クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第045話

Last-modified: 2016-02-17 (水) 23:42:27

第四十五話『あんたが好きだったんだ』
 
 
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アカツキが、先にヤタガラスへ着艦する。ガロードはそれに続き、クラウダで着艦した

(冗談じゃねぇぜ、このMS・・・・。本当に量産型かよ?)

ガロードはクラウダを操りながら、冷や汗をかいた。スペックの高さが尋常ではない
武装こそ、バルカン、ビームライフル、ビームカッターと地味なものだが、
運動性、装甲、共に既存の量産機を大きく凌駕している機体である
ムラサメやM1アストレイがほとんど歯が立たなかったのも、無理はない

クラウダをヤタガラスのハンガーに固定させ、コクピットから降りる。すると、すぐに人が集まってきた

シン、ルナマリア、レイ、ステラが、ガロードのところへやってきた

「ガロード! オーブでクーデターって、本当か!?」

噛み付かんばかりの勢いで、シンが突っかかってくる。ガロードは少し顔を伏せて、問いに答えた

「マジだよ。すまねぇ、完膚なきまでやられちまった」
「・・・・・・本当に、本当に・・・・・オーブは・・・・・?」
「ああ。キラとラクスに乗っ取られちまった・・・・・・。毒食って、寝込んでたはずなんだけどな・・・・」
「なにを・・・・・なにを考えてるんだよ・・・・・あいつら・・・・・」

怒るというより、むしろ戸惑っているような感じでシンが言う
ひょっとしたら、まだなにが起こったのか、理解できていないのかもしれない

(無理もねぇや・・・・)

なにしろガロード自身、この状況が信じられないのである。ほんの数時間前までオーブは平穏で、
ヴァサーゴを接収してDXの修理ができると喜んでいたところなのだ

「でも・・・・信じられないわ。いったいなに考えてるのよ、ラクス・クラインは!
  私、ちょっとあこがれてたのに・・・・・」

ルナマリアが怒りを口にすると、レイがうなずいた

「ラクスを殺しておくべきだったな。何度もその機会はあった。黒海で、ロドニアで
  あるいはオーブで迅速に裁判が行われれば、国を乗っ取られることなど無かったはずだ」
「うぇーい」
「過ぎたこと言ってもしかたねぇよ、レイ。それに、誰もこんなことを予想できやしねぇ。
  それよりこれからどうすっか・・・・」

ガロードがひどい疲れを感じながら、つぶやいた時だった

ビーッ ビーッ ビーッ

『コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。総員、対MS、対艦戦闘準備
  アカツキ、グフ、ガイア、Dインパルスは高機動戦闘準備。ガロード・ランは出撃可能なら、準備願います』

警報と共に鳴り響く、通信士メイリンの声。MSデッキの人間たちは、あっけに取られた

「ちょ、ちょっと・・・・・!? 敵襲なの!? 誰が!?」
「クライン派だろう。いや、オーブと言った方がいいのか・・・・」

レイが言うと、シンが表情を変えて叫んだ

「冗談じゃない! なにがオーブだ! クーデターで乗っ取った国が、オーブであってたまるかよ!
  あんなのをオーブだなんて言ったら、トダカ一佐も浮かばれない・・・・!」

そしてシンは、アカツキに乗り込んでいく。やや遅れて、
レイはグフに、ルナマリアはDインパルスに、ステラはガイアに乗り込んだ
ガロードも、クラウダの方へ走っていく。敵の機体だが、高性能機であることは確かなのだ

「待てよ、ガロード。今、塗装をやってるんだ」

キッドが、ガロードを呼び止める。見ると、作業員たちが急ピッチで、クラウダの両肩に黒の塗装を吹きかけていた

「キッド・・・・・。紛らわしいからか?」
「おう。両肩を黒くするだけでも、だいぶ違うぜ? あと、通信合わせと識別信号の変更をやっとけよ」
「わかった・・・・・」
「ワイヤーをクラウダにつけといたからよ、出撃したらそいつでMSとヤタガラスを結び付けるんだ
  なんでそんなことするかは、後で説明がくるから」

一通りの説明を受けて、ガロードはクラウダに乗り込んだ。作業が終了し、整備士たちがクラウダから離れていく
急いで、クラウダの識別や通信の設定を行った。コーディネイターほど早くはできないが、仕方ない

それにしてもしつこい。その上、こうも早く追撃を行ってくる。しかし、なぜラクスやキラがあんなことをしたのかと思うと、
自分のせいかもしれないと考える。どういう形であれ、キラがラクスのことを知ったのは、
ガロードがミーアを面会させたせいだった。その責任は、感じている

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アスランは接近する機影が一つ、と聞いた瞬間、嫌な予感を感じた
そしてそれは、メイリンの報告で現実になった

「敵艦捕捉・・・・これは、アークエンジェルです!」
「クッ・・・・・」

はらわたが煮えくり返る。なまじ、かつて共に戦った仲間であるだけに、憎しみは倍増する
白い大天使。やはり地中海でやられたままでは終わらないようだ

「アスラン・・・・・。そんなにキラは、僕の命が欲しいのかい?」

ユウナが聞いてくる。怒りでもなく、恐怖でもなく、ただやるせなさにあふれた声だった

「命は欲しくないでしょう。キラやラクスに、あなたを殺す意志はありません」
「・・・・・なにを考えているんだ」
「代表。ご命令とあれば、戦いますが?」
「ここで勝ってなんになる・・・・。ひとまず、ザフトの基地まで逃げよう」

ユウナの言うとおりで、ここでアークエンジェルを撃墜しようがどうしようが、戦略的にたいした意味はない
代表を名乗る、キラが乗っていれば撃墜すべきかもしれが、その場合は逆に返り討ちにあいかねない

「シンゴ。ヤタガラスは方向転換だ。逃げるぞ! 全速前進!」
「了解! 方向転換の後、全速前進!」

シンゴが復唱し、艦の向きが変わる。アークエンジェルはかなりの高機動艦だが、ヤタガラスには劣るはずだ

「待ってください、艦長! アークエンジェルは大気圏突破用のロケットブースターを装備しています!」

メイリンが言うと同時に、ブリッジのメインモニタに接近するアークエンジェルが映し出される
その両側には、使い捨てのロケットブースターが装備されていた
本来、大気圏突破に使われる、大出力のブースターである

「逃がさん。ということでしょうな」

隣にいる、イアンがつぶやく。アスランは歯噛みした。まさか、宇宙に出るためにブースターを装備しているわけではない
ヤタガラスに逃げられないためだ。アスランは艦のマニュアルを、イアンに渡す

「読んでおいてくれ、イアン・リー」
「はっ・・・・・」
「仕方ない、アークエンジェルを迎撃するぞ!
  トニヤ、イーゲルシュテルン、バリアント、ゴットフリート起動。メイリン、MS隊を発進させろ!
  アカツキは左舷前方、クラウダは前方中央、Dインパルスは右舷前方、ガイアは左舷後方、グフは左舷後方
  それぞれワイヤーで固定。シンゴ、ヤタガラスの最大速力はそのままだ。逃げながら、迎撃する!」
「了解! アカツキ、グフ、Dインパルス、ガイア、クラウダ、発進願います!」

『なんでこんな・・・・クソッ! シン・アスカ、アカツキ、行きます!』
『落ち着け、シン。今は目の前の敵に集中しろ。レイ・ザ・バレル、グフ、発進する!』
『一応・・・Dインパルスの初陣なのかしらね? ルナマリア・ホーク、デスティニーインパルス、行くわよ!』
『ガイア・・・・空とべるの・・・? ・・・・・ステラ・ルーシェ、ガイア・・・・行く・・・・!』
『間違って撃たねぇでくれよ! ガロード・ラン、クラウダ、出るぜ!』

次々とMSが発進していく。ガイアは出力が強化され、長時間の飛行はできないが、空は飛べるようになっていた
それぞれがヤタガラスの守備につき、ワイヤーを射出して、艦とMSを結ぶ。
ヤタガラスが最大戦速で動く以上、振り落とされたりしたら、MSは置いてきぼりになりかねないからだ

「艦長、アークエンジェルから通信です!」
「通信・・・・・・。わかった。メイリン、つないでくれ」

大方の予想はついていた。降伏勧告だろう
アスランは応じるつもりなどさらさらないが、時間稼ぎにはなる
今、この瞬間もヤタガラスは、ザフトの勢力圏へ逃げ続けているのだ

ブリッジのモニタが切り替わり、アークエンジェルのブリッジが映る

『アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです』
「・・・・・・タカマガハラ第一部隊ヤタガラス艦長、アスラン・ザラだ」
『アスラン。降伏して・・・・・ザフトがやっていることが、デュランダル議長のやり方が、
  どれほど危ないかあなたもわかっているでしょう? 彼は、ただDプランの導入を拒否しただけのスカンジナビア王国を、
  武力制圧したのよ? また、一緒に戦いましょう・・・・。ラクスさんもそれを望んでいるわ
  私たちの目的は、オーブの支配なんかじゃない。ただ、デュランダル議長を止めたいだけなの
  もちろん、ユウナ代表には危害を加えないし、望むなら閣僚に参加してもいい・・・・・。
  いえ、すべてが終わったら、ラクス・クラインもキラ・ヤマトも、ユウナ代表に首長の地位をお返しするわ』
「代表」

アスランは、ユウナを見た。艦長はアスランであるが、最終的な決定権はユウナにある

ユウナはいつもと変わらぬ仕草で、口を開いた

「ラミアス艦長・・・・・。僕の命は、すでに僕一人のものではない
  確かに、僕はオーブ国民に人気がなかったかもしれない。そして、ラクスほどのカリスマもない
  でも、この体にはオーブの血が染み付いている。オーブの命が、ここにある
  それを投げ出すわけにはいかない・・・・降伏には、応じかねる!」
『ユウナ代表。ご自分が、なにをおっしゃっているのかわかっているのですか!?
  あなたはオーブをプラントの属国にして、デュランダル議長の暴走を止めようともせず、
  ただ安寧をむさぼっていただけではありませんか!
  それを、いまさら自分がオーブそのものであるかのように・・・・あまりに身勝手です』

瞬間、アスランは頭の中が沸騰した。冷静さもクソもない。怒りのメーターが振り切れた

「トニヤ! ウォンバット装填! 目標、アークエンジェル!」
「りょ、了解! ウォンバット装填、目標アークエンジェル!」
「撃てーッ!」

ドンドンドンドンドン・・・・・ッ!

次々とヤタガラスから、ミサイルが放たれる。アークエンジェル、ヤタガラス、共に高速移動中であるため、
まず当たらない攻撃だが、幸運にも一発だけ命中した

『アスラン・・・・!? 私たちが争っている場合じゃないのに・・・・あなたは!』

ぶるぶる・・・・・アスランの手が、震える。震えながら、艦長席の手すりをつかむ

「ラミアス艦長・・・・・。俺が今、なにを考えているかわかりますか?」
『降伏して! 仲間でしょう?』
「あなたたちを・・・・・。地中海で皆殺しにしておけばよかったと、心底後悔してるんですよ・・・・・!」
『・・・・・・・・!』

血を吐くような自分の声。冷静になれ、冷静になれ。誰かが言うが、熱は引かない

『つまり、戦いは避けられない・・・・。そういうことだなアスラン!』

高速移動中のアークエンジェルから、MSが発進してくる
ヤタガラスのMSと同じように、振り落とされないよう、ワイヤーがついていた

「アークエンジェルからMSの発進を確認。数、クラウダ、7。ムラサメ、3!」

メイリンの声。常に大軍を相手にしてきたヤタガラスにすれば、少ない相手だった
しかし甘くは見れない。すでにクラウダが途方もない性能のMSだと、報告を受けている

そしてアークエンジェルのMSを率いるのは、黄色に塗装された指揮官用クラウダ
そのパーソナルカラーを持つのは、アスランの知る限り一人しかいない

「砂漠の虎、バルトフェルド・・・・・!」
『もう、砂漠の虎って異名も古いけどなァ! アスラン。MS戦になった以上、手加減はできない・・・・
  わかってるな?』
「あなたはすでに過去の英雄だ・・・! ヤタガラスを舐めるな! MS隊、攻撃開始ッ!」

そして、戦闘が始まる
アスランは一瞬、ザフトに救援を要請するかと思ったが、すぐにその考えを消した

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高速移動するヤタガラスの甲板。ワイヤーで船体とMSをつないでいるため、振り落とされる心配はないが、
こういう形の高速戦闘はシンにとって初めてだった

命令は迎撃であり、撃破ではない。それはわかっている
しかしそんなことがどうでもいいほどに、頭の中がぐちゃぐちゃだった

<戦争を止める方法、ないのかな。僕はずっと探してるんだけど・・・・>

オーブの慰霊碑前で、聞いたキラの声
これが、そうなのか・・・・・。これが、キラ・ヤマトの答えなのか
やってくるクラウダの編隊を見て、シンはやるせなさに襲われる

「ああ・・・わかったよ、俺、あんたが好きだったんだ。そして、どこかで同じ道を歩けると思ってた
  戦争は止める。終わりにする。願っていたのは、たどり着こうとしていたのは、同じ道だよな」

ぱぁぁぁん

シンの頭で、『種』が割れる

「なぁ、キラ。これがあんたの答えなのか? 満足かよ? 嬉しいかよ?
  オーブを自分たちのものにして・・・・俺の故郷を奪って・・・・。それが、平和への方法なのか?」

フォン・・・・・。アカツキが起動し、収束ビーム砲をクラウダに構えた

「クソッ・・・・クソックソッ、クソッ、あああああああーッ!」

ドシュゥゥン!

二本の赤いビームが、やってくる一機のクラウダに命中する
しかし、クラウダは装甲がへこんだだけで、こっちにやってくる

アカツキは連結ビームサーベルを引き抜き、頭上で回転させた

「オーブを返せ・・・・! 俺の好きなオーブを返せ・・・・・! 俺の故郷を返せッ!
  キラァァァァッ!」

ヤタガラスから飛び出し、アカツキがクラウダに斬りかかる

ガッ!

しかし、ビームサーベルが『すべった』。クラウダを確認すると、装甲に傷がついただけで平気な顔をして、
ビームライフルを撃ってくる

「な・・・・!?」

放たれたビームを、アカツキは反射した。べっこりと、クラウダの頭がへこむ。しかし、破壊できてない

(これが、本当に量産型なのか・・・・・?)

懲りずに再び、連結ビームサーベルで斬り下げる。やはりすべったような感じがして、うまく斬れなかった

『なにをやっている! アカツキはビームを反射するって、わかってるだろうに・・・・!』

黄色いクラウダから苛立ちが飛ぶ。そこへ、一つの影が接近した

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ルナマリアのDインパルスは対艦刀エクスカリバーを引き抜き、黄色いクラウダに斬りかかった
この高速戦闘である。遠距離からの攻撃は、まず当たらないと考えていい

「バルトフェルドさん・・・・・!」
『ルナマリアのお嬢ちゃんか・・・! ヤタガラスに捕まったときは、世話になったねェ!』

エクスカリバーが、クラウダの鼻先をかすめる。外したのではない、避けられた

「幻滅しましたよ、砂漠の虎! オーブをクーデターで制圧するなんて、なにを考えてるんですか!
  あなたも、ラクスも、キラも! 戦争を終結させた英雄って、こんなものなんですか!?」
『狭い視野でモノを考えるなァ! 俺たちはオーブ一国のことに構ってられないのさ!
  世界がヤバイのに、国益を優先するのは愚策以外の何物でもない・・・・ッ!』
「・・・・・ッ! このぉ!」

クラウダが放ってきたビームを、シールドで受け止める
しかしその影で、クラウダの翼が光った

『若いな、ルナマリア!』

ザッ!

クラウダの背にある翼が光を帯び、ビームカッターに変貌。体当たりでDインパルスの装甲を切り裂く!

「うっ・・・・このくらい!」

エクスカリバーを振り回したが、すでにクラウダは攻撃範囲から逃げていた

『ボクはね、おまえさんが気に入ってるんだ、ルナマリア。あと十年もすれば、いい女になる・・・・』
「冗談! 私はとっくにいい女よ!」
『ん〜。こりゃ、一本取られたな。うむ、認めよう! だがな、おまえさんはなにと戦う?
  いつまでもザフトのために戦うのか? そして軍人として、敵をすべて滅ぼして、日々を生きるのか?』
「・・・・・・なにをッ!?」
『いい女になりたければ、もう少し考えてみろ、戦争というものをな! 
  このままザフトの勝利で戦争が終わることを考えてみろ! 世界はギルバート・デュランダルの独裁に変わる
  そして、デスティニープランの導入で、人々の未来は失われる! ルナマリア、そんな世界のために戦うのはよせ!』
「勘違いしないで!
  私はタカマガハラ第一部隊ヤタガラス所属、デスティニーインパルスパイロット、ルナマリア・ホークよ!」

ガシャァァン!

エクスカリバーが、クラウダのあごをとらえる。しかし押し切れない。化け物のような装甲で、防がれているのだ
クラウダがその隙を見逃すはずもなく、Dインパルスの顔を思いっきり殴ってきた

『詭弁はよせ! 結局はタカマガハラもザフトの一部隊だ・・・・それは戦績が証明している!』
「冗談じゃないわ! バルトフェルド・・・・あなたに私たちのなにがわかるのよ!」
『では、結局、お互いを滅ぼすために戦うのかね! 敵だというだけで!
  共に手を取り合い、笑いあえる未来がそこにあるかもしれないというのに・・・・!』
「ないわ・・・・・。そんなもの、あの子にはないのよッ!」

ビームブーメランを引き抜き、デスティニーインパルスはクラウダに放つ。高速戦闘中だが、当たった
クラウダがよろめく。すぐさまエクスカリバーを構えなおし、思いっきり袈裟懸けに斬り付けた

ザシュッ!

斬れた。ほんのわずかだが、クラウダの右肩に切り傷が発生する

『うっ・・・・!』
「知ってる・・・!? 一年しか生きられないの! 楽しいことも、優しいことも、安らかなことも知らずに、
  ただ敵を倒すためだけに生まれてきて・・・・!! あの子は、世界の醜いものを背負わされて生きてきたの!」
『なに・・・・・?』
「バルトフェルド! あなたの言っていることは理想だわ! 夢の中の話! だから心に響かない!
  世界の人を救う。人の未来を作る! 美しい目標だけど・・・・すべての人間を救うことなんてできないのよ!
  だから私は仲間たちを・・・・自分の好きな人たちを守れればそれでいいの・・・・!! 理想なんかいらないッ!」

何度も何度も、クラウダの右肩を斬りつける。傷口は徐々に広がり、やがて胸のあたりまで下がった

『・・・・甘く見てたか! 仕方ない・・・・後は頼んだ!』
「逃げる・・・・・!?」

Dインパルスから、クラウダが逃げ出す。追撃したいが、命令は迎撃であるし、他のMSも交戦中である
追いかけることはできない

(・・・・・後は頼んだ?)

ルナマリアは、その言葉が引っかかった

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フリーダムの機体をチェックする。OSはすでに書き換えられていた
それもかつて自分が使っていた、ストライクのデータが入っている
すでにフリーダムは自分の体のようになじんでいた

『無茶をしないでね』

マリューが、心配そうな声で告げる。多分、大丈夫だろう
二年前のMSとはいえフリーダムの性能は、インパルスなどのセカンドシリーズを大きく上回る

「ま、さっさと済ませて帰ってくるよ。・・・・・ムウ・ラ・フラガ、フリーダム、出るぞ!」

そしてフリーダムは、アークエンジェルから飛び出した