???「やぁ、君達が来るのを待っていたぞ」
若者達の前に現れた男は、科学者・長谷川 康二。
長谷川「早速だが、一人ずつ自己紹介をしてくれるかい?」
四人は頷き、自己紹介を始める。
真「嵐田 真です
鈴「佐々木 鈴です
淳「木戸 淳です
克司「春日 克司です
長谷川は四人それぞれと握手を交わした。
長谷川「さて、君達のキャプテンの下へ向かうとするか」
克司「キャプテン?」
長谷川「着いてからのお楽しみだ」
長谷川達は基地の中へ入っていく。


基地の内部は高性能コンピューターが幾つも設置されており、真達は驚きの声をあげる。
淳「すごい...軍にも匹敵するレベルだ..」
鈴「アタシらは左遷させられた訳じゃなさそうね」
???「面白い事を言ってくれるな」
真達が振り向くと、一人の貫禄のある男が歩いてきた。
長谷川「紹介しよう。G,D隊隊長の富野 良和君だ」
良和「よろしくな」


長谷川「早速だが、君達にこれを見てもらおう」
長谷川がモニターのスイッチを押すと、五体のベータアタッカーが映る。
淳「何だこりゃ!? 全く見たことないベータアタッカーだぞ!?」
???「私が説明します」
ロングヘアーの女性が真達の前に現れた。
長谷川「おっと、君達には紹介し忘れていたな。私の助手の白川 理沙君だ」
白川「宜しくお願いいたします」
真「早速ですが理沙さん、このベータアタッカーは一体何なんですか?」
白川「この五体が、皆さんに搭乗していただくベータアタッカーです」
白川「真さんは、中央のベータアタッカー・ダッシャーワン
白川「鈴さんは右から二番目のダッシャーツー
白川「淳さんは左から二番目のダッシャースリー
白川「克司さんは右端のダッシャーフォー
白川「安彦さんは左端のダッシャーファイブ
白川「以上が、五体のベータアタッカーの名称です」
克司「でも、今までのベータアタッカーに比べて少し小さくないですか?軍の奴でも18mはあったのに...こいつらは8mぐらいしかないですよ?」
長谷川「この五体は合体するからな」
鈴「合体!?」
長谷川「合体前の状態を18mほどで作ると、合体した際にとてつもない大きさになってしまう。その為、合体時に他のベータアタッカーと並ぶように設計したんだ」
真「なるほど...」
長谷川「この戦艦も見てもらおう」
長谷川がスイッチを押すと、今度は100mもある巨大な戦艦がモニターに映った。
真、鈴、淳、克司「うわぁっ!?」
その巨大さに驚く四人。
白川「これは大型戦艦・アタックキャリアと言います。先ほどの五機のベータアタッカーを格納する事が可能です」
長谷川「まだ未完成だがな」
鈴「こんなに凄い兵器を作れるなんて...」
淳「俺、こんなの操縦出来るかな~?」


ファンフォォン!ファンフォォン!
基地にサイレンが鳴り響く。
長谷川「!?...一体、何が起こったんだ...」


バローカー国の首都、コレダー
そこへ突如、謎のベータアタッカーが出現した。


ゴストラ「...コレダーか。久しぶりに見るな...」
シグル「さて、どうなさいます?」
ゴストラ「決まっているだろう。私の復活を祝い、徹底的に王国を破壊し尽くしてやるのだ。このベータアタッカー・レジアルを使ってな」
アバル「存分にやってやりましょう」
レジアルはビルを踏み潰し、攻撃を開始する。


一方、真達はモニターでコレダーの様子を確認していた。
克司「何だあの機体は!?」
長谷川「白川君、軍に連絡を取ってくれないか」
白川「了解です」
良和「皆、念のため戦闘態勢に入っておけ」
数分後。
白川「軍から連絡が入りました!ボルトラーが三機、ブレイクロスが四機出撃したそうです!」


コレダーに、軍の兵士達が到着した。
兵士A「よし、一発当てて驚かせてやる!」
三機のボルトラーがそれぞれ機首からビームを放つ。
ビームはレジアルに直撃するも、微動だにしないレジアル。
兵士D「だったらこれはどうだっ!」
一機のブレイクロスが空高くジャンプし、飛び蹴りを放つ。
それを察知したレジアルは、ブレイクロスの右足を両手でつかみあげる。
レジアルはブレイクロスを勢いよく地上へと叩きつける。
兵士D「ぐはぁっっ!」
兵士B「おのれぇっ!急接近してやる!」
兵士A「おい、よせっ!」
一機のボルトラーがレジアルに急接近した。
アバル「無駄な事を」
...次の瞬間、レジアルの拳がボルトラーに直撃した。
炎上しながら墜落するボルトラー。
兵士G「おい!大丈夫か!」
兵士E「...ちくしょう!」
二機のボルトラーが、同時にミサイルを発射する。
それを避け、ライフルを構えるレジアル。
ライフルからビームが放たれる。
ビームが一機のボルトラーに直撃し、爆発するボルトラー。
兵士C「うわぁぁぁっ!」
残った一機のボルトラーにもビームを放つレジアル。
一回転しながらビームを避けるボルトラー。
兵士A「ようし、あいつらの仇を取ってやる!」
次の瞬間、レジアルが足を振り上げた。
ボルトラーに直撃するレジアルの足。
兵士A「う、うわぁぁぁぁっっ!」
爆発四散するボルトラー。
兵士D「...なんてこった!」
兵士F「こうなったらやけくそだ!」
一機のブレイクロスがレジアルに掴み掛かる。
兵士G「おい!あいつを援護するぞ!」
続けて他の三機もライフルを構える。
レジアルを投げ飛ばすブレイクロス。
兵士D「よし、一斉に攻撃するぞ!」
ビームを連射する四機。
ゴストラ「...反射バリアを使うぞ」
シグル「分かりました」
レジアルが両手を広げると、周辺にバリアが広がった。
兵士G「何だあれは!」
バリアにビームが衝突する。
そして、ビームはブレイクロス達へ跳ね返った。
兵士達「ぐわぁぁぁぁっ!!!!」


<G,D隊基地>
白川「戦闘部隊、全滅しました...」
彼らが見つめるモニターに映っていたのは、建物が崩壊し機械の残骸が散らばるコレダーの姿だった。
克司「な...何なんだよ...」
鈴「ちくしょう!アタシらはただ見ている事しか出来ないなんて!」
真「博士!何とか...何とかならないんですかっ!?」
長谷川「...一つだけ方法はある」
淳「何ですか、その方法は!?」
長谷川「...お前達五人があのベータアタッカーで戦う事だ
克司「ええっ!?」
白川「無茶です!あの五機は合体テストどころか...稼働テストも行っていないんですよ!」
真「...分かりました、出撃しましょう!」
白川「真さん!?」
真「白川さん...ここで街が破壊される所をボーッと見続ける位なら、あのベータアタッカーに乗って死んだ方がマシです!人が死んでいくのは...もう二度と見たくないんです!」
真の一声に、うなずく鈴達。
真「お願いですから、俺達に出撃させてください!」
白川「...分かりました。ベストを尽くしてください!」
真「はい!」
長谷川「...よし!G,D隊、出撃!
五人「了解!」


整備員「runway gate open.runway gate open」
(意味:「滑走路のゲート、オープン」)
地面の滑走路が真っ二つに開く。
滑走路の中から五機のベータアタッカーが現れた。
真「ダッシャーワン、出撃可能!」
鈴「ダッシャーツー、出撃可能!」
淳「ダッシャースリー、出撃可能!」
克司「ダッシャーフォー、出撃可能!」
良和「ダッシャーファイブ、出撃可能!」
整備員「roger that. I wish you victory」
(意味:了解。君達の勝利を祈る)
長谷川「ハイスピードテイクオン!ゴー!」
五人「ハイスピードテイクオン!ゴォーッ!」


五機の足下のランディングギアが高速回転し、滑走路を走る。
ランディングギアを収納し、ジェット噴射で空へ舞い上がる五機。
良和「よし、行くぞっ!」
四人「はい!」
目にも止まらぬスピードで飛行し、コレダーへ向かう五機。


はたして、彼らはレジアルに勝てるのだろうか?
そして、地球はどうなるのだろうか?

第2話「登場! ガイアダッシャー」

<コレダー>
ゴストラ「首都という物が、こうもあっさり壊れるとは...」
アバル「情けないものですね」
シグル「...何か来ます」
ゴストラ「何だと?」


コレダーの上空に五機のベータアタッカーが到着した。
良和「攻撃目標発見!油断するなよ!」
真「...必ず仇を取ってやる」
鈴「真...」


地上に降り立つ五機。
ゴストラ「長谷川の奴のベータアタッカーか」
克司「なぜ博士の名を!?」
ゴストラ「...そんな事を聞いている暇はあるのか?」
ライフルのトリガーを押すレジアル。
良和「ビームが来るぞ!」
ビームがダッシャーワンを狙う。
真「うわぁっ!」
間一髪でビームを避ける真。
長谷川「...聞こえるか皆!」
鈴「博士!」
通信で五人に話す長谷川。
長谷川「奴のビームを分析した結果、九千度の線がある事が分かった!直撃すると大きなダメージを受けるはずだ!注意して戦ってくれ!」
良和「九千度...」
ゴストラ「ちっ、あの虫けらめ」
鈴「でも、その虫けらに負けたのはどこの誰?」
ゴストラ「やかましいっ!!」
怒り狂い、ビームを乱射するレジアル。
鈴「きゃあっ!」
「鈴ぃぃっ!」


真「ぐっ...!」
ダッシャーツーを庇い、ビームを受けるダッシャーワン。
鈴「真!?」
真「大丈夫だ...まだ戦える...!」
克司「よくも真をっ!」
ライフルを構え、ビームを発射するダッシャーフォー。
ダッシャースリー、ダッシャーファイブもそれに続きビームを発射する。
ゴストラ「はぁっ!」
反射バリアを張るレジアル。
淳、克司、良和「があっっっ!!」
跳ね返ったビームが三機に直撃した。
真「ちいっ!」
克司「あのバリアを破らないと、こっちが持たない!」
淳「でも、あの身長差じゃ格闘戦もろくにできないぜ!」
真「身長差...そうだ!合体だ!」
良和「合体だと!?」
真「合体して奴と戦えば、少しは勝算があるはず!」
真「博士!合体方法を教えてください!」
長谷川「分かった!」


長谷川「コックピットの右側に、格闘ゲームのようなレバーがあるだろう?そのレバーで五人同時にコマンドを入力するんだ。今からモニターでそのコマンドを教える」
五人のコックピットのモニターに映し出されるコマンド。
長谷川「そして叫ぶんだ。「バトルオン・フォーメーション」と」
真「...分かりました!」


真「皆、用意はいいか!」
良和「大丈夫だ!」
克司「OKだ!」
淳「バッチリ!」
鈴「こうなったら一か八かだ!」
真「よし、行くぞっ!」
コマンドを入力する五人。


↓↙️←↙️→
五人「バトルオンッッ!!フォウメイション!」


次の瞬間、五機が空高く舞い上がった。
ゴストラ「何事だ!」
アバル「わ...分かりません!」
人間の各部位のように変形する五機。
克司「す...凄まじい衝撃だぁっ!」
真「堪えろ!堪えるんだっ!」
マッハ1.5で飛行しながら合体する五機。
そして、辺りに激しい光が降り注いだ。


光の中から、一機のベータアタッカーが現れた。
真「ガァァァイアッ!!ダッシャァァァァッッ!」


五機のベータアタッカーが合体した最強のベータアタッカー。
それが、ガイアダッシャーである。


白川「せ...成功しました!」
長谷川「ああ...頼むぞ、お前達!」
五人「了解!」


真「反撃開始だ、このジジイっ!」
レジアルにガイアダッシャーの飛び蹴りが直撃した。
ゴストラ「ぐほぁっ!?」
ふっ飛ぶレジアル。
真「まだだっ!淳、鈴!ガイアナックルだ!」
鈴、淳「OK!」
地面に激突寸前のレジアルを狙い、ガイアダッシャーの両拳が発射される。
ナックルがレジアルに衝突する。
ゴストラ「うがぁっっ!」
勢い良く地面に衝突するレジアル。
真「へへっ、どんなもんだい!」
鈴「浮かれるのは奴を倒してからだよ!」


ゴストラ「おのれガキども...!」
立ち上がるレジアル。
アバル「大丈夫です。我々には反射バリアがあります」


淳「まず、奴のバリアを破壊しないと勝ち目はないはずだ」
克司「でも、一体どうやって...」
長谷川「...五走剣を使うんだ」
鈴「五走剣?」
長谷川「五走剣でバリアを切り裂き、奴にダメージを与えられるようにするんだ。ただ、それが出来るかどうかは断言できないが...」
真「了解!一か八かやってみます!」
「五走剣!」

ガイアダッシャーが五走剣を構える。
真「克司、隊長!全速力だ!」
克司、良和「了解!」
両足のランディングギアが高速回転する。
ハイスピードで突撃するガイアダッシャー。
ゴストラ「いかん!」
反射バリアを構えるレジアル。
バリアを目掛け、ガイアダッシャーが五走剣をぶつける。
飛び散る火花。
五人「うおぉぉぉぉっっっ!!!」
ゴストラ「ま...まずいっ!!」


...まるでガラスのように、バリアが砕け散った。
シグル「バッ、バリアがっっ!!」
真「まだだぁっ!!」
ガイアダッシャーがもう一度剣を振り上げる。


ズシャァァッ!!
鋭い音とともに、レジアルの右腕が宙に舞った。
ゴストラ「なっ!? なんと恐ろしい力だ!」
鈴「真!そろそろ決めちまえ!」
真「よし! エネルギー全開!


超スピードで空中高く飛び上がるガイアダッシャー。
ゴストラ「つっ、追撃しろっ!」
アバル「だ...駄目です!先ほどの一撃で全機能がショートしています!」
ゴストラ「何だとぉっ!? ええい!脱出するぞっ!」
シグル、アバル「はっ!」


真「とどめだっっ!!!」
五走剣が青く光る。
真「五走剣!攻速ブロー斬っっっ!!」
鈴、淳、克司、良和「攻速ブロー斬!」
レジアル目掛け、マッハ5で突撃するガイアダッシャー。


...レジアルが真っ二つに切り裂かれた。
次の瞬間。


ドグァァァァァァァンンン!!!
青色の爆発が起こる。
爆風が巻き起こる中、叫び声が響いた。
真「よっしゃぁぁぁっっっ!!」


白川「良かった...」
長谷川「...ああ」
白川が涙を流す中、長谷川はどこか不安げな表情を浮かべていた。




<2日後>
真「...ふわ~あぁ」
あくびをする真。
鈴「何やってんだ、だらしない」
真「だってよ、ろくに仕事もないのに毎日基地に来いって...まともな仕事もないし...これじゃ軟禁だよ、軟禁!」
良和「バカヤロウ!」
怒鳴り声を上げる良和。
良和「そんな愚痴を言う暇があるなら、戦闘訓練でもすればいいだろう!この前のように突然敵が来る可能性だって...」
白川「大変です!ゴストラがテレビを...」
良和「何!?」


真、鈴、良和は白川とともにモニターの前へ駆けつけた。
ゴストラ「久しぶりだな。地球の人間ども。」
ゴストラがTVジャックを行っていた。
ゴストラ「四年前から、私は姿を消していた。何故だか分かるか?地球を破壊するためだ」
ゴストラ「私のような天才に目を背け、長谷川のようなボンクラに手を貸したお前達に復讐するためでもある」
ゴストラ「これから私は戦闘組織「チェーン」を結成し、地球破壊を開始する」
ゴストラ「貴様らの絶望した顔を楽しみにしているぞ!ハハハハ!」
ゴストラはジャックを終了した。
「...ふざけるなぁっっ!!」
テーブルを拳を叩きつける真。
「貴様なんかに...地球を破壊させてたまるか!」
「奴らと戦おう!皆!」
鈴、淳、克司、良和「おう!」
頷く四人。
長谷川(頼んだぞ...お前達)


凶悪なチェーンの陰謀を、G,D隊は打ち砕く事はできるのか?
それは、君自身の目で確かめてほしい。

第3話「怪奇!ダッシュ爺さん」

<レザー>
男「あ~あ!何て日だよ!」
深夜の森の中を一台の車が走る。
男「あのクソ上司め!ちょっとサボった位でぶん殴るなんてあり得ねぇよ!」
男がタバコに火を付ける。
男「ったく、やってらんねぇよ...」
愚痴をこぼしたその時。


...後ろから何かが近づいてくる。
男「ん?」
男がバックミラーを確認する。
そこには、猛スピードで車に接近する老人の姿が映っていた。
男「な、何だよあれっ!?」
車のアクセルを踏み、全速力で走る。
しかし、同時に老人の走る速度も増す。
老人が腰の鞘から刀を抜く。
男「ひいいいっっっっ!?」
男は驚き、車から身を投げ出す。
地面に転がり落ちながらも、老人から逃げようとする男。
老人「ヒャヒャヒャヒャ...」
男の行動も空しく、老人が刀を振り上げる。
男「あ...あっ...」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ.......」


<3日後>
G,D隊基地。
良和「おい、お前達。仕事が入ったぞ」
真「仕事?」
鈴「一体、アタシらに何の用が?」
良和「老人退治だそうだ」
真、鈴、淳、克司「はぁ?」


良和「3日前から、深夜に多くの人がさらわれる事件が各地で起きているんだ」
良和「目撃者の証言によると、犯人は老人の男らしい」
鈴「女をさらってあんな事やこんな事...」
真「おい」
良和「別の目撃者によれば、「老人の走る速度は車より速い」との事だ」
淳「へ?」
良和「軍の分析によれば、その老人の走る速度はおよそ時速200kmという可能性があるらしい」
鈴「200km!?」
克司「あり得ないですよ!」
良和「克司の言う通り、人間技とはとても思えん。チェーンの仕業かもしれんな」
真「そういう事か...」
良和「そこで今夜、真と克司にレザーへ調査に向かってもらう。頼んだぞ」
真、克司「了解!」


真「へ~い、ボーイ、そらをみろ、うつむかないでさ~♪」
歌いながら、車を運転する真。
克司「なーに「シャリバン歌ってんだよ。音痴のくせによ」
真「良いだろ別に。カラオケで70点未満しか取れない奴には言われたくないね」
克司「んだとぉ...」
その時。


真「...おいでなすったようだぜ」
克司「何がだよ」
真「カーブミラーを見ろよ」
カーブミラーを覗く克司。
克司「...証言通りだ」
背後から老人の男が迫ってくる。
真「スピードを上げるぞ!」
車のアクセルを踏み込む。
それでも、老人は走るのをやめない。
それどころか、走るスピードを上げているのだ。
克司「時速100kmでも付いてくるのか!?」
真「ちくしょう!これ以上速度は上げられない!」
車と老人の距離が3m未満に縮まる。
老人が鞘から引いた刀を握る。
真「克司!頼んだ!」
克司「喰らえっっ!」


バシュウンッッ!!
克司の放ったビームが刀を弾く。
老人「なぬぅ!?」
道路に倒れこむ老人。
車から降り、銃を構える二人。
真「お前は一体何者なんだ!」
老人「G,D隊か...そちらから出てくるとは好都合じゃ」
克司「やはり貴様はチェーンか!」
老人「ご名答」
真「おのれっ!この場で倒してやる!」
バシュウンッッ!! バシュウンッッ!!
ビームを乱射する真。
老人「ヒャヒャヒャヒャ...」
ハイスピードでそれを避ける老人。
バシュウンッッ!! バシュ...
真「!?」
「エネルギーギレデス。タダチニホジュウヲオコナッテクダサイ」
銃の機械音声がなる。
真「なんだって!?」
老人「茶番は終わりじゃ!ヒャヒャヒャヒャ...!!
その直後、老人が巨大な獣悪機・ファルドロへと変化した。
ファルドロ「ワシのこの平手で血祭りに上げてやる!」
ファルドロの右手が真達を襲う。
真「避けろっ!」
宙返りでそれを避ける二人。
克司「ベータアタッカーの出撃要請をしてくれ!」
真「おうよ!」
「こちら嵐田 真!ダッシャーワン、ダッシャーフォーの出撃を要請します!」


説明しよう。G,D隊のベータアタッカーには自動操縦プログラムが組み込まれており、パイロットの要請があった場合は無人でも動く事が可能なのだ。


長谷川「真達から出撃要請が来た。すぐに向かってくれ」
鈴、淳、良和「了解!」


整備員「runway gate open.runway gate open」
地面の滑走路が真っ二つに開く。
滑走路の中から五機のベータアタッカーが現れた。
鈴「ダッシャーツー、出撃可能!」
淳「ダッシャースリー、出撃可能!」
良和「ダッシャーファイブ、出撃可能!」
整備員「roger that. I wish you victory」
長谷川「ハイスピードテイクオン、ゴー!」
三人「ハイスピードテイクオン!ゴォーッ!」


ファルドロ「喰らえ!」
ファルドロが右足を振り上げる。
だが、真達は間一髪でそれを避ける。
真「このままじゃ、森がメチャクチャになっちまう!」
克司「あ...隊長達だ!」


五機のベータアタッカーが到着した。
鈴「お呼びとあらば即参上!さぁ、とっとと乗りな!」
真「ああ!」


真「搭乗完了!」
克司「こっちもOKだ!」
真「さぁて、反撃開始...」
ファルドロ「待った!」


ファルドロ「こいつらがどうなっても良いのか?」
ファルドロが右手に握っている紫色の球を見せる。
「がっ、G,D隊!」
「なんだってぇっ!」
ファルドロ「この球の中には人質がいるぞ!ワシを攻撃すれば、こやつらの命は無い物だと思え!ヒャヒャヒャヒャ!」
鈴「卑怯な!」
ファルドロ「うるさいっ!」
ファルドロが五機に猛スピードで突撃する。
真「つぇいっ!」
それを避ける真。
ファルドロ「ぬぅ...なかなかやるわい」
真「奴のスピード...恐ろしく速い...!」
良和「まず、人質を救出しないとまともに攻撃ができん!」
淳「でも、あんな速いのからどうやって...」
克司「俺に良い考えがある」
真「良い考え?」
克司「隊長達、何とか奴を食い止めてくれないか?その間に俺が人質を救出する」
真「...了解!信用してるぜ!」


良和「よし、作戦開始だ!」
真、鈴、淳「了解!」
良和「ガイアネットボールを投げろ!」
「でえぇい!」


四機が網模様のボールを勢い良く投げる。
ファルドロの両手両足に直撃するボール。
次の瞬間、ボールは網のように変化しファルドロを拘束した。
ファルドロ「うっ、動かん!?」
鈴「奴を拘束してられるのは15秒程度だ!さぁ、さっさとやっちまえ!」
克司「おう!絶対外すかよ!」
機械音「10、9、8...」
カウントが始まる。
機械音「5、4、3...」
克司「今だっ!」


ドギュウンッ!
ダッシャーフォーがライフルのトリガーを押す。
次の瞬間、ファルドロの右手から球がこぼれ落ちた。
ファルドロ「おのれぇっ!」
怒り狂いながら叫ぶファルドロ。
真「よしっ!」
淳「...ん?あれは何だ?」


三機のボルトラー、一機のブレイクロスが到着した。
兵士「長谷川博士からの連絡で来ました。人質の救助は我々に任せてください」
良和「了解だ。頼んだぞ」
ブレイクロスが地面に転がる球を両手で掴む。
ファルドロ「くそぉぉっ...!」
「真、今がチャンスだ!」
「行くぞっっ!!」


↓↙️←↙️→
五人「バトルオンッッ!!フォウメイション!」


真「ガァァァイアッ!!ダッシャァァァァッッ!」
青色の閃光を放つガイアダッシャー。
「でやぁぁっ!!」
ガイアダッシャーの飛び蹴りがファルドロに炸裂する。
ファルドロ「おがぁっ!」
ファルドロの巨体が宙に舞う。
ファルドロ「ならばっ!」
空中からガイアダッシャーに突撃するファルドロ。
「ガイアバルカン!」
60mmバルカンを頭部から放つ。
バルカンがファルドロに直撃する。
ドグォォォン!
地面に激突するファルドロ。
ファルドロ「まっ...まだやられてたまるかぁ!」
ファルドロが両手からビームを放つ。
ガイアダッシャーが両手を前に突き出し、バリアを張る。
グァァァァン!
バリアに弾かれたビームにより、辺りに爆発が起こる。
ファルドロ「ちっ、ちくしょぉぉぉ!」
「とどめだぁっ!!」
超スピードで空中高く飛び上がるガイアダッシャー。


五走剣が青く光る。
真「五走剣!攻速ブロー斬っっ!」
鈴、淳、克司、良和「攻速ブロー斬!」
マッハ5のスピードで突撃するガイアダッシャー。


ザシュゥゥッッ!
鋭い音と同時に、ファルドロが倒れる。


ファルドロ「む...無念...」


ドグァァァァァン!
大爆発が起こった。


真「...ふぅ」
克司「基地に戻るとするか」
剣を収め、空へ舞い上がるガイアダッシャー。


その日、夜空に浮かぶ五つの巨人を目撃した者が数多くいたという。


<翌日>
白川「皆さん!軍から情報が入りました!」
長谷川「...結果はどうだった」
息をつめる長谷川達。
白川「エネルギーボールの破壊に成功、閉じ込められていた方達も無事だそうです!」
真「...よっしゃぁっ!」
ガッツポーズを決める真。
鈴「びっくりしたぁ...子供みたいにはしゃぐんじゃないよ」
淳「まぁまぁ、良いじゃないか。お前は嬉しくないのか?」
鈴「それは...嬉しいに決まってるだろ」
真「ほら見ろ!このツンデレめ!」
鈴「何がツンデレだよ!このガキめ...!」
良和「ははは...平和だな」


良和「良いかお前達」
真「何ですか、隊長?」


良和「我々は、ただ敵と戦う為に結成されたのではない」
良和「この国...いや、世界中の人々のために結成されたんだ」
良和「今も世界のどこかで、争いや災害は起こり続けているだろう」
良和「それに苦しむ人達を救うのが我々の使命だ」
良和「無論、我々は神ではない。ただの人間だ」
良和「しかし、ただの人間だからこそ、他人に手を差し伸べ、互いに助け合っていくんだ。命は平等だ。優劣なんてつけてはいけない」
良和「...綺麗事のように思うかもしれないが、お前達にはこの事を忘れずにいてもらいたい。だらだらと喋ってすまなかったな」
真「...いえ、俺達がこうして戦う理由がはっきりと分かりました」
克司「ただ悪を倒すだけじゃない、人々の為に戦う事が大切だ、ってね」
鈴「...よーし、この事を忘れずに生きていけよ、皆!」
真「なーにお前が偉そうにしてんだ、このスケバンモドキが」
鈴「...さっきからツンデレだのスケバンだの...いい加減にしろよぉっっ!
真「いっ、いや、タンマ...」
「黙れっ!」


バシィッ!!
真の頬に、鈴の平手が直撃した。
「くたばれこの野郎!」
淳「も、もうその辺にしとけ!」
克司「はっはっは!仲睦まじいお二人ですこと!」
淳「笑ってないでお前も止めろよ!」


つづく

本編

第1話「スクランブル・ダッシュ!!」


「...マイクテスト、マイクテスト。聞こえるかしら?」
「バッチリです、赤野さん」
「それじゃ、カメラ回しますよ... よーい...スタート!」


<2022年10月5日 AM8:00>

赤野「...おはようございます。「バローカーモーニング」のお時間です」
マイクを握り、落ち着いた声で話すスーツ姿の女性。
ここは、バローカー国及びガッツ大陸から約2000km離れた無人島・ドル島。
カメラマンと音響スタッフ、そして赤野の三人は、ヘリで島を上空から撮影している最中であった。

赤野「今、カメラに映っているのが言わずと知れたドル島です。実はこの島の周辺で、原因不明の爆発が起こった模様です。バローカー軍が調査を行ったのものの、詳細は分からないままで...」

...その時。


...ドッグァァァンン!!
突如として、島付近の海面から大爆発が起こった。
赤野「きゃーっっ!!」
爆風の煽りを受け、ヘリコプターが体勢を崩す。
カメラマン「お、おいっ!大丈夫なのか!?」
操縦士「ひとまず、ここから離れなくては...」
赤野「げ、現場からは以上です!」
プロペラを勢い良く回しながら、ヘリは島から遠ざかっていった。

「...只今、ヘリを撤退させる事に成功いたしました!」
灰色の軍服を見にまとった兵士が叫ぶ。
「...ちっ」
「どうしたの?アバル」
椅子に腰掛け、威圧的な態度を取る二人の男女。
...いや、二体の"人造人間"。
アバル「...つまらないんだよ、シグル。なんで攻撃をしないんだ?民間人だろうとやっちまえば良いのによ」
シグル「...ふーん。サディストな思考回路も、ここまで来るとただの鬼畜ね」
アバル「あ?今なんて...」
シグル「それに、ゴストラ様の判断なんだから仕方ないわよ。今日は"あの作戦"を開始する日だもの」
アバル「...なるほど。無駄な攻撃は控える、って事だ。いずれにせよ、人間どもを蹂躙できるのが楽しみでしょうがないぜ…ハハハ...」
シグル「...やっぱり鬼畜だわ」


重々しい足音を周囲に鳴り響かせ、一人の男が階段を降りる。
シグル「...将軍様のご登場ね」
アバル「...兵士全員、敬礼しろ!
無数の兵士達が一斉に敬礼を行う。
その数は、ざっと二万人ほどだろうか。


「...時は来た!
その怒気の混じった叫び声に、思わず後ずさる兵士達。
アバル「...いかがなさいましたか、ゴストラ様」
ゴストラ「...私の長年の屈辱を晴らす時が来たのだ」
...男の体が震える。その顔は、恐ろしく怒りに満ち溢れていた。
ゴストラ「この島に潜伏してから4年...ついに、私の怒りをぶつける時が来た...」

ゴストラ「...これより、我々戦闘組織・チェーンの作戦を実行する!たとえ何者だろうと容赦するな!この星を消してしまえぃっ!」

「はーっ!!!」
兵士達が一斉にけたたましく叫んだ。

シグル「フフフ、面白くなってきた...」
アバル「血祭りの始まりだな...!」




我々地球人の知らぬ間に、恐るべき作戦が開始されたのであった...




それから2時間ほど後の事…
四機の戦闘機・ボルトラーがバローカー海の上空を飛行していた。


「...おい!どこまで高度を上げれば良いんだよ!」
「そんな事は俺も知らねぇよ!」


真「...ったく、総帥も総帥だぜ!国家機密だ国家機密だと、何も言わずに謎の空母に向かえって?そんなに俺たちが信用できないのか!」
淳「そうカッカするなよ...」
克司「俺たちはただの軍人、お偉いさんとは格が違うんだよ」
真「でもよ...!」
鈴「...あーうるさい!ピーチクピーチク騒ぐな!」
真「知るか、スケバンが!」
鈴「言ったなこの野郎!」
真「てめぇだって...」


淳「はぁ...どっちもどっちもだぜ...」
言い合いを続ける二人に呆れてか、淳がため息をつく。
克司「どんぐりの背比べ、五十歩百歩とはこの事だな...」
テンションの下がった二人に対し、四機は機体の高度をどんどん上昇させていく。


『ピピピピ...ピピピピ... 』
コンピューターの電子音声が鳴る。
『目的地の反応をキャッチしました』
克司「...あと何kmだ?」
『残り70kmです』
克司「よし、でかした!」
淳「お?...そろそろ見えてきたぜ」


四人の目の前に佇む巨大な空母。
その名はガードベース。これから、彼らの本拠地となる場所である。


鈴「こうして見ると、ありえない大きさ…」
淳「あぁ、少し怖くなってきたな...」
克司「とりあえず、あの中に着艦するぞ」

ゴォォォォッ...
飛行速度を落としながら、四機は空母の中へと向かっていく。


シュウッッ…
四機が着艦し、機首下部の降着装置が小さな音を立てる。

鈴「ふーっ…」
機体のコックピットから降り、ヘルメットを両手で脱ぐ四人。
克司「…さて、来たからにはここのトップと顔合わせに行かなきゃだが…」


「到着したようだな…軍のエース諸君」
彼らの目の前に現れた一人の男。
真「...誰だ、あんた?」
「流石に、サングラスと軍帽を着けていては分からんか…」
そう言いながら、男は軍帽とサングラスを外し始める。
長谷川「...私の名は長谷川 康二。今日から、君達の長官となる者だ」
真,鈴,淳,克司「...へっ?」
「長官」。その言葉に思考停止する四人。
長谷川「ハハハ... 五人とも、私についてきてくれ」


四角柱方のエレベーターで、ベースの最上階へと向かう五人。
淳「...なんだか、すぐには飲み込めねぇ状況だな…」
鈴「シーッ...!」
長谷川「...さぁ、着いたぞ。ここが君達の本拠地だ」


最上階には、膨大な数のコンピューター、豊富な武装が配備されていた。
その光景に、あんぐりと口を開ける真達。
真「すげぇ...これは軍も真っ青なレベルだ...」
克司「アサルト、リボルバー、散弾銃...こりゃ良い!」
鈴「流石はこの国一の科学者!」
長谷川「…おっと、これぐらいで感心してもらっては困るな」


「おお、お前達がこの隊のメンバーか?」
迷彩模様の軍服を身にまとった一人の男が歩いてくる。
真(...誰だ?それに、隊?メンバー…?)
「俺は元バローカー軍所属の富野 良和。よろしく頼む」
克司「富野…良和…!?」
淳「あの、伝説のエースパイロットがなんでここに...!」


「...あっ、いたいた!」
それから間もなくして眼鏡をかけたロングヘアーの女性が走ってきた。
その手には、五つの衣服らしき物が抱えられていた。
「隊服、渡しわすれてました」
良和「あぁ、すまない」
鈴「...この方は誰?」
「あっ... ...ようこそおいでくださいました!私の名前は白川 理沙、長谷川博士の助手です。宜しくお願いいたします!」
彼女は笑顔で一礼し、真達に隊服を渡した。
長谷川「では...全員、そこの更衣室で隊服に着替えてくれ」


着替えをすませ、再び集まった五人。
克司「...キツイかと思ってたが...案外、軍服より着やすいな」
鈴「何だかオシャレ~!」

長谷川「さてと、本題に入ろうか」
真「...一つ、聞きたい事が」
手を挙げ、長谷川に話しかける真。
真「俺達がここに呼ばれた理由って何ですか?」
長谷川「...総帥からは聞いていないのか?」
真「何も聞かされてません!大体、あの人は...うっ!」
淳が真の口を背後から抑える。
克司「お見苦しい所をお見せしてすみません。こいつ、ここに来る途中も騒いでたんで」
長谷川「そ、そうか...」


子供のようにジタバタと暴れる真を尻目に、長谷川がその口を開いた。
長谷川「君達がここへ来た理由は簡単な事だ。今日から、この「G.D(ガイアダッシャー)隊」に入隊してもらう」
克司,鈴,淳「はぁっ!?」 真「ふがっ!?」
長谷川「話せば長くなるが...」


時は41年前、1982年に遡る。
当時のバローカー国は軍事力が乏しく、他国に貿易を申し込んでも相手にされずじまいであった。
その状況を打破すべく、軍や科学者のみならず国民までもが軍事力の増強に力を注いだ。
そして、量産型戦闘機「ボルトラー」や巨大人型兵器「ベータアタッカー」(通称「BA」)等、他国と互角かそれ以上の性能を誇る兵器の開発に成功。
無事、バローカー国は諸国との友好関係を築く事ができたのであった。


しかし、バローカー国には大きな問題が残されていた。自然災害である。
M7.0、最大震度5強もの大地震、大雨による大規模の洪水、最大瞬間風速70m/sの台風...「災害のデパート」と揶揄されるほど、バローカー国では災害が多発していた。
さらに、軍事力の増強に伴って凶悪な科学犯罪やテロ行為も年々深刻化していき、もはや為す術のない状況と化していた。


それらへの対抗策として、バローカー国は一つの防衛組織を設立した。
その組織こそ、「ガイアダッシャー隊」 ...通称「G.D隊」である...!


長谷川「...以上が、この隊が設立された経緯だ。そして、災害や犯罪を食い止めるべく、優秀な人材として君達5人が選ばれたわけだ」
真「そ、そりゃすげぇや...」


理沙「...あのう、皆さんにあの五機をお見せしなくても良いのですか?」
長谷川「...すまん、すっかり忘れていたよ。よし、機体データをモニターに映してくれ」
白川「了解しました」
彼女が手際よくモニター付近のキーボードを打ち込む。すると...


真,鈴,淳,合唱「...うわぁっ!?
次の瞬間、モニターに五機の巨大なBAが映し出された。
長谷川「ハッハッハ。そんなに驚くとはな」
淳「すっ、すみません!いきなり映し出されたんで...」
良和「全く...ともかく、この五機について説明していただけますか」
長谷川「よし、分かった」


では、ガイアダッシャー隊に配備された五機のBAについて説明しよう。


一号機、ダッシャーワン。全高11.5m、総重量110t。
二号機、ダッシャーツー。全高9m、総重量110t。
三号機、ダッシャースリー。全高9m、総重量110t。
四号機、ダッシャーフォー。全高9.5m、総重量110t。
五号機、ダッシャーファイブ。全高9.5m、総重量110t。


新素材「強合金ジディニウム」が装甲に使用されたこの五機は機動性に優れており、最高走行速度はマッハ1.5、最高飛行速度はマッハ8。
各機の装備は敵を拘束する網目状の球・ガイアネットボール、9000度の熱度の光弾を発するガイアライフルなどだ。


克司「へぇ...待てよ?これ、軍のBAより随分小さくないか?」
長谷川「この五機は合体するからな。この五機を20mで作ってしまっては、合体時の全高は推定でも40m...他のBAと身長差が大きすぎては、連携や共同作戦を取る事は難しいだろう」
理沙「そこで、単体でのサイズを9m~11mほどにすることで、合体時の全高を20mに抑えた、という事ですよね?」
長谷川「...おいしいところを持っていくな...正解だよ」


ダッシャーワン~ファイブの五機が合体する事で完成するBA。
その名称は「ガイアダッシャー」。最高のBAとして開発された機体である。


全高20m、総重量550t。
最高走行速度マッハ3、最高飛行速度マッハ12。


格闘戦に特化した性能で、各部の関節機構には複雑な動きに耐えられるようジディニウムを使用。
その反面、内蔵された武装は頭部のバルカン砲に両肩のレーザー砲、両足のミサイル、各機に一つずつ収納されたパーツが合体してできる五走剣のみと少ないのが欠点。


長谷川「...合体はまだ、テストを済ませていないがな」
淳「でも、一体何の為に合体機能を?」
長谷川「普通のBAなら出力エンジンは一機につき一つしか搭載できない。そこで、合体によって五機のエンジンを連結し、出力を五倍にしよう...という理由だ」
鈴「納得できるのかできないのか、良く分からない理論ね...」
長谷川「ハハハ...!これでも科学者だ、技術力は人一倍あると自負して...」


『ファアアアアン!ファアアアアン!!』


司令室がサイレンの赤い光で照らされると同時に、鳴り響く警報音。
克司「なっ、なんだなんだ!?」
理沙「...軍から連絡が入りました!現在、コレダーにて正体不明の人型兵器一機が攻撃を開始したそうです!」
長谷川「なんだと...!?」


一方その頃、バローカー国の首都・コレダーでは...


子供「静かな湖畔のぬ~まの影から、もう起きちゃいかがとかっこうが鳴く...」
二人の親子が手を繋いで街中を歩いていた。
母親「今日も元気ね、豊」
子供「うん!お母さん、今日の夕飯はなに?」
母親「そうね...」
右手に持った買い物袋の中をのぞく母親。
母親「...決めた、今日はハヤシライスよ」
子供「わーい!やったやったぁ!」
子供が無邪気に跳び跳ねた、その時だった。


...ズシャァッ...
突如として、黒の巨大なBAが空から現れた。
子供「ママ、何あれ?」
母親「軍の新型かしら?」
次の瞬間、BAがゆっくりと動きだし...


グシャァッ! ズガァッッ!!
自身の右拳を叩き付け、高層ビルを破壊し始めた。
子供「わーっ!」
母親「豊!早く逃げましょう!」
親子は安全な場所を目指し逃げ去っていった...


ゴォォォォッ...
軍の戦闘機・ボルトラーが三機到着した。


兵士A「只今、コレダーに到着!目標への攻撃を開始します!

ビシュゥッ! ビシュゥッ!
BA目掛け、三機が一斉にビームを連射する。
すると、BAは両手を広げ透明なバリアを発生させた。
ビームはバリアに衝突した。しかし...


バシッ... ビシュゥッ! ビシュゥッ!
ビームは三機のボルトラーへと跳ね返っていった。
兵士C「なっ、何故だ!?」
兵士A「奴のバリアには反射機能があると見た!ビームを回避しろっ!」
二機のボルトラーはビームを回避したが...


バシュッッ!!
逃げ遅れた一機のボルトラーにビームが直撃してしまった。
兵士C「どうしたっ!?」
兵士B「ビッ、ビームが直撃しまし...うわぁぁぁっ!!


ドガァァァン!
兵士の絶叫とともに、ボルトラーは爆発した。


ゴゴゴゴ......
炎上したボルトラーは、まるで潰された蚊のように地上へと落ちていった...


兵士C「...おのれぇぇっ!!
低空飛行でBAへと接近していく一機のボルトラー。
兵士A「待て!闇雲に接近しては...」


グシャァッ!!
...ボルトラーがBAの真下に来た瞬間、BAはその巨大な足を地面へと叩きつけた。
同時に、スクラップのようなボルトラーの残骸が辺りに飛び散る。


兵士A「...まずい...一旦、退却しなくては...!」
ボルトラーはコレダーを離れようと、猛スピードで飛行を開始した。


しかし、BAはそれを見逃さなかった。
瞬時にライフルを両手に構えるBA。
狙いは勿論、ボルトラーだ。


ビシュッッッ!!!
赤い光弾がライフルの銃口から放たれた。
兵士A「うっ...ぎゃあぁぁぁぁ!!!


ドガァァァン!
ボルトラーに光弾が直撃し、爆発した。
BAはそれを尻目に、町への侵攻を続けるのだった...


チェーン兵「人間...脆い物だな」
黒のBA・レジアルを操縦する兵士が呟いた。

ゴストラ『...どうだ、状況は?』
現状確認のため、通信で兵士に語りかけるごもゴストラ。
チェーン兵「先ほど、軍の戦闘機隊を全滅させることに成功しました」
ゴストラ『そうか... この調子で、存分に暴れてやれ』
チェーン「はっ!」


<ガードベース>
理沙「...ボルトラー三機が全て、撃墜されたそうです...」
真「...ちくしょうめっ!
テーブルに思いっきり拳を叩きつけると、続けて叫ぶ真。
真「...長官!俺に... 俺に出撃させてください!


淳,克司「出撃!?」
良和「…!?」

鈴「...ちっ!」
真に近づいた鈴は、彼の胸ぐらを両手でグッと掴んだ。
鈴「あんな得体の知れないデカブツに突っ込んでどうするんだよ...!」
真「決まってるさ、攻撃を止めるんだ!」
鈴「たった一人で…? 死にたいのかい、真!
真「...軍人になった時点で死ぬ覚悟は出来てるんだ!こんな所でグズグズしてろってんなら、死んだ方がマシだっ!!
鈴「っ…!」


暫く沈黙が続くも、すんなりとそれは破られた。
鈴「...アタシの負けだ、アンタに付き合うよ」
理沙「えっ!?」
鈴「アンタの事、止めても言う事を聞かないのを忘れてたよ…」
淳「じゃあ、俺も付き合うぜ」
克司「同じく。お前だけじゃ被害が広がるだけだしな」
理沙「…えっ、皆さ…」
止めに入ろうとする理沙の一言は遮られ、良和が真達へ近づいた。
良和「俺も行こう。真と言ったか…お前を見ると、昔の知人を思い出してな...放っておけないんだ。俺はこの隊のチーフだしな」


長谷川「...分かった。君達の出撃を許可しよう」
どんどんと考えが一致する五人に負けたのか、すんなりと受け入れられた
真「本当ですか!」
長谷川「ああ。だが一つ、条件を飲んでもらおう… 絶対に生きて帰ってこい
無言で頷く五人。
理沙「長官まで…しょうがないですね、もう」
頭を抱えていたが、理沙の頬は緩んでいた。

長谷川「では...全員、直ちに出撃準備!
五人「了解!
敬礼とともにそう叫んだ五人は、五機のBAが待つ場所へと駆け出していった...


オペレーター「runway gate open.runway gate open」
ベース屋上の滑走路が真っ二つに割れ、中から五つのコンテナがせり上がった。


真「ダッシャーワン、スタンディングバイ!」
鈴「ダッシャーツー、スタンディングバイ!」
淳「ダッシャースリー、スタンディングバイ!」
克司「ダッシャーフォー、スタンディングバイ!」
良和「ダッシャーファイブ、スタンディングバイ!」


コンテナのハッチが一斉に開かれる。
すると、ダッシャーワン~ファイブの五機が姿を現した。
オペレーター「roger that. I wish you victory!」
オペレーター「...Gaia Dasher,are fight go!」


シャァァァァッ!
五機の足裏のランディングギアが高速で回り、ローラーダッシュを開始した。*1

キィィィッ...
ベースから飛び出した五機はギアを収納し...

...ゴォォォォォッ...!
足首裏のジェットエンジンで飛行し始めた。


良和『機体の調子はどうだ!』
真「この上なく好調です!」
コックピット内のモニターで通信する五人。
良和「このまま全速力で向かうぞ!」
四人『OK、チーフ!』


あの機体は何だ?それを動かすのは誰だ?目的は何だ?
幾つもの疑問を抱えながら、彼らは一直線にコレダーへと向かって行くのであった...


つづく

第2話「勝利の走攻合体」



<コレダー>
数十分前まで高層ビルが立ち並んでいた街は、既にコンクリートの瓦礫があちこちに散乱する更地と化していた。


チェーン兵「...ゴストラ様!」
ゴストラ『...どうしたのだ』
チェーン兵「上空から、何者かがこちらに接近してきます!」
ゴストラ『何だと?...よし、塵一つ残さず破壊してしまえ』
チェーン兵「はっ!」
報告を済ませると、兵士はすぐさま通信を切った。


シュィィィッ... ズシャァッ!
地面から出た着地音が響くとともに、ダッシャーワン~ファイブの五機がコレダーに到着した。


良和「...こちら富野、只今コレダーに到着しました!応答願います!」
理沙『...こちら白川、皆さん五人の到着を確認しました!目標への攻撃を許可します!』
良和「了解!」


淳「ちくしょう!戦い方が分からない分、俺達の方が不利だ...」
真「でも、やってやらなきゃだ...!」
良和「...油断するな、来るぞ!


ビシュゥァッ!!
五人めがけ、レジアルのライフルから赤い光線が放たれた。

真「うわっとぉ!?」
それを間一髪のところで避ける真。
淳「おい!大丈夫か!」
真「あぁ、何とか...」
鈴「案の定、とんでもない速さだね...」


克司「よし、今度はこっちの番だ...!」
ジャキッと鋭い音を鳴らし、ガイアライフルを構えるダッシャーフォー。
克司「一泡吹かせてやる...」


ビシュゥッ!!
レジアルへと一直線にビームが発射される。

チェーン兵「ちっ、なんて完璧な狙いだ... だが!
ビームが目の前に接近した瞬間、レジアルが両手を広げる。

ブォォォン...
すると、瞬時に透明なバリアが張り巡らされた。


バシッ... シュバァッ!
バリアに直撃したビームが跳ね返される。
克司「な、何っ!?」

バシュッッ!!

克司「うわぁぁっ!!」
ビームはダッシャーフォーの腹部に直撃した。


その場に倒れ伏すダッシャーフォー。
淳「克司!」
克司「うぅ...大丈夫だ、まだやれる...」
淳「...チーフ!俺が奴を格闘戦に持ち込みます!」
良和「よし、分かった!俺も援護する!」

キィィィィッ!!
ローラーダッシュで二機がレジアルへと急接近していく。


淳「でぃっ!!」
ダッシャースリーが両足で飛び上がる。
そして、空中からすかさず飛び蹴りを放った。
淳「一発お見舞いしてやる!」

ガシィッ...!
だがしかし、今にも直撃しそうだったダッシャースリーの右足をレジアルが両手で掴んだ。

ブォォォッ!!
レジアルが両腕を振り上げ、ダッシャースリーを後方へと投げ飛ばす。

「ぐはぁぁっ!」

ズガァァァン!!
街中のファミレスに衝突し、倒れ込むダッシャースリー。


良和「おのれ、今度はこっちだ!」

ガキィィッ!
レジアルの土手っ腹へと右拳を叩き付けるダッシャーファイブ。
良和「...くそっ、全く効かないだと...!?」

ベキィィッ!
その隙を見て放ったレジアルの回し蹴りが、ダッシャーファイブにクリーンヒットした。

良和「おわぁっ!」

ズシャァァァッ!
吹っ飛ばされ、砂埃とともに地面を転がるダッシャーファイブ。


鈴「あの三人が手も足も出ないなんてね...!」
チェーン兵「ハッハッハ...さて、次はそこの赤い機体からだぁ!」
ダッシャーツーに右手のライフルを向けるレジアル。

『...攻撃目標、ロックオン完了』
『エネルギー放出まで、5、4...』
レジアルのコックピット内で鳴り響く電子音声。
同時に、ライフルから赤い光線が放出されようとしていた。

鈴「えっ…!?」
『3、2、1…』
鈴が気付いた頃には、直撃が避けられないのは明確だった。
だがダメージは抑えなくては。何とか受けきろうと、両腕を前に構えるダッシャーツー。
が、しかし。


危ねぇ、鈴!
後方から叫び声が響き…


バシュァァァッ!!


チェーン兵「...何だと...?」
爆発が起こり、生じた煙が徐々に晴れていく。
そこには、ダッシャーツーを庇いビームを受けたダッシャーワンが立ち尽くしていた。

真「...くっ...!」
鈴「...なんで、私を庇って...」
真「理由はどうだって良い!今はそれどころじゃ無いだろ!」


克司「...くそっ、恥ずかしい所を見せちまったな...!」
三機が立ち上がり、再び戦闘体勢に入る。
良和「五対一でここまでやられるとはな...」
淳「初陣から劣勢なんて、思いもしなかったぜ...」
真「...こうなったら、手段は一つだな...!
息を切らしながら呟き、通信用ボタンを押す真。
真「...こちら嵐田!長谷川長官、応答願います!」
長谷川『...こちら長谷川!どうした!』
真「...ガイアダッシャーへの合体の許可を要請します!

四人「はぁ!?」
長谷川『なっ、何...!?』
理沙『...何言ってるんですか!?まだテストも済ませていないのに...無茶ですよ!』
真「無茶でも何でも良い!俺達がここでやられちゃ、この国が終わってしまうんですよ!?」
長谷川『いや、しかしだな...』
真「...やる前から諦めちゃ、出来る事も出来やしない!そんなに悩んだって、この状況が変わるわけじゃねぇんだぁっ!!
長谷川「...!」


克司「...ったく、何から何まで熱くなりやがって...」
淳「一人で勝手に話も進めやがるし...」
鈴「...ま、そこがアンタの良い所かな」
良和「...真、少し通信をかわってくれるか」


理沙『良和さん...』
良和「...長官に白川さん。あなた達にとっちゃ、単なる無謀な作戦にしか思わないかも知れないが...今は一旦、ここにいる馬鹿"五人"に託してみてくれませんか。この国の未来を」
長谷川『...よし、了解した。合体を許可する!
数秒前の重苦しい声から一変し、威圧的な叫びをあげる長谷川。


真「...っしゃ!ありがとうございます!」
長谷川『では、合体方法の説明に入るぞ!』


長谷川『操縦幹付近に、レバーが一つあるはずだ!』
淳「えっと...よし、こいつか!」
長谷川『そのレバーを操作して合体モード...『ダッシュオン・フォーメーション』に入る為のコマンドを入力するんだ!今からモニターにそのコマンドを送信する!』
ピピピピ...ピピピピ...
五機のモニターにコマンドが映し出される。
長谷川『君達五人が同時にコマンドを入力できなければ、合体は不可能だ!くれぐれも注意してくれ!』


真「...よし!皆、行くぞ!
四人「おう!
真「コマンド入力、開始!


五人が一斉にレバーを動かす。
↓↙️←↙️→


『...Command confirmation successful(コマンド入力成功)
五機のコックピット内に、入力の成功を伝える電子音声が鳴り響いた。


真「合体コード、『G・A・I・A・D・A・S・H・E・R』...『ガイアダッシャー』!」

五人「ダッシュオン・フォーメーション!走攻合体!」


...ゴォォォォッ!!
五人が叫んだ直後、五機がジェット噴射で空中へと舞い上がった。
チェーン兵「な、何だ!?何をしようと言うのだ!?
驚きのあまり後ずさるレジアル。

DASH ON FORMATION
COMBINE START

ダッシャーワンは両腕と両足を縮め、胸部のハッチを開き頭部を射出。胴体に変形完了する。
ダッシャーツーとダッシャースリーは両腕を背面に回し、両足を縮めマニュピレーターを射出。二本の腕に変形完了する。
ダッシャーフォーとダッシャーファイブも同じく両腕を背面に回し、両足を縮め足首を合体。二本の脚に変形完了する。


淳「どっ、どうなってんだこりゃぁっ!?」
鈴「操作してないってのに、何で勝手に...!?」
長谷川『落ち着くんだ!合体時には自動操縦に切り替わる!』


胴体となったダッシャーワンを中心に、目にも止まらぬスピードで合体していく各機。
そして、ダッシャーワンの頭部にメタリックブルーの新たな頭部が接続される。


次の瞬間、空中で青白い光が発生した。


...光の中から、一機の巨大なBAが現れる。
チェーン兵「...き、貴様は何者だ...!?」''
その声に応じるかのように轟く一つの叫び声。


真「ガァァイアッ!ダッシャァァッ!!」



五つの力を一つに合わせ、今ここに最強の機体が誕生した。
その名は、「走攻機ガイアダッシャー」!


長谷川『...よし!成功したか!』
克司「まずは第一段階クリアだな...!」


...ダァァァァン!!

地面の瓦礫、砂埃が跳ね上がると同時に、ガイアダッシャーが大地に降り立つ。


チェーン兵「...ややこしい事をやったって、驚くものかよ!雑魚の背が伸びただけだろう!」
鈴「...ふーん、言ってくれるじゃん」
真「だったら試してやる...!皆、戦闘開始だっ!!
四人「了解!


真「克司、チーフ!全速力で頼む!」
克司「おう!思いっきり飛ばしてやる!」
良和「目を回すなよ!」


キュィィィィィッ!!

ガイアダッシャーの両足のローラーが騒々しい音を立て回り始める。
そして、その巨体が高速でレジアルへと向かっていく。

チェーン兵「...速度が早くなっているだと...!」
真「まずは一発目だ!つあぁっ!


...バキィィッ!!
レジアルの腹部のど真ん中に、ガイアダッシャーの右拳がめり込んだ。

チェーン兵「おがぁぁっ...」
ダメージのあまり腹部を抑え、直立したまま固まるレジアル。

良和「真!この隙にもう一発だ!」
真「言われなくても... このマニュピレーターが粉々になるまでやってやる!」
理沙『...修理費が馬鹿にならないので、それはやめてください!』


ベキィィッ! ズガァァッ!!
今までの仕返しと言わんばかりに、レジアルへ何度も激しい打撃を浴びせるガイアダッシャー。

真「このまま吹っ飛ばしてやる!」
チェーン兵「...おっ、おのれぇ...!」

ガイアダッシャーがパンチを繰り出したその時、レジアルがふらつきながらも両手を広げた。


バチィィッ!
瞬時に張り巡らされたバリアに、ガイアダッシャーの拳が激突する。

鈴「うわぁっ!?」
ガイアダッシャーが後方へと軽く押さ返される。

チェーン兵「...クッ、ハハハ!ご自慢のそのパワーもバリアの前では無意味らしいな!」
淳「ちょ、調子に乗ってやがる...」
克司「あれを破るにはどうすれば...!」
悔しげに左拳を握りしめるガイアダッシャー。


長谷川『...五走剣を使うんだ!』
真「五走… 剣…!?」
長谷川『真君、「五走剣」と叫んでくれ!すると各機からパーツが飛び出し、合体して剣になる!バリアを破るにはそれを使うしかない!」
真「...了解しました!一か八か、やってやります!」


スゥゥゥゥ…
思いっきり息を吸って、真が目を開いた。
真「五走けぇぇん!!


...ピシュァァッ!!
ガイアダッシャーの各部のハッチから五つのパーツが射出される。

ガシャンガシャンガシャンガシャン...ジャキィィッ!!
激しい音とともにパーツが合体し、剣となった。
瞬時に両手でそれを掴むガイアダッシャー。


チェーン兵「何っ、まだ武器を隠し持っていたか!」
それを見てたじろいだのか、後ずさるレジアル。
真「...今更逃げようったって遅いぜ!その面倒臭いバリアを、今ここで叩き切ってやらぁっ!!


良和「全開で行くぞ、克司!」
克司「了解!チーフ!」

キュィィィィィッ!!
再びローラーダッシュでレジアルに接近するガイアダッシャー。


チェーン兵「バカめ!真正面から向かってくるとはな!」
両手を広げ、再度バリアを展開するレジアル。

鈴「淳!思いっきり叩きつけてやろうよ!」
淳「おう、勿論だ!」
両腕を上方へ勢い良く振り上げるガイアダッシャー。

150m、100m、50m...
レジアルとの距離が数秒ごとにどんどん縮まっていく。

真「...今だ!
五人「つあぁぁっ!!


ザシュィィッ!!
反射バリアに銀色の鉄剣が叩きつけられた。

...ギギッ...ギギギギ...
火花を飛び散らせながら、両者が互いに押し合う。


チェーン兵「...どうした!その図体の割には大した事のない力だな!」
真「だろうな...まだ出力は半分も出ちゃいないからな!」
五走剣をさらに強く握りしめるガイアダッシャー。
真「見たけりゃ見せてやる...各機、出力全開だ!


...ゴォォォォォッ!!
ガイアダッシャーの各部のジェットエンジンが火を噴き始める。
それと同時に、レジアルが徐々に押し出されていく。

五人「うおぉぉぉぉぉっ!!」
チェーン兵「なっ、なんて奴らだ!まずい、これ以上は受けきれん...!」


...パキィッ...バリィィッ!!
ガラスが割れるような音を立て、バリアが砕け散った。

チェーン兵「...な、何だとぉっ!?
真「...よそ見する暇は無いぜ、もう一撃...


真「だぁっ!!

ズシャァァッ!!
隙を見て、五走剣を上方へ振り上げるガイアダッシャー。
剣はレジアルの右腕に直撃し、それを一直線に切り裂いた。


金属音とともに地面に落ちるレジアルの右腕。

チェーン兵「腕まで斬られた!?...ちっ、ちくしょう!ちくしょうめぇぇっ!!
レジアルが右腕のあった箇所から火花を散らす中、兵士の悔しげな叫び声がこだまする。


バク宙でレジアルと距離を取るガイアダッシャー。
真「...やった、致命傷だぜ...!」
克司「そろそろとどめの刺し時かもな...!」


長谷川『...君達!今からあるコマンドを送信する!これを入力して...『攻速ブロー斬』を発動してくれ!』
真「それは一体...!?」
長谷川『それを使えば、一撃でとどめを刺せる!だが...君達五人にもそれ相応の衝撃がかかる技だ...!』
真「...そんなもの、今の俺達にゃちっとも怖くないですよ」
長谷川『そうか...。ならば頼むぞ!


五機のモニターに一斉にコマンドが表示された。
鈴「さぁ、早いとこケリをつけてやろうよ!
真「分かった!...用意は良いか、皆!行くぞ!
四人「おう!


『↙→↘↓↙←↘』


...ブヴゥゥゥン...!
コマンドの入力に成功した次の瞬間、ガイアダッシャーの黄色い目が突如として赤く光った。
真「でぇぇぇいっ!!」
ブッピガァァァン!
両腕を広げ超スピードで跳び上がるガイアダッシャー。


チェーン兵「今度は空中からか!追撃してやる...」
落ち着きを取り戻した兵士が操縦幹を動かす。
...が、レジアルは一向に動かない。
チェーン兵「なっ、何故動かん...! まさかさっきの一撃で...!?」
兵士の予想は的中していた。動力となるエネルギーがダメージを受けた箇所から急激に溢れ出し、レジアルはエネルギー切れを起こしていたのだった。


真「ダッシュエネルギー、充填開始!」
ガイアダッシャーが五走剣を握った右腕を高く掲げる。
...デュオンデュオンデュオンデュオン...
エネルギーが蓄積する音が鳴り響くとともに、剣の刀身が青白く光り始めた。
鈴「充填100%まであと...10、9、8...」


チェーン兵「...く、くそぉっ!動け、動くんだレジアル!動けぇぇぇっ!!」
怯えるように震え声をあげる兵士。


淳「両腕部、稼働状況正常!」
良和「両足部、稼働状況正常!」
克司「攻撃目標、ロックオン完了!」
鈴「3...2...1...OK、行ける!」
真「よし...!覚悟しやがれ、必殺技の贈り物だぁっ!!」
五走剣の刀身全体が一気に光に包まれる。


ゴォォォァァァッ!!
最大飛行速度・マッハ12で、レジアルへとガイアダッシャーが突撃する。

真「五走けぇぇん!」
五人「攻速ブロォォゥッ!」
チェーン兵「...うっ...うぉわぁぁっ...!?」
五人「ざぁぁぁぁんっ!!!」
一直線に伸びた青白い光がレジアルへと振り落とされ...


ズシュウァァァッ!!


...ズズゥゥゥッ...!
地面を軽く滑りながら着地するガイアダッシャー。
...ドォォォォン!
その後ろで、真っ二つになったレジアルの巨体がその場に崩れ落ちた。


チェーン兵「...ギギ...ガッ...グゴォォッ...」
兵士...もとい壊れたアンドロイドが、内部の機械を剥き出しにしてかすかな断末魔をあげたその直後...


ドッグァァァァァァン!!

...辺り一面に青色の大爆発が起こった。


それから三十秒ほど経ち、やっと爆風が晴れ始めた。

淳「...機体の姿が、何処にも見当たらない...」
良和「残っているのは、地面に転がる鉄クズだけか...」
鈴「...ふぅ...やっと終わったね」
克司「あぁ、間違いないな...」
真「...俺達の勝ちだ...!...よっしゃぁぁっ!
ガッツポーズを決め、ありったけの叫び声をあげる真。


ガイアダッシャーの右手に握られた五走剣が、太陽光に照らされ銀色に光り輝く。
まるで五人の勝利を祝福するかのように...


一方その頃、数十mほど離れた地点では...
???「...先輩!大仁田先輩!起きてください!」
???「...う、うぅむ...」


兵士B「...良かった!目を覚ました!」
兵士A「ここはどこだ...?俺は生きているのか...ウッ!?」
兵士B「動かないでくださいよ!重傷なんですから...」
真っ赤に染まった腹部を自身の右手で抑える年長兵士。
兵士C「…俺達は、爆発する寸前のところを脱出できたんです。このパラシュートでね」
しわくちゃになった巨大な布を若い兵士が広げて見せた。
兵士B「その後、地上に落ちたボルトラーを確認したら、酷い怪我をした先輩を見つけて... 意識も脈も無い状態だったんで、何とかマッサージを...」
涙が出そうになるのをぐっと堪えつつ、もう一人の若い兵士が話す。
兵士A「...そうか、情けない姿を見せてしまったな... 一つ礼を言わせてくれ、ありがとう。」
兵士C「...これぐらい、お安い御用ってもんです」


...何か思い出したのか、唐突に険しい表情になる年長兵士。
兵士A「...あの黒いBAはどうしたんだ!?」
兵士B「それなら...あっ!あれを見てください!


ゴォォォォッ...
兵士が指差す方向には、五機のBAが空を飛ぶ姿があった。


兵士B「彼らが、黒いBAを倒してくれたんです。確か...「ガイアダッシャー」、と名乗っていたっけな...」
兵士A「...ガイアダッシャーだと...?」
兵士C「まさか、ご存知で?」
兵士A「…噂程度だがな」
年長兵士の表情がふっと緩み、小さく笑みを浮かべた。
兵士A「全く、頼もしいチームが現れたものだ...」


時を同じくして...
ドル島では、兵士が作戦の失敗をゴストラに報告していた。


ゴストラ「...何だと?」
頬杖をつきながら、ゴストラが重々しく呟く。
チェーン兵「...事実でございます...。コレダーにて、レジアルは軍の新型と思われるBAに破壊されました...」
ゴストラ「...そうか...」
シグル「けど、まさか倒されるなんて...一体どこの誰が開発したのかしら...」
ゴストラ(...今のバローカーに、そんな代物を作れる奴は"一人"しかおるまい...。おのれ...!)


場面は変わって、バローカー海の上空。
夕焼け空の中を五機のBAが飛行していた。


良和「よし、長官達への報告も済んだな」
鈴「...はぁーぁ...」
真「鈴、どうかしたのか?」
鈴「...今回は良かったけれど、これから先にはあれぐらいの緊急事態がいきなり、それも何度も何度も起こると考えると...やっぱり不安でさ」
不安げな顔をしながら呟く鈴。
淳「...言われてみれば、そうだな...」
克司「結局、あの黒いBAの目的も分からずじまいだったしな...」


真「大丈夫、俺達ならやっていけるさ!」
鈴「...ハハハ! あんたみたいな馬鹿を見てたら、こっちまで馬鹿らしくなってくるよ!」
真「...んだとぉ!?」


辛くも初陣に勝利した五人。
だが、彼らはチェーンの脅威にまだ気付かずにいた。
果たしてバローカー国はどうなるのか?
...それは、君自身の目で確かめてほしい。


つづく

第3話「初陣! アタックキャリア」



<2023年10月17日 AM9:54 ガードベース>


タッ、タッ、タッ...

ベース内の通路に響く足音。
そこには、駆け足で何かを探す鈴の姿があった。
鈴「ったく、あのヤローは朝っぱらからどこに行ったんだ…?」


克司「...おっ、何かと思ったら鈴か」
曲がり角から現れた克司が、鈴に声をかけた。
鈴「あ、克司!良い所に来たね...いきなりだけど、真のバカがどこにいるか知らない?」
克司「アイツなら、ワケは知らんが整備室に行ったはずだ。今から俺も呼びに向かおうと思ってたが...」
鈴「へぇ... 丁度良いや、一緒に行こうよ!」
克司「おいおい、いきなりすぎやしないか...?」
鈴「まま、良いから良いから!」
軽く背中を叩かれた克司は、困惑しながらも鈴と共に整備室へ向かった。


...暫くして、整備室に到着した二人。
克司「...いつも通りの壮観だな」
左右に配置された格納庫に佇む数百体のBAに、工具片手に動き回る無数の整備員達を見て呟く克司。
鈴「こんなに広かったら、探すのも一苦労じゃ...」

「おい!危ないぞ、嵐田!?」
鈴の耳に入ったのは、男性の慌てるような叫び声。
鈴「ん?「嵐田」...まさか!


真「…平気だぜ、南城さーん!伊達にG.D隊の隊員になったワケじゃないんだからよー!」
直立したダッシャーワンの胴体にしがみつく真。
南城「そこは地面から10m以上もあるんだぞ!パイロットのお前がケガすれば誰が乗るんだ!」
その下で、慌て顔で叫ぶのは整備員の南城 正弘。真に整備方法を教えている最中だった。
真「大丈夫だって、安心しろよ!さて、このまま上に…」
両腕に力を込め、真が頭部近くに上がろうとしたその瞬間…


…ツルッ…
長い時間しがみついていたのが祟ってか、手汗で真の両手が滑る。
真「…あ、あら~…?」


胴体から離れ空中に浮かんだ真は、そのまま一直線に落ちていき...
真「おわぁぁぁっ!!


ズダァァァン!!
大きな音を立て地面へとぶつかった。
仰向けの態勢だったので、後頭部をぶつけなかったのは不幸中の幸いだろうか。


南城「言わんこっちゃない...!...おい、大丈夫か?」
真「いってぇ... うん、全然大丈夫だ」
ひょいっと身軽に起き上がり、隊服をポンポンと叩く真。
南城「...驚いた...なんて頑丈な奴だ...」
ケガ一つない様子の真にあんぐりと口を開け驚く南城。


鈴「...ほんと、相も変わらず骨も折れそうにない体だね」
真達の前に、克司と呆れ顔の鈴がやって来た。
真「あれ?お前ら、何の用でここに?」
克司「お前を呼びに来たんだよ!で、貴方は?」
南城の方に顔を向ける克司。
南城「...俺は整備員の南城だ。ここで、君達のBAのメンテナンスをやらせてもらってる。よろしくな」
鈴「こちらこそ。...でも、どうしてこのバカと一緒に?」
真「バカとは何だ!俺は、ダッシャーワンの整備を南城さんに手伝ってもらってたんだ…」


頭上のダッシャーワンを見上げ、真が続けて話す。
真「五機のダッシャーは俺達の仲間だ。これからも戦いに駆り出すんだ、大切にしてやらなきゃと思ってな...」
鈴「...ほぅ…真のくせに機体の整備、しかもちゃんとした理由があるなんてね」
真「...さっきから黙ってりゃ無駄口ばかり叩きやがって、この金髪スケバン!」
鈴「あぁ!?いつも無駄にでしゃばるアンタには言われたかないね!」
真「何だとこの野郎...」


長谷川「...こらこら、君達は何をやっているんだ」
言い合いが始まろうとしたその時、長谷川が真達の背後から声をかける。
その後ろには淳、良和、理沙の三人もいた。


真「...はいっ!?淳にチーフに長官達まで、なんでここに!?」
長谷川「...なんだ、説明してないのか」
克司「ハハ、見ての通り色々ありましてね...」
長谷川「...まぁ、丁度いい。早速この地下に向かおう」
真「分かりました!てなわけで南城さん、また今度よろしく!」
南城「おう!しっかりやれよ!」
長谷川達とともに目の前の階段へと向かう真を、南城は手を振りながら見送っていた。


真「...ところで、俺達が呼ばれた理由って?」
コンクリート製の質素な階段を降りながら、真が疑問を口にする。
白川「..."戦艦"が完成したんです。なので、皆さんにそれのお披露目をしたいと...」
克司「せっ、戦艦だぁ!?」
真「...お前らも知らなかったのか?」
淳「見せたい物がある、としか聞かされてなかったんだ」


七人がたどり着いたのは、「国家機密漏洩防止の為立入禁止」と書かれたドアの前。
長谷川「パスワードは...」
G」「O」「D」「M」「A」「R」「S
長谷川がドアの隣にセットされたキーボードを叩いた。


ピピピピピ... ゴゥゥゥゥ...
入力成功を示す電子音とともに、ドアが自動で開いていく。


鈴「こんな場所、初めて見た...ここまで厳重な管理をしてまで造った戦艦って一体...?」
長谷川「それは今に分かることだ...」

開ききったドアから、地下室へ足を踏み入れる七人。
「...うおぉ...! これが...!」


何十人もの整備員に囲まれながら、室内にそびえる一台のマシン。
鋼鉄感を帯びた配色、側面に設けられた二つのエンジンブロック、底面に真っ黒なキャタピラ、「戦艦」と呼ぶに相応しい巨体...
それらを持ち合わせた目の前の機体を見て、真達はただただ息を飲むしかなかった。


淳「凄いな...こういう機体が本当に作れるのか...」
長谷川「...これが、私達が開発・建造していた防衛戦闘母艦... 名は「アタックキャリア」だ」


防衛戦闘母艦・アタックキャリア。
全長311m、全高189.9m、全幅191m、総重量85,530トン、収容人員565名。


機体の上部に二基のミサイル砲、機体の両側部に55mmバルカン砲、下部に四基のレーザー砲を内蔵。
ダッシャー五機は勿論、頭頂高が30m未満の機動兵器なら最大5機まで搭載が可能。


そして、この戦艦の最大の存在意義といっても過言ではない機能。ガイアダッシャーが使用する武器の格納である。


ガイアダッシャーには合体機構や可動関節の都合、内蔵する武装が少ないという欠点があった。
これでは他国の機動兵器が得意とするような遠距離戦で不利にならざるを得ない。
それを補うべく、「動く格納庫」としての役割を持ったアタックシャトルが開発された...


長谷川「...要するに、このアタックシャトルは君達の五人のサポート用として建造された物だ」
真「こんなにデカイのが!?主力にする兵器、間違えてねぇかな...」
克司「それにしても、どうしてこれの存在を俺達に黙ってたんです?」
長谷川「機密情報だったんでな...迂闊に話しては漏れてしまうと思っていたんだ、すまなかった」
淳「いやいや、謝るなんてとんでもない...」


良和「艦長が決まってるなら、一応顔を合わせておきたいが...」
白川「...あ、私です!私が艦長です!
手を上げ、いつも以上に明るい声で答える理沙。


真,鈴,淳,克司,良和「...へ?」
あまりにも急すぎる返事に驚き、言葉を詰まらせる真達。
白川「嘘じゃないですよ、ほら!」
そういうと彼女は首にかけた名札を外し、五人の方へ差し出した。
真「何々、「バローカー軍公認大型戦艦艦長資格所得済み」と...」
 
真,鈴,淳,克司「...えぇぇぇっ!?
名札に書かれた字面を見てさらに驚き、大声を出す四人。


鈴「りっちゃんって、軍所属だったの...!?」
白川「はい!一応、これでも鈴さん達の先輩なんですよ。年は下ですが...」
克司「...人は見かけによらないって、身を持って実感できたよ...」


ピーッ...ティピピピ...
理沙が右腕に巻いた時計から、ランプの点滅と共に電子音声が流れ出す。
それに気付くと、彼女はそのカバーをパカッと開いた。
白川「えっと...通信室からかぁ」
時計内の下部の半円型のボタンを押し、通話し始める理沙。
白川「はい、白川ですが…」


白川「…何ですって…!? 分かりました、今すぐ長官達に伝えます!」

通話を切った理沙は真達のもとへ駆け寄る。
その表情に、先ほどまでの落ち着きはなかった。
白川「ラガーにて、謎の巨大生物…いや、"怪獣"が出現しました!」
長谷川「何だと…!?」


『ファアアアアン!ファアアアアン!!』

通話の内容が事実だと決定付けるように、地下室にこだまするサイレン音。
真「こうなりゃ、俺達が出るしかないな…!」
長谷川「…よし、白川君は整備員に機体を屋上に配置するよう指示してくれ! 君達五人は、直ちに出撃準備だ!」
五人「了解!


〈AM10:36 ラガー〉
ガードベースに連絡が届く三分前、事態は起こりだしていた。


ピーッ、ピーッ…
ここは、ラガー石油工場。 
円柱型のタンクが立ち並ぶ建物の中に、バックで入っていくトラックのランプ音が響く。


運転手「…ふぅ、終わった。午前中はこんなもんか…」
とめ終えたトラックのエンジンを切り、ややくたびれた様子で車を降りる運転手の男性。
彼がドアを軽い音とともに閉めた。すると…

...ザァァン...ザァァァン...
工場近くの港から聞こえる波の音が、次第に強くなりはじめる。
運転手「ん…?やけにデカイ音だな、今日は…」
男が不思議そうに呟いたその時。


…ズゥゥゥゥッ!!
突如として海中から巨大な物体が現れた。
赤く禍々しかったが、それは明らかに生物の掌の形をしていた。


「なんだありゃぁ!?」
「軍の兵器か何か…?」
謎の物体に怯え、不安げに呟く港の人々。
その次の瞬間...


ズゥゥゥ…!ザァァァァッ!!
先ほどよりも激しい波しぶきが起こる。
同時に、謎の物体が瞬時に海上へ現れた。
真っ赤に染まった目と全身に、肩と手首から伸びた大きな凶刃...
その姿はまさに「怪物」であった。
いや、紛れもない「怪獣」であった。


「...フフフ...ハハハハ!
謎の怪獣のコクピットで高笑いをする一人の男。
その正体は、チェーンの幹部・アバルだった。

アバル「やはり海中への潜伏は良策だったようだぜ…!」
シートにもたれ腕を組み、アバルがニヤリと薄ら笑いを浮かべる。
アバル「まずは手始めに...」


...ググッ...
怪獣がユラリと右腕を動かし...

ズザァァッ!!
港に停められていた一隻の船を、手首の刃で切り裂いた。


「うっ、うわぁぁぁっ!!」
「みんな逃げるんだーっ!」
怪獣が自分達に敵意を向けていると分かり、一目散に港から逃げ出す人々。
切り裂かれた船は火を吹き、海面で炎上している。


アバル「ハッハッハ!騒がしいアリ共だな…!」
再び笑いながら、アバルが操縦桿をぐっと引く。
アバル「さぁ、機獣「ハディアン」!吠えろ…!」


グドゥゥゥォォッ!!!

とても機械とは思えないような唸り声を上げ、ハディアンは港へと足を踏み込むのだった...


<AM10:41 ガードベース>


真「...やっぱり何かおかしいぜ...」
ベース内の非常階段を五人で駆け登る中、真は疑問を口にした。
真「今回で二度目だ、謎の敵が何の前触れも無しに現れるのは…」
克司「…同意だ。何か裏がありそうだな」
鈴「今回ではっきりすると良いけどね」
良和「...その為にも、奴を抑えるのが最重要だ。気を抜くなよ」
真,鈴,淳,克司「了解、チーフ!」
そうこう話しているうちに、五人はベース屋上の滑走路へと到着する。


「runway gate open.runway gate open」
オペレーターのアナウンスが響く中、滑走路が真っ二つに割れ、そこから五つのコンテナがせり上がった。


真「ダッシャーワン、スタンディングバイ!」
鈴「ダッシャーツー、スタンディングバイ!」
淳「ダッシャースリー、スタンディングバイ!」
克司「ダッシャーフォー、スタンディングバイ!」
良和「ダッシャーファイブ、スタンディングバイ!」


コンテナのハッチが一斉に開かれる。
すると、ダッシャーワン~ファイブの五機が姿を現した。
「roger that. I wish you victory!」
「...Gaia Dasher,are fight go!」


シャァァァァッ!
五機の足裏のランディングギアが高速で回り、ローラーダッシュを開始した。

キィィィッ...
ベースから飛び出した五機はギアを収納し...

...ゴォォォォォッ...!
足首裏のジェットエンジンで飛行し始めた。


真「よし、順調順調!訓練の甲斐があったぜ...!」
鈴「呑気に言ってる場合か!」
良和「こうしている間にも被害は広がるかもしれん…!全速力で行くぞ!」

空中に飛び出た五機は、先程より勢いを増したジェットで目標地点へと向かう。


〈AM10:48 ラガー〉


…ガシャァァァァン!!

衝撃音が響くとともに、地面が揺れ、道路上の数台の車が少し宙に浮かんだ。


アバル「...フフフ...ざまぁないぜ...!」
市街地の中で直立するハディアン。
その近くには、バローカー軍の量産型BA・ブレイクロスが二機横たわっていた。


兵士A*2「...ちくしょう、敵わない…」
兵士B「なんだあの武装は...軍じゃ見たこともない...」
既に体力も切れ、為す術のないブレイクロスのパイロット達。


アバル「中々しぶとい奴らだ...よく頑張ったようだがこのままくたばっていろよ、足軽兵士ども...」
ハディアンは右へ振り返り、石油工場へと向かおうとする。


ガシッ...!
だが、その足は動かなかった。
一機のブレイクロスがハディアンの足首を右腕で掴んでいたためである。


兵士B「…せめてもの悪あがきだ、死んでも行かせるか…!」
歯を食いしばりながらにやける兵士。
兵士A「お前… 危ないぞ!早く逃げろ!」
もう一人の兵士が説得するも、ブレイクロスは一向に腕を離そうとはしない。


アバル「…鬱陶しいやつめぇっ!」
ついに我慢の限界を迎えたのか、アバルが怒りで声を荒げる。

ブゥンッ…!
左腕を後方へ振り上げるハディアン。
アバル「このまま楽にしてやるよぉっ!
兵士B「…くっ…」
ハディアンの手首から伸びた凶刃がブレイクロスに迫る。
…その時だった。


真「つぁぁぁぁっ!!」
空中から叫び声が響き渡った。そして…


ベキィィィッ!
急降下してきたダッシャーワンの両足が、ハディアンの頭部のど真ん中に衝突する。


アバル「うぐぅっ!?」

ダァァァァン!
唐突な攻撃で地面に倒れるハディアン。
だが、うまいこと受け身は取れたようだ。


ズシャァッ…!
ダッシャーワンが着地すると同時に、ダッシャーツーからファイブの四機も到着した。

真「ひゅう...とっさに出た攻撃でも、何とかなるもんだな」
克司「...こんな無茶が、毎回通じるとは思えないけどな...」
淳「ともかく、あの二機を助けようぜ!」


地面に横たわる二機の下に、駆け寄るダッシャーワン。
真「二人とも大丈夫か!返答をしてくれ!」
兵士A「きっ、君達は…?」
そう呟いた兵士が目をつけたのは、ダッシャーワンの胸部の「GD」の文字。
兵士A「GD...まさか、君達が「ガイアダッシャー」か...!?」
真「その通りだが、今はそれどころじゃねぇ!機体は動けそうか...?」
兵士A「あぁ、まだ戦える…」
兵士B「僕もだ…」
ぎこちない動きで立ち上がろうとする二機。
真「…無茶な事を言うな!ここから離れるべきだ!」
良和「同意だ。その機体達は、もうまともな戦闘すらできそうにない」


装甲が砕け散り露出した膝関節、大きな凹みのできた背面の装甲、捻じ曲げられたライフルの銃口。
二機の状態は良和の言う通り、もはや戦闘不能であった。


兵士A「…しかし、このまま撤退すれば、我々がここに来た意味が…」
真「そんなのはとっくに出てるだろう!見ろよ、この街を!」

ダッシャーワンが振り返った先にあった街。
激しい攻撃があったにもかかわらず、そこに並ぶビル群はほとんどが原型を留めていた。


真「街の損傷が抑えられたのは、あんたら二人が奴を食い止めていたからだ!少なくとも俺はそう思うぜ...」
その言葉の後、二人の兵士は暫く声を出さなかった。

兵士A「そうか、そう言ってもらえるなら満足だ…駄々をこねてすまない。大人しく撤退するさ」
先程の張りつめた顔から一転して、微笑みながら呟く兵士。
兵士B「よし、行こうぜ」


ゴォォォォッ...

二機のブレイクロスが宙に浮かぶ。
そして、足裏から噴かしたジェットの勢いを強め、どんどん遠くの上空へと飛んでいった。


鈴「…さて、ここからが肝心だよ…!」

舞い上がった砂埃が次第に晴れていく。
そして、再び起き上がったハディアンの姿が見え始めていた。


真「こうして見ると気味悪いヤツだぜ…」
アバル「何とでも言うが良い、生きては帰さないからな...!」


長谷川『…全員聞こえるか!』
各機のコクピットに通信を開始する長谷川。
良和「こちら富野!何か?」
長谷川『君達に留意してもらいたい事があってな...白川君、頼んだ』


次の瞬間、五機のモニターに石油タンク型のゲージが表示された。
白川『皆さんの現在地から、後方のおよそ360kmにあるラガー石油工場についてですが…』
微かにタイピング音を鳴らして、すぐさま説明を開始する理沙。

白川『現地のデータによると、工場にある十五基の石油タンクの貯蔵率は、平均して75%...計算すると貯蔵量は約10万kLになります』
モニターのゲージは半分ほど赤く塗りつぶされ、その横にはやはり「75%」と表示されている。
淳「じっ、10万...!?そんな量に引火したら...」
克司「...間違いなく、ここら一帯は火の海だ」

長谷川『怪物がそこに辿り着けば取り返しはつかない!くれぐれも、注意してくれ!』
真「…了解です!やるだけ… いや、絶対に食い止めます!」
事の重大さを知ったからか、真の声は固い決意を感じさせるほど大きく、そして強かった。


その一方で…
アバル「…ちぃっ、なぜ来ない…!」
構えているのみで一向に向かってこない五機に、苛立ち始めていたアバル。
アバル「貴様ら!いつまでもそうしているのなら、こちらから攻撃を始めるぞ...!」
怒鳴り声と同時に、ハディアンが突撃の体勢を取る。


鈴「アイツ、こんな時に...」
良和「ヤツが動くのも時間の問題だな...長谷川さん、通信をひとまず切ります」
通信ボタンに手をかける良和。だったが...


アバル「..."長谷川"、だと?」
何かに気付いたように呟くアバル。

アバル「おい貴様ら!一つ聞くが...通信相手の名は長谷川 康二か?」
真「当たりだが、それがどうしたってんだ!」
アバル「…やはりか...やはりゴストラ様の考えは正しかったようだ!ハハハッ!
数分前の苛立ちが嘘のような、アバルの愉快げな笑い声が響いた。


長谷川「なに、"ゴストラ"...!?」
良和「どうかしましたか」
長谷川「良和君、通信を切らずにいてくれないか。相手が何を言うか気になるんでな」
良和「よし、分かりました...!」
ボタンから手を離し、良和は再度操縦幹を握り直した。


アバル「無知な貴様らにも教えなくてはな。我々...戦闘組織・チェーンと、その首領、ゴストラ様の脅威を!




時は33年前、1990年に遡る。
バローカー国が産業発達の絶頂期を迎えていたこの頃、長谷川とゴストラの二人は科学者としてその手腕を奮い始めていた。

互いにそう意識していたかと言えば嘘になるが、人々は二人をライバル同士とし、二人の兵器開発競争の行方にも注目が集まっていた。
が、程なくして世間での結論は出た。
長谷川が機動兵器・ベータアタッカー(BA)を開発したためである。


BA第一号として開発された「BA-001 プロード」。
国内では空想上のものだった機動兵器の実現が与えた衝撃は大きく、プロードは国を代表する兵器として大量に量産され、長谷川も一躍「時の人」として認知されていった。


だが、ゴストラは違った。
改良を重ねた新型の戦車や戦闘機などを世に送り出しても、「時代遅れ」と評され相手にされず、彼の科学者としての地位は日に日に崩れていくだけだった。


研究資金も底を尽き、追い詰められた彼は一晩である書類を書き上げた。その名は「生物改造兵器化計画書」。
人間以外の動物を改造しそれらを兵器として運用していく…という旨の内容が記された、倫理観の欠片も無い代物であった。

しかし、それも彼にはどうでもいい事だったのだろう。
ゴストラは何の迷いも無く、二週間後に計画書を学会で発表した。


当然、他の科学者からは大バッシングを受けた。
それだけではない。メディアやマスコミでも計画書の内容が報じられ、この件は世間に一気に浸み込む事となる。


こうして、自らの科学者人生に止めを刺すとともに、長谷川とは違った意味で「時の人」として認知されていったゴストラ。
彼はそれ以降兵器開発から撤退、人知れず行方をくらましていた…


以上の出来事が、アバルの主観混じりに語られた。


数分続いた沈黙を良和が破る。
良和「本当ですか、長谷川さん?」
長谷川『大まかにはな…。虚言も所々混じっているが、この30年間ゴストラが姿を現さなかったのは事実だ』
淳「だけど、何のためにこんな事を…」


アバル「…地球を破壊するためだ」
その答えに驚きを隠せない五人。
真「地球を壊すだと… 一体、どうやってだ!」
アバル「決まっているだろう!人間を徐々に滅ぼし、自然環境も変え、まっさらな地獄に変えてやるのさ!…」
鈴「…ホラ吹きもいい加減にしなよ!第一、そんなことできるわけ…」
長谷川『…いや、そうは言い切れない…』


モニターに眉をひそめた表情を映しながら、長谷川が呟いた。
克司「どういう事です…!?」
長谷川「ゴストラの兵器開発の技術は30年前から高水準だった。今までの長期間で万全の準備を整えてきたと考えれば、充分あり得る話だ…」
アバル「流石はベテラン、ご名答だ」


再び愉快げに話すアバル。
アバル「この俺自身も、あの方に造られたアンドロイドの一体だ」
淳「…一体?他にもまだいるのか!?」
アバル「当然だ!アンドロイドは兵士として量産されている!数えるのも面倒なほどにな…」
具体的な数は示されなくとも、それはチェーンの戦力を表すには充分な発言だった。


克司「お前が乗り込んでいるその怪獣も、ゴストラってのが造ったのか…?」
アバル「怪獣?ハハハ…!いや、違うね!」
真「それじゃあ、何だってんだ…!」
アバル「貴様ら人間に否定された生物の兵器化計画… それを見直し、動物の骨格をコピーしたボディに人工筋肉を移植して造り上げた兵器…「機獣」だ!」
鈴「…どこが違うんだか…」


鈴の呟きが耳に入り、不敵な笑みを崩してアバルが叫ぶ。
アバル「…べらべらと説明するのも飽きてきたんでな!貴様らには身を持って学んでもらうぞ、コイツの恐ろしさを!
そう叫んだ直後、ハディアンが前屈みに構えを取る。

真「…かかってこい!お前に勝って、ここが逆恨みでやられるほど弱い星じゃないと伝えてもらうからな!
それに応じて、五機のダッシャーも戦闘体勢を取った。

良和「…長谷川さん、一度通信を切ります」
長谷川「…分かった!君達の健闘を祈る!」
五人「了解!


…プーッ、プーッ…
ガードベース内の通信室。
そこに設けられた通信機器のスピーカーは、五秒ほど同じ音を繰り返した後に静まった。
長谷川「ゴストラ… あんな事をして、何になるというんだ…!」
神妙な面持ちになったままヘッドホンを外す長谷川。すると…


…長官!
長谷川の背後から響いた大きな叫び声。
それを発したのは、理沙だった。

長谷川「…どうした、白川君…?」
普段とは真逆の白川の強い声に、驚くように少し目を開き長谷川が振り返る。

理沙「私から、お願いしたい事が…!

場面は再びコレダーに戻る。
各機が戦闘態勢に入って、一分も経たないうちのこと…


アバル「向かってこないのなら…行くぞ!

グドゥゥォォッ!!!


ズシィッ! ズシィィッ!
禍々しい唸り声をあげ、ハディアンは五機の方へと勢い良く歩き出す。


真「とうとう来たな…よし、まずは俺が突っ込む!
鈴「…えっ!? ちょっと待って…」

キィィィィッ!!
その一言も聞かず、ダッシャーワンが足元のローラーで走り出した。

鈴「…もう!あのヤロー…!」


一定距離を走ったダッシャーワンは、ローラーを収納し…

ダァァァン!
両足で地面を踏み込み、空中に浮かんだ。


真「手始めに一発だ!」
右肘を曲げ、拳を打ち込もうと斜め下のハディアンに急接近するダッシャーワン。

アバル「上からか… そう上手くは行かせるか!


グゥンッ!
ダッシャーワンが右腕を振るうが、ハディアンが軽く動いたために拳は空を切った。
ハディアンの頭頂高は20.5m、対してダッシャーワンは11.5m。
その差はそう簡単に埋まる物ではなかった。


しかし、それはハディアンにとっても同じ事だ。


アバル「外した気分はどうだ!尤も、そんな事に浸る暇はないがな!」

ブゥゥゥン!
鋭利な爪のついた右手を、ハディアンが左方向に振り下ろす…
が、先程のやり返しと言うかのように、ダッシャーワンは右方向へと動いてそれを回避した。


真「…セェーフ…!今のを受けてりゃ、ダウン必至だろうな…」
余裕ありげに真が呟くと、ダッシャーワンはジェット噴射で後方へ下がっていく。

アバル「…外したか… だが、次こそ!」
すかさず攻撃に出ようとハディアンが前方に足を踏み込むが…


ビシュウッ! ビシュウッ!
四つの違う方向から一直線に、何発もの青白い光弾が放たれた。
光弾達はハディアンの腹部中央に突撃、そして衝突する。


アバル「…!? くそっ、他の奴らか…!」
後ずさるハディアンの前方には、ダッシャーツーからファイブの四機がライフルを構えていた。

克司「作戦じゃないが…化け物の注意をそっちに逸らしてくれたのは上出来だ!ナイス、真!」
空中に浮かんでいたダッシャーワンは、ライフルを下げた四機の下へと着地する。
真「そいつはどうも!けど、まだ油断は禁物だぜ…!」


淳「…そうだ!」
何か思いついたような素振りを見せる淳。
淳「こないだ思いついたフォーメーションがあったろ… それ、試してみないか?」
真「…思い出した、アレだな!善は急げだ、そうと決まれば早速!

キィィィィッ!!
「あっ」と言わせる間もなく、再びローラーで走り出すダッシャーワン。


良和「おいっ、まだやるとは決めてないぞ…!?」
淳「…やれやれ、またか。仕方ないな…」
克司「このローラーより、アイツの頭の回る速度の方が速いんじゃないか?」
戸惑う良和に対し、慣れきったかのように追いかける準備に入る三人。

良和「…あの無鉄砲、すぐに戻らせなくては…」
鈴「チーフ。今回は諦めて、付き合ってみましょうよ」
焦る良和を諭す鈴。
それを聞いた良和は今にも押しそうだった通信用ボタンから手を離すも、不安を拭えないまま言い返した。
良和「いや、失敗してしまえば一気に劣勢に…」
鈴「真なんだから、そう言っても「大丈夫」の一点張りですよ。それに…」
小さくなっていくダッシャーワンを見つめ、少し笑って鈴が言う。
鈴「アイツ、やる時はバシッとやってくれるんですから…!」

キィィィィッ!!
騒々しい音を立て、ダッシャーツーら三機は前方へと移動していった。


良和「やる時はやる、か…」

この前… 黒いBAと戦った時も、真が動いたから勝つことができた。
あれがまぐれでないなら、今回も上手くやってくれるのか…?
そう思うと、良和はローラーの作動スイッチをONにする。
「無鉄砲」に望みをかけるためだ。


キィィィッ…!
一直線に進み続け、ハディアンとの距離を縮めていくダッシャーワン。
真「さっきはすまねぇ、今度はしっかりお見舞いしてやる…!」

アバル「…フハハッ!飛んで火に入る夏の虫めが…!」
...ググッ...
迎撃しようと右腕を首元の左へ動かすハディアン。

真「こいつで…!」
開かれた右胴部のハッチからライフルを取り出し、右腕で構えるダッシャーワン。しかし…

真「…なんてなっ!


ダァンッ!
攻撃することなく、ダッシャーワンは両足で地面を踏み込んで宙に飛ぶ。

アバル「なっ、何だとぉ…!?」
予想外の行動にハディアンが退いた、その瞬間。


そこだぁっ!
上空の方から叫び声が響き…

バァンッ!
発砲音が鳴り、黒い弾丸が一つハディアンへと迫ると…

…ボガァァン!
それは勢い良く破裂し、瞬時にハディアンの視界を白煙が覆う。


克司「よし…!長官の煙幕弾、大した効果だ!」
煙幕弾の炸裂を上空から見届けるダッシャーフォー。
数秒前の叫び声の主は克司だったのだ。


アバル「前が、前が...!? くそったれぇ…!」
思わぬ妨害に、アバルは怒り心頭に発する。
克司「鈴!チーフ!やるなら今だ!」


鈴,良和「了解!
克司の振り向いた先には、ダッシャーツーとファイブがライフルを両手に持つ姿があった。

ビシュウッ! ビシュウッ!!
合図を受け、光弾を連射する二機。


光弾は二列に規則正しく進み…

ズガズガァァッ!
またしてもハディアンの腹部に飛び込んだ。

アバル「どいつもこいつもちょこまかと…!」
止まぬ攻撃を受け続け、アバルが白く塗られた鉄製の歯を軋ませていると…


…キィィィィッ!!
二重に重なったローラーの走行音が響き出した。

サブタイトル案

第4話闇夜の疾走爺
第5話夕日に唸るギター
第6話柔道バカ一直線
第7話客船沈没危機一発!!
第8話俺がやめたら誰がやる
第9話I・LOVE・YOU!
第10話対立の脚本
第11話(未定)
第12話(未定)

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*1 炎の匂いが染み付いてむせるアレと同じです
*2 1~2話のとは別人(兵士Bも)